ご注文はリゼでしょうか?   作:シドー@カス虫

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今まで以上に原作の雰囲気を壊したくない人は、読まないこと推奨。
ていうか書いてて悶え死にそう。





53話 そういう関係

 

 

みんなが寝ているであろう真夜中

 

俺は寝ていなかった。

 

 

いや、けして夜這いだとかタチの悪い事をする気は無い。

ただただ眠れず、気晴らしに星を見ているだけだ。

 

眠れない理由は、昼のアレだ。

記憶には無いが、リゼは溺れた俺に……その…人工呼吸をしてくれた。

もちろん感謝はしている。

だけど、リゼへの申し訳なさと、こんな事態を招いた自分への憤りが胸の奥から溢れ出ている。

頭の中が整理できず、目が以上に冴えているんだ。

 

 

 

 

 

 

今いるのは、釣りをした川辺。

息をするのが怖いくらいの静寂に包まれ、みんながいるところ以外で一番星がよく見える。

 

 

星自体は好きじゃないが、見る分には落ち着く。

 

 

 

 

悶々としながら星を見ていると、背後から草が擦れる音がした。

振り向くと、今この時だけは会いたくない人がいた。

 

リゼだ。

 

「……よぉリゼ。寝ないのか?」

 

「お前だって寝てないだろ。足音がしたと思ったら、何処かに歩くお前がいたし」

 

「慎重に歩いたのによく気付いたな。……眠れないから、一人でのんびりできるとこに来たんだよ」

 

一人で って言葉をだしたとき、少しだけ悲しむような顔をリゼはした。

本当に一瞬だったけど、確かに俺の目に映った。

 

「……邪魔だったかな、私は」

 

「いや、そろそろ寂しくなってきたとこだ」

 

残念ながら、ここで女の子、しかも好きな子を突き放せるほど容赦無くはなれない。

それに会いたくないとか考えながら、少しだけ嬉しかった自分がいた。

選択肢なんて、あって無かったようなもんだ。

 

「じゃあ、私も一緒に見ていいかな?」

 

「もちろん」

 

リゼは俺に了承を得ると、俺から少し、二人分ぐらいの間をとって腰を下ろした。

 

結局、リゼと二人で星を見ることになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

会話がない。

10分経ったけど会話が一切ない。

リゼの方から声はなく、かといって俺は心情的に話題を出すなんて無理だ。

一緒にと言いながら、個と個が同じ場所にいるだけの状況になっている。普通に気まずい。

 

やっぱりこれはよろしくない。お節介だとしても何か話題を出さないと。って言うか俺の精神が保たない。

 

「「あ、あの……」」

 

被ってもうたぁあああああ……。

互いに表情は暗くなり、空気さえも重くなる。

俺はなんでこんなに間が悪いんだ。

 

「……さき、どうぞ」

 

「わ、わかった…」

 

ゴタゴタ考えても仕方ない。とりあえず会話はリゼに譲ろう。

どうせ俺の話そうとした内容なんて、今の混乱で忘れるぐらいしょうもない話なんだし。

 

「ケイトは、星が好きなのか?こうして見にくるぐらいだし」

 

「見るのは好きだけど、星自体はあんまし好きじゃないな。

 

なんちゅーか今見てる星の光って、何千何万年も昔に放った光じゃん。

 

怖いんだよ。見てる星が、実はもう消えてたら。

できることはできるうちにやらなきゃ後悔するって、そう暗示してるみたいで。

 

そんな印象があるから好きにはなれないけど、見てると何かが変わりそうで、よく見るんだよ」

 

「ロマンチストだな、ケイトは」

 

「俺はペシミストだよ。いつだって」

 

ついつい捲し立ててしまった。

たぶん、ずっと言いたい事だったんだろう。自分でも気付いてなかったけど。

 

今までずっと一人で星を眺めていた。それこそ姉さんにも内緒で。

親がいなくなって、孤独を紛らわすこともできなくて。

そんな穴を星を眺めて、別の何かで埋めようとしていたけど…。

 

やっぱり 一人は寂しかったんだな。

 

 

 

「ところでケイトは、何を話そうとしてたんだ?」

 

「おっ俺⁉︎」

 

「なんで驚く」

 

自分自身の気持ちに腑に落ちたと感じてると、リゼに先ほど切り出そうとした話題を聞かれた。

正直ここで出そうとした話題の話題になるとか思ってなかったし、さっきも言ったけど忘れてる。

 

おかげで俺は、つい地雷を踏み抜いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「人工呼吸はキスに入らないよな?」

 

そう言った瞬間、リゼの顔は真っ赤になった。

そして地雷原にダンスしに行ったと気付いた俺は、迷わず川の深そうな所に向かった。

 

「なんで川に向かうんだバカ‼︎」

 

「こんなこんにゃくより柔らかい口は塞がないといけねぇんだよ!」

 

「そっちに行ったら永遠に塞がるだろ‼︎」

 

リゼに羽交い締めと説得をされ、なんとか太宰さんの背中を追うことはなかった。

背中に感じた双丘で現世に戻ったわけだ。

 

 

 

「ケイトはどう思うんだ、人工呼吸?言ったら答えてやる」

 

「えっ、言わなアカン?」

 

