Fateで斬る   作:二修羅和尚

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四十一話

「……そうか、ドクターは殺られたか」

 

「ああ。俺の伝で探したが、発見時にはもうダメだったみたいだ。アカメの村雨で殺られたのはまず間違いない」

 

翌日の午後

 

俺はイェーガーズの本部にいたエスデスにスタイリッシュの死を報告した。

報告を受けたエスデスは少しばかり残念そうな表情を浮かべて目を伏せる。

 

「少し前にランからも報告を受けてな。奴の研究所を調べていたらしい」

 

「何か見つかったのか?」

 

「逆だな。何もなかったみたいだ。研究資料も道具も、私兵もろともな」

 

どうやら、帰ってこないスタイリッシュを不審に思い、ランが直接スタイリッシュの研究室を調べたとのこと。そして、そこからの状況整理によって、スタイリッシュが何らかの方法でナイトレイドを発見し、手柄に目が眩んで一人で攻撃、そして返り討ちにあったと予想したらしい。

 

……ラン、君は探偵にでもなれるんじゃないか? なんなら、頑張って子供になれる薬も作っちゃうよ?

 

「それで? 今後はどうすんだ?」

 

「こちらから攻めたいのは山々だが、アジトが分からないからな。待つしかないだろう」

 

「……それもそうか」

 

今朝がた、何か手掛かりになるようなものがないかと思ってアサシンの分体を三人ほど向かわせたが、やはりそういったものは破棄されたようだった。

ただ、ひとつ発見として温泉があったことにはビックリしたが。家に露天風呂でも付けようかなと思ったのはここだけの話である。

 

 

まぁ結局、俺たちはナイトレイドが動くまでは身動きが取れないのだ。そこは仕方ないか

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「ヒィィイイィィィィ!?!? 死ぬ! これ死ぬぅぅぅ!?」

 

「ごちゃごちゃ言ってないでさっさと手を動かしてください」

 

警備隊執務室にて

 

山、という言葉でも足りないんじゃないかと思うほどの書類を前に、副隊長の監視のもと、必死に手を動かし、目を通していく。

 

「溜まりに溜まった分、しっかりと働いてもらいますからね」

 

「それでもこの量はねぇよ!! え、なに? 警備隊ってこんな仕事だったっけ!?」

 

「だまって働け」

 

「ちょ、俺一応上司「何か?」何でもないですはい」

 

目の前に先端が尖ったトンファーを突きつけられました。

英霊スペックとはいっても、痛いのは痛いのよ? 回復するけど痛みはあるからね?

 

「イェーガーズの仕事でこちらに手が回らなかったことは諦めます。隊長も人間ですから、できないこともあるでしょう」

 

「だ、だろ!? だからもうちょい優しく……」

 

「けどあなた、街で見かけたときお茶してましたよね? そして目があった瞬間に逃げましたよね?」

 

「ぐっ……」

 

イェーガーズ本部からの帰り道、とりあえず暇だと思ってそこらへんの喫茶店でのティータイムに洒落込もうと考えてた俺だったのだが、その途中、窓の外から俺をガン見する副隊長の姿を確認→以前のあの不気味な言葉を思い出して逃走といった経緯に至る。

 

もちろん、この体のスペックなら簡単に振りきれたんだ。けど、走るのも面倒だったから、どこかに身を隠そうと考えた俺が向かったのはBOOKNIGHT、つまりはラバックの店だ。

だがしかし、あいつの店は只今休業中とのこと。時々不規則に休業するのは知っていたが、タイミングが悪かったらしく、ついには副隊長、並びに他隊員に取り囲まれて、結果副隊長に引きずられてここに来たって訳だ。

 

副隊長のやつ、俺捕まえるのに態々非番の隊員に召集をかけたようだった。

とりあえず、皆ごめん。けど、悪いのはラバックなんだ!

 

 

「責任転嫁するよりも手を動かせ」

 

「ナチュラルに思考を読む君が怖いです」

 

何? もしかして君はスペクテッドでも備えてんの? それとも千里眼とか読心のスキル持ちですか?

