「偶々でも、見回りのコースは変えてみるものだね、コロ」
「キュウ」
「くっ、なんでこんなところに警備隊がいるのよ……!!」
「しかも、気配が有りませんでした……」
とある夜中。人通りのない街の広場で対峙する三人と一匹。
ツインテールの少女と長髪の女性がすこしばかりの動揺を見せる中、相対したポニーテールの警備隊員、セリューは己の相棒であるコロを抱いて真っ直ぐ二人に指を突きつけた。
「手配書の似顔絵と顔が一致したため、ナイトレイドのシェーレと断定。もう一人も手持ちの帝具より仲間と判断」
キッ、とした視線で二人ーーまいんとシェーレから目を離さないセリュー
「見つかったなら、連れていくか殺すか何だけど……」
「連れていく、という選択肢は選べそうにないですね……」
そんなセリューの様子を見た二人は何時でも戦闘に入れるように己の帝具を構える。
殺意をもってぶつかれば、どちらかが死ぬ。
両者相討ちはあっても、生存はあり得ない。
それが帝具の法則とされている。
「昔の私なら、あなた達を見ただけで敵と判断して殺しにかかってた……」
そんな中でセリューは一人、昔のことを思いだす。
パパが賊によって殺され、正義という言葉に盲目的になり、悪の殲滅に全てを捧げていた自分。
当時の自分を今顧みてみると、どれだけ狂っていたのかがよくわかる。
おまけに、信じていた、味方だと思っていた師匠が相手が悪事を働いていたのだ。
昔の自分が愚かだったとしか思えない。
そんな自分を、当時まだ新入りだった年下の隊員が変えてくれた。
確か最初の一言は『バカじゃねぇの?』だったかな?当時は怒ってコロをけしかけた程だ。
本当、どうかしてたんだと思う。
……コロ相手に余裕だったのもどうかしてると思ったけど。
とにかく、だ。
はっきりとわかる。これは本当の意味での過去の自分との決別だ。
一歩間違えれば、セイ君がいなかったらあり得ていた、愚かだった自分の行動。
それは同じかもしれない。多分、昔の私でも躊躇いなくしかけていたはず。
でも、その中身、心構えは違う。もう、そこには過去の自分はいない。
「ナイトレイド、あなた達のやっていることは殺人であるとはいえ、立派な正義だと私は思ってる。事実、その行いで多くの市民が助かってることも私は知っている」
「へぇ……じゃぁ何? 私たちの仲間にでもなる?」
「それはない」
マインの誘いをバッサリと切ったセリュー。
その言葉にははっきりとした意思が感じられる。
「あなたたちがそうするだけの目的と意思があるのは分かってるし、咎めるつもりは元々ない」
「なら……」
「でも」
何かを言おうとしたシェーレの言葉を遮ってセリューは続ける。
「それはあくまでも私個人の事。警備隊の一員として相対したなら、あなた達の敵だ。ならーー」
腕に抱いていたコロが地面に降り立ち、堂々とした様子で二人の前に立ちはだかる
「
深夜の月の下、三人の帝具使いの戦闘が始まった。
「はぁ? セリューが?」
『は、はい。定期連絡がセリューさんだけ入ってこないんです……』
耳につけた小型無線から、どうしましょうという声が響く。
警備隊の奴等には一時間毎に本部に連絡を入れるようにいっているのだが、セリューのみまだ連絡が来てないということを俺が連絡したときに報告を受けた。
「何やってんだが……。サヨ、セリューの場所は分かるだろ? あいつにも符は持たせてるからマップに表示されてるはずだ」
『そ、それがセリューさん、担当の区域にいないみたいで…』
「は? どういうことだ?」
『光点がないんですよ。一つだけ今回の見回りのコースと関係ない場所に光点があるんでこれかもしれないんですが……今は先輩が他の隊員に連絡取って消去法で……あ! セイさん! やっぱりセリューさんみたいですこれ』
サヨが俺と話してある間に、もう一人が他の隊員と連絡を取っていたらしく、会話の間に確認が終わったようだ。
にしても、あいつコース外れて何してるんだか。今度から誰か数人でお目付け役を付けるか。
補足で説明しておくと、現在警備隊の見回りは三人一組で行わしている。
各組に無線機と符を一つずつ配っているから光点が一つだから一人って訳じゃない。
帝具使いの俺とセリューは一人で見回りだからな。
「まぁ、確認がとれたならいい。ちょっとあいつに説教してくるから場所教えてくれ」
『分かりました。セイさんの位置から東に少し行ったところにある広場です。今も光点は動いてないのですぐ行けば合流できるかと』
「了解。本当、何してんだか。他のやつらはそのまま見回りを続けるように言ってくれ」
『了解です!』
サヨの声とともに無線機との接続が切られる。
しっかし、動いてないとかあいつ黄昏たりしてるのかね?
普段の様子からしたら全く似合わんぞ。
まぁ説教は確定だ。
俺は道を走るよりも屋根づたいに行った方が速いと判断し、帝都の空に跳び上がった
ごめん。自分でも何かいてるか解らなくなった…
やっぱ、こういう心情描写って文才いるなぁ、と実感した