あれから数日後。
警備体制を強化したからなのか、最近は被害が格段に減った。
まぁ、呼び掛けがやっときいてきたと言った方が正しいか。
今では夜に市民を見かけることはない。
ならあとは俺達警備隊が全力で事に当たるのみ。
帝都の治安を守ることが警備隊の役割なのだから。
セリューは予定通りに三人になった組へ入ってもらった。
俺と一緒じゃないからなのか少々愚痴を垂れたが、正義のためやなんやと言ったら快く引き受けてくれた。
うちの部下がチョロインな件について。
俺はと言えばセリューにそんなこと言っといて単独行動中である。
本部のマップの所には信頼できる部下(セリューじゃない)を置いてきている。指示はうまく出してくれるだろう。
宝具に回すための魔力もOK
相手が帝具使いである以上、警戒するに越したことはない。
手甲の甲で腰の大瓶の蓋を軽く叩く。
そんなときだった
「ん?」
俺の前方の細い通路の先。
そこを一瞬、イエヤスくらいの少年が通りすぎた…ような気がした。
いや、気がしたんじゃなくて見たんだなうん。
まさか人がいるとは思ってなかったから無視するとこだった。
しかも、他の隊員じゃ不可能だっただろう。
何せ、いまの俺は視覚を強化してる。それで漸く見えたんだから。
何か急いでいるように見えたが、用事か何かなのだろうか。
どちらにせよ、今の夜の帝都は危ないんだから早く帰るように言ってやらねば。
で、まさかのザンク発見と……
人がいないため、遠慮なく全力で少年のあとを追ったわけなんだが、どう見てもあれザンクだよな?手配書と顔一緒だし
ただ意外なのが、そのザンクに先程見かけた少年が抱き付いていることだ。
知り合い……なのか? 関係者ならあの少年も捕まえなくちゃなんだけども
ちなみに、俺はと言えばそんな様子を近くの建物の屋根から見下ろしていた。
もろばれな位置なのだが、流石アサシンのクラススキル気配遮断だ。Bでも十分すぎる。
と、そんなことを考えていると状況が動いた。
いきなり少年がざんくから離れて怒鳴り出す。
…何が起きたの?
ザンクもなんかいい夢見させてあげたやら何やら……
帝具か? それも、幻術の類い?
まぁ、なるようになるか。
いまも状況は動いている。お互いが剣を構えて睨み合って…あ! 少年が動いた!
そしてそれを見きって避けるザンク。
……いや、見切ったにしては対応に余裕がありすぎる。あれも帝具?
……そうみたいだ。ついでにザンク、喋りすぎ
「って、実況してる場合じゃねえや」
戦況はザンク有利に動いているため、このままほっとけば少年が危ない
咄嗟に駆け、両者の間に割って入った俺は少年の腹を狙った剣を寸のところで止める
「なっ、あ、あんた…」
「ほう? 警備隊の者か?」
少年は驚き、ザンクは面白そうに笑みを浮かべた。
愉快愉快と訳のわからないことをほざくザンクの土手っ腹に思いっきり蹴りを入れようとするも、やはりタイミングよく距離をとられ空振りに終わった。
「少年、怪我はないか?」
「あ、ああ。なんとか。助かったぜ…」
「そうか。なら、今すぐここから帰れ。少年には少々荷が重い相手だ」
剣の腕前は見ていた限りではかなりいいものを持っている。現時点ではイエヤスよりも上と言ってもいい。
それはつまり警備隊の上位のやつよりも強いということだ。
そんな少年でも逆に殺られかねない相手。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!あいつは…」
「もう一度言う。帰るんだ。それに、少年が関わる事じゃない。これは俺達警備隊の役目だ」
「ほぉ~、いいこと言うな。ハハ、愉快愉快」
両腕の裾から伸びた二本の剣を打ち鳴らしながらさも可笑しそうに笑うザンク。
そんなザンクを睨み付け、俺は少年の前にたつ。
「ザンク。帝都の無実な市民を殺した罪はかなり重い。お前には捕縛もしくはその場での殺害許可が降りている。投降するなら今のうちだぞ」
「無理だな。首斬りは止められないんだなぁ~これが。お前もそこの少年と一緒に干し首にしてやろう!」
投降するどころか、寧ろ好戦的な笑みを浮かべて剣を構えるザンク。
だが、それでいい。そうでなくては困るんだよ。
「やってみろよ。こちとら部下が何人かてめぇに殺られてるんだ。その分、てめぇの命で償ってもらわねぇと、割にあわねぇんだよ!」
俺は手甲を構えて何時でも魔術が使えるように準備も整える
取り合えず、あの顔面に一発いれてやらぁ!!
キャラの口調とか違和感あったらゴメンね?