ご注文はリゼでしょうか?   作:シドー@カス虫

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お ひ さ


56話 バレンタインバースデー

 今日は2月14日 いわゆるバレンタインデーだ。

 といっても、俺にとってはリゼの誕生日という大切な日だが。

 まぁバレンタインを無視する理由もないし、俺も手作りチョコを作るつもりだ。

 

 

 えっ、なんで男が手作りチョコ作るんだよって?

 

 

 あのなぁ〜、日本では女性が男性にチョコを贈るイベントだけど、西欧や米国じゃ女性どころからチョコの縛りもないから、男の手作りキモいは海外に喧嘩売る発言になるだろ。

 

 そもそもこの手の事は気持ちの問題だし、それなら贈っちゃダメな道理はない。むしろ推奨されてもおかしくないと思う。

 

 

 

 

 

 

 つまるところ 男でもチョコ作っていいじゃないかコノヤローー‼︎

 

 というわけで俺はリゼに贈るチョコを作る。不公平なのも良くないし、ココアチノに千夜シャロの分も作る。この意思はダイヤより固い。

 ……もちろんハンマーでも砕けないから。

 

 

 

 

 チョコとプレゼントを贈るだけなら、ぶっちゃけ去年と変わらない。あの時よか進展してても同じものは同じだ。それはそれで幸せだが。

 

 まぁ結論から言うと、良い意味で去年とはまた違ったバレンタインになった。

 

 それが何かと言うと………

 

 

 

 

「それでは指導お願いします、ケイト先生!」

 

「ばかもーん教官と呼べー!(裏声)」

 

「私のアイデンティティを取るなー‼︎」

 

「リゼさん べらは振り回しちゃダメです!」

 

「和菓子はいつも作るけど、チョコは初めてだわ」

 

「…ホントに材料持ってこなくてよかったの?」

 

 

 今年のバレンタインは、皆でチョコを作ります。

 

 

 

 

 ☆

 

 男子高校生の俺だが、料理は割とできる。

 と言っても、一人暮らししてるから当たり前だし、自慢できる事ではない。できなきゃ体に悪いだろうからな。

 

 朝昼晩の飯を作れると言うことは、料理の技術が身についている。そのおかげか、俺はたま〜に自分で菓子も作っている。

 クッキーやマフィンにスコーン、まぁ種類は多くないが作ったことあるし、それはチョコも例外じゃない。てかチョコ去年作った。

 

 

 

 そして今年もチョコを作ろうと材料を買ってると、たまたまココアに出会い…

 

『私もチョコ作ってみたい!作り方教えて!』

 

『え、いいよ』

 

 となった。

 

 あとはもう普段のメンツが集まったと言うか、ココアが誘ったと言うか。まぁ俺も誘おうとは思ったが。

 

 

「なぁケイト、本当に私たちも来てよかったのか?わざわざ材料まで用意してもらって……」

 

「どうせ作るつもりだし大丈夫大丈夫。(おこぼれぐらいは期待するけど) こういうのも楽しいし」

 

「そっか、それなら良かった。……でも不自然な間があったのは」

 

「気のせいです」

 

 女子の手作りチョコぐらいは俺だって期待する。その辺りの感情が無い男子は青少年やめてる。もしくはホm(ry 。

 

 

 

 

 

「それじゃあ最初は湯せんだ。チョコを刻んだらバターと一緒に湯せんにかけて溶かすんだ」

 

 

 基本中の基本だが、だからこそ大事な工程だ。

 沸騰したお湯だと熱が入りすぎて風味がとぶから、50〜55℃のお湯を使うのがベスト。

 そもそも使うボウルに水気や油分が残ってると、チョコを固める時にムラができてしまう。

 

 美味しいチョコを作るなら、初めから油断してはいけない。

 

 

「教官、湯せんがよくわかりません!」

 

 

  早いよココアさん。

 熱意は買うが、ちょっと内容が初歩的と言うか……

 

 

「……ケイト、しっかりココアを見た方がいい」

 

「俺もそう思ったとこ」

 

 

 よく考えたら、ココアは作れるのはパン限定だった。いつかのパン作りでは頼れる側だったから盲点である。

 ……もし知ったかぶりする性格だったら、チョコとお湯を混ぜた可能性あったな。

 

 

「なんか珍しいな、頼れるケイトって」

 

「いやいや俺ってそんな頼りない⁉︎」

 

「別に普段頼りないってわけじゃ………いや、頼りない?でもやるときは………」

 

「ごめんね、頼りない奴でごめんね(涙)」

 

「冗談だから泣くな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 見苦しいとこを見せたが、湯せんもかけたし次に

 

 

「教官チョコが溶けません!」

 

 

 ………詳しく言わなかったのも悪いが、チョコは大きさを揃えて細かく切るように。ダマにもなるし。

 オーブンの予熱をする時間も気にかかるべきだったか。

 

 

 

「次はこのチョコに卵黄とコーヒーを加えて混ぜる。せっかくなんで今日はラビットハウスのコーヒーを使います」

 

 

 チノちゃんに用意してもらったラビットハウスのコーヒーを加え、ハンドミキサーか泡立て器で混ぜ合わせる。

 

 料理ができるリゼやシャロ、日常的に和菓子を作る千夜は流石の手際だ。泡立て器の使いが手馴れてる。

 あとチノちゃんも意外と慣れてる様子なのは驚いた、まぁココアがくるまで、タカヒロさんとティッピーの二人+一匹暮らしだったから腑に落ちた。

 

 