 

そして何も言ってないのにうるさい黙れの一言いただきましたぁー

 

ヒーヒー言いながらも書類仕事を続ける俺。ある程度進んだ時点で副隊長も手伝ってくれるようになった。

何でも、今日中に終わらないとダメなものもあるから、仕方なく手伝うだけだ、とのこと。

 

「なぁ、ちょっといいか?」

 

「? なんですか?」

 

「男のツンデレはどうかと思うぞ?」

 

「……意味が分かりませんが……とりあえず、刺していいですか?」

 

ちょ、トンファーの先を向けないでってば!!

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「あ゛あ~……マジで疲れた……」

 

途中、腱鞘炎になりそうなのを治癒の魔術で無理矢理治して作業を続けること十時間ちょい。

なんとか日付が変わる前に帰宅できた俺は家の玄関でぐったりとうつ伏せに倒れこんだ。

 

それと、後は出すだけだからこっちでやっておくと言って帰宅の許可を出してくれた副隊長はやはりツンデレなんじゃないかと思う。

 

「あ、セイじゃない。お帰り」

 

「あ~……スピアか。やっと帰れたぜ……」

 

「もう日が変わる寸前だしね。父上も寝ちゃったし」

 

俺の頭の側に屈んでツンツンとつついてくるスピア。

ゴロン、と寝返って見ればピンクを基調とした可愛らしい寝巻きに身を包むスピアの姿。たいへんよく似合っていらっしゃる。

角度的にはスカートだったら尚良しだったが。

 

 

「あ、ご主人様、おっかえり~!」

 

「お帰りなさいませ、セイ様」

 

「……ああ、ただいま。そしてチェルシー、その呼び方はやめろ…」

 

もうすでに風呂には入ったようで、それぞれ赤とオレンジを基調とした寝巻きに身を包んだ二人が出迎えに来てくれた。

 

が、チェルシーのやつ、俺が嫌がってるの知っててあの呼び方を使いやがる。

ただ、エアに話を聞くに、仕事は真面目だし、覚えるのも早いらしい。えらく有能だ、とのこと。

 

玉の輿とか考えていたりと、よくわからんやつだが、まぁ悪いやつでもなさそうだ。なさそうなんだが……こう、嫌がらせだけでもやめてくれません?

 

「セイ様、食事とお風呂の用意ができています」

 

「それとも……ア・タ・シ?」

 

「風呂を先に頼む。あとチェルシー、少し黙れ」

 

頭のてっぺんにチョップを入れると、涙目で睨んでくるチェルシーをスルー。そのまま風呂場に向かう。

 

「セイ、一緒に入る?」

 

「アホか」

 

「ねぇ~セイ様? お背中お流ししましょうか?」

 

ぜひ全裸でお願いします(ほんと黙れチェルシー)

 

「……セイ様、それなら私が…」

 

 

「あ、まって、今のなし。今のなしだから!」

 

どうやら、疲れておかしくなっているみたいだ。

 

慌てて風呂場に着いてこようとするエアを押し止めて脱衣所の扉を閉める俺。チェルシーのは冗談ですむが、エア含める三人娘の場合、そういったことはマジでやりかねん。

仕事熱心なのは大歓迎だが、もう少し乙女として体を大事にしてもらいたいものだ。

 

「はぁ……入ろ」

 

「だね、入ろうか」

 

「…………ウェッ!?」

 

バッ! と効果音がつきそうな勢いで振り返ってみれば、そこにはもうすでに三つ目のボタンを外したスピアの姿。あ、意外と着痩せするタイプ……ってぇ!!

 

「違う違う違う! 何でいんの!?」

 

「え? お風呂入るからだよ? セイと」

 

「『え、何言ってんのこの人』みたいな顔やめてくれませんかねぇ!? おかしいから!」

 

「……背中流すよ?」

 

 

水銀スライムを使って放り出した。

 

 

仕事で肉体的に、帰って来てから精神的に疲れるとはこれいかに

 

 

 

 

 

 

 




……あれ? なんかハーレムに近づいてる……?

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