Fateで斬る   作:二修羅和尚

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チョウリ様とスピアご久しぶりの登場です!


二十二話

「お久し振りです! チョウリ様!」

 

「おお! セイか。久しぶりだな」

 

 

帝都を出て二日目の朝。手紙で伝えられていたチョウリ様が滞在している村に到着した。

村の人に宿を聞き、訪ねてみたところ、真っ先にチョウリ様が出迎えてくれたのだ。

 

俺がチョウリ様の元を去って実に二年。病気になることもなくチョウリ様は相変わらず元気だった。

ついでに、頭の方も変わらず神々しかった。

 

「失礼なことを考えてないか?」

 

「いえいえ。そんな、滅相もない」

 

俺の視線に気づいたのだろう。ジロッとした目で睨まれた。

 

「ところで、チョウリ様。スピアはどうしたんですか?」

 

「うむ。スピアなら早朝に幾人かの兵を連れて狩りに行っとるわい。時間的にはもう帰ってくると思うがな?」

 

どうやら、鍛練を兼ねた食料調達らしい。

帝都以外の村なんかは、税が重いため基本貧しい暮らしなのだ。

そのため、チョウリ様達は立ち寄った村で滞在させてもらう代わりに、その間の狩りでとった肉などの食料を提供しているのだとか。

 

飢える民を放っておけないチョウリ様らしいやり方だ。

スピアなんかは嬉々として狩りに出ているんだろうな。笑顔で槍を振り回す様子が目に浮かぶ。

 

「まぁ、立ち話も疲れる。セイの馬車は兵のものに任せて着いて参れ」

 

「あ、それはどうも。ありがとうございます」

 

俺は御者なの従者に兵の指示に従うようにと言ってチョウリ様に着いていく。

途中、昔手合わせをした兵士さんもいて、久しぶり! と背中をバシバシ叩かれた。

まぁ悪い気はしなかったので、五割増しで返しといたけど。

 

チョウリ様に通された部屋は元大臣としてはどうなんだ? と思う程質素な部屋だった。それほど広いわけでもない。

が、そういうところがチョウリ様らしかったので何となく安心を覚えた。

 

「こんなときに贅沢なんぞ出来んからな」

 

「あら? 考えてること分かっちゃいました?」

 

「これでも元大臣。当たり前だ」

 

「で、今度から政界復帰ですもんね」

 

お互いに向き合うように座ると、準備していたのかお付きの人がお茶を運んできた。

 

「それにしても、随分と出世したものだ。今は帝都警備隊の副隊長だったか?」

 

一口お茶に口をつけたところで、そうチョウリ様が切り出した。

 

「いえ、あれから色々ありまして。今は隊長をやらしていただいてます」

 

「ほぉ、なんと。更に上にいったか」

 

少しばかり驚いたような顔をするチョウリ様。

でも多分この人、それくらいは予想してたと思うんだよね。

 

「ええ、まぁ。それから、帝具を一つ、俺が使うようにとも」

 

「重ねて帝具使いにもなったか……確か、君は魔術?とやらもあっただろうに。些か過剰なように思えるな」

 

 

「帝具とはいっても、攻撃的な能力のものでは有りませんよ? まぁ、俺の戦いかたには持ってこいの物ですが」

 

そういって腰のポーチからスペクテッドを取り出してその能力を説明する。

 

なるほど、と話を聞き終えたチョウリ様は頷いた。

 

「しかし、セイよ。来てくれたことに礼を言おう。隊長ならそう簡単には抜けられなかっただろう?」

 

「ちゃんとこの日のために有休残してたんで大丈夫ですよ。それに約束ですから」

 

「うむ、助かる。ここに来るまでにもう何度も賊の襲撃にあっていてな。幸いスピアや兵の者でなんとかなっているが、何時どんな手練れが来るか分からん。君ほどの実力者かいるなら心強い」

 

「いやぁ、チョウリ様の私兵の皆さんもかなりの手練れなんですが……。まぁ、戦力は多いに越したことはないですしね。ところで…」

 

「セイが来てるって!?」

 

スピアはまだなんですかね? と聞こうとした矢先にガッ! と扉が開かれた。

金髪ロングに濃いピンクの衣装に身を包んだ美少女。

 

「スピアか?」

 

「セイ、久しぶり! 早速だけど手合わせして!」

 

あ、このノリはスピアだわ。

二年前に比べて、雰囲気が大人っぽくなってたから一瞬惚けたけど、目の前で槍を構えて早く早くと催促する生物は間違いなくスピアだ。

 

