引退した博麗の巫女と問題児たちが異世界から来るそうですよ? 作:hakusai
どちらにしてもチートですけどね。
今回はかなり駄文なので気を付けてください。
十六夜は森を駆けていた。
しばらく走ると、眼前が開け、大河の岸辺に出た。
「おぉ…!」
目の前を流れる川、“トリトニス大河”の美しさに、思わず感嘆の声をあげた。
目的の場所まではあと少しのようだ。
「世界の果てはどんなんなんだろうな……ん?」
そう呟いて、大河を渡ろうとしたとき、何処からか声が聞こえてきた。
『こんなところに人間とは珍しい。人間、我の試練をうけよ』
そういって大河の中から現れたのは、身の丈30尺強はある巨躯の大蛇だった。
「ハッ、蛇ごときが俺を試そうってのか?」
『舐めおって、人間風情が!』
そういって大蛇は大河の水を操り、十六夜を襲ってきた。
「おいおい、その程度か?お話にもなんねぇぞ?」
そういった余裕の十六夜は、襲いかかる水をものともせず、瞬く間に大蛇のもとへと近づき、
殴り飛ばした。
『グハッ』
殴られた大蛇は派手に吹き飛び、数十メートル先の壁にめり込んだ。
『ぐ、ぐぅ。人間如きがぁ!』
幸か不幸か、大蛇にはまだ意識があり、戦意も喪失していないようだった。
「少しは面白そうだな。………ん?」
十六夜は先程霊夢に貰って、ポケットにいれておいたお札が、妙に熱くなっていることに気がついた。
「どうしたんだ?」
そういってポケットからお札を取り出すと、一瞬目の前の空間がブレた。
そしてそこには、急に霊夢が現れた。
「渡しといて正解だったわ。面白い瞬間には間に合ったみたいね」
「まさかワープしてくるとは思わなかったぜ。本当に人間か?お前」
「えぇ。人間よ?ちょっと妖術とかが出来るだけのね。そういうあなたこそ人間なの?こんなところまで短時間で移動するなんて、普通じゃ出来ないわよ?」
「俺も生物学上は人間だぜ。ちょっと人間離れしてるけどな」
そうやって話している二人の元に、何かが弾丸のような速さで飛んできた。
「この辺りのはず………」
「あれ、お前黒ウサギか?どうしたんだその髪の色」
黒ウサギは怒髪天を衝くような怒りを込めて勢いよく十六夜の方を向いた。
「もう、一体何処まで来ているんですか!?」
「“世界の果て”まで来ているんですよ、っと。まぁそんなに怒るなよ」
十六夜に怪我が無いことをみて、黒ウサギは心配が不要だったと、安心して胸をなで下ろした。
「しかしいい脚だな。遊んでいたとはいえこんな短時間で俺に追い付けるとは思わなかった」
「むっ、当然です。黒ウサギは“箱庭の貴族”と謳われる優秀な貴種です。その黒ウサギが」
アレ?と黒ウサギは首を傾げる。
(黒ウサギが……半刻以上もの時間、追いつけなかった…………?)
「まぁ速さを言うなら、霊夢も大概だけどな」
「私はお札の所に飛んできただけよ?」
「その時点でおかしいと思うぞ?」
さっきまで霊夢の存在に気づいていなかったのか、黒ウサギは霊夢を見て、固まる。
「あ、あれ?霊夢さん?さっきまであっちにいませんでしたっけ?」
「えぇ。いたわよ。ちょっと此方の方が面白そうだから、此方に来たわ」
(゜ロ゜)←唖然として固まる黒ウサギの図。
「ま、まぁ、その話は後にして!十六夜さんが無事で良かったデス。水神のゲームに挑んだと聞いて肝を冷やしましたよ」
「水神?――――あぁ、アレのことか?」
そういって十六夜は壁にめり込んだ大蛇を指差す。
そして、黒ウサギが状況を理解する前に大蛇が壁から抜け出し、
『まだ…………まだ試練は終わってないぞ、小僧ォ!!』
「蛇神………!って、どうやったらこんなに怒らせられるんですか十六夜さん!?」
「あら、あんなのがいたのね」
ケラケラと笑いながら十六夜は二人に事の顚末を話す。
「なんか偉そうに『試練を選べ』とかなんとか、上から目線で素敵なこと言ってくれたからよ。俺を試せるかどうか試させてもらったのさ。結果はまぁ、残念な奴だったが」
『貴様………付け上がるなよ人間!我がこの程度の事で倒れるか!!』
蛇神の甲高い咆哮が響き、巻き上がる風が水柱を上げて立ち昇る。
「十六夜さん、下がって!」
黒ウサギが水流から庇おうとするが、十六夜の鋭い視線がそれを阻む。
「なにを言ってやがる。下がるのはテメェだろうが黒ウサギ。これは俺が売って、奴が買った喧嘩だ。手を出せばお前から潰すぞ」
本気の殺気が籠った声音だった。その言葉に蛇神は息を荒くして応える。
『心意気は買ってやる。それに免じ、この一撃を凌げば貴様の勝利を認めてやる』
「寝言は寝て言え。決闘は勝者が決まって終わるんじゃない。敗者を決めて終わるんだよ」
『フン―――その戯言が貴様の最期だ!』
蛇神の雄叫びに応じて嵐のように川の水が巻き上がる。竜巻のように渦を巻いた三柱の災害とも言える水柱が十六夜に襲いかかる!
