Fateで斬る   作:二修羅和尚

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先日、ランキングで十三位になっていました。
これも読者の皆さんのおかげです。
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三十話

「して、何かいいわけはあるか? セイ」

 

「いや、あの、チョ、チョウリ様? 何故帰って早々に俺は正座させられてるんでしょうか?」

 

「ほう、分からない、とでもほざくつもりか?」

 

何か、チョウリ様が凄く怖いです。

試合が終わり、帰って来た俺を待っていたのは、和室で正座の状態で笑っているチョウリ様。

いや、理由は分かってるんだよ? 自分でもちょ~っとやり過ぎたかな~とは思ってたし。

ただ、そこまで怒ることではないかな~って思ってるだけで。

 

「全く、お陰で私がどれだけ苦労したことか……」

 

チョウリ様はお疲れなのか、長いため息を吐いて俺を恨めしそうな目で見ていた。

聞けば、俺の魔術や宝具について色々と聞かれたらしく、それをよく分からないなどと言ってうやむやにしていたようだ。

 

本当にすいません。御迷惑おかけします

 

「おまけに試合前には娘たちが警備隊に捕まっておるし……お主らは私をこれ以上に禿げさせるか気か?」

 

「いや、それ以上禿げることはないでしょ? つるっつるですし」

 

「あ゛あ?」

 

「あ、いえ、。何も言ってないですはい」

 

いつものチョウリ様からは考えられない声でガン飛ばされた。

本当、この話題のときだけはヤバイよなこの人

 

手元に刀でもあったら迷わず抜いてそうなチョウリ様をなんとかなだめて話題を戻す。

 

「……はぁ、もういい。今日は疲れた。先に寝かせてもらうぞ」

 

「はい。御迷惑をおかけします」

 

「全くもってその通りだ。もう少し老人を労ってほいな」

 

ただ、と部屋を出ていく直前にチョウリ様が呟いた。

 

「此度の戦い、実に見事だった。とんでもない奴だとは分かっていたが……更に強くなったな、セイよ」

 

「っ……ありがとうございます」

 

うむ、とこちらを振り返って頷いたチョウリ様は、そのまま部屋を出ていった。

部屋に残された俺は頭を下げた状態から、一気にゴロンと寝転がった。

 

今日の試合、最後はブドー大将軍に止められて終わったが、最後まで続けていたらどうなっていたのだろうか。

まだ使用していなかった宝具もあったが、今回の試合は勝てると思って挑んだ試合。

正直、物干し竿で決まると思っていた。

 

が、結果、俺は槍まで使って引き分け。

英霊スペックを宿していようが、あの女に圧倒的なまでに勝つことは出来なかったわけだ。

 

「帝国最強……侮れんなこりゃ」

 

いつのまにか自身の力を過信していたのだろう。

気を付けないと、足元を掬われるかもだ

 

「……」

 

フウッ、と息を吐きながら体を起こす。

とりあえず、だ。あのエスデスが率いる帝具使いのみの部隊があと数日で結成されるって話だ。

メンバーも集まって顔合わせをするようで、当然そこには俺も行くことになる。

兼任ではあるが、メンバーなのは事実だしな。

 

ただ、それまでにしておかなければならないことがある。

 

「さて、工房にでも行くか。時間はフルで使わんとな」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「隊長、まだ何かあるんですか?」

 

宮殿内のとある一室。

そこには本日集められたエスデス率いる特殊警察のメンバーが集められていた。

 

「あぁ。あと一人、来ることになっている」

 

そのうちの一人であるウェイブの質問に、エスデスは入り口に目をやりながら答えた。

 

まだ誰か来るのか? と疑問を浮かべたウェイブは、次には普通のやつが来てほしいと考えていた。

入室早々、まるで拷問官のような出で立ちの大男と対面し、自身に続けて入ってきたのは変な娘。

更に入ってきた警備隊所属と名乗った女の子と金髪の美青年はまぁいい。

問題は最後。変な仮面つけた変態どもにレッドカーペットをひかせて、その上を歩くそこのオネェ!

何か、俺のこと気に入っちゃってるんですけどぉ!

極めつけには隊長になる女もいきなり襲撃かけてくる変な女だった。

 

普通の奴なら変なやつと人数的には一対一のイーブンなんだが……

 

「帝具使いが八人……凄い戦力ですね……」

 

「まぁな。だが、今から来る奴は帝具なしでもお前たちには勝てるだろうがな」

 

「「「「「!?」」」」」

 

その一言にセリュー以外の五人が驚愕の表情を浮かべた。

どんな帝具であれ、個人に多大な力をもたらす兵器である。

それをなしで、帝具使いに勝てる人材。驚くなという方が無理である。

 

「♪」

 

そして、残った一人はそんな周りの様子を見てどこか得意気な様子だ。

 

「あら? その様子だと、あなたは知ってるみたいね? セリュー」

 

「ま、まぁ私の知り合い、ていうか上司ですし……」

 

あらそう、とセリューを見つめるスタイリッシュは少しばかり戸惑いを見せるセリューを微笑ましい様子で見ていた。

一方、セリューはセリューで、この昔の知り合いを苦手としていた。

関係としては人体改造した者とされた者。

あのときの自分がどうかしていたとはいえ、自身を強くしてくれたことには代わりない。

変わりはないのだが、そんな自分とは決別した今では負い目もあって自分から話しかけようとはしなかった。

そのため、突然話しかけられたことに驚いていたのだ。

 

Dr.スタイリッシュ

帝具パーフェクターの使い手で、発明家でもあり医者でもある頭のネジが外れたマッドサイエンティスト。

そんな彼のその笑みには違う意味も含まれていた。

 

 

折角の実験材料だったのにね……

 

 

あのまま強さを求めるならば、自身が開発した帝具にも劣らない装備を取り付けようと考えていたのだが、それがパーになった。

別の(もの)につけてみようかしら、と密かに頭のなかで計画を練る。

 

 

「あぁ、セリューちゃんの……なら、納得かな」

 

「はい。ボルスさんの予想通りの人ですよ」

 

普段からある一人を通して親交のあった二人。ボルスの頭のなかにそのある一人が浮かび、なるほど、と頷いた。

 

その時、部屋の入り口からコンコンコン、と三度ノックする音が響いた。

来たな、とエスデスが嬉しそうに呟くと彼女は何の躊躇いもなく氷槍を一つ生成、扉が開くともに射出する。

 

「すまない。少し遅れ……っ」

 

セイの入室と同時に着弾するタイミングで放たれたそれは一瞬セイを驚かせることはできた。

 

が、できたのはそこまで。

一瞬で形成された銀色の壁に阻まれ敢えなく砕け散る。

銃弾でさえ防ぐ礼装が突破されることはない。

 

「粋な歓迎してくれるじゃねぇかよ」

 

「この間貴様がやったことだ」

 

試合以来の邂逅となった

 

 

 

 

 

 

 


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