武の竜神と死の支配者   作:Tack

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うーむ、ニポンゴムツカシイネー。
自分で見ていて恥ずかしくなる様な文で御座います。
文法やら何やらより雰囲気で楽しんで貰えれば幸いです。


第四話【武神の宴と忍者】

 

 

 忠誠の儀を終えたエイジとモモンガが去った後、シモベ達は静寂に支配された玉座の間で暫しの待機を命じられていた。

 少し時間を空けて立ち上がったシモベ達の話題は、勿論エイジのことである。

 

 

「す、凄かったね。お姉ちゃん」

 

「本当だよね、正に竜王の覇気って感じだったよ」

 

 

 幼い闇妖精(ダークエルフ)の双子は、エイジが放っていた圧倒的なオーラを称賛し。

 

 

「ソウダナ、アレハ正ニ覇王ノ風格ダッタ」

 

 

 コキュートスも、武人として同じ道にいながらも遥かな高みにいる存在に震え、また畏敬の念を辞さず。

 

 

「えぇ、全くですね。……しかし、まさか私達シモベに対し非礼を詫びられるとは思いもしませんでした。我等としては偉大なる御方々に仕える事こそが至上の歓びであり、決して非礼だなどとは思ってはいないと言うのに……。圧倒的強者でありながらも武人としての礼を忘れない、モモンガ様とは別の意味で器の大きさを感じさせられました。……コキュートスの武人としての気持ち、少し分かった気がしますよ」

 

 

 デミウルゴスは少しずれた眼鏡を上げながら、至高の存在の偉大さを語り。

 

 

「そうでありんすね。わたしも機会があれば、エイジ様に美しい戦いの仕方でも御教授頂けると嬉しいのだけれども」

 

 

 シャルティアもエイジの覇気にあてられたようで、自らの戦いに美を求める姿勢を見せる。

 

 

「同じ高みにいらっしゃられる友と呼ぶべき御方が帰ってこられたでしょうけど、心無しかモモンガ様にも喜びの色が表れていたわ」

 

 

 アルベドの言葉に、周囲があのオーラで? という顔をしたが、直ぐに絶対者としての威厳を友の前だからこそ崩さずにいたのだろうと納得する。

 

 

「そうでありんすね。アルベドと同じ意見なのは気に食わない所ではありんすが、わたしも同意見でありんすぇ」

 

「あら? 珍しく意見が合うじゃないシャルティア。……まぁ、モモンガ様の本当の意味での真意を汲み取れるのは、……私だけでしょうけどね」

 

 

 キッと睨み合い、火花を散らしながら徐々に二人はオーラを纏っていく。

 それを見ていたデミウルゴスは、またかという表情で二人を止めようとした。

 しかし、それは突然の乱入者によって遮られる。

 

 

「そこまでだ、二人共!」

 

 

──謎の声が玉座の間に響き渡った。

 

 

「「「何者っ!!」」」

 

 

 聞き覚えの無い男の声。それをシモベ全員が侵入者と判断し、即座に臨戦態勢をとる。しかし、何処にもその姿は見えない。

 

 

「どうした? 私一人見付けられないか!」

 

 

 謎の男はシモベ達を煽る。

 彼等は其々が違うことに思考を巡らせていたが、ある一点のみにおいて完全に一致した。

 

 

(何故、誰も気付かなかった!?)

 

 

 レベル的に劣るプレアデス達だけなら理解出来る。

 しかしながら、今ここにはナザリックの実力者が集められていた。

 幾ら察知能力に長けた者ばかりではなかったとしても、まさか誰も気付かないとは。

 しかも部屋内部から声がしたという事は、先程の至高の存在がいた時から潜んでいた可能性がある。

 

 

──暗殺の可能性。

 

 

 この考えに行き当たり、シモベ達は背筋に冷たいものが通る感覚を覚える。

 侵入者の存在に気付けなかった己の愚かさを悔いながらも、彼等は冷静に謎の敵の居場所を探っていた。

 だがそれは、突如開かれた巨大な扉の先にいた、至高の二柱によって終わりを告げる。

 

 

「戯れ合うはその辺りで止めておけ」

 

「そうだ、それ位にしておけ、シュバルツ」

 

「これはモモンガ殿、それにエイジ。――大変失礼をした」

 

 

 至高の存在が声をかけると、謎の声の主は普通に返事をした後に突然現れた。

 しかもその位置たるや、敵の場所を探りながらも背後を取られまいと、円の形になるよう構えていた守護者達のど真ん中だった。

 

 

「私はここだぁっ!」

 

ビクゥゥッッ!

