Fateで斬る   作:二修羅和尚

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三十一話

入室早々、攻撃された件について

 

少しばかり警備隊の方で用事が長引いて遅れてしまったことは謝ろう。

けど、多分これ普通なら防げずに直撃だと思うんだけど?

まぁ、あの女は俺だからという理由で嬉々として実行したのだろうが。

 

まぁ、自慢の礼装である月霊髄液(ヴォーメルン・ハイドラグラム)の高速展開によって難なく防げたのだが。

本当、自動防御は役に立つ。

 

「んじゃ、お前のいったことだ。攻撃しても文句いうなよ?」

 

「ま、まぁまぁセイ君。落ち着いて、ね?」

 

俺が手甲を嵌めた腕を構えようとすると、慌ただしい様子でボルスさんが止めにはいった。

こんな出で立ちの人ではあるが、人一倍優しい人だ。

本人は仕事上、やってることがことなので自身を優しくないなどと卑下しているが、家族思いで思いやりもある。

どこぞのドS将軍とは大違いだ。

 

「セイ君と隊長がまた暴れたら、この部屋壊れちゃうよ……」

 

だからやめてね? とでも言うように、こちらに視線を向けてくるセリューを見て、俺は仕方ないとばかりにため息をはいた。

ちなみに、コロは人形のように大人しくしていた。

 

「……二人に免じて許してやる」

 

「別に私は構わないのだがな」

 

面白くないのか、少々残念そうな様子を見せるエスデス。

一方、上記御三方以外の残りの面子は、俺のことを見ていったい誰だ? とでも言いたげな雰囲気だ。

 

見れば碇のマークが刺繍された服を纏う同い年くらいの男に、黒いセーラー服の未だにお菓子を食べ続けている女の子。

後は、白衣を着た雰囲気オネェの男にイケメン

 

イケメン

 

もう一度いう。イケメンである

 

「……あの、何故僕は睨まれているんでしょうか?」

 

「気にするな」

 

「は、はぁ」

 

頭に羽みたいな飾りをつけた、如何にも文官のような金髪の青年。

べ、別にイケメン羨ましいとか思ってねぇし!

俺も今世はそれなりにいいほうだしっ!

 

……やめよう、こんな不毛な争いは

 

「おい。そこで百面相してないで自己紹介ぐらいしたらどうだ?」

 

「はいはい。てめぇに言われずとも分かってるっての」

 

エスデスに言われたことが何かむかつくが、全くその通りであるため姿勢をただす。

一応、第一印象は良くしようと警備隊式の敬礼ーーまぁ普通のやつだがーーとった。

 

「帝都警備隊所属、警備隊長のセイだ。一応、この部隊は兼任という形で所属することになる。重要な任務以外では警備隊のほうで活動することもあるが、よろしく頼む」

 

「警備隊……隊長!?」

 

自己紹介を終えると、碇マークの服を着た青年が驚きの声をあげた。

まぁ、警備隊とはいえ隊長が来るとは思わないわな。

 

一人気にせずお菓子を頬張っているが、他二名のイケメンとオネェも驚いている

 

が、オネェの方はあぁ、と言った様子で納得の表情を浮かべた。

 

「なるほどねぇ……あなたが噂の警備隊隊長さんなのね。色々と話は聞いてるわよ」

 

「噂、ねぇ。気になるが、俺としてもあんたに聞きたいことがある」

 

「あら、口説くのなら大歓迎よ」

 

誰が口説くか。あと、ウィンクすな

 

「昔、セリューに改造手術を施したのはあんたか? Dr.スタイリッシュ」

 

「名前を知られているなんて光栄だわ。それと、質問の答えはイエスよ」

 

「俺だって警備隊とはいえ隊長だ。帝具使いのマッドサイエンティストの話は少しばかり耳に入ってくる」

 

まぁ、話の出所は副隊長なのだが

 

「それと、マッドサイエンティストとは聞いているが、あんたが名医であることには変わりない。後でセリューの体を見てやってほしい。仕込んだ銃は取り除いたが、まだわからんからな。一応、俺にも医術の心得はあるが専門家が見るのが一番だろう」

 

「あら、あなたも医者なの?」

 

「そこまでじゃない。が、そこらの医者なんかよりは腕はあると自負している」

 

へぇ、と言った様子で俺を見るスタイリッシュは、次には分かったわ、と了解の言葉を返した。

一方、話題となっているセリューはというと、少し涙目で俺を見つめながらゆっくりと首を横に振っていた。

 

まぁ、スタイリッシュが何かやらかさないか俺も見張るつもりだ。付き添ってやるから心配するなって

 

「にしても、さっきのあれは何だったんだ? こう、いきなり壁みたいなもんができてたけど……」

 

「? お前は……」

 

「っと、悪ぃな。俺は帝国海軍からきた海の男! ウェイブってんだ。よろしくな。」

 

「そうか……まあ、よろしく。年も近そうだから仲良くしようぜ。あと、さっきのについては企業秘密だ」

 

