Fateで斬る   作:二修羅和尚

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二十一話

上からの通達により、シェーレの処刑が二日後に決まった。

 

帝都の広場で公開処刑、とのことだ。

 

この話をシェーレに伝えたが、返ってきたのは『そうですか』の一言のみ。

答えは以前から変わっていないようだった

 

「はぁ……止めだ止めだ」

 

ガシガシと頭をかいて席をたち、近くの窓を開ける。

少し暑苦しくなっていた本部の事務所に心地のよい風が吹き込んできた。

 

決まったことをいちいち言ってても仕方がない。

あの人たちとは敵同士だった。それだけのことだ。

 

一頻り帝都の街並みを眺め終えた俺は、事務所に設置されていたソファに身を落とす。

 

「それに、いくら悩んでもその時には帝都の外だしな…」

 

チラリ、と俺が視線を移した先にあったのは一通の封筒。

 

チョウリ様からのものだ。

 

何でも、今は帝都近くの村に滞在しているらしく、もう数日もすれば到着するとのこと。

スピアや兵士の皆さんも一緒に来ているらしい。

 

俺はその迎えに明日には帝都を出発する予定なのだ。

 

「今日中にうちの奴等にも用意させとかないとだな…」

 

帝都についたら、先ずは皇帝陛下に挨拶だとは思うが、その後は俺の屋敷に泊まってもらおうと思っている。

ふふふ、オモテナシの精神ってもんを見せてあげましょう!

 

初日は豪勢にお祝いするとして、あとはスピアが来て早々に手合わせして!とか言い出しそうだ

 

 

先程とは変わって、少し楽しみになってきた。

やはり、人間ポジティブじゃなきゃ元気でねぇわな

 

「セイ君、いる?」

 

「ん? セリューか。どうした?」

 

色々と考えているとセリューが本部に入ってきた。

あの日から数日は大事をとって休ませたが、今ではすっかり元気になっている。

まぁつまりは、元の猪娘に戻ったって訳なんだが

 

「私、今から見回りのなんだけど、セイ君もどう?」

 

「イエヤスとサヨは?」

 

「二人は今日非番だよ。それで、久しぶりにどう?」

 

「そうか……分かった。準備したら行く」

 

そう言うと、分かった! と元気よく部屋を出ていくセリュー。

元気なのはいいんだが、些か元気過ぎる気もする。何かしないか心配だ。

 

机の脇に置いてあった手甲を手に取り、大瓶を吊るしてポーチを装備。

スペクテッドは……ま、ポーチのなかでいいな。

 

帝具を使うような事態が真っ昼間から起こるとは思えないし、使わなきゃならん手練れが出てくるのは基本夜だ。

まぁ大体は魔術で対処可能だしな。

 

それに、セリューから見た目が悪趣味と文句を言われている。

自分としてはなかなかに気に入っているのだが……俺のセンスが可笑しいのだろうか?

 

 

「おし、行くか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえばセイ君。あの話聞いた?」

 

「あの話?」

 

「ほら、なんか北の異民族を将軍がどうたらって話」

 

「あぁ、それな」

 

帝都の街を見回りをかねて歩いていると、セリューがそんな話を始めた。

 

俺でもその話は知っている。というか、この話は帝都でも話題だ。

 

なんでも、エスデスとかいう最年少の将軍が北の異民族を一年かからずに制圧したらしい。

 

北の異民族は、ヌマ・セイカとかいう槍を持てば常勝無敗の勇者(笑)がまとめ上げ、天才的な軍略で帝国に侵攻していたのだ。

 

で、その将軍が壊滅させた、と

 

噂ではドSらしいが、訳がわからん。なんだ、ドSって。

ブドー大将軍と並ぶ英傑と言われている奴がドS。果たしてこの国は大丈夫なのだろうか?

……いや、オネスト大臣がいる時点でアウトなのか

 

「その将軍がもうすぐ帰ってくるらしいよ?」

 

「マジか。一回見てみたいな」

 

関わりたくはないけど

 

「……その人、噂じゃ美人らしいよ」

 

「女なのか。そりゃますます見てみたいな」

 

リアル女王様とか最早見世物だろそれ

 

「むぅ~~~~」

 

鞭でも使うのだろうか、と考えていると、隣にいたセリューが何故かむくれていた。

俺が何かしたのだろうか、と足元のコロを見てみると、駄目だこりゃとばかりに呆れたように肩をすくめていた。

 

「ほい」

 

「ムブッ!? 何するのよセイ君!!」

 

「いや、何となくって危ねぇ!?」

 

目の前で膨らまされてたらつい押したくなるよね

 

割りと本気で顔面に放たれた右ストレートを回避して、何とか仕事終わりにクレープを買うと約束したことでセリューを宥めたのだが…

 

 

 

知ってっか? 女の子のお腹は、甘いもの限定で無限大らしい。

俺も初めて知ったぜぇ…

うちの経済状況的には問題ないが、財布に入ってた金のほとんどが消えたときには驚いた。

 

 

 

 

 

翌日

 

 

俺は警備隊で有休を取り、色々と準備を整えて現在はうちの門の前だ。

 

一応数日分の食料を積んではいるが、それも最小限に留めている。

というか、魔術礼装とかあるからそっちに容量を取られるのだ。

まぁ、早くに着けば分けてもらえるから気にしてないが。

 

「セイさん。それでは、いってらっしゃいませ」

 

「「「「いってらっしゃいませ」」」」

 

俺が出発するする前にエアやルナ、ファル等俺に仕えてくれている人達が総出で見送りに来てくれた。

 

「んじゃ、行ってくる。一週間もすれば帰ってこれるから、それまではうちのことを頼むぞ? それと、チョウリ様達の出迎えもな」

 

「分かってるって。任せといてくれよ」

 

「ちょっと、ファルちゃん。いいかた考えて」

 

「エア。多分気にしすぎ。セイさん、あまり気にしてない」

 

メイド服な三人のやり取りがどこか微笑ましい。

 

今回は俺一人と御者を務めてくれる従者一人の計二人であるため、其ほど大きな馬車は使わない。

 

ちなみに、馬も馬車も自前だ。敷地内に十数頭の馬を飼っていたりする。

二頭立ての馬車ではあるが、俺が色々と魔改造していて、そこらの馬車より性能はダンチだ。

 

御者に出してくれるように合図を出すと、馬車はゆっくりと進み始める。

 

うちの屋敷とか見たらスピアとか驚くだろうなぁ、と少しばかりそのときのことを想像してにやっとする。

 

 

そうそう、シェーレについてだが、これは本部の牢屋から広場までは警備隊が受け持ち、そこからは上に任せることになっている。

俺らは引き渡しまでだ。

 

部下には引き渡しまで乱暴に扱わないよう言いつけてあるから大丈夫だろう。

 

「んじゃ、やることないし寝るか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




キャラの口調とかについてはご容赦を。ファルとかルナがどんなんだったか思い出せなかった…

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