この力こそ時に嵐を呼び、時に生態系さえ崩す、“神格”のギフトを持つ者の力だった。
「十六夜さん!」
黒ウサギが叫ぶ。しかし、時すでに遅し。
竜巻く水柱は川辺を抉り、十六夜の体を激流に呑み込む―――!
「―――ハッ――――しゃらくせぇ!!」
三柱の暴力の渦のうち、二柱を、ただの腕の一振りでなぎ払ったのだ。
「嘘!?」
『馬鹿な!?』
「やるじゃん」
驚愕する二つの声と感嘆する声があがる。神格の全霊の一撃を、虫でも払うかのようになぎ払ったのだ。驚きもする。
しかし、なぎ払ったのは三柱の内二柱。残りの一柱は霊夢に襲いかかってきていた。
十六夜の神業に放心状態だった黒ウサギも、我にかえって叫んだ。
「霊夢さん!危ない!」
焦る黒ウサギに対して、霊夢はいたって冷静であった。
「大丈夫よ。そこで見てなさい。」
自分に迫ってくる水柱に動じることもなく、ポケットから一枚のお札を取り出し、
「夢符―――【封魔陣】」
地面に叩きつけた。
すると霊夢の目の前に、幅100メートルくらい、高さ数百メートルにもなる巨大な結界が張られた。
水柱は結界に当たった瞬間、勢いよく弾けとんだ。
もちろん、霊夢には被害は全くない。
「「『な……』」」
蛇神や黒ウサギ、十六夜までもが、霊夢の放った技の規模の大きさ、強さに驚愕した。
「あら、ちょっとやり過ぎたかしら?」
霊夢は疲れている様子すらない。
「…ヤハハ、やっぱり面白いな。お前を誘って正解だったわ」
「そんなことより十六夜、あの蛇はどうするの?」
「もう興味もなくなったな。お前が思った以上に凄すぎてな」
「それはどうも」
「まぁ、決闘の決着くらいはつけとくか」
そういって十六夜は蛇神の懐に潜り込み、
「ま、中々だったぜオマエ」
大地を踏み砕くような爆音とともに、蛇神は空中高く打ち上げられて川に落下した。
その衝撃で川が氾濫し、水が十六夜たちを巻き込む。
また全身を濡らした十六夜はバツが悪そうにして、
「今日はよく濡れる日だ。クリーニング代くらいは出るんだよな黒ウサギ」
冗談めかした十六夜の声は黒ウサギには届かない。
彼女の頭はパニックでそれどころではなかったのだ。
“人類最高クラスのギフト所持者”とは聞いていたものの、ここまでとは想像もしていなかったのだ。
(この人たちなら……本当に、コミュニティ再建も、夢じゃないかもしれない!)
そう思い、黒ウサギは心を踊らせるのであった。
長いので一旦終了です。
まだMUGEN要素が出てませんけども、後から出ますから。安心してください。
封魔陣はやり過ぎたとは思っています。
霊夢さんの封魔陣がショボいと思った人は、数百メートルの高さの建造物を思い浮かべると、幸せになれるかも知れません。