ご注文はリゼでしょうか?   作:シドー@カス虫

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38話 リゼのお見舞い 後編

今日俺は、怪我をしたリゼのお見舞いに来たはずだ。

適当なところで帰るつもりだった。

 

だけど、だけどどうして……

 

 

「………君が ケイトくんだな」

 

「は、はい…」

 

リゼの親父さんと2人きりになるんだ⁉︎

 

おかしいおかしいおかしい‼︎なんでいきなり友達の父親に呼ばれなきゃいけないんだ⁉︎

ってか親父さんのオーラがヤヴァイ‼︎

 

アレか?姉さんと同じで俺とリゼが付き合ってるとか思ってんのか⁉︎それならこの鬼気迫るオーラがにも納得だけど‼︎

何か、何かこの状況を打破できる行動はないのか⁉︎

 

 

 

▶︎逃げる

 

逃げる

 

逃げる

 

 

ダメだ、コマンドが『逃げる』しかない‼︎

いや逃げるは逃げるで問題だけど‼︎

 

「ケイトくん」

 

「ひゃっひゃい!」

 

思いっきり上ずった声が出たけど、親父さんは気にすることなく言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「 ありがとう 」

 

 

「へっ?」

 

 

いきなり感謝の言葉を言われて思考がフリーズした。

正直『娘にまとわりつく虫め ◯ね!』まで想定してたから意外過ぎた。

親父さんは謎のオーラに似合わない微笑みを浮かべて話を続ける。

 

「うちの娘は変に不器用でな、今まで心から信頼できる友人がいなかったんだ。

でも、君はそんなリゼの大切な人であってくれた。本気で向き合ってくれた。おかげでリゼは毎日が楽しそうだ!

バイト仲間とも仲良くなれて、よく君たちとの事について話してくれてるよ。

親の私が、少し嫉妬するぐらい。

 

……いや、すまない。娘の友人と話すなんて初めてで、柄にもなく緊張してしまう。戦場ならもう少し自然体になれるんだが……

 

とにかく

君のおかげで うちのリゼは明るくなれた。

 

 

娘の側にいてくれて 本当に感謝している」

 

 

親父さんは頭を下げて、本気で俺に感謝してる様子だ。

 

自分の娘の事を本気で思っている親父さん。

親父さんの顔は、紛れもなく『父親』のそれで、誰よりもかっこよかった。

 

 

「…娘にとっての大切な人にとして、末永く側にいてやってほしい」

 

「は はい。喜んで」

 

俺は悩むまでもなく答えた。

親父さんの真剣さには若干慣れないが、俺だってリゼの側にいてやれるならいたいから。

むしろ俺が頼むようなことだしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……末永く?

 

 

親父さんと一通りお話ししたあと、広くて迷いそうなので親父さんにリゼのいる部屋まで案内してもらった。

色々なモデルガンのあるコレクションルームに入ると、メイド服を着たココアたちと……

 

 

メイド服を着たリゼがいた。

 

 

「あ…………いぁ………これは………!」

 

思わず、腰の前で腕を引きながらガッツポーズした。

THE・メイド の姿のリゼを見れたんだし当然の反応だと思う。

親父さんも仲良くやれてるリゼを見れて超嬉しそうだ。

 

 

「……見られた」

 

リゼはしばらくの間、真っ赤な顔のままだった。

 

 

 

 

数日後

 

リゼが復帰しました。

リゼがいないとなんか調子狂うしな、よかったよかった。

 

「メイドさんごっこ楽しかったね〜」

 

「千夜さんのお嬢様役がとても似合ってました」

 

メイド服を拝ませてもらった後、俺たちは王様ゲームのお嬢様版をやった。

一向に俺が王様(お嬢様)の役になれないなか色々な命令がだされたけど、それは割愛させてもらおう。

 

何故かって?それは……

 

 

「リゼちゃんに膝枕してもらってたとき二人とも顔真っ赤だったよね〜」

 

 

「「………忘れてくれ」」

 

 

だって超恥ずかしかったもん、千夜の命令。

アウトにならないギリギリのラインをついてきてかなり恥ずかしい状態になったよ。

それについて語る余裕はありましぇん。ご想像にお任せしやす。

 

 

「そういえばチノちゃん うっかり使用人さんにねー…」

 

「ココアさん!」

 

天然のココアの色々な恥ずかしエピソードで顔を真っ赤にしてると、客がやってきた。青山さんだ。

 

「いらっしゃいま……」

 

「お帰りなさいませお嬢様!」

 

……裏で体育座りしてるリゼをなだめるのにしばらく時間がかかったのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

「確かにお前の言う通り 真っ直ぐな男だったよ、タカヒロ」

 

「ケイトくんなら、いつまでもリゼくんと本気で向き合うだろうね。愛くんのように」

 

「当然ですよ、私の弟ですもの!」

 

「にしても黄金が数年ぶりにこの街に来てるとは思わなかったな。一体どんな気まぐれだ?」

 

「いえいえ〜純粋に弟のことが気になったからですよ。実際もう少し経ったら仕事に戻りますし」

 

「そうか。寂しくなるね、愛くんがいなくなったらバーの常連さんもさぞ悲しむだろう」

 

「今度は何年も間を空けずに顔を見せに来い。今度は街に来たの歓迎するぞ」

 

「あっはっは〜善処しますね。

 

……これからも、バカな弟のことを見てやってください。あぁ見えて寂しがり屋ですし、大人の目があると安心ですし」

 

「あぁ、任された」

 

「うちの娘も大いに世話になってるからな」

 

 

他に客のいないバータイムのラビットハウス。

旧友たちは、今日も明日も大事な人たちのことを想う……

 




もうすぐ夏か〜。友達とどっか遊びに行きたいな〜。

ケイト「そんな仲のやついないのに?」

うわぁあああああああああああああああああ‼︎

ケイト「しかも夏の講座で割と苦行なのに?」

やめろぉおおおおおおおおおおおおおおおお‼︎

受験生の夏休みは勉強ばっかです(当たり前だ)

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