武の竜神と死の支配者   作:Tack

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何を書こう…。
Σ(゜Д゜)
誤字・脱字・謎の日本語は御愛嬌でお願い致します。

以上!
…こんなんで大丈夫だろうか。


第二話【武神の帰還報告②】

 

 

 『玉座の間』。

 泣く子も泣かす最強最悪のPK集団であり、エイジとモモンガの所属するギルド、『アインズ・ウール・ゴウン(以下AOG)』。

 その拠点である『ナザリック地下大墳墓』最下層、第十階層に位置する部屋である。

 

 遡る事三日前、モモンガはこの場所でユグドラシル(想い出)の最後を迎えるつもりだった。

 だが、実際にサーバーダウンは起きず、その代わりに暫定的ではあるがこの異世界転移という異常事態が発生した。

 それからモモンガは情報収集や確認作業などの怒涛の三日間を過ごした。

 

 その玉座の間の隣……、とはいっても少々離れているが、その控え室の中でエイジとモモンガは最後の打ち合わせをしていた。

 

 

「では、そろそろ守護者達が来ると思いますから俺は行きますね。場が整い次第伝言(メッセージ)を送りますから、その後声を合図に入ってきて下さい」

 

 

 モモンガの言葉にエイジは頷き、それを見たモモンガは退室する。

 モモンガが部屋を出るとエイジは椅子へ座り、スキルを発動させるか少しの間悩む。

 

 

(……念の為、発動させておくか。これから集まるのは階層守護者、つまりはフロアボスだ。気付かれる可能性が高いからな)

 

 

 己の中へと意識を向け、自身の能力を再度確認しながら目的のスキルを見付ける。

 エイジはモモンガからある程度情報を聞き、更には自身でも確認していたのでこの辺りは問題なかった。

 

 

(姿や気配……、後は熱や音とか諸々……と)

 

 

 エイジがスキルを発動させると、控室からエイジという存在が消え去った。

 

 

//※//

 

 

 エイジがスキルを発動させてから暫くして、玉座の間に守護者達が徐々に集まり始めた。

 

 最初に現れたのは、第一から第三階層を守護する、真祖(トゥルーヴァンパイア)のシャルティア・ブラッドフォールンという少女。

 彼女は赤紫を基調とした、所謂ゴスロリ風のドレスを身に纏い、その見た目の年齢(十四歳程)に反するような不自然に大きい胸を揺らしながら、優雅に玉座の間に入ってきた。

 

 

「第一・第二・第三階層守護者、シャルティア・ブラッドフォールン。命に従い参上致しましたでありんす」

 

 

 妙な廓言葉を使い、大きな扉をくぐった所でその大きなスカートをつまみ上げ頭を下げる。

 それはさながら、舞踏会での名家の令嬢を思わせる仕草であった。

 そのシャルティアに、モモンガは上位者として振る舞う。

 

「忙しい中よく来てくれたな、シャルティア。感謝するぞ」

 

「感謝など勿体ない御言葉……。至高の御方の御望みとあれば当然の事でありんすぇ、モモンガ様。おや? 今回はわたしが一番乗りでありんすか?」

 

「そうだ」

 

 

 今回……というのも、実は三日前にもモモンガは各守護者達を集めたことがあった。場所は第六階層の円形闘技場(アンフィテアトルム)

 モモンガが現在の状況、そして何より裏切りの可能性を危惧し、NPC達の忠誠心を見定める為のものだったが……、それは取り越し苦労で終わっていた。

 

 そして、モモンガの言葉を聞いたシャルティアはそれなら……と言葉を切り、少し足早に玉座に座るモモンガの元まで行く。

 

 

「お邪魔虫の居ない間に、モモンガ様からの御寵愛を頂きとうありんす」

 

 

 シャルティアはそう言いながらモモンガの首に手を回し、まるで抱き締める様なポーズになる。

 身長が若干……所か大分足りていない。

 その結果、じゃれつく子供にしか見えない。しかし、相手はリアルでの女性経験が皆無のモモンガ。

 その中の鈴木悟にとって、シャルティアの行為は充分な威力を発揮した。

 

 

「お、おい! よせ、シャルティア!」

 

 

 モモンガの目の前に迫ったその顔は、美しさと可愛らしさの中間とも言えるもので、まるで蝋燭の様に白く、モモンガを見つめる瞳は真紅の色を宿していた。

 彼女の視線とモモンガの視線の視線が交差すると、シャルティアの白い頬が赤らむ。

 

