Fateで斬る   作:二修羅和尚

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他の視点はむずい……

そして、これでいいのかちょっと心配だ


四十三・五話

「よし、掃除終わりっと。これで今日の分は終わりかなぁ」

 

メイドとして与えられた本日の仕事が終わり、私は大きく息を吐いた。

食事は私が担当じゃないからいいとして、他にやれそうなところも他のメイドの人が終わらせているみたいだから特にやることはなし。

 

 

ナイトレイドのボスであるナジェンダから受けた任務はこの屋敷の主であり、帝都警備隊隊長とイェーガーズを兼任するセイという男の調査。

そう、暗殺ではなく調査

 

ボス曰く、奴は不明な点が多すぎるって理由で止めておくように言われたんだけど……

 

「見た感じ、そこまでヤバそうには感じなかったんだけど……」

 

アカメ達の話から、強いことは聞いている。マインとシェーレの二人を相手に圧倒したのなら間違いない。

が、たまにこの屋敷で姿を見かけるが、本当にそうなのかと疑問を持ってしまう。

 

隙をついたら殺れそうだ。

 

まぁ、ボスからの命令だし手は出さないけど

 

 

 

「さて、このままだと暇だし……本業に戻ろっと♪」

 

頼まれていたあの男の調査と、ボスが危険視しているという謎の能力。

本人の使用する帝具スペクテッドのものとはまた違うらしく、私もここにくるまで信じていなかったのだが、今も首から下げている宝石のネックレスをみれば信じざるを得なかった。

 

だって、どうやったらただの宝石が通信機になるのよ

 

一度探るつもりで帝具をつけてないときに聞いてみたが、「不思議パワーだ」の一言のみで答える気はなし。

家のメイドにくらい教えてくれたっていいのにね

 

 

他のメイドの人とはちあわせないように歩を進める。

 

行き先はもちろん、この家の主、セイの私室。

 

あの部屋だけはエアを含めたあの三人娘のほか数名程しか入室を許可されてない。

 

こりゃ何かあるに決まってるじゃない?

 

幸い、仕事が早く終わったから、今日の担当のルナちゃんが掃除を終えるのにもう少しかかるはず。上手いことやれば、退室の時に中に入れるはずだ。

 

「ニッシッシ。やっぱこの帝具、便利だよねぇ」

 

帝具ガイアファンデーション

戦闘用の帝具じゃないけど、潜入暗殺にこれほど向いた帝具はないと言ってもいい。

その能力は何にでも変身できるという流石帝具! といえるもの。

 

この帝具のおかげで、たくさんの仕事を成功させてきた。

 

 

 

 

次の角を曲がればあのセイの私室だというところで、私は帝具を使い、ネズミに化ける。

壁際に沿って歩いていけば、丁度いいタイミングで扉が開き、中からルナちゃんが出てきた。

 

そして扉が閉められる寸前、急いで中へと滑り込んだ。

 

「……?」

 

一瞬、外のルナちゃんが立ち止まったようだけど、鍵を閉めてそのまま部屋から離れていく気配を確認してから変身を解く。

 

「ふぅ、浸入成功っ♪」

 

まぁ私にかかれば、こんなのチョロイチョロイ

 

今日はセイやここに滞在してるチョウリっておじいさんとその娘のスピアも外へ出ていない。なかなかの好条件だ。

 

「おっと、自重自重。手早く調べないとね」

 

私がいないことに気付いた人がいたら面倒だしね

部屋の中を見回してみる。

家が家だから部屋もと思ってたけど、必要最低限のものしか置いてない、シンプルな作りだった。

ただ、部屋は広く、奥の半分くらいには畳……だっけ? それが敷かれている。

 

「っと、これかな」

 

そして部屋の中央。一見床に見えるが、よくみれば少し違和感のある場所。

爪先で軽く叩いてみればここだけ音が高い。

地下に繋がる階段だ。

 

「へへ、部屋に入れなくても、色々できるんだから」

 

夜に小動物に化けて聞き耳をたてた甲斐があった。

 

「えっと、確か合言葉は……『神も仏も天使もなし』……だったっけ?」

 

この家の主は安寧道に喧嘩でも売っているのだろうか

 

そんな思いとは裏腹に、地下への扉はカチッ、という音をたてる

どうやら、鍵が開いたみたいね

 

「あのセイって人、いい人には違いないけど、甘いね」

 

身内を信じるのは美徳だけど、世の中、そう甘くないんだから

 

暗い階段を下りると、少し狭めの部屋に出てきた。

明かりをつけようと電灯を探す。が、どうやらそういったものはないらしい。

壁にスイッチのようなものがあったが、触れても反応はない。

 

「これじゃないのか……にしても、変な模様ね」

 

六芒星というやつだろうか? それに似た絵が刻まれていたがよく分からない。

 

仕方ないとポケットに忍ばせていたライターで灯をともす。

 

「もう、電気くらいつけたら……!?」

 

そして目の前の光景に目を奪われた

 

階段を下りた正面。どうやらそこは棚になっているようだった。

けど、問題はそこにあるもの。

 

壁一面を棚に飾られて覆っていたのは色とりどりに輝く石。そう、宝石の山だった。

 

大きさもばらつきがあるが、それ一個でいったいいくらくらいするのだろう。

そんなものが大量に、無警戒に飾られていた。

 

「いやいやいや、これはないでしょ……」

 

せめて保管くらいはした方がいいだろうに、と頭を抱えたくなる。

 

「あ、ちょっと待って。マインが何か言ってたような……」

 

一度あのセイと戦った際、セイが使用した武器。

 

確か、刀と銀色の触手と……

 

「……そうだ、宝石だ」

 

てことは、これ全部がセイの武器になるわけだ。

 

そして、これがセイの使う謎の能力に関係が……

 

早速、棚の中から一つを拝借。手にとって見てみるが、見た目はただの宝石。

あと数個ほどガイアファンデーションの中に収納し、他になにかないかと探してみる。

すると、宝石の棚のそのとなりにまたしても扉があった

 

 

「まだ何かあるみたい……だけど……」

 

私の暗殺者としての本能がここはヤバイと訴えている。

こういうときはそれに素直に従った方がいい。

 

「ま、それっぽいものは手に入ったし、これで充分って納得しとこっか」

 

そこからは暗殺者として鍛えた身のこなしで地下を抜け、私室を出る。

そして何事もなかったようにエアちゃん達のところへと戻るのだった


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