Fateで斬る   作:二修羅和尚

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二十四話

それからの話をしよう

 

 

海魔の群れによる物量作戦によって、ほぼ肉片となってしまったリヴァ。

 

少々やり過ぎたかなとは思うが、やったことに関しては間違っていない。相手も覚悟のうえだったのだから。

 

ただまぁ、斬っても斬っても再生する海魔を目にしたリヴァの目にはもう希望どころか、その意思さえも簡単に砕け散っていたようだが。

 

流石対軍宝具だな

 

 

襲撃者ではあったが、死体をそのままというのは気分が悪かったので供養はしておいた。

 

道の脇に肉片を寄せて魔術で燃やしただけだけど。

 

あとは、先程村の方まで避難させたチョウリ様たちを呼びに戻り、事の次第を説明。

現場まで案内し、帝具を回収。改めて帝都へ出発することになった。

 

「セ、セイ? その斧、持てるの?」

 

「何とかな。しっかし、よくこんな重いの使ってたなあの大男」

 

「だが、君も使えるんだろ?」

 

「はい、使えますね。必要ありませんけど」

 

回収した帝具の一つ、ベルヴァーグ。

こいつが問題だった。

 

兵士の人数人ばかりで漸く持てるというお前何キロあんのよと聞きたくなる程だった。

 

馬車にのせようとして、危うく車輪が壊れる所だったんだぜ?

 

幸い、俺のスペックなら余裕で持てると分かったため運べてはいるのだが、代わりに俺が馬車から降りて並んで歩くことになった。

 

「でも、これが帝具ねぇ…」

 

「何だ? 興味あるのか?」

 

「まぁね。千年も前に造られた超兵器なんでしょ? そんなすごいものなら特に。槍の帝具とかあれば使いたいんだけど」

 

指輪の帝具、ブラックマリンを眺めながらそんなことをいうスピア。

槍の帝具ってのは聞いたことがないな。

 

「皇拳寺の槍術で免許皆伝のやつが槍の帝具……恐ろしいことになりそうだ」

 

「セイの槍を貰ってもいいのよ?」

 

「馬鹿を言うな馬鹿を。破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)は俺のだ。やらねぇよ」

 

場所の窓枠に顔を乗っけてながら、ケチ、と言ってむくれるスピア。

 

ケチじゃねぇよと返して、ベルヴァーグを詰めたバッグを背負い直す。

 

チョウリ様のもとで世話になってたとき、よくその件で絡まれたものだ。

狩りなんかで、危険種の甲殻なんぞまるで関係ないとばかりに切り裂く赤槍はスピアの目には御高く止まったらしい。

 

あまりにもしつこいので、俺に勝ったら使わせてやると言ったら、その日から手合わせ三昧。

全勝したけど

 

「これスピア。あまり無茶は言うな。あまりしつこいと男に嫌われるぞ? ただでさえその手の話がないのだ。気を付けなさい」

 

「なっ!? ち、父上! 今その話をしますか!?」

 

馬車の中で別の話が始まった。

俺は外にいるからよく聞こえないのだが、窓越しにスピアを見てみれば何故か俯いてブツブツ言ってた。

 

「……早く帝都に着かねぇかな…」

 

道のりはまだすこしばかり長い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は? すまんセリュー。もう一回言ってくれないか?」

 

数日後。予定通りに帝都へ到着した俺達。

チョウリ様とスピア他兵士の皆さんはすぐに宮殿に赴いて陛下へ挨拶しに行くといってそのまま行ってしまった。

 

約一週間ぶりの帝都であったが、心なしか懐かしく感じてしまった。

着いて直ぐにエアたちに連絡をいれ、チョウリ様たちを歓迎する準備を整えておくように指示を出したあと、足取りそのままに俺は警備隊本部へと向かう。

 

その途中、そう言えばシェーレの件があったなと今更ながらに思いだし、ちょうど本部にいたセリューにどうなったのかを聞いたのだが……

 

「えっとね、その……逃げられた……って言ってたよ?」

 

「……嘘だろおい……」

 

何と死刑寸前に他のナイトレイドの奴等が救出しに来たらしい。

何とも仲間思いなことだ。

 

「セリュー。この件に、警備隊は絡んでないか?」

 