おお! といって嬉しそうに握手をしてくるウェイブ。

握った手を上下に振りながら、よかったよかったと呟いていた。

まぁ、大方、エスデスやボルスさんみたいな濃いメンツに疲れたのだろう。

 

「……クロメ。お菓子はあげないから」

 

「お、おう、そうか」

 

続いて自己紹介してくれたのは自己紹介中であるにも関わらずお菓子を食べ続けるセーラー服少女。

ただ、おかしの下りは結構なマジトーンだったので少し焦った。

ふと、アカメに似ている気がするな、と思いながらもよろしくと返しておく。

 

……あんなに食べて大丈夫なのだろうか

 

 

「では、僕の方からも自己紹介を。ランと言います。これからよろしくお願いしますね」

 

「おお。こちらこそ」

 

イケメンはランというらしい。

なんか雰囲気もイケメンだなこいつ。羨ましくなんかないけどね!

 

俺の言葉に、はい、とスマイルなラン。

顔も相まって、こいつにこれされたらほとんどの女が落ちるんじゃね?

エスデスとかには全くの無意味だろうけど

 

「セイ君。改めてよろしくね」

 

「あ、ボルスさん! こちらこそですよ」

 

「まさか同じ部隊になる日が来るとは思ってなかったけどね」

 

本当、その通りである。

 

焼却部隊という、その名の通り物も人も焼き尽くす焼却部隊。

疫病の蔓延した村や危険種の死骸の焼却、そして罪人の死刑といったのが主な活動だ。

 

俺の家や富裕層は別だが、一般的にこの世界、衛生面に対してはそこまで徹底しているわけではない。

そのため、流行りだしたら帝都中、もしくは帝国中に病気が流行ることも考えられる。

そのため、治療が無理だと判断されると焼却部隊が出向いて村ごと焼くなんてのはよくある話だ。

討伐した危険種の焼却もその一貫

 

「また今度ローグちゃんと奥さん連れて家に来て下さい。皆喜びますから」

 

「うん。そうさせてもらうね」

 

マスクで顔はよくわからないが、声からして笑っているのだろう。

 

「では、全員の顔合わせが済んだな。これから陛下と謁見だ。皆、着替えてこい」

 

「いきなり陛下と!?」

 

驚くウェイブを無視して、エスデスは行くぞ、と部屋から出ていった。

それに続くような形で、スタイリッシュ、ラン、クロメ、ボルスさん、ウェイブと続く。

 

「あ、そうだ。セリュー、ちょっと待て」

 

ウェイブに続こうとしていたセリューを引き留めた俺は腰のポーチに吊り下げていたそれを取り外した。

 

「ちょ、投げないでよ! ……手甲?」

 

「おう。長くなったが、この間のナイトレイドの件でのご褒美だ。まぁ約束してたからな」

 

俺の手甲ては違って、丸みを帯びたどこか女性的なイメージの手甲。

だが、侮ることなかれ。見た目ただの手甲のこれは、俺の道具製作スキルの恩恵を多大に受けている。

 

まず当たり前だが、軽量化に加え、硬化の魔術。更には装着すれば身体強化の魔術がかかる優れもの。

スピアの槍のように五感強化はなく、強化の度合いも低くなっているが、その分、疲労度合いも抑えられている。

おまけに仕込み銃を内臓。両腕合わせて弾数は二十発。超至近距離からの発砲が可能。もちろん、反動は手甲が全て吸収するので、本人への衝撃はゼロ。

そして極めつけには俺の結界魔術が回数制限はあるもののちゃんと発動するようになっている。

使用時は掌を突き出せばOK

 

 

と、まぁこんな感じだ。

 

使い方も説明し、んじゃ行くか、と俺も着替えにいこうとしたのだったが……

 

「セイ君っ!」

 

「ん? どうしたぁっ!?」

 

「ありがとうっ! すっごく嬉しいよ!」

 

振り向いたところを思いっきり抱きつかれた。

一瞬驚いてい突き放しそうになったが、流石にこんな笑顔で喜ぶやつに対してそんなことはできなかった。

 

「ふっふふ~ん♪ セイ君と一緒、セイ君と一緒っ♪」

 

「喜びすぎだろうに……まぁ、用意したかいはあったよ」

 

子犬のようにはしゃぐセリューをほら、とやんわりと離す。

が、それでもセリューの喜びようは収まらず、満面の笑みで早く行こっ! と部屋を出ていった。

 

「……はぁ、本当にあれで年上なのかねぇ……」

 

「キュ、キュ~?」

 

取り残されていったのか、背後からコロの鳴き声が聞こえた。

見れば、その顔は俺でも分かるほどにやけている。

 

「キュキュ?」

 

「……うっせ」

 

その顔のまま下から俺の顔を覗き見るコロを無視して、俺は急ぎ足で部屋を出る。

 

多分、赤くなっているであろう顔を誰にも見られないように


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