みんなの学校の始業式、入学式が終わってちょっとたったある日。
「大きいオーブンならありますよ。おじいちゃんが調子乗って買ったやつが」
「ほんと!?じゃあ今度みんなで看板メニュー開発しない?焼きたてパンおいしいよ!」
どうやらココアの実家はベーカリーで、よく自家製パンを作ってたらしい。久しぶりに作りたくなったようだ。
みんなの中に俺入ってるよな?
「話ばっかしないで仕事しろよー」
おっと、仕事に戻らないと……
くきゅるるるるる〜
リゼのお腹から可愛い音が聞こえてきた。
「焼き立てってすっごくおいしいんだよ!」
「そんなこと分かってる!」
くきゅるるるるる〜
また鳴ったな。
「リゼ、焼き立てパン想像したら腹ぐらい鳴るし気にするな。それに結構可愛い音だった「可愛い言うなっ‼︎」グヘァッ⁈」
真っ赤な顔でチョップするリゼ。
スミマセン、真っ赤になるほど怒っちゃうとは……
☆
というわけで、今日はみんなでパンを作ります。
あと、ココアが新しい友達を連れてきました。
「千夜ちゃんだよー」
「宇治松 千夜(うじまつ ちや)よ。今日はよろしくね」
女の子が増えてメンツは女子四人に俺一人。男混ざっててみんなはいいのかね?
「あらそちらのワンちゃん…」
「ワンちゃんじゃなくティッピーです」
「この子はただの毛玉じゃないんだよ」
「まぁ毛玉ちゃん?」
「もふもふぐあいが格別なの!」
そう言いながらティッピーを撫でるココア。ティッピーが起こってるように見えるが…
「癒しのアイドルもふもふちゃんね」
「ティッピーです」
「「だれかアンゴラうさぎって品種だって説明してやれよ」」
リゼとツッコミ被りました。
「それにしてもココアがパン作れるって意外だったな」
「えへへ〜♪」
「褒めてるわけじゃないだろ」
俺の指摘を無視して嬉しそうに頬をかくココア。
まぁいいか。パン作り始めようぜ。
「みんなパン作りをなめちゃいけないよ!少しのミスが完成度を左右する戦いなんだよ!」
ココアのやる気スイッチ入りました。
周りに燃え上がる炎のオーラが見える!気合いが違う!
リゼを見ると、俺と同じように驚愕してる。
(ココアが珍しく燃えている……!このオーラ、まるで歴戦の戦士のようだ……!)
って考えてるだろうな。きっと。
「今日はお前に教官を任せた!よろしく頼む!」
「任せた!」
「わたしも仲間に…!」
リゼの軍人スイッチも入りました。
てかみんなノリノリだね。楽しそうだからいいけど。
「暑苦しいです」
チノちゃん、そんなバッサリ言わなくても……
☆
じゃあ、パン作り始めようぜ。
「それじゃあ各自パンに入れたい材料提出ー!」
みんなはそれぞれ自宅から持ってきたパンに入れる材料を取り出す。
「私は新規開拓に焼きそばパンならぬ焼うどんパン作るよ!」
「私は自家製あずきと…梅と海苔を持ってきたわ」
「冷蔵庫にいくらと鮭と納豆とごま昆布がありました」
「私はイチゴジャムとマーマレードと……」
「俺は昨日作った焼きそばを……」
(ケイト、これってパン作りだよな?)
リゼが小声で聞いてきた。
てか俺が聞きてぇよ。
「今日はドライイーストを使うよ!」
「ドライイースト⁈食べて大丈夫な物なんですか⁈」
「ドライイーストは酵母菌なんだよ。これを入れなきゃパンはふっくらしないよー」
流石パン作ってただけあって詳しいな。
「そんな危険なものをいれるくらいならパサパサパンで我慢します!」
チノちゃんどうしてそうなった?
次にココアはパンのこね方を見せてくれたが、真似してみても中々上手くいかない。やっぱ経験者は違った。
「パンをこねるのってすごく時間がかかるんですね」
「腕が……もう動かない……」
「やっぱり女の子には少しキツイか」
麺棒で生地を伸ばすが大変そうだ。
俺は男だし大丈夫だよ。
「リゼは……平気だよな」
「なぜ決めつけた?」
「そりゃリゼは軍人の……待って、麺棒はバットじゃないぞ⁈振りかぶっちゃダメだ‼︎」
俺の頭がホームランされるんですかね⁈
土下座して許してもらいました。
プライド?プライドで生きていけるのか?
とりあえずパン作り再開しようぜ。