武の竜神と死の支配者   作:Tack

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 前回の続きです。


幕間②

 

 

 シュバルツ達と別れた後、ドモンはもう一つの約束の為にロイヤルスウィートへと向かっていた。

 

 第六階層での予定が思ったよりも早く終わったこともあり、約束の相手が来るまで自室の整理をしようと思っていたドモン。だが、その相手は思いの外早く到着していた。

 

 

「随分と早いな、待たせたか?」

 

「イエ、私モ今来タバカリデスノデ……」

 

 

 絶対嘘だ、結構前からそこにいるだろう。

 心の中でドモンがツッコミを入れた約束の相手。

 それは第五階層守護者、凍河の支配者コキュートスであった。

 

 

「そうか。立ち話もなんだから、さぁ、入ってくれ」

 

「失礼致シマス」

 

 

 ドモンは扉を開けコキュートスに入室を促す。

 のっしのっしと音をたててコキュートスが入室し、ドモンは先に執務室のソファーに腰掛けた。

 

 

「コキュートスも遠慮せずに座ってくれ。……それと、忙しい中呼び出してすまない」

 

「イエ、私ハナザリックの守護ノミヲ行ッテオリマス故、時間ニハ多少余裕ガ御座イマス。ソウデナクトモ我等ナザリックニ生キル者達ハ皆、御方々ノ命トアラバスグニ馳セ参ジマショウゾ」

 

「そいつは何とも耳が痛いな」

 

「ハ?」

 

 

 コキュートスの言葉にドモンは痛い所をつつかれた気分になる。

 本人に自覚はないのかもしれないが、言っていることは自分はもっと別の機会で役に立ちたい、そう聞こえるからだ。事実、コキュートスは少なからず不満を持っていた。

 

 ドモンもアインズも、シモベ達のストレスはなるべく貯めさせたくないというスタンスを取ってはいたが、その為のシステム構築はまだだなとドモンは溜め息を吐いた。

 その行為を自分への不満と勘違いし、コキュートスは慌てて弁解をする。

 

 

「ド、ドモン様。大変失礼ナコトヲ……」

 

「ん? ……あぁ、違う違う。謝るのは寧ろ此方の方だ、コキュートス。お前の実力を発揮させられる機会を作れずすまない」

 

 

 ドモンはその場で頭を下げた。それにコキュートスは過剰に反応し、辺りに冷気をぶちまけることとなる。

 

 

「さて、今回お前を呼んだ理由だが……」

 

「御話中大変申シ訳御座イマセンガ、先ニオ聞キシタイコトガアリマス。……ソノ理由トハ、ドモン様ノ席ニモ関係スルコトデショウカ?」

 

「席?」

 

 

 コキュートスの言葉の意味が分からず、ドモンは自分の座る場所を見た。やがて、コキュートスの質問の答えに辿り着く。

 

 

「……もしかして、上座のこと言ってるのか?」

 

「ソノ通リデ御座イマス」

 

 

 当然とばかりに答えるコキュートスに、思わずドモンは吹き出してしまう。

 

 

「そういう所ホントに建御雷さんそっくりだよな、ハハハ」

 

 

 自分の造物主に相似する点があると言われ、嬉しい反面、恐れ多いと感じながらも、コキュートスはそれぞれの答えを求めた。

 

 

「上座について今回は不問だ。何せ、これから行うことは俺とお前の真剣勝負だからな。真剣勝負に上座云々は無粋と俺は考えている。……それと建御雷さんそっくりって言うのは、俺の部屋を作る時にレイアウトを協力してくれた人の中に彼がいて、その時にも上座のことを色々と言ってたのさ」

 

「オォ、左様デ御座イマシタカ。至高ノ御方ノ貴重ナ御話ヲ聞カセテ頂キ、感謝致シマス」

 

「そんな大したことじゃない。……あ、そうだ! 今アインズさんとお前達の褒美について考えているんだが、俺達ギルドメンバーの話とかはどうだ?」

 

「宜シイノデスカ!? ア……イエ、褒美ナドト……」

 

「気にするな、さっきアウラとマーレも言ってたからな。アインズさんには俺から言っておこう」

 

 

 普段から頑張っているシモベ達に対し、これで幾らかは恩返し出来るだろうかとドモンは思った。

 何の話がいいだろうかと考えていると、コキュートスの視線を感じたので、ドモンは本題に戻ることにした。

 

 

「あー、その話は一先ず置いといて、本題に入ろう。まずはコイツを見てくれ」

 

 

 ドモンがそう言いながら席を立ち、自身の執務用の机に向かう。

 そして、その一番下の引き出しから一つのゲーム(ボード)を取り出し、それをコキュートスの前に置いた。

 

 

「コレハ……何処カデ……」

 

 

 目の前に置かれた(ボード)。白黒の二色が交互に配置されたそれをコキュートスは自分の記憶のから探し出そうとするが、それについての情報が出てこない。

 少し考えた後、コキュートスは素直に答えを求めた。

 