「これ。少しは落ち着かんか」

 

「あ、父上。いたんですね」

 

「…………」

 

割りとマジなトーンで言われた言葉がチョウリ様の心に突き刺さる。

 

「…ふ、こうやって娘は離れていくのだな…」

 

「ちょ、チョウリ様!? 魂! 魂抜けかけてますって!? スピア何とかしろ!」

 

「え、わ、私のせいなの!?」

 

むしろそれ以外に何があるんだ

 

「え、えっと…ち、父上。気づかなくて申し訳ありません!」

 

「…………グフゥッ!?」

 

「チョウリ様ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!? 」

 

真っ白に燃え尽きていくチョウリ様。チョウリ様を現実に引き戻そうとその体を激しく揺する俺。そして、状況に着いていけずにあたふたするスピア。

 

人はこんな状態をカオスと呼ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、もうちょっとチョウリ様の親バカぶりを考えてあげろよ」

 

「そんなことよりセイ。帝都についたら手合わせしてね」

 

「おいこら。親のことをそんなこととか言うんじゃありません」

 

「……せめて本人が居ないところで言ってほしいのだが…」

 

そんなこんなで翌日。

手合わせしろとうるさいスピアは帝都に帰ってからうちの道場で相手をしてやると約束をして黙らせ、今はその道中だ。

俺はチョウリ様の馬車に同乗させてもらい、うちの馬車はその後ろを着いてきている。

兵の皆さんは馬車を守るようにして歩いているため、速度はないが、あと数日もすれば帝都に入れるだろう。

 

「チョウリ様。帝都についたら、やはり先ずは皇帝陛下への挨拶でしょうか?」

 

「む? そうだな。長旅で疲れている体であの大臣に会うのは辛いが、仕方ないだろう」

 

「でしたらそのあとは是非我が家に滞在してください。うちの従者達も含めて、歓迎させていただきます」

 

「私、セイがそんなお金持ちになってって全然信じられないんたけど?」

 

疑いの眼差しを向けるスピアの問い軽くスルーする。

まぁ二年でそんな話は信じられないだろうけど、実際見ればわかる。

黄金律Bは伊達ではない。

 

「ふ、そんなことを言ってると、後で腰抜かすぜ? それに……あれ?」

 

そこでうちの三人娘とかの話をしようと思ったのだが、何故か馬車が停車した。

 

何があったんだ?と聞こうとスピアに視線を向けたのだが、その本人は槍を手に、今にも馬車を飛び出そうとしているところだった。

 

「また賊か……。治安の乱れにも程があるぞ」

 

「総員、武器を構えろ! 今までのように蹴散らすぞ!」

 

勇ましく声を出して飛び出していったスピアから視線をはずし、俺は背後にあった窓から馬車の前方を見る。

 

すると、その視線の先、馬車からすこし離れた場所に佇む三つの影。

 

「賊……なのか?」

 

慌ててスペクテッドをセットし、『遠視』の能力でその賊を見た。

金髪の大男に、灰色の長髪を後ろで一くくりにしている男性。そしてもう一人は……金髪の少年?

 

賊にしては違和感が有りすぎる。

そして、スペクテッドを通して感じたあの感じ。

 

何となくだが、あの時のシェーレに似たものを感じた。

 

「あれは……確実にヤバい!! チョウリ様! 少し出ます!」

 

チョウリ様の返答を聞かずに馬車を飛び出した俺は、今にも突撃をかましそうなスピア達を英霊の身体スペックで追い越し、叫んだ。

 

「全員止まれ!!」

 

「ちょ!? セイ、どうしたの? てか、早い!」

 

先陣を切っていたスピアか俺とぶつかる前に止まってくれた。

ありがとう、そのまま行ってたら槍が刺さってたよ

 

「スピア、兵の人たち連れて下がれ。あれは……お前らじゃ敵わない」

 

何時戦闘に入ってもいいように、手甲と礼装の準備を整える。

 

どういうこと? と俺に疑問を投げ掛けるスピアであったが、俺が何かを言う前に大男が嬉しそうに笑いながら一歩前に出た。

 

「お! 何かたっぷり経験値持ってそうな奴が出てきやがったぜ」

 

巨大な斧を肩に担ぐ大男。

問題はその斧だ。

 

あれは、シェーレの持っていたのと同じ気配を感じる

 

 

「チッ、帝具使いの賊なんて、聞いたことねぇぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




チョウリ様ってこんな感じでやよかったんでしょうかね?

それと、三獣士との決戦は次話になります

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