 

「はぁ……、本当に美しい御方。正に美の結晶でありんすぇ……」

 

 

 そう、うっとりとした顔で何やらもぞもぞしていた時だった。玉座の間に二人目……、正確なは二組目と言った方が正しい者達が現れた。

 

 

「第六階層守護者、アウラ・ベラ・フィオーラ」

 

「お、同じく第六階層守護者マーレ・ベロ・フィオーレ」

 

「両名、御方の命に従い到着致しm……って、あー! シャルティア! あんたモモンガ様に何してんのよ!?」

 

 

 第六階層の守護者である|闇妖精(ダークエルフ)双子だ。その片方の姉アウラが叫び、そのまま玉座傍まで近づいていった。

 

 肩口までに揃えられた美しい金糸の髪は元気いっぱいです。そういわんばかりに多方向に跳ね、左右で青と緑と色の違う瞳はシャルティアへの怒りに燃えている。

 赤黒い竜鱗の軽装鎧を装備し、その上から金糸を織り込まれた白いベストを着用している。そして、下は上のベストに合わせた白い長ズボンを着用していた。

 

 

「アンタねぇー! モモンガ様の御迷惑になるんだから離れなさいよ!」

 

「おや? ちびすけ、いつの間に入ってきたでありんすか? 小さすぎて気付かなかったでありんす」

 

 

 シャルティアはアウラに対し呆れと優越感を混ぜたような顔で言い放つ。

 その態度に、アウラは拳を怒りで震わせる。

 

 

「な、な、なあぁ~んですってぇ!」

 

「お、お姉ちゃん止めなよ。モ、モモンガ様の御前なんだよ?」

 

 

 正に怒りが有頂天といった様子の姉に対し、弟のマーレが喧嘩の仲裁に入ろうとする。

 双子だけあって装備と性格、瞳の色が左右逆であること以外そっくりのマーレは、同じ金糸の髪をおかっぱ髪にし、藍色の軽装鎧の上に白い上着と緑のマントを着用、手には折れ曲がった木の様なスタッフを持っている。

 そして下は……、何故か短いスカートと膝上まである白のハイソックスを履いていた。

 念の為にもう一度言おう、この二人は姉弟だ。つまりマーレは男である。

 

 

「マーレ! アンタは黙ってなさい!」

 

「で、でも…」

 

 

 今にも消えてしまいそうな声で反論しようとするが、立場の強い姉に上から押さえられてしまう。

 

 

「毎度毎度ご苦労様でありんすね、マーレ。頭のおかしい姉を持つと大変でありんしょう?」

 

「…………黙れ偽乳」

 

 

 一瞬大人しくなったアウラの一言は、種族上のクリティカル無効という能力を持つシャルティアですら耐え難い、正しく痛恨の一撃を与える単語だった。

 

 

「んだとコラァ~ッ!!! この間といい今回といい、いい加減にしろやぁ~!!!」

 

「あらぁ? 本当の事を言っただけじゃなぁい?」

 

「あわ、あわわわ」

 

 

 モモンガがキャラ崩壊してるなと、誰にも聞こえないレベルの呟きを漏らす。

 そんな事を言ってる間にも両者の間には一触即発の空気が流れるが、それはその場に居た至高の存在によって終わりを告げる。

 

 

「いい加減にしろ、お前達……」

 

 

 そのたった一言でアウラとシャルティアは大人しくなる。

 叱責される覚悟を決める二人だったが、モモンガの口からは意外な言葉が発せられる。

 

 

「仲が良いのはいいが、もうじき全員集まるだろうからその辺にしておけ。いいな? それと両名も良く来てくれた、感謝するぞ」

 

 

 てっきり叱られるとばかり思っていた二人は安堵を浮かべると共に、モモンガが先日の時とは違ってとても柔らかな雰囲気を纏っているのを感じた。

 エイジの帰還がモモンガの心に余裕を持たせていたからなのだが、今の二人に知る由は無く、その疑問は暫く彼女達の心に残ることとなる。

 

 喧嘩が終わり、三人は所定の位置につこうとした。そこで背後から扉の開く音が鳴り、それに反応した三人が振り向くと、扉の向こうには異形が佇んでいた。

 

 

「何ヤラ騒ガシイト思エバ……、マタオ前達カ」

 

 

