Fateで斬る   作:二修羅和尚

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五話

「! やや? ややや?」

 

「ん? おい、セリュー。いきなりどうし……」

 

「私の正義センサーにビビッと反応あり! セリュー・ユビキタス、目標を駆逐します!」

 

「お前はどこの調査兵……あ、ちょ!! 勝手に飛び出していくんじゃねぇよ!!」

 

いきなり駆け出したセリューの後を慌てて追いかける。

 

ちなみにコロはセリューの腰と紐で繋がれているため、思いっきり引きずられている。

セリューさんや、あなたの大事な相棒なんだから、もうちっと扱い方を考えないか?

あと、駆逐してはいけませんから

 

「くっそ、あいつこういう時だけはバカみたいに速ぇし…」

 

勿論、英霊と同等のスペックを持つ俺が本気になればすぐに追いつくのだか、ここは街中、しかもまだ人通りの多い真昼間。もし、本気なんか出して前方に人がいたとかいう場合、洒落にならん事態になる。

 

「あ! セイ君! こっちこっち……アイタッ!?」

 

「無視して走り出したんじゃねぇよバカタレが」

 

ようやくセリューの元まで追いついた俺は早速手甲を装着した拳をセリューの頭に落とした。所謂、拳骨である。

もうちっと、こういうところがどうにかならんものかねこの猪娘(いのむすめ)は。年上だけど

 

「で? そちらの二人は?」

 

「酷いな〜。…えっと、さっき話を聞いたんだけど、今日地方から来た子達だよ。何でも、ここに来る途中で、お金全部取られたんだって」

 

だよね? とセリューがその二人に確認するように聞くと、二人組のうち、女の子の方がはい、と答えた。

 

「そりゃまぁ……災難だったな……」

 

「本当っすよ!? 荷物置いて、ちょっと余所見した時にはもうないって……」

 

「返ってくるかはわからんが、犯人探しくらいは警備隊でやっておこう。仕事だしな。ただ、帝都ってのは思っているよりもタチの悪いところだ。以後、気をつけろよ」

 

肩を落とすバンダナの少年にそう声をかける。

こんな風に、帝都にロマンを求めて地方からやってきた者達が騙される、あるいは嵌められる何てことはざらにある。

警備隊でもそこらへんは注意しているんだが、如何せん、人が多すぎる。

 

数の多い警備隊とはいっても、帝都全てを回れるわけではないため、やはりこういう被害は出てくるのだ。

 

「でも、あれはイエヤスが悪いわよ。それに、どうせ帝都の女の人に鼻の下でも伸ばしてたんでしょうに」

 

「仕方ねぇだろ!? 気になっちまったもんは! それに、サヨだって、花なんか摘みに行く何て言って……」

 

「おーし少年。それ以上は言ってはならないぞ」

 

何かを口走りそうになったイエヤスと呼ばれた少年の口をふさぐ。

この子は、隠語というものを知らないのかね? ほら、デリカシーなさすぎるから、女の子の顔が怒りと羞恥心で真っ赤ではないか。

 

「あ、ああんたって奴は……!!」

 

「ちょ、こんな所で暴力はダメだよ、ね? ほら、落ち着こう?」

 

「キュ、キューキュー」

 

震える拳を解くどころか、今にもこの少年に襲いかかってきそうなサヨと呼ばれた少女の方は、何とかセリューとコロが抑えていてくれている。

俺の眼の前で流血事件とか勘弁だからな。

 

「それで? 結局君たちはどうするの?」

 

「……あ」

 

「うっわ、本当だ……まじでどうしよう……」

 

セリューの質問で、ようやく振り出しに戻った二人。

どうやら、まだ宿も取っていなかったらしく、このままでは帝都の中で野宿という笑えない冗談が現実となりそうであるとのこと。

 

野宿は……この帝都じゃあんまりオススメはできないしな……

 

「あ、じゃあセイ君のところに泊まらせてあげれば?」

 

「ん? 俺の所か? まぁ、部屋は有り余ってるし別に構わないが……」

 

「じゃあ決まりだね! 良かったね、二人とも。野宿しなくて済みそうだよ」

 

「「………え?」」

 

あまりの急展開に、頭が追いついていないお二人さん。

そりゃそうだ。宿が無いと困っていれば、そこにどこからともなく現れた警備隊員の家に泊まることになってるんだからな。

 

「大丈夫だよ。セイ君の家なら、そこらの高級宿よりも断然すごいし、安全面もこの帝都で随一だからね!」

 

「それについては俺は帝都一を自負してもいいくらいだな」

 

セリューの褒め言葉に、俺はおもわず頷いた。

だって、陣地作成Cで、工房化してるし、道具製作Cで作ったトラップも多数張り巡らせてるしね。

 

「あ、あの、私たちは嬉しいんですけど、その、迷惑じゃ……」

 

「なに、これも何かの縁だ。それに、さっきも言ったが、部屋なんぞ有り余ってるからな。一人二人増えた所で全く問題は無い」

 

「で、でも…」

 

「なぉ、サヨ。この際、泊めてもらわないか? ここまで言ってくれてるんだしさぁ…」

 

未だに渋っているサヨに、イエヤスがそう言った。

が、それでもまだ悩んでいる様子のサヨ。これ、なんか裏があるとか思われてんのかなぁ……

 

「セイ君なら大丈夫だよ。それに、私もついていくから」

 

「え、なに。セリューも来んの?」

 

「こんな可愛い女の子の一人にさせておけないからね〜」

 

「は、はぁ……」

 

「……まぁいいか。でも、君みたいに警戒心を強く待つことは、この帝都じゃ必須技能だ。それでいい。ただ、今は俺のこと信用してくれると嬉しいんだが…」

 

どうだろうか? と問いかけるようにして聞くと、サヨはもう一度うぅ…と頭を悩ませるような仕草をする。

だが、俺、セリュー、イエヤスと三方向から説得にかかられたからなのか、最後にはお願いしますと頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人とは今日の仕事が終わり次第、また会うことになっている。

集合場所は噴水のある広場としてあるのですぐにわかってくれることだろう。

 

「しかし、セリュー。よく見つけてくれたな」

 

「へへ、褒めてもいいんだよ?」

 

「バカか。普段の行いを顧みてから言いやがれ」

 

ビシッ、とセリューの頭にチョップ落とす。

手甲がついているため、それなりの威力になっていたのか、セリューは涙目だ。

そして、コロはそんなセリューを見てニヤリと笑う。

おお…悪どい顔だなおい。可愛いけど

 

「まぁでも、感謝する。あの二人、あのままじゃいずれ、帝都の闇に飲まれるところだっただろうからな」

 

「あのサヨって子はともかく、イエヤスって子は騙されやすそうだからね」

 

帝都の貴族の中には、地方から出てきた田舎者を狙って誘拐、あるいは騙して、暴行を加えたり、拷問にかけたりとそんな外道も大勢いる。

……大勢いるとか、ほんと終わってるよなこの国って感じがパネェ

 

「とりあえず、早いとこ富裕層の情報も集めて証拠を掴まないとな。あの二人みたいに、帝都に夢見てきた人が、安全に過ごせる国にしなきゃだ」

 

「だね! そのためには、まず!」

 

「おう! 俺が隊ちょ……」

 

「仕事終わらせないとだね!!」

 

俺の言葉を返せ


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