Fateで斬る   作:二修羅和尚

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四十八話

「ナジェンダはそのまま東へ。アカメは別れて南へ。ここに来て、二手に別れたところを目撃されたようだな」

 

「東へ行けば安寧道の本部のあるキョロクへ。南へずっと行けば革命軍の息のかかっているであろう都市へ。いずれにしてもキナ臭いですね」

 

 

ロマリー街道。

ナイトレイドの目撃情報を受けた俺達イェーガーズは現在、そのロマリー街道にて作戦会議を行っていた。

 

ちょうど時間もよかったため、何か手にもって食べられるものを各々が買って中央広場の噴水の前に集まっている。

 

ちなみに、俺はセリューと同じくクレープを食べているが、セリューの方はストロベリーを俺はバナナを注文している。

 

あとボルスさん。その覆面着けたままじゃ食べられませんよ?

 

「急げば直ぐに追い付きますよ。行きましょう!」

 

「待て待て。ウェイブ、もう少しもの考えてから話せよ」

 

気合い十分! といった様子で意気込んでいるウェイブに待ったをかけて落ち着かせる。

 

「何でだよ? あいつらを追い込むチャンスだぜ?」

 

「だから考えろっての。セリューは何でか分かるよな?」

 

「うぇっ!? ……モ、モチロンサァ!」

 

「分からねぇなら正直にな」

 

「……はい」

 

知ったかぶったセリューに少々呆れつつ、俺はエスデスを見やって話の続きを促す。

うむ、と頷いたエスデスは恐らくセリューや俺と同じところで買ったのであろうストロベリーのクレープを一口。

 

「ナイトレイドは帝都の賊だ。地方まで手配書が回っていないので油断したところを顔を出して追跡され、あげく二手に別れるところまで目撃されている。都合が良すぎる」

 

「高確率で罠ですね」

 

エスデスの言葉を補うようにしてランが答える。

俺はそんな二人の言葉を聞いてから、分かったか? と後ろの二人の方へ振り向いた。

 

「俺達を帝都から誘き出すために、わざと人目についたんだろうよ」

 

「ナジェンダはそういう奴だ。燃える心でクールに戦う」

 

どこか遠い目をしながらそう呟いたエスデス。そういえば、エスデスは元将軍のナジェンダとは知り合いだったっけか

 

「ん? てことは追うのは危ないんじゃ……」

 

「……いや、この機は逃さん。今まで隠れていたナイトレイドがご丁寧に姿を現したんだ。罠は覚悟の上、それごと叩き潰す」

 

清々しく言い切ったエスデス。敵ではあるが、こういうところは嫌いではない。……こいつ自身は好きでも何でもないがな

 

「私とセリューとラン。そしてボルスは東へ向かったナジェンダを追う。クロメ、ウェイブ、セイはアカメを追え」

 

「その人選の意味は?」

 

「クロメの帝具、八房があれば、多少の人数差は覆せるからな。お前と私を分けるのは当然として、ナジェンダが何をしてくるか分からん。対応できるよう、こちらを多くさせてもらった」

 

「なるほど」

 

だが、ウェイブは大丈夫なのだろうか

 

「常に周囲を警戒しておけ。そして相手があまりに多数で待ち構えているようなら退却して構わん。ガンガン攻めるが、特攻しろと言ってるわけではないからな。帝都に仇なす最後の賊だ。着実に追い詰め、仕留めてみせろ!」

 

『了解!』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「かーっ! よりにもよってこの面子かよ。クロメはいいとして、ウェイブって……」

 

「おい、セイ! なんか文句でもあんのか!?」

 

「ウェイブうるさい」

 

ロマリー街道から南へ。東へ行ったセリューたち四人と別れて暫く馬を走らせ、俺達は今垂直に切り立った岩々の間を通過中。

ライダーのクラススキル、『騎乗』はないが、それなりに練習をしてきたため、多少は乗りこなせる。

 

「そういや、セイ。お前って、前にナイトレイドの奴と戦ったんだろ? どうだったんだ?」

 

「あー、そうだな。少なくともウェイブよりは強かったんじゃねぇかな」

 

「ウェイブ弱い」

 

「おいこらクロメ! 見てもないくせに勝手なこと言うな!」

 

馬に乗りながら並走するクロメにツッコミを入れるウェイブ。

どうでも良……くはないな。ちゃんと前見ないと落馬するぜ?