「申シ訳御座イマセン。何分、記憶ガ不確カナモノデ……」

 

「別に謝ることじゃないだろう、知っている振りするよりよっぽどいい。『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』と言うからな」

 

「成程。ソノ御言葉、シカトコノ胸ニ刻ミ込ンデオキマス」

 

「あぁ。で、答えなんだが、これはチェスという遊戯をする為に必要なものだ」

 

「チェス…………アァ、思イ出シマシタ。ソノ名、確カデミウルゴスガ口ニシテイタカト……」

 

 

 ドモンはその言葉を聞き納得した。

 何故なら、ドモン自身にチェスの手解きをした人物。

それこそが、かつてのギルドメンバーの一人でありデミウルゴスの造物主、ウルベルト・アレイン・オードルその人だったからだ。

 

 

「……そうか。兎に角、そのチェスという遊戯を俺として貰いたいんだ。構わないか?」

 

「御方ヨリノ御誘イ、大変有リ難ク。……シカシナガラ、デミウルゴスノ話ニヨルトソノ遊戯、互イノ知略ヲ駆使スルモノト聞イテオリマス。ドモン様程ノ方ト私デハスグニ決着ガ着イテシマイ、然程楽シムコトガ出来ナイカト……」

 

「だが、それはやったことがないからだろう? 俺も最初はボロボロに負けてたさ、でも、何度もやる内に上手くなっていった。武の道と同じだ」

 

「左様デ御座イマスカ」

 

 

 自分勝手にことを進めていると自覚しながらも、コキュートスが一応納得したと判断したドモンは、自身の端末を使ってルールの説明を行おうとした。

 と、そこでコキュートスからの一言があり、それが元で疑問が生まれることになる。

 

 

「ドモン様、先日頂イタ端末ガアリマスノデ」

 

「でもそれ、第五階層にあるんだろ? 取ってくるのは……」

 

 

 次の瞬間、ドモンの表情が固まる。

 コキュートスが黒い歪み(・・・・)の中に手を入れ、そこから端末を取り出したのだ。

 

 

「先日ノ会議ノ際、ドモン様ヨリ頂イタモノハコウシテ持チ歩イテアリマス」

 

「え……あれ……?」

 

「ドウカナサイマシタカ?」

 

 

 少し驚いた様子のドモンを不思議に思いコキュートスは問い掛けるが、当の本人からは曖昧な言葉ばかりが返ってくる。

 

 

「成程……お前達もそうなのか……」

 

 

 それはエフェクトを見た限り、ドモンやアインズの使用しているインベントリだった。

 ドモンは思考を加速させて現状を整理する。

 

 

(俺達が使えるなら、とは思っていたが。実際に見れるとは運がいい、聞くのも何か変だしな。……後でアインズさんに報告しておこう)

 

 

 思考加速を止め、ドモンは話を元に戻した。

 

 

「あー、すまん。少し考えごとがあってな。とりあえずその端末を開いてくれ」

 

「分カリマシタ」

 

 

 コキュートスが端末を起動させ、浮かび上がるボタンを器用に押していく。

 

 

「今から俺の端末に入っているチェスに関するデータを送る。それを見ながらやってみようか」

 

「ハイ」

 

 

 それから二時間程の間、ドモンはコキュートスにルールやセオリーを教えながらチェスを楽しんだ。

 

 

//※//

 

 

 「チェックだ」

 

 

 ドモンが駒を動かし、コキュートスが敗北する。

 

 

「流石ニ御座イマス、ドモン様。ヤハリ私デハ相手ニナリマセンナ」

 

「そりゃあ始めたばかりだからだろ。その内、コキュートスに勝てなくなる時が来るかもしれない」

 

「御冗談ヲ。私如キガドモン様ニ勝利出来ルナドト……」

 

「謙遜するな。現に、何回か手を変えなくてはならない動きをされた。筋はいいと思う。……さて」

 

 

 ドモンは立ち上がり部屋の時計を見た。その行為に、コキュートスは別の予定の時間が迫っていることを察した。

 

 

「俺はそろそろアインズさんの所に行かなくちゃならん。お前はどうする?」

 

「守護ノ任ニ戻リマス」

 

「そうか。それと、さっき端末に入れたものの中にチェスのゲームが入っている。時間を見付けてやっておいてくれ」

 

「承知致シマシタ。次回ハ、ヨリドモン様ヲ楽シマセラレルヨウ精進致シマス」

 

 

 コキュートスの言葉を聞き笑顔になるドモン。二人は部屋を出て、それぞれの向かうべき場所に歩き始めた。と、そこでドモンが足を止める。

 

 

「あぁ、それと……」

 

 

 ドモンが言葉を発し、それに反応したコキュートスが振り返った。

 

 

「何デ御座イマショウ」

 

「――今から話すことは全ての俺の独り言だ。誰に聞かせる訳でもないから、返事は不要だ」

 

 

 コキュートスは返事をせず、了承ととったドモンは言葉を続ける。

 

 

