Fateで斬る   作:二修羅和尚

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三十九話

本日から、新たに雇うことになったチェルシーがメイドに加わる事になっている。

 

本来なら、この家の主である俺自らが屋敷の中を案内すべきなのだろうが、緊急の用件でそれが叶わぬため、その役はエア、ルナ、ファルの三人娘に任せることにした。

 

今では立派に仕事をこなせるようになったあの三人に任せればまぁ問題はないだろう。チェルシーの方も年下だからって怒るような奴じゃないのは分かる。

……まぁ、目的が少々邪過ぎるのが問題だが。

 

そういや、新しく雇われた者の掟となりつつある鍛練にチェルシーはついて行けるのだろうか?

 

見た感じ、運動するようなタイプに見えなかったし、どちらかと言えばインドア派だろうが……うむ、心のなかで頑張れとしか言えんな。

 

まぁでも、エアやルナでもできたんだし、大丈夫だろう

 

 

さて、俺の話に戻ろう。

 

そもそも今日は特に用事もない……とか言ったら副隊長がキレるなうん。

警備隊の方で書類の確認作業や作成といった執務に加え、余裕があれば見回りも行う予定だったんだが、急遽伝令兵が俺を呼びに警備隊本部へと訪れた。なんでも、エスデスがイェーガーズ全員に召集をかけたらしく、仕方なく、そう! 仕方なく俺は執務を中断しイェーガーズ本部へと向かったのだ。

 

俺が部屋を出る直前に聞いた『今度、あなたは(精神的に)死ぬ』なんて言葉を俺は知らない聞こえない。

 

 

さてさて、俺の精神的な死を代償にしてまで呼び出したエスデスの理由なのだが……

 

 

「タツミ君が逃げた?」

 

「ああ。ウェイブとの行動中に姿を消したらしくてな。今、セリュー、スタイリッシュ、ランも捜索中だ。お前も加わってくれ」

 

「お前ぶっ殺すぞ?」

 

まさか、そんなしょーもない理由で俺の精神が死ぬと? お前一回副隊長の説教受けてみ? 人の弱いとこえげつない角度で抉ってくるよ?

 

……あ、こいつには効きそうにないな

 

「今ここで死合うのもいいが……後にしろ」

 

「オーライ。後でもやらねぇよ。で? その責任者であるウェイブが今お仕置きされたと?」

 

チラリと部屋の隅へ目をやれば、パンツ一丁でいろいろと事後(性的な意味ではない)のウェイブが気絶して倒れていた。

その隣で木の棒を片手にウェイブをつついているクロメ。

あ、こら。やめてあげなさい

 

「そういうわけじゃない。そいつがタツミを探している途中、ブラートと鉢合わせたらしくてな。情けなく返り討ちにあった、というわけだ。なんとも情けない」

 

「ああ、インクルシオの。けど、相手が相手だろ? ナイトレイドでもアカメと並ぶ戦力だ。生きて帰れただけでも立派なもんだろうに」

 

「それでもだ。賊相手に敗北なんぞ認められん。そいつにも次はないと言い聞かせているさ」

 

ふん、と足を組んで不機嫌そうなエスデス。

と、そこへセリューがとランが戻ってきた。

 

「フェイクマウンテン、及びその周辺をランさんと捜査しましたが、タツミは見当たりませんでした」

 

「地上はコロが、空からは僕が探したんですが……」

 

「構わん。そもそもコロは戦闘用だろ? 気落ちする必要はないさ。ランもな」

 

帰って来た部下を労うように声をかけるエスデス。

こいつの事を観察してて思ったのだが、部下に対してはかなり優しいのだ。

未だに北にいるエスデス直属の部隊ではかなり慕われているという話も聞いたことがあるし、こういった場面を見れば納得もいく。

……まぁ、だからといって根本的には敵であることには変わりないがな。

 

「で? ボルスさんはどうした?」

 

「あいつは今日は非番だ。家族との時間を邪魔するのも悪いだろうからな」

 

「……ま、確かに。んじゃ、俺もこれから捜索に行くわ。スタイリッシュはまだなのか?」

 

「ドクターはまだ探してるみたい。連絡がないからわからないけど……」

 

「あいよ。まぁ見つかるといいな」

 

んじゃ、と言ってイェーガーズ本部を出た俺は、早速人目のつかない路地裏へと身を隠す。

念のため、人払いの魔術をかけ、万全を期した状態で宝具を使う

 

「『妄想幻像(サバーニーヤ)』」

 

そして現れる九体の人影

 

俺以外の全員が骸骨の仮面を着け、黒で統一された服装に身を包んでいる。

 