 

 

 シモベ達全員が驚きを隠せなかった。何せ絶対の信頼を以て背中を合わせていた筈なのに、あろうことかその真ん中からその人物が出てきたからだ。

 

 

「落ち着けお前達! ……その者は敵ではない。エイジさんと私が生み出した守護者だ」

 

「そうだ、第六階層特殊領域『ギアナ』の守護者で、名前はシュバルツという。」

 

 

 突然現れた男に守護者達は警戒していたが、至高の存在の言葉に少しだけ緊張を解いた。

 

 だが、怪しい。怪しすぎる。

 

 突然現れた男は半透明の布の様な物を一瞬で仕舞い、改めて守護者達を見る。

 それを守護者達はジッと見ていた、そして次に男の姿に目をやる。

 

 膝元までの黒みがかった灰色のコートに黒いブーツ、下もどうやら黒いズボンを履いている様だ。

 背中にはエイジと同じく紐で襷掛けした刀を背負っており、顔は目元だけ出た赤・黒・黄色の三色で縦に色分けされた覆面で覆われている。

 その覆面の額には、黄・黒と二色のV字状になった角が自身の存在引き立てていた。

 

 もう一度言おう。怪しい、怪しすぎる。

 至高の存在である二人が正体を打ち明けていなかったら、守護者達は間違いなく攻撃していたであろうレベルだ。

 

 

「只今紹介に預かったシュバルツ・ブルーダーだ、皆宜しく頼む」

 

 

 腕組みをしたまま何とも偉そうに挨拶してくる男に、守護者達は唖然としていた。

 そんな中いち早く自分を取り戻したアルベドは、軽く目の前の存在(シュバルツ)に警戒をしながらモモンガに尋ねる。

 

 

「モモンガ様、この者は一体……?」

 

「今言った通りだ。彼は私とエイジさんが生み出した守護者、正確には第六階層の領域守護者だがな。……つまりはお前達の仲間にあたる存在だ。領域守護者と言っても特例でお前達と同格にしてある。更に言うと、エイジさんの兄上にあたる人物だ」

 

 

 皆、シュバルツをまじまじと見つめるが、目元以外似ても似つかないと全員が思った。

 そんな時にシュバルツが、ぽんと軽く放り投げたのは……。

 

 

「ですがモモンガ殿、私の気配に気づかないようでは守護者失格ではありませんかな?」

 

カチン!

 

((げっ!?))

 

 

 特大の爆弾だった。

 モモンガはともかく、エイジはシュバルツが爆弾発言(平気でこういうこと)を言うであろう人物とは分かっていた。

 だが、流石に今ここでは言わないだろうと高を括っていたのだ。

 

 

(俺もまだまだシュバルツの事分かってないって事だな……)

 

 

 守護者達から当然の事だが殺気が立ち上る。

 一触即発の空気になるが、それは本人の口から出た意外な言葉で終わりを迎えた。

 

 

「フハハハッ! 冗談だ。実は私も本気で気配を消していた、言い換えれば諸君相手には手が抜けなかった、という事だ。……軽はずみな発言を許してくれ。初の顔合わせということと、弟の身辺を警護する者達に相応しいかということで、私自身が諸君の力を少しでも見ておきたかったのだ。本当に済まなかった」

 

 

 そう言ってシュバルツは頭を深々と下げ、覆面の後頭部部分に付いている房のような物が垂れる。

 守護者達は一瞬呆気にとられたが、直ぐに笑みが戻る。

 

 

「……一瞬ムカッとしたでありんすが、流石は御二人に作られし存在。実力も申し分無いようでありんすね」

 

「ですね、それでいて礼を欠かさない。最初は似ても似つかないとは思いましたが、エイジ様の兄上というのはどうやら本当のようですね」

 

「目元もそっくりだよね」

 

「そ、そうだね、お姉ちゃん。か、かっこいいよね」

 

「ダガ、マサカ我等全員ニ気配ヲ悟ラセナイトハ……」

 

「ええ、恐るべき実力をお持ちのようですな。これは頼もしい」

 

「ですが、エイジ様。御二人が創造なされたという事ですが……、それが何故御兄様になるのでしょうか? 何か理由が?」

 

 

 アルベドは最もな質問をする。

 だが、それよりもエイジはデミウルゴスの言葉に人として礼を欠いているのでは? 