「ひ、酷いよセイ君! 私達警備隊がナイトレイドに加担なんてするはずないよ!」

 

「すまん。言い方が悪かった。この件、俺達警備隊が責任を問われるようなことはないな?」

 

そう言うと、何だそう言うことか~、と安心したようにため息をついたセリュー。

 

「それは大丈夫だと思うよ。シェーレの引き渡しはちゃんとしたし、刑に関しては軍の方が全部取り仕切ってたから」

 

「ならいいんだ。折角チョウリ様が来たのに、ここで責任問題なんてことたなったら笑えないからな」

 

ただ、折角捕まえたのにとは思う。

帝具はこちらが回収しているため、今まで程シェーレが脅威になるとは思えない。

が、革命軍とナイトレイドが繋がっているなら、革命軍が所持している帝具がシェーレに渡るかもしれない。

そう簡単なことではないのは分かっているんだが、ないとは言い切れない。

本当に、面倒臭い

 

「はぁ、まあいい。そんなことよりだ。今日はうちでチョウリ様達の歓迎会をするつもりなんだが、セリューも来るか? 大臣と知り合いってのは色々と便利だし、俺の知り合いのお前と同い年くらいの女子もいるからさ」

 

「……セイ君、今、何て言った?」

 

「は? だから、歓迎会に来ないかって……」

 

「そのあと!」

 

「大臣と知り合いに……」

 

「そのあと!」

 

「お、お前と同い年くらいの女子もいるから……」

 

「セイ君、絶対いくからね」

 

「ア、ハイ」

 

なんかセリューが怖い。何故だ、俺が何かしたのだろうか…

 

目の前で時間がどうの出会いがどうのとブツブツ言ってるセリュー。数日前のスピアみたいだ。

 

「ま、まぁそう言うことだから、夜になったらうちに来てくれ」

 

「ウン、ゼッタイイクカラネ」

 

ウフフフ、と不気味に笑うセリューの周りに黒いオーラが見えたのは俺だけなのだろうか。

そこで、セリューの隣でブルブルしてるコロを見て思った。

 

すまん、コロ。存在忘れてたわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか……リヴァたちは死んだのか…」

 

「そのようですな。今日帝都に着いたチョウリ大臣から帝具が三つ。賊から回収したと聞いていますが、三獣士のもので間違いないでしょう」

 

あむ、と手に持ったピザにかぶり付く男、オネストはそう淡々と告げる

 

「私としては一番邪魔だった人だったんですがねぇ」

 

「そのチョウリという者の護衛はそこまで優秀だったのか?」

 

「そう言うわけではないらしいですぞ? 話によると、襲撃を受ける前に護衛に着いた知人がやったそうで」

 

「何? 一人か?」

 

「ええ。それも帝具使い。全く、チョウリ大臣は運が良かったものですな」

 

やれやれと肩を竦めると、またピザにかぶり付く。

そんなオネストを尻目に、その話し相手であった女、エスデス将軍はそうか、と一言呟いた。

 

「それが誰なのかは分かるか?」

 

「もちろん。なんでも、帝都警備隊の隊長が有休をとって護衛したそうです。エスデス将軍の部下である三獣士を倒せる者が何故警備隊なのかは理解出来ませんがね」

 

「……ほぉ」

 

オネストのその言葉に、エスデス将軍は笑みを浮かべた。

 

「言っておきますが、エスデス将軍の言った帝具使いの治安維持部隊。あれに引き抜くには少々地位が高い。簡単には動かせませんぞ?」

 

「だろうな。だが、その力をみすみす逃すのはあまりにも惜しい…。力ずくでも欲しくなる」

 

「らしい言葉ですな。にしても、三獣士の件について思うことはないので?」

 

「あいつらは弱いから負けた。それだけだ。弱いのが悪い。……そうだな」

 

ちょうどピザを一枚食べ終えたオネストが次の一枚を手に取ろうとしたところで、エスデス将軍は何か面白いことを思い付いたのか僅かに微笑んだ。

 

「大臣、名案がある。上手くいけばその隊長も引き抜けるかもしれないぞ? それに、民の余興にもなる」

 

そして何より、私が楽しめる

 

エスデス将軍は窓の外を眺めながらそんなことを呟いた。

 

 

 

 

 

 


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