原作アサシンならば最大で八十体もの人格が個々の体を持って現界するのだが、俺だとこれが最大数。

そもそも、あれはあのアサシン特有のものだったのを無理矢理俺に当て嵌めたため、こうした不完全状態の宝具となっているのだ。

あと二つほど、そういった不完全の宝具となったものがあるのだが、まぁ後々紹介することもあるだろう。

 

「さて、お前ら。分かってるな?」

 

「わーってるわーってる。俺らはお前なんだから、当たり前だろうに」

 

以前にも出てきた口の悪い分体のその言葉に続き、他の分体も頷いた。

仮面で顔は見えないが、見た目はバラバラ。髪が長かったり、短かったり、女だったり男だったりと色々だ。

たぶん、各々の性格も違うのだろう。

 

「んじゃ各自、バラバラに散ってタツミ君の捜索だ。万が一、ナイトレイドに遭遇したら戦わずに逃げるか隠れろ。十分の一のスペックじゃ、負ける確率の方が高い」

 

「あ、あのオリジン。も、もしそれでも逃げられない状態だったら?」

 

少し雰囲気がおどおどした個体が手を挙げて質問してくる。

なんか見てて挙動不審なのだが、大丈夫なのだろうか。

 

「一応、全員に無線機を配っておく。何かあったら本体の俺に連絡入れろ。……もっとも、俺らの気配遮断が無意味な敵ってのが思い付かないが」

 

「ふむ、だがオリジンよ。別に倒してしまっても構わんのだろう?」

 

「バカ、止めなさい。それはフラグよ」

 

「ククク、今宵の我は血に飢えているぞ」

 

「なぁなぁ、それよりこいつを見てくれ」

 

「「「すごく……大きいです」」」

 

 

「……こいつらが俺の人格だと認めたくない」

 

「諦めな、オリジン」

 

「そうよ。人生そんなもんだから」

 

口の悪いのと、女のとに肩を叩かれ慰められた。

いや、あれお前らも同類だからな?

 

 

「まぁいい。それじゃお前ら。捜索開始だ」

 

『了解!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どうも、僕はセイといいます。

あ、勘違いしないでくださいね? これでも、僕は宝具でオリジンから分かれた分体ですので。

 

あのあと、皆すぐに散っていっちゃったから、余った方角に進んで二、三時間くらいは経ってると思うんだけど、なんかうっすらと殺気がするんだよね。この方角

 

 

ど、どうしよう。もう連絡とか入れるべきかな?

 

 

まだ確定はしてないんだけど、なんか雰囲気がヤバそう

 

 

そんなことを考えていると、突如前方から体の芯に響くような轟音が轟いた。

驚きで立ち止まった僕は直ぐ様近くの木に飛び乗ってその方向をみる。

 

 

 

なんか、でっかい人形の何かがいるんだけど

 

 

え、何あれガ◯ダム? ガン◯ムなの? あれですか平和のために武力行使ってやつですか?

 

 

「な、なんでよりにもよって僕の方なんだよぉ……」

 

半分泣きべそをかきながら、それでも前進。

怖いのは怖いが、でも僕もアサシンの一人。び、びびびびってなんかい、いいられないよっ!

 

「そ、そうだ、気配遮断もあるからだ、大丈夫のはずだ」

 

オリジンだってそう言ってたし!

 

 

現場にたどり着き、一応気配遮断も発動して近くの木の上から様子を見る。

 

別にばれることはないのだが、性格的に堂々とできないため、こっそりと生い茂った葉っぱの間から顔を覗かせる。

 

そこにいたのは、インクルシオを身に纏った男? とあのアカメ。そして、見たことがない和服に似たものを纏う大男。

 

誰だろうか。

 

「頭から角って……こ、コスプレなのかな?」

 

ここからだと少しよく見えないため、少しだけ身を乗り出して角を観察する。

手に持つ武器は槍のようで槍じゃないよく分からないもの。あれはなんなのだろうか?

 

 

その見た目と謎という部分に大いに興味を持ってしまった僕は知らず知らずのうちに身を乗り出し過ぎていたらしい。

果たして、それが何を意味するのか。

 

負荷のかかりすぎた木の枝は、次第に重さに耐えられなくなり、少しずつ下へとしなっていく。そして、ついに

 

 

ボキッ、と

 

 

「うわっ!?」

 

アサシンにはあるまじき失態を起こした僕はそのまま下の地面に叩きつけられた。

 

そして僕へと突き刺さる三人の視線

 

「……何者だ、お前」

 

とりあえずオリジン。

 

間抜けなアサシンでこめん。僕、死んだかも

 

 

 


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