「私たちは大丈夫だから、ケイト君はココアちゃんを見てあげて」

 

「ハンドミキサー持ってるココアがすごく危なっかしいし…」

 

「え〜私も大丈夫だよ!」

 

 千夜やシャロにもこの言われようである。

 

 

 

 

 

 

 

「次はメレンゲ作りだな。ボウルの卵白を30秒ほどしっかり混ぜたら20〜30gほど上白糖を入れ再び混ぜる。混ぜたら同じ量上白糖をもう一回入れ混ぜる」

 

 

 ココアのためにも皆の前で実演をする。若干こそばゆい感じだが、何度もやった工程だからミスはしない。

 

 

「綺麗なツヤが出て、うねりがでれば完成だ。こうなればツノが立つし、逆さまにしてもボウルから落ちない」

 

「「「「「おぉー‼︎」」」」」

 

 

 言葉通り逆さまにしてメレンゲが落ちないとこを見せると、皆目を開いて驚く。

 最初に自分で試した時も驚いたが、先生(教官)側で実演するとなんか誇らしい気持ちになる。

 

 

「私もそれやってみたい!」

 

「新しい器用意してくる」

 

「「「「ナイス判断(だ)(です)(だわ)(ね)」」」」

 

 

 なんだろう、すごく余計な事言ってしまった気がする。

 ボウルもう無いのになぁ……キャッチができりゃちょっとした鍋でいいか……ハァ(ため息)

 

 

 

 

 

 

 

「(新しい器のおかげで)無事にできたし次だ。

 1/3量のメレンゲをチョコに入れてさっくり混ぜ………ボウルの底が見えるぐらい、下から上に上下に入れ替えながら混ぜるんだ。ただし、べらの面で混ぜないように」

 

 

『さっくり混ぜる』は短時間混ぜると捉えられることがあるが、実際は違う。さっくりと切るように混ぜるという意味だ。……これで伝わるかなぁ?

 とにかく、面で混ぜるとダマができたりしてしまうので気をつけよう。

 

 

 ちゃんと具体的に説明したので、誰もさっくりを捉え間違えず混ぜられた。

 てかココアが一番手馴れてたのには幻覚を疑った。いや、そういやパン作りでも必要なときがある技術だったか。

 

 ……なんでパンは作れるのに、他の料理はからきしなんだ?いわゆる一点特化型の天才なのか?

 

 まぁいい、そろそろ終わりだ。

 

 

「薄力粉と粉末のココアを入れて混ぜたら、残りのメレンゲを加えてもう一度さっくり混ぜる。

 

 あとはマフィンカップに流して180℃のオーブンで25分ほど焼けば………」

 

 

 

 完成! 『大人のガトーショコラ』

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

「悪いなリゼ、片付け手伝ってもらって」

 

「いいよこれぐらい。皆でお菓子作りなんて初めてで楽しかったしな」

 

「たしかパン作りのときはシャロがいなかったっけ。そのうち全員でパン作りもしたいな」

 

 

 ガトーショコラも無事完成し、今はリゼと二人で道具の後片付けをしてる。

 他のみんなはラビットハウスで、リゼの誕生日パーティの準備をしてくれている。

 ……主役のリゼがパーティの準備を待つのは普通だが、千夜が待つのを提案したとなると、気を遣ってくれたとしか思えない。もち感謝しかないよ。

 

 

 

 

 

 

「準備もできたみたいだし、そろそろ行くぞケイト」

 

「あ、ちょびっと待ってくれ」

 

「ん?何か忘れ物でも………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッピーバースデー リゼ」

 

 そう言って俺は丁寧にラッピングした箱を、この日のために用意したプレゼントを贈った。

 

 

「えっこれって………」

 

「パーティで渡すのもいいけど、なんか皆の前だと恥ずかしくてさ。

 

 それに、二人でいるときに渡したくてな」

 

「あ、開けていいか?」

 

「もちろん」

 

 

 リゼが箱を開けると、中に入っていたのは、ウサギの刻印があるプレートペンダントだ。

 

 

「ほら、リゼって私服のときよくプレートペンダントしてるし、喜んでくれるかなって……」

 

「なんで自信なさげなんだよ!もうちょっと自信持てよ!」

 

 

 だって女の子に何をプレゼントしたら喜んでくれるかわかんないじゃん!努力はしてるが知識もないわけで。

 

 

「…じゃあ、お前が私にペンダントをかけてみろ」

 

「そんぐらいならいいけど……」

 

「普通こっちのほうが狼狽えるだろ……ぴゃっ⁉︎ 手冷たいな‼︎」

 

「洗い物した後だしな」

 

 

 でも『ぴゃっ』ってなったリゼ可愛かった。

 とにかくペンダントをかけてあげると、どこか満足気な表情をした。

 

 

「……良かった。すごく似合うよ、リゼ」

 

「なら不安になる必要なかっただろ?私だってすごく嬉しかったんだぞ!」

 

 

 

 

 「ありがとな ケイト」

 

 

 目に映るのは、嬉しさと恥じらいの入り混じった、あまりにも魅力的な笑顔。

 

 

 俺は この笑顔が見たかったんだ。

 

 

 やっぱり俺は リゼが好きなんだ。

 

 

 




3ヶ月ぶりですねスミマセン。
受験勉強頑張りましたスミマセン。
結果はまだだけど入試終わったし投稿しましたスミマセン。

次からは5巻の内容、遅くても今月中には投稿しますスミマセン。


私服リゼのプレートペンダント率はそれなりにある気ガス(漫画では)

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