ご注文はリゼでしょうか?   作:シドー@カス虫

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39話 ケイトの気付いた気持ち

「すまないね、遅い時間に手伝ってもらって」

 

「大丈夫ですよ、たまには夜更かしも悪くないですし」

 

 

今日の俺はバータイムの時間の仕事を手伝っている。

たまにバーの手伝いをしてるけど、学生だから給料は貰ってない。ど深夜だし。

まぁたまには真夜中の空気を吸うのも悪くない。

 

 

「にしても今日は珍しく客がこないのう。普段は誰かしらいるもんじゃが」

 

「喫茶店の時間よりも客が来ますよね」

 

「余計な事を言うんでない!」

 

 

何回かバーを手伝って知ったが、どうやらティッピーはチノちゃんのおじいちゃんらしい。腹話術だと思ってた声がそうだ。そりゃ何か変だなぁって思ってたけど…。

知った理由?俺が何気なくティッピーに愚痴ったら、うっかり返事をしてしまった って感じ。

最初はともかく今は不思議現象ってことで気にしてない。

 

「にしても、ケイト君がこの町にきてから早半年か」

 

「時間の流れは早いですねぇ」

 

「年寄り臭いのぉ」

 

「本物の年寄りが言いますか」

 

 

気付いたらこの町にきてもう半年。来るまではメチャクチャ不安だったけど、すぐに初めての友達もできて案外なんとかなった。

持つべきものは友達ってやつだな。

 

 

「おぬしは来たばかりからもうリゼと一緒にいたのう」

 

「本能的に側にいたいと感じたんでしょうね、俺が」

 

「確かにリゼ君と仲が良いね。ケイト君は彼女と付き合っているのかい?」

 

「アハハ、付き合ってませんよ」

 

 

少し前に姉さんに同じ事を聞かれて動揺したけど、もう動揺することはない。

あの日は色々考えたけど 何、付き合ってないってだけだ。考えてみれば動揺する必要はないじゃないか。

 

 

「でもおぬしは、少なからずあの娘のことを想っているのではないか?」

 

 

 

「少なからずどころか、普通に大好きですよ」

 

 

「「………」」

 

 

おっと、さすがに2人とも言葉を失っている。

 

 

姉さんに聞かれた次の日にリゼの言葉に救われて、俺は気付いた。

 

俺は リゼのことが好きだ。

 

初めて分かり合えた人だとか

顔が心理的に好みだったとか

ちょいと刺激的な出会いだったとか

慰められた俺ちょろいんじゃね?とか

 

キッカケはよくわからないが、気付いたらリゼのことが好きだった。

 

 

クールで凛としたリゼが好きだ。

乙女なリゼが好きだ。

恥ずかしがるリゼが好きだ。

素直になれないリゼが好きだ。

たまに軍人気質になるリゼが好きだ。

 

 

ただ この気持ちが恋だと気付いてなかっただけだ。

 

 

「青春 してるね。きっとアイ君も喜ぶさ」

 

「姉さんなら多分とっくに気付いてますよ。いつだって俺の心配をしてくれてますし」

 

「アレは元々人の気持ちには敏感じゃったしな」

 

「まぁ、アイツが娘のことが好きな男がいると知ったら、一体どんな反応をするんだろうな」

 

「ああ見えて娘思いじゃからな」

 

「たまに娘に口聞いてもらえないって酒飲みに来るしな」

 

「……それはあまり聞きたくなかったです」

 

 

アイツってのは多分リゼの親父さんだろう。2人は共に戦場で戦った仲間らしい。

……確かにあの鬼気迫るオーラをだせる親父さんだ。もしお見舞いに行ったとき口を滑らしてたら何が起きるか考えたくない。

 

 

「君はリゼ君に想いを伝えるのかい?」

 

「もちろんしたいとは思いますが、いかんせん恥ずかしいので」

 

「焦りすぎもダメじゃが、思い出は少しでも多く作った方が良いぞ。ワシの息子も色々な思い出を作ってたもんじゃ」

 

「………」

 

「泣くな息子よ」

 

 

確かにいつか想いは伝えなきゃいけない。

でも、なんだかんだ今の関係が好きな俺がいるのも事実だ。

 

 

「まだ今の関係で過ごした時間も長くないですし、もう少し今の状態を楽しみます。

大好きなリゼとの思い出は これからもゆっくり作って…」

 

 

「こんばんはー」

 

「どぅわぁああああああああああああああああああああああああああ⁉︎」

 

「⁉︎」

 

 

狙い澄ましたようなタイミングでリゼがやってきた。

……聞こえてないよな?な?

 

 

「おや、この時間に来るのは初めてだね」

 

「親父に『たまにはバーの時間に顔出すのも悪くないぞ』って言われたので」

 

 

どうやら恥ずかしい言葉は聞こえてないな。よかった。タカヒロさんは目立たない程度に俺とリゼをチラチラ見ている。絶対内心面白がってるな。

 

 

「にしてもこんな真夜中に外出歩くなよ」

 

「不審者程度なら5秒あれば十分だ。それにケイトだってそうだろ」

 

「俺は男の子だからいいんだよ。あと5秒は早すぎだろ」

 

「早い?早くはないだろう(真顔)」

 

「……マジかよ。ま、まぁせっかくだしデザート1個なら奢るよ。俺手作りのコーヒーゼリーとかどうだ?」

 

「コーヒーゼリーなんて作れるのか⁉︎」

 

「おうよ。一人暮らしで身に付けたんだぜ」

 

 

あぁ、やっぱりリゼといるのはいい。

他に客も来ないし、ゆっくりリゼとお話するか。

 

 

……いつか必ず伝えるからな。俺の言葉で

 




彼女がいること自体じゃなくて
好きな人が彼女なのが大事だと思う(小並感)

俺?彼女いない歴=年齢ですよ(涙)

恋に恋する受験生です。

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