Fateで斬る   作:二修羅和尚

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三十四話

さて、武芸大会がいよいよ本日開催される。

 

やはりと言うべきか、開催場である闘技場には帝都中から多くの人が詰めかけている。

 

今回、俺達警備隊は闘技場まわりの警備の他、大会の選手登録の手続き、客の誘導なども行っている。

尚、俺の他のイェーガーズのメンバーでは、ウェイブは審判、エスデスは大会主催の責任者として観客席。ランはその付き添いだ。

 

セリューは今回は俺と受け持ちのエリアは違うが警備隊を手伝ってくれている。もっとも、イエヤスの番が来たら一度戻るらしいが。

ボルスさんは本部、つまりこの前集まった部屋で何かあったときのために待機。スタイリッシュやクロメも同様だ。

 

……あのクロメって奴、未だにちょっとわかんねぇこと多いんだよなぁ

 

まぁそんなことより、だ。

俺もイエヤスの試合を見に行きたいのは山々なんだが、反対のエリアを受け持っている副隊長に何言われるか分からないので大人しくしておくことにする。

 

「呉服屋のノブナガでこざる。登録を」

 

「あ、はい。ノブナガさんですねー」

 

ちなみに、俺は受付兼警備の二人分やらされてます

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ふ~……緊張するぜ……」

 

武芸大会が開催され、いよいよ本日一回戦最終取り組み。

相手が誰かは分からんが、と一人ソワソワして落ち着かないのはヘアバンドが特徴のdead endするはずだった少年、イエヤス。

 

隊長から直々に本日の非番を言い渡され、この大会に出場することになった。

隊長が自分の代わりに副隊長にこき使われているなんてことは露程も知らないのだが。

 

「剣は大丈夫だし、防具も俺が使いやすいのを選んできた……大丈夫なはず」

 

念入りに確認作業を行うが、それでも緊張は解けきらないらしい。

あー、ダメだダメだとついにはどっかりと地べたに腰を下ろした。

 

「情けねぇ試合はできねぇっつーのに……」

 

あーあ、と天井を仰ぎ見る。

まぁ仕方ないことだろう。なんせ、普段のセイの自宅での訓練では今のところ誰とやっても全敗しているのだ。

大人組ならまぁいい。仕方ないとも諦めはつく。が、ファルのような年下にも負けているのだ。

もしかしたら、自分は弱いんじゃないだろうかと考えてしまう。

 

はたして、年下の女の子にも負けるような自分が世間に通用するのかどうか。自信を持とうにも、イマイチ不安だ。

 

……まぁ、セイの家の者のレベルが、帝都の中でもかなり高いことを知らない訳なんだが

 

「イエヤスさん、出番です」

 

「あ、はい。今行きます」

 

そこへ、試合の順番が回ってきたことが伝えられ、イエヤスはため息を吐きながら立ち上がる。

 

「ふんっ」

 

パシンッ、と部屋に乾いた音が響く。

両手で顔を張ったイエヤスは一度深く息を吸った。

緊張がどうした。とにかく、全力でやればいい

 

「っしゃっ! いっちょやってやらぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ってぇ! タツミ!?」

 

「な、イエヤス!? なんでこんなところに……!」

 

まさかの邂逅だった。

両者ともに姿を見た途端に面白いように固まると、次にはお互いを指差してなんでいるんだ!? と問いかける。

 

タツミの方は、知られてはいないがナイトレイドの一メンバーである。今回は以前ラバックが話していたエスデスという女がどんなやつなのか見に来たというのが一つ。

もう一つはただ単に賞金の金だった。

 

二人の様子に、審判を務めるウェイブは知り合いなのか? という視線を向けたが無視して、審判の仕事を続ける。

 

お互いの職業と名前がコールされる。イエヤスは警備隊。タツミは鍛冶屋だ。

 

「お前鍛冶屋なんかやってんのかよ!?」

 

「お……お、おお!! そ、そうだぜ!?」

 

故郷を同じくする友人のまさかの職に驚きを隠せないでいるイエヤス。当然、観客席にいたサヨも同じだ。

 

「おいタツミ! お前のやらなきゃならねぇことって鍛冶だったのかよ!?」

 

「え!? あ、いやそれは……」

 

ラバックに仮の身分として登録された鍛冶屋。だが、流石のラバックもタツミの同郷の友人が相手になるとは予想していなかったらしい。

イエヤスの指摘に何も言えないタツミ。

 

確かに、帝都で困らないように、と幼い頃からいろんな技術も仕込まれてきたし、その中には鍛冶もあった。

が、それもできないよりはマシな見習い程度のものだ。三人で高めあってきた武には届かない。

 

まして、タツミは自分やサヨなんかよりも剣が達者だった。それも、いつかは軍の将軍になれるほどに。

 

何度その才能を羨ましく思ったか。

追い付こうと努力してもタツミはその先をいく。だが、それを妬ましく思ったことは一度もない。

一人の友人として、嬉しくもあった。

 

そんなタツミが鍛冶?

 

「タツミ。お前が何してても自由だ。けどそれじゃぁ俺が納得しねぇ!」

 

腰の剣を引き抜いて構える。

 

「構えろタツミ! 一発キツいのいれてやらぁ!」

 

「俺だって修行は続けてんだよ!」

 

それに触発されたタツミも剣を抜いた。

故郷を出たときから愛用している一本の長剣。今でも手入れを欠かさず、任務にも使用している得物だ。

 

対するイエヤスは普段の物とは違う、一般の剣を使っている。

 

あの剣の使用はセイのチート剣はアカンの一言で却下された。

チートの意味が分からないが、ダメなのなら仕方ない、と警備隊の物を持ってきたのだ。

 

故郷での手合わせはほぼタツミの勝ちだ。だけど、今回は負けるつもりはない。

 

何せ俺は、警備隊最強の弟子なのだから

 

 

 

 

「え? あれ、もう始める……? そ、それでは、試合開始です!」

 

 

そんな中、話についていけなかったウェイブが慌ただしく試合開始を宣言した。

 

 

 




カルビ? ハハッ、知らないなぁ

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