「バカなことしたんだ。これぐらいの話は聞け」

 

それを言われたらぐぅの音も出ない。

 

「俺は形だけだし入らないとは思う。

思うけど……やっぱり意識せずにはいられないな」

 

「意識せずには、か…」

 

正直覚えてないのは悔しい。

あの時まで時間を戻せるなら、寿命10年までは躊躇いなく悪魔に払える。

いや、覚えてたら脳が焼き切れるか。

 

「俺は言ったんだしリゼも言えよ。ここで言わないとか無しだぞ!俺は超恥ずかしかったんだし!」

 

「わかったわかった。言うから落ち着け」

 

俺は深呼吸して落ち着くと、リゼも深呼吸をしてから、話してくれた。自分の考えを。

 

 

 

 

 

「結局のところ、相手によるな。

純粋な善意ならキスじゃないし、少しでも気があったらキスだと意識してしまう。

私はそう思うんだ」

 

「えと〜リゼさん、それ俺に言ってんの?」

 

俺が意識しちゃう言った後に、気があったら意識するって。

 

 

「ハァ……お前はまだわからないのか?」

 

「何がスか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「意識してなかったら、私があんなに狼狽えるわけがないだろ!」

 

 

「………………えっ?」

 

思い出したのは、ココアがつい人工呼吸のことを話した時のリゼの狼狽え方。

先ほど地雷を踏み抜いた時の真っ赤な顔のリゼ。

 

自分のことで頭いっぱいだったけど、リゼも俺と同じで気にしてて、恥ずかしがっていた。

 

でもそれだとリゼは、少なからず意識してるってことで。

それじゃあまるで、リゼは俺に気があるなんて信じられないことがあるみたいで。

 

ペシミストの俺にはそれ以上を考える事はできなかった。

 

「まだわからないのか‼︎

 

もうこの際だからハッキリ言うぞ‼︎」

 

フリーズした俺に痺れを切らし、リゼは意を決する。

立ち上がり、真っ直ぐ俺を見てその言葉を口にする。

 

リゼの顔はまるで、恋する乙女のような……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は お前が好きなんだ!」

 

 

 

 

「いつかに恋愛な相談されたのは」

 

「お前のことだ」

 

「バレンタインで本命あげた相手は」

 

「お前だよ!」

 

「……マジか」

 

今の俺は冷静に見えて冷静じゃない。

頭がついていけなくて、一周回って落ち着いただけ。ようは限界突破した。

 

今までの俺の勘違いを潰していき、最終的に俺は土下座をしていた。

 

俺が恋を自覚したのは10月あたり、例の相談が5か6月だから、俺が無自覚のころからリゼは想っていて。

俺が自覚してから半年以上経っても、すれ違ってばっかで。

 

姉さんが言っていた『自分に嘘をつくな』は、このことだったのか。俺の気持ちも、リゼの気持ちのためにも。

本当姉さんは食えない人だ。尊敬に値するほど。

 

 

「それで、お前はどうなんだ。ハッキリ言ってくれ」

 

俺は土下座の態勢をやめ、立ち上がりリゼを見つめる。

リゼの顔には期待と不安が入り混じり、足は僅かに震えている。

 

恋愛どころか人との関わりさえ経験不足の俺には、100点の解答なんてわからない。

だけど、俺は迷わず、リゼを優しく抱きしめた。

 

 

「…俺も、 えと………好きです」

 

「あ…………」

 

俺の行動と言葉に体の震えは止まり、リゼは俺の胸に顔をうずめた。そしてぐりぐりと頭を擦りつけてくる。

 

普段じゃ考えられない、甘えるようなリゼの姿が、たまらなく愛おしく感じる。

 

 

 

 

「その、これって…そういう関係になるってことでいい……よな?」

 

「……一つだけ、条件」

 

「条件?」

 

「…私はしたんだ。

今度は、ケイトからキスしろ」

 

顔は隠れてるがリゼの耳は真っ赤だ。そして、たぶん今の俺の顔は引くぐらい赤い。

恋愛力ゼロだし仕方ない。

 

「キスを……するのか?」

 

「人工呼吸じゃなくて、ちゃんとした形でしたい」

 

「俺から、ですか?」

 

「私だって恥ずかしかったんだぞ‼︎

それに、お前はイヤなのか?」

 

「イヤなんてことは断じて絶対ない!むしろ嬉しい!

ただ恥ずかしいだけで……」

 

「だったら………」

 

俺には、選択肢なんてない。

 

 

自分の想いを行動で示せる。

 

 

なにより、

受け入れてくれて、嬉しかった。

 

 

 

 

リゼに顔を近付ける。

頬は紅潮し、瞳が潤む。でも、目は離さない。離したくない。

今まで こんなに顔を近付けたことはない。

恥ずかしい。恥ずかしいけど、止まれない。

 

 

俺からといいながら、互いが引き寄せられるようにして、どちらからともなく唇が近付く。

 

 

 

 

そしてーーーー

 

 

 

 

 

 

俺とリゼは 『そういう関係』になった。

 






自分でも笑える。
高校生でこんな感じの書くとか、恥ずかしいっちゅうか痛い気さえする。
憧れはするけど。

ペシミストに恋愛は難しい

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