 玉座の間に響くのは、人以外の存在が無理矢理人を真似た様な声。

 その奇怪な声を発した持ち主は、重量感を感じさせながら歩いていく。

 蟻と蟷螂を融合させ、それが二足歩行をしているかが如き風貌。

 鎧のような外皮はライトブルーの輝きを放ち、四本の腕の右主腕とも呼ぶべき一本には巨大な白銀のハルバード。

 背中には二本の氷柱、尻尾は先端がスパイク状になっており、全体的に戦闘力の高さを伺わせるフォルムになっている。

 彼の名はコキュートス、第五階層の守護者だ。

 

 

「おお、コキュートス。忙しい中良く来てくれた」

 

「何ヲ仰イマス、御方ノ御呼ビトアレバ即座ニ」

 

 

 自身の属性の冷気を口から吐き出しながら答え、入口から玉座まで伸びる赤絨毯の上を歩き、玉座より少し離れた位置に控える。

 他の3人もそれを見て慌てて所定の位置に立った。

 正確にいえば意味は違うが、今現在呼び出すことの出来る階層守護者は六人。後二人が未だ姿を見せていない。

 

 

「残りは…」

 

 

 モモンガが残りの守護者の名前を口にしようとした時、扉が開き新たに数名が入ってきた。

 

 

「皆様御揃いで、遅れてしまい申し訳ありません」

 

 

 その中で最初に口を開いたのは、すらりとした長身に細い白のラインが入った赤いスーツを着こなす男、第七階層守護者デミウルゴスだった。

 

 彼は黒の短髪を立てて丸い眼鏡をかけており、やり手の営業マンを彷彿とさせる出で立ちをしていたが、他の面々から分かるように人間では無い。

 最高クラスの悪魔、最上位悪魔(アーチデヴィル)である彼の耳は尖り、鋼鉄を纏ったムカデの様な尻尾を生やしていた。

 

 

「人員配置に少し時間がかかってしまいました。申し訳ございません、モモンガ様」

 

 

 次に言葉を発したのは、全NPCの頂点と設定されている守護者統括のアルベドという女性だ。

 

 黒のロングヘアーに美しい白のドレス、胸元には蜘蛛の巣を思わせる金のネックレスを着けている。

 そこまでで見れば普通に美しい女性だが、頭から伸びる白い角と腰から生える黒い羽根が。

 そして、縦に瞳孔の割れた金の瞳が、彼女が人外の者だと証明していた。

 

 

「守護者の方々、そしてモモンガ様。失礼致します」

 

「「「失礼致します」」」

 

 

 最後に入ってきたのが、執事長セバス・チャンと彼の指揮の元で働く六人の戦闘メイド。

 『プレアデス』と呼ばれる武装メイド達だ。

 

 セバスの髪は白一色で、髭もまた同じ白一色の老人だ。

 白の手袋に黒の執事服を纏い、その瞳は猛禽類の様な鋭さを宿している。

 彼は厳密に言えば守護者ではないが、モモンガによって特別に守護者の同格とされている。

 

 残るプレアデスの面々も非常に多彩で、種族や能力、果ては着ているメイド服すら統一はされていない。

 皆特徴的に魔改造されたメイド服を纏っているのだ。

 因みにエイジの部屋に来たのは、このプレアデスの副リーダーであるユリ・アルファである。

 

 

「全員揃ったな?」

 

「はい、第四・第八階層を除いた各階層守護者。そしてセバスとプレアデス各員、ここに揃いました」

 

 

 守護者統括という役職を与えられているアルベドは、主人であるモモンガからの問に簡潔に答え、各員に規定の並びになるよう目配せをした。

 それを合図と決めていたかのように、全ての守護者達はモモンガに対し横一列になり、その中央を一歩進んだ所でアルベドが陣取る。

 そして、その脇にセバスとプレアデスの面々が絨毯に平行に並び、執事と使用人として控えた。

 

 どんな者が見ても完璧な並びだ、文句のつけようがない。――筈だったのだが。

 

 

「アルベド……。すまないが、今回は中央の列を少しだけ空けてくれ」

 

「何か我等の並びに御不満が御座いましたでしょうか?」

 

 

 モモンガ(主人)の言葉に、凛々しい表情をしていたアルベドの顔が一瞬で不安に染まる。

 

 

「いや、そうではない。寧ろ、お前達の忠義を感じることの出来る美しい配置だと思っている。だが、今回は少し特別でな。なに、じきに分かる」

 

