「お待たせー」
「ワリィ、待たせた」
アレがあった30分後、予定通り進級祝いにお茶しに集まった。
泣いた跡を誤魔化せるか心配だったけど、ココアが卒業式に感動して泣いてたから特に問題はなかった。その感受性が羨ましい。
ココアたちに会ったらしくチノ、マヤ、メグちゃんたちもいたし、せっかくだし誘うか。人多い方が楽しいだろうし。
「3人もお茶して行くか?」
「ラビットハウスからも卒業するの?」
「違うよ‼︎」
マヤの発言はたまに肝を冷やす。もちろんラビットハウスから卒業する気はない。
とにかく、チマメ隊(この呼び方ワリと好き)を加えた8人でお茶することになった。
……そういや男俺しかいないな。まぁ学校も似た比率だし慣れてるけど。
「現在混んでいまして、離れた席に座ってもらいますが大丈夫でしょうか?」
喫茶店に行くと、微妙に混んでいた。全員座れはするが、4人ずつに離れた席になってしまうらしい。
高校中学組に分かれるのはいいとして、高校組から1人中学組に混じる案で話はまとまった。
「「「「「じゃんけんぽん!」」」」」
「ストレート負け…。まぁ、俺いくわ」
「3人の子守りはちゃんとできるのか?」
「俺たちを何だと思ってんだリゼ」
「私の妹を取らないでね!」
「取らねぇしココアのじゃねぇから」
だったら最初からココアが行けよ。進学祝いだからギリギリ高校組に残るって決めてたけど。
「私もアニキたちのように大人っぽくなりたいなー」
「大人っぽい…ですか?(チラッ)」
「チノちゃん、何で俺見て首傾げんの?」
「気にしないでください」
チノちゃんの俺に対する印象を改める必要があるらしい。
「さっきのアニキのように、後輩にお茶していこーぜって誘うのカッコイイよな!」
「私もナチュラルに誘えるかなー?
きっ君かわいいね〜 一緒にお茶していかない?」
「「「怪あやしいナンパだ(です)」」」
「そうだ、アニキも今のやってみて!」
「何で警察に睨まれそうなことやんなきゃいけねぇんだよ⁉︎」
「面白そうじゃん!」
「マジかよ」
結局俺は断れず、リゼに今のナンパをすることになった。知らん奴にやったら捕まりそうだし。
……リゼの親父さんいないよな?
「ん、どうしたんだケイト?」
「いや〜かわいいねリゼ。俺と2人でお茶していかない?」
「いっいきなりなんだお前は‼︎」
「いやマヤにナンパしてって頼まれてな。だから関節技はやめて!
てかリゼも俺と同じで顔真っ赤(ボキッ)ァアアアァアァアアアアアアアアアアアア
「ふぅ、なんとかはまった」
「アニキの顔 傑作だったな!」
「せめて反面教師として受けとれよ」
当たって砕けた(外された)俺がはめ直すと、何故かスタンドを持った店員がやってきた。
「こちらアフタヌーンティーセットです」
「えっ?頼んでませんけど」
「あちらのお客様からです」
『ぐっ☆』byココア
いつからここはバーになった。
大方姉として行動した結果だろう。
まぁせっかくだし食べるか。
「ありがとココアー!いっただきまー…」
「待って!これって食べるのに順番があるって聞いたことがあるよ」
「マジで⁉︎つまりこれを優雅に食べれなきゃ…」
「大人のレディーになれない」
「シャロさんたちを真似れば…」
「ホットドック食べてるな」
「私たちにはこんなよくわからないものを!」
ちなみに正しい順番は
下段のサンドイッチ
↓
真ん中のスコーン
↓
上段のペストリー(ケーキ)だ
まぁ絶対遵守じゃないし、楽しむのが1番だけどね。
教えるのもいいけど、自分で考えるのも大切だしもう少し様子を見るか。
同じ物が来たココアたちは、食べる前に会話を楽しんでた。相対性理論だとか般若心経って聞こえたけど、たぶん気のせいだろう。
「よくわからないけど、食べる前におしゃべりを楽しむらしいね」
「大人っぽい会話…えーっとえーっと」
「この前初めてうちのアニキをパシリに使ったよ」
「それは大人じゃねぇよ」
「こっ今度ラビットハウスのバータイムにお邪魔しちゃおっかな」
「よっ夜更かししちゃおっかな」
「お姉ちゃんは許しませんよー‼︎」
「「「「聞かれてる⁉︎」」」」
たまにココアが怖く感じる。
「大人……アニキって彼女いないの?」
「いねぇよ」
「じゃあ告白されたことはありますか?」
「……………あるよ」
「マジかよ超大人じゃん‼︎」
なかなかどうして鋭いっつうか……。
ここでその話にきたか。
「大人かはともかく、告白されてもいい事ばっかとは限らねぇぞ。告白断ったときの罪悪感とかかなりヤバイし」
「……すっごい大人ですねー」
「うちのアニキも見習って欲しいよ」
「若い頃を思い出すおじいちゃんの顔です」
おじいちゃんみたいな顔って……。まだ1時間前の事なのに。
「まあ誤魔化したりよりはいいんじゃね?」
「未練が残るのもあまりねー」
「ケイトさんの意思を言ったなら、それが正解だと思います」
「………そっか」
ちっちゃいとはいえ女の子だし、この手の話は男の俺よか聡いな。
今までより少しだけ、3人がおっきく見えるな〜。
「あっリゼがどっか行った!」
「ついていかなきゃ!」
「まっ待ってください!」
カルガモ親子のように後ろを歩く3人は、やっぱりまだちっちゃく見えた。
さて、1人は寂しいしついてくか。
「こういうのは楽しく食べればいいんだよ。マナーなんて互いが楽しむためのものなんだから」
「教官の教え、心にしみるよ……!」
何故チマメ隊は敬礼してんだよ。
ヒエラルキー俺が1番下なのか。
「あっ戻ってきた」
「席くっつけてもらったんだ」
5人で戻ると、高校組と中学+α組の席がくっつけられてた。
「初めからこうしてみんなで食べればよかったわね」
「まぁこれからみんなで楽しめばいいだろ」
「妹たちが遠い……」
「席くっついてるんだから凹むなよ」
厳正なくじ引きの結果チマメ隊が端っこで、ココアが反対側と妹たちから1番遠い席になった。
ちなみに俺はリゼの正面。
「そういえばケイト、何かいい事あったのか?」
「ん?そんな顔してたか?」
「なんていうか、胸のつかえが取れた顔だな」
「……まぁ、その通りだな」
「前は、向けそうか?」
「あぁ、ちゃんと歩ける」
たぶん、アレで正しかったんだと思う。俺の本気の意思だったし、嘘を言うわけにもいかない。
喜びも後悔も全部背負って、歩き続けるしかないんだよな。目を逸らし、歩くのを止めるのが、1番恐れるべき事なんだと思う。
だから、今は今を楽しもう。
もうすぐごちうさ5巻の発売……!
発売日に買わねば!