 

「言っとくがなぁ! 俺だってグランシャリオを装着すりゃあ強いんだからな!?」

 

「はいはい。ワロスワロス」

 

「でもここぞって時に弱そう」

 

「んじゃ見てろよ! 今回で俺の実力をみせてやらぁ!」

 

「それはいいが、無茶して早死にすんじゃあねぇぞ?」

 

先走って何かやらかさないように釘を指しておく。一応、こいつこの中じゃ最年長なんだけどなぁ……どうにも心配だ。

 

「分かってるって。俺もそこまで愚かじゃ……! 前方、何かあるぞ」

 

何かに気づいたのか、途端真剣な面持ちに変わったウェイブ。ずっとその顔だったら、かなりモテるんじゃないかと思う。

が、どうやらそうふざけてる場合ではないようだ。

 

ウェイブの視線の先に目を向けると、そこにあったのはこれ以上ないってくらいに怪しい巨大案山子。

 

……あれ? あの胸部に書かれてるのは……漢字?

 

「池…面……ああっ! イケメンね!」

 

どうやら当て字のようだ。にしても、こっちに来てから久しぶりに見た漢字がこれって……虚しいなおい。

 

「どうする?」

 

「一応、調べようぜ」

 

そう言って馬から降りたウェイブ。それに続く形で俺とクロメも馬から降りて前方の案山子の元へと歩く。

……てか、かなりでかくないか? 中に数人くらいは入れそうな気がするが……

 

「っ!! ウェイブ! クロメ! こっちへ来い!」

 

「は? 急にどうし…!」

 

「クロメ!」

 

「!!」

 

突如、俺の斜め前方にいたクロメの元へレーザーが襲いかかった。

しかし、咄嗟に叫んだことが功をそうしたのか、はたまたクロメの実力なのか、クロメは見事にその攻撃を往なしてみせた。

 

……いや、いやいや、あれ、人間の動きじゃねぇから!

 

「超長距離狙撃……あのピンクツインのマインかっ!」

 

一瞬、狙撃の来た方角に意識が持っていかれた。それが隙だった。

 

「っ!? クロメ! 危ねぇ!!」

 

突然前方の巨大案山子が内側から破壊され、中からは見たことのない、頭に角を生やしたコスプレ野郎が出現、同時にクロメに向かって武器を振るった。

そして間一髪、クロメとコスプレ野郎の間に体を割り込ませたウェイブはそのポールウェポンの攻撃をグランシャリオの剣で受け止めたまでは良かった。

 

だが、少々このコスプレ野郎を見くびっていたらしい。野郎は攻撃を受けたウェイブを信じられないパワーでそのまま遥か彼方へぶっとばした。

 

「なぁっ!?」

 

「ウェイブ!!」

 

一瞬、開いた口が塞がらなかった。

 

「ふむ、敵を一人、それも標的でない奴を退場させられたのは好都合だ」

 

悠然と姿を現したのは、右目に眼帯をし、右腕が肩から義手となった女。……女でいいんだよな?

 

が、どうやらボケている場合ではないらしい。

 

話にしか聞いたことはないが、あの人が恐らく元将軍のナジェンダ。

そしてそれに続いて姿を現すアカメ、ブラート、シェーレといった指名手配された面々や見たことのない奴まで現れる。

 

……あの金髪おっぱい……どこかで見たことあるような…気のせいか?

 

まぁそんなことはいい。問題は、少々状況が不利になっているってことだ。

 

「……見たところ、ナイトレイド全員でお出迎えってか? なかなか気前がいいなおい」

 

「……東はまったくのフェイクみたいだね、セイ」

 

拳の手甲を構えつつ、クロメと肩を並べる。

 

「クロメ、そしてセイ。特にクロメは標的だ。ここで仕留めさせてもらうぞ!」

 

 

最低でも七対二

普通ならなにその無理ゲーと言いたくなるような状況が完成してしまった。

 

ウェイブ、生きてっかなぁ……

 

 

 

 

 

 


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