「ハっ! それが至高の御方の考えであれば、私共シモベの中に異を唱える者はおりません」

 

「分かってくれて嬉しいぞ、アルベドよ」

 

「勿体無い御言葉で御座います! モモンガ様!」

 

 

 突如目を輝かせ、羽根をわさわさと暴れさせ、髪をわさわさと揺らめかせたアルベド。

 それを見たモモンガは、慌てて落ち着かせようとする。

 

 

「オ、オホン! ア、アルベドよ、これから大切な話があるので落ち着け」

 

「はっ! ――し、失礼致しましたモモンガ様! どうぞこの愚かな私めに罰を!」

 

 

 アルベドは頭を下げ非礼を詫びる。

 

 

「分かってくれたのであればよい。お前の全てを許そう、アルベドよ。」

 

「身に余る光栄に御座います」

 

 

 アルベドは感謝の言葉を述べ、身体を起こした。

 アルベドが落ち着きを取り戻したのを確認したモモンガは、今の流れを元に戻す為の言葉を発する。

 

 

「それにな、普段身を粉にしてナザリックの為に働いてくれているお前達を、たかがその程度で叱ったりなどしない。……それともお前は、私がそんなに器の小さい男だとでも思っているのか?」

 

「滅相も御座いません!」

 

「ならば良い、この話は終わりだ」

 

 

 それと、とモモンガは言葉を続けた。

 

 

「今日はある人物を皆に紹介したくてな、その人物が私に挨拶をするまでは目を伏せていて欲しい」

 

「理由は分かりかねますが、畏まりました」

 

 

 会話を終え、全員が新たに指定された通りの場所に跪く。

 守護者は跪いたまま、セバスとプレアデス達は絨毯横で直立のまま、皆目を伏せた。

 

 

「良し……。では、入って来て下さい!」

 

 

 モモンガが少し大きめに声を出し、更には敬語を使ったことにシモベ達は違和感を覚えた。

 

 玉座の間に声が響き、一拍の間を置いて大きな扉がゆっくりと開く。

 そして各員は、そこからゆっくりと歩を進める者の存在を感じた。

 モモンガから目を閉じる様に言われていたので誰かまでは分からないが、皆はその人物の存在感をひしひしと感じていた。

 まるで竜神が息を潜め、自分の前を通り過ぎる様な錯覚さえ起こしてしまう。そういった絶対的強者が直ぐ近くにいるという感覚。

 

 やがて謎の人物は跪く守護者達を過ぎ、モモンガの前で止まる。

 

 

「只今戻りました、モモンガさん」

 

 

 その言葉を聞いたモモンガ以外の者達は、思わず目を見開いてその声の発生元へ顔を向けてしまう。

 それはモモンガからの命令を無視した、本来なら許されざる行為であったが、モモンガは責めはしなかった。

 彼等の瞳から大粒の涙が溢れだし、まるで死別した恋人を見るような目で見ていたからだ。

 やがて、その人物はゆっくりと振り返る。

 

 そこには赤いマントを羽織り、同じ色の長い鉢巻きを頭に巻いた黒髪の人物が立っていた。

 胸元を開けたベージュのジャンパーを肘上まで捲り、下に着ている緑の長袖が顔を出している。

 手には甲と指先が開かれている手袋、下は黒というよりは紺に近い色のジーンズを履いていた。

 そして背中には、紐を襷掛けにして背負う一本の刀。

 眼光は鋭く、殺気を感じさせはしないものの、代わりに強い意思を感じさせる。

 全体的に質素な印象で、正に修行の旅をする武闘家という見た目をしていた。

 

 

「エイジ……様……」

 

 

 誰かが許可なく言葉を発し礼を欠く、だが繰り返す失態にも係わらず叱責する者は居ない。いや、出来ない。

 何故なら、この場に居た全員が同じ気持ちだったからだ。

 幽霊でも見た様な感覚だったのだろう。

 そんな時、おもむろにその人物が口を開く。

 

 

「我『武神 エイジ』、ここにナザリックへと舞い戻ったことを皆に告げる」

 

 

 その言葉に我に帰った守護者達は頭を垂れる。

 

 

(さぁ……、ここからだ)

 

 

 エイジは鉢巻きを締め直す気持ちで思った。




 妄想……、もとい想像力の高い方なら誰をモデルにしているか分かるかもしれません。

2016/07/31
 読みやすいように大幅修正。内容はほぼ変えていません。(一部変更あり)

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