Fateで斬る   作:二修羅和尚

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十話

「で? セイ君。何か私に言うことはないかな?」

 

「いや、言うことって……それと俺のことは副隊長……」

 

「独断でナイトレイド追っかける君をそう呼ぶとでも?」

 

「うっ……それはすまない」

 

「すまない?」

 

「……すみません」

 

ナイトレイドとの追いかけっこがあった翌日。俺は詰所にて正座させられていた。言わずもがなセリューの命令である。

 

本来なら平の隊員であるセリューの言うことなんぞ聞く必要はないのだが、有無を言わせぬ迫力に思わず正座してしまったのだ。

だって、後ろでコロが牙剥いてたんだよ? 無理だって

 

ちなみに、あの日。ナイトレイドが標的に選んだ貴族についてだが、離れの建物を調べれば死体が出るわ出るわ。

どれもこれも拷問や薬漬けの被害にあっていた痕跡が見つかったため、そのことも報告書にまとめて宮殿の方に報告しておいた。

一応、俺たちを雇っているのは帝国、つまりは皇帝陛下であるため、こういう報告書は全て提出しているのだ。

 

ナイトレイドの件については報告はしていない。

 

していないのだが、何故かセリューにはばれた。何故だ

 

「ちょっとセイ君、聞いてるの?」

 

「べんべん」

 

「コロ、腕」

 

「ちょ、まっ」

 

てくれと発音する前に、コロに頭を掴まれた。気分的にはアインクローであるが、手の大きさが大きさなので、俺の頭丸々一個潰そうとしているようにしか思えない。

 

「セイ君。私ね、本当に怒ってるんだよ? そりゃセイ君が強いのは私が一番よく知ってるつもりだけど、それでも心配したんだよ?」

 

「あー、その、まぁ……すまん」

 

「うん、分かってくれたならいいよ」

 

腕を組み、安心したような笑顔を向けてくるセリュー。心配をかけたことについては、まぁその通りなのだ。反省はしておこう

 

「でも、怒ったのは本当だからね。コロ、やっちゃって」

 

「キュー」

 

「ちょっ……!?」

 

キュッ、と頭が締め付けられる感覚を覚えた俺は、次にはもうブラックアウトしているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よく集まってくれたな。それじゃ、報告を頼む」

 

時、場所が変わって、俺がいるのは警備隊の詰所の支部だ。

詰所はこな帝都の中だけで軽く十を超える数が存在する。

 

この馬鹿広い帝都の警備、並びに治安維持を生業としている警備隊は当然その数もかなりのものだ。本部一つで収まり切るはずがない。そのため、メインストリート近くの詰所を本部と定め、他支部が帝都の中に点在しているのだ。

 

本部に集まらなかったのは、単純に危険だからという理由である。

 

「はっ! 現在は各詰所に二、三名ずつ配置、並びに調査を行っております。今のところ、八割程まだ調査は進めております」

 

「八割、か……残りはどれくらいで終わりそうだ?」

 

「不確定要素は色々とありますが……あと数日もあれば完了するかと」

 

どうやら、もうすぐそこというところまで調査は進んでいるっぽかった。ほんと、優秀な部下を持って幸せだよ俺は。

俺の周りに、円を描くようにして立っている十数名の部下を眺めながら俺はそんなことを考える。当然、部下の中にはセリューとコロも入ってるぞ?

 

俺たちが行っているのは、警備隊の大掃除、その下準備である。

 

賄賂や冤罪をかけたりなどの悪行を重ねる我らが隊長、オーガをその位置から引きずり下ろし、俺が警備隊をまとめるといる計画であるが、どうせならオーガとついでに警備隊の膿を取っておきたいのだ。

 

警備隊とはいっても、一般市民からすれば上の立場であることには変わりない。

それを理由に、裏で色々とやっている隊員は、今回のオーガ捕縛の際に、一斉に検挙するつもりだ。

俺が隊長となる新しい警備隊にそんな奴はいらないしな。

 

でも、それを調べるのは俺一人ではかなりの限度がある。

妄想幻像(サバーニーヤ)を使っても俺の限界は十体くらいであるため、今回は信用できる部下にその調査をお願いしていたのだ。

 

今回はその報告会議。

 

「わかった。なら、調査が完了し次第、すぐに作戦を決行する。事前に渡してある宝石から合図を送るから、それを合図に各自行動を開始しろ。いいな」

 

『はっ!!』

 

こうべを垂れる部下たちを一通り眺めたあと、俺は近くの窓から空を見上げる。

オーガ隊長は今頃ガマルから賄賂でも受け取っているのだろう。が、まぁいいさ。

あなたがその位置に居られるのもあとわずかだ。そうなれば、金も地位も権力もなにも貴方には残らない。

せいぜい、今を楽しんでくれやがれです。それを俺からのプレゼントとしておきますんで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「……死んでる、な…」

 

「そうだね…」

 

あれから数日後。

調査が終了したため、宣言通りに作戦を決行した俺。

俺とセリューはオーガ隊長の捕縛という任務でメインストリートのどこかで飲んだっくれているであろう標的を探しに行ったのだが、全く見つかる気配がない。

いくら探しても見つからないため、今度は路地裏を探していたのだが……オーガ隊長は既に物言わぬ死体の状態で倒れていた。

 

見つけた瞬間、言葉が出なかったのは言うまでもない。

 

「両腕を切断後に、全身を切り刻まれた、か……、これをやった奴は、かなりの腕だな」

 

俺は死体に近づき、身体中を確認していく。転生した影響なのかは分からないが、こういうのにかなりの耐性がついていたことには少々自分でも驚いたものだ。

 

「そんなに?」

 

「ああ。酔っていたのかもしれないが、これでも鬼のオーガと恐れられる腕は確か。それを殺っちまうんだから、可能性として高いのは……」

 

「……ナイトレイド」

 

「なんだよなぁ〜…。いやはや、オーガ隊長も標的になっているとは思ってたけど、まさか日にちが被るとは……」

 

思わずはぁ、とため息がこぼれた。

いや、俺からすれば別に全然問題はないんだよ? オーガ隊長がどうしようもないクズであったというのはまぎれもない事実だ。きっと、権力最高、俺様が王様! とか思ってたんだろうよ。

 

ただ、あんなでも隊長であったのだ。だからせめてもの情けで捕縛して償わせるつもりでいたのだが……無駄になったか。

 

『副隊長、こちらも終わりました』

 

「お、早かったな。うまくいったか?」

 

『問題ありません。我々はこれからすぐに本部へと向かいます』

 

「おう、お疲れ」

 

首にかけたりネックレスの先端。そこに取り付けられたサファイアから部下の報告が届いた。

 

仕方ない、俺たちも戻ることにしよう。隊長の死体は、後で部下に任せることにするか。

 

 

「セリュー、コロ。他の奴らが戻ってくる。すぐに戻るぞ」

 

「了解。コロ、行くよ」

 

「キュー!」

 

俺のあとに続いて、セリューがコロとともに駆ける。

すぐに俺のことを追い抜かし、少し離れた先で早く早くと手を振る年上の部下に少々呆れながらも、少し歩みを速める俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この二日後、俺の元に『隊長代理に任命する』という内容の手紙が届くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんかごめん!

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