 と思ったが、その場が収まっている以上下手な事を言わないようにし、アルベドの問いに意識を向ける。

 

 

「あぁ、それなんだが。……まぁ、立ち話も何だ、食堂で話そう」

 

「そうですね、それにエイジさんから我々ナザリックの者全員にサプライズイベントがあるそうだ。」

 

 

 サプライズイベントとは何だろう? と疑問符を掲げた守護者達であったが、一先ず言われるがままに食堂へと移動した。

 

 

//※//

 

 

 ナザリックの大食堂に着き、数十人はいるであろう美しい人造人間(ホムンクルス)のメイド達に案内され、エイジとシュバルツ以外が各々席に着く。

 プレアデスとセバスはモモンガの側に控える為動くが、そこでエイジに席を勧められていた。

 丁重に断ろうとした彼等だったが、「俺のお願いは聞いてくれないのか?」と、非常に断り辛い言葉で攻められた末に折れ、大人しく座ることとなった。

 

 

「よし、ではまず最初にこれを見て貰いたい」

 

 

 そう言ってエイジが手に持ったリモコンのスイッチを入れる。すると食堂の灯りが消え、大きな薄い水晶板が現れた。

 

 

「これはヴィジョン・クリスタルと言ってな、アイテムで撮影をした様々な映像を写すことの出来る物だ」

 

 

 ユグドラシル時代映像関係に拘ったギルメンがおり、その人物中心で悪役ごっこをよくしていたのだ。

 

 

「今回はこれで俺が故郷に戻り、何をしていたかをお前達に見て貰いたい。実は、故郷に居る友人が特殊な魔法の使い手でな、それでこの映像を作ってくれたんだ。俺は要所要所で補足説明をしていく。ここまでは分かって貰えたかな?」

 

 

 皆が頷くと因みにと付け足した。

 

 

「訳あって各階層から離れることの出来ない者達、彼等にも見て貰えるように準備は出来ている。だな? シュバルツ」

 

「勿論だ。既に私の放った分身が各階層の主要な者達に話をつけている」

 

「そうか、手間をかけさせて済まなかったな」

 

「主人であり、可愛い弟でもあるお前の頼みだ、何てことはないさ」

 

 

 守護者達はいつの間にそんなことをと思ったが、至高の御方(エイジ)の兄ならばその位朝飯前なのだろうと納得する。

 そして「そうあれ」とされ、持ち場を離れることの出来ない者達だけでなく、警備の為この場に来れない下位のシモベ達にまで気遣いをする至高の存在に対し、只でさえ高い忠誠のランクを上げた。

 その中で、デミウルゴスは思考を巡らせる。

 

 

(成る程、暫しの待機命令はこの為だったのですか……、エイジ様もお人が悪い。……それに、そのようなことをなさらずとも、エイジ様の御話を疑う者。……いや、愚か者など、このナザリックには存在する筈もないというのに)

 

 

 彼は心の中でエイジの配慮に喝采をしていた。

 

 

(……仮に、少しでも疑う様な者が居るとすれば……。私が全力を以て抹消しましょう……)

 

 

 デミウルゴスが少々物騒な事を考えている中、照明が落とされ、過去話という名のエイジ力作『起動武闘伝Gガンダム総集編』(六時間:休憩&倍速有り)は幕を開けた。

 

 暗がりの中、モモンガがエイジから何かを受け取っているのを、映像に集中するあまり誰も気付くことはないまま。

 




 暫くはエイジとモモンガ様の心の中はあまり掘り下げないという方針で描いております。

2016/08/04
 読みやすいように大幅修正。内容はほぼ変えていません。

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