Fateで斬る   作:二修羅和尚

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四話

チョウリ様たちの元を離れてから丸3年。

 

「ん〜……やっぱ、暗い顔の人が目立つな……」

 

「? セイ君、どうしたの?」

 

「いや、街の人の顔見てるとどうも……な。いつかは、持ち直してほしいもんだ」

 

隣から俺の顔を覗き込んでくる年上の部下の問いに、俺はそんなことを呟いた。

やっぱり、チョウリ様が言っていたように、帝国はもうかなり腐っていた。それも、ちょっとやそっとじゃどうにもならないくらいに闇は深い。

 

そりゃ、革命軍なんてもんができるわなぁ〜、と今更ながらに思っていたりする。

 

しかも、革命軍の他にも異民族なんかの敵も多い。

 

「大丈夫だよ。そのために、セイ君も色々と動いてるんでしょう?」

 

「まぁそうなんだけども。それと、何度も言ってるが、俺は年下でも副隊長なんだぞ? もうちょっと敬語とか使おうと思わないのか、セリュー」

 

「思わないかなぁ。こう、セイ君って、歳の近い弟! って感じが強いし」

 

「……そうなのか…」

 

セリューのその一言に、俺は思わずため息を吐きそうになった。

このやり取り、俺がセリューと組んでからもう何回やってきたことか……

 

「キュ、キューキュー!」

 

そんな気落ちした俺のズボンの裾を引っ張って鳴き声を出す存在。

 

「そうか、慰めてくれるのか、コロ。お前は味方だよ」

 

キュー! とその小さな体躯の胸をトンッと叩く犬のような姿の生き物。

 

帝具ヘカトンケイル。

セリューの所持する……と言っては二人に失礼か。

セリューの相棒とも言える生物型の帝具で、今は子犬程度の大きさでマスコットみたいに可愛いのだが、いざ戦闘に入ると、決して可愛いとは言えない姿になって戦うのだ。

 

おまけに体の何処かにある核を潰さなければすぐに再生するという厄介な存在。

 

ほんと、味方で良かったと思ってる。

 

「あぁ、お前は(今は)こんなに可愛げがあるのに、お前の主人ときたら……」

 

「キュ」

 

「ちょ、ちょっと!? コロもセイ君も酷いよ!?」

 

「さて、警備の続きをしないとな」

 

「キュッ」

 

「無視なの!?」

 

隣で喚く部下を無視して、俺は警備の続きに入る。

 

帝都に来て1年程してから、俺は帝都警備隊に入ることにした。

というのも、軍だと今の不況では抽選になるらしく、採用されても地方とのこと。

 

いや、地方とかありえないでしょ、と原作絡めなくなるのは流石に勘弁だと軍を辞退した俺は、結局警備隊へと入隊。

平の隊員ではあったが、自作した手甲と、身体能力、そして月霊髄液を使って実力を周りに認めさせ、僅か1年で副隊長にまで上り詰めた。

あとは、近日中に隊長へとのし上がる予定。

 

あと、月霊髄液については、不思議パワーと称して通している。

これで通っちゃう警備隊チョロいわ

 

「コロ、誰か怪しいやつとかいないか?」

 

「キュッキュッ」フルフル

 

「そうか。なら、そのまま警備の続きを頼むぞ」

 

「キュッ」

 

「ねぇ、無視? 無視なの? 最近のセイ君、やつぱりちょっと冷たいよ…」

 

「コロにまで放置されてるセリュー(笑)」

 

「キュッ(笑)」

 

「いい加減にしないと怒るよ!? それと、コロ! あなたは私の味方じゃないの!?」

 

俺の隣で笑っていたコロを抱き上げると、そのままコロの耳を引っ張り始めるセリュー。

コロも突然の反撃に、あたふたしつつ俺に向けて助けを求めるような視線を送ってくる。

 

「……」サッ

 

「キュッ!?」

 

無視しました。

あーあー、帝具が助けを求めてるなんて俺知らないなー

 

盛り上がっている二人を差し置いて、俺はさっさと仕事に戻る。

そんな俺の目に映ったのは、壁に貼られた4枚の手配書。

 

「ナイトレイド?」

 

もうコロとのやりとりは終わったのか、セリューが俺の隣に立っていた。視線の先は、俺と同じ手配書。

 

「あぁ。聞いた話じゃ、つい最近また貴族の人間が殺られたらしい。全く、残念なことだよ」

 

「とか言ってるけど、顔は嬉しそうだよ?」

 

「あ、やっぱわかるか? まぁ、俺としちゃむしろ好都合だからな」

 

「悪は滅! だね」

 

ナイトレイド

今、帝都の人間を震え上がらせている暗殺集団。

 

世間では、帝都の治安を脅かす大罪人なんて呼ばれているが、真相を知っている俺からすればその存在は全く違ったものとなる。

 

調査したところ、殺されているのは腐れ外道のクソ野郎ども。いわゆる、帝都の闇に深く関わっていた連中だ。

そんな帝都の腐った部分を勝手に消してくれるのだ。俺としちゃ、これほど便利な存在はない。

 

まぁ、鉢合わせたら、お仕事なんで捕まえるけどね

 

今現在判明しているメンバーは、アカメ、ブラート、シェーレ、そして、元帝国将軍であったナジェンダ。

他にもメンバーはいるらしいが、顔が判明していない。

 

そして、驚き呆れることに、メンバーのほとんどが帝具持ちだとか。

 

マジで面倒クセェ

 

特にアカメの待つ帝具村雨。

これは一斬必殺の妖刀らしい。

なんと、擦り傷でも負えば、そこから呪毒が入り込み、心臓へ到達。そして死ぬのだとか。

 

……なにそれ怖い

 

一応、対策として全身を鎧で固めればいいと聞いてはいるが。

 

他にもブラートの持つインクルシオという鎧の帝具や、シェーレの持つエクスタスなど、性能などブッ飛んだものもある。

相対したらと思うとぞっとするぜ

 

「まぁ捕まえるんだけども」

 

「流石セイ君副隊長。自信満々だね!」

「当たり前だ。まぁ、その前に俺が隊長になるのが先決だ。セリュー、例の計画はどうなってる?」

 

「問題なしだよ。他の人も上手くやってるし、証拠も集まってきてるから」

 

「よし。なら、準備が出来次第、行動に移る。ナイトレイドの帝都の掃除にならって、俺たち警備隊もお掃除するとしようか」


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