「近々、シュバルツが発見した蜥蜴人(リザードマン)の集落に向かう。アインズさんは大人しく庇護下に入ればよし、そう言っている。……だが、彼等は十中八九抵抗するだろう」

 

「……」

 

 

 コキュートスは黙したままドモンの話を聞いていた。

 その先を予想しながら。

 

 

「もしそうなった時はナザリックの軍を動かすことになっていて、その大将はコキュートスだ。……戦に必要なのは事前に情報を収集すること、そして冷静さだ。……チェス、頑張れよ」

 

 

 そこまで言って、ドモンを背を向け歩き出す。

 手をひらひらと振るうドモンの姿が、コキュートスには自分を応援しているように見えた。

 

 

(ソウイウ……コトダッタノデスカ……)

 

 

 全てを理解したコキュートスは、背を向け歩くドモンに深い御辞儀をしていた。

 

 

(情報、ソシテ冷静サ……カ)

 

 

 ドモンからの言葉や自分が持つ情報、それらを整理する時間の為、コキュートスは指輪を使用せずに持ち場へと向かった。

 

 

//※//

 

 

「遅れてすいません」

 

 

 アインズの執務室の扉がメイドによって開かれ、コキュートスと別れたドモンが入室する。

 

 

「い……いらっしゃいドモンさん。皆今来た所ですよ」

 

 

 ドモンの姿を見たアインズは、危うく声が元に戻りそうなのを耐えながらそれを迎える。

 

 

「ドモン、見送りに来てくれたのか?」

 

「あぁ、勿論そうだ」

 

 

 執務室の中にはアインズの他にアルベド、シャルティア、八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジアサシン)。そして、シャルティアらと共にこれから任務に向かうシュバルツがいた。

 

 

「あぁ、シュバルツ達は後方任務だから危険は少ないだろうが……。くれぐれも油断はしないでくれよ? 無論、お前達も無理はしてくれるなよ?」

 

「おぉ、我等如きシモベにまで勿体なき御言葉。命に代えましても!」

 

 

 シュバルツの補佐として動く八肢刀の暗殺蟲(エイトエッジ・アサシン)達にドモンが声をかけ、それを彼等は大袈裟に受け取る。

 命はかけるなよ、そう突っ込みたい気持ちを抑えながらシュバルツを見ると。

 

 

「誰に向かって言ってるんだ? お前は」

 

 

 と、シュバルツからズバッと言われてしまった。

 ハハハとドモンはシュバルツの返しを笑い、その後で今回の任務における主役に視線を送る。

 第一から第三階層の守護者、シャルティア・ブラッドフォールンである。

 

 

「シャルティア、今回お前には前に出て暴れて貰うことになる。何があるか分からないから注意してくれ」

 

「充分注意していきますでありんす」

 

 

 それ言葉使いとしてどうなんだ? ドモンがそう思っているのも知らず、シャルティアは自分の手に持っていたアイテムを見せた。

 純白と漆黒、左右で色の違う籠手(ガントレット)。その名を『強欲と無欲』という。

 

 

「此度の任務の為、アインズ様よりこの世界級(ワールド)アイテムも御貸し頂いていますし、何も問題はないと思われます」

 

 

 世界級(ワールド)アイテム。

 ユグドラシルで最も貴重、かつ強力なアイテムの総称。

 一つも持っていないギルドはざらで、所持していたとしても一つ二つだ。

 それをAOGは十一個も所持している。

 

 しかしながら、いくら数を所持しているとはいえ貴重なアイテムであることに変わりはなく、本来ならば外に持ち出すものではない。

 

 では何故、今回外に任務に赴くシャルティアに渡すのかというと……。

 

 

「プレイヤーの存在ですね」

 

「ええ、俺やドモンさんのように此方へ来ているプレイヤーがいる可能性はありますから」

 

 

 ドモンやアインズはなるべく友好的な接触を望んではいるが、AOGは元々多くの恨みを買っていたギルド。

 此方でその名を聞く、もしくは、関係するだろう存在に会えば攻撃してくる恐れがあった。

 出来れば今までプレイヤーの目につかなかったシモベを選ぶべきだったが、今回の任務は街に行く予定の為、なるべく人の見た目のシモベを選出する必要があった。

 

 結論として、人に近い見た目、強さ、そして何より他の任務と並行しない者。

 それがシャルティアだった。

 

 

「本来ならば、今まで姿を見られる機会の多かったシャルティアに任せるのは酷なんですけどね」

 

「ええ。何たって最表層の守護者ですからね」

 

 

 両者が渋い顔……。無論アインズは雰囲気しか出ていないが。

 それをした時、シャルティアが二人を心配させまいと自分は大丈夫だと言った。

 

 

「御二人のお心遣い、このシャルティア・ブラッドフォールン有り難くお受けするでありんすぇ。……しかしながら、私もこのナザリックを護る守護者の一人。どうか大船に乗ったつもりでお待ち下さいでありんす」

 

 

 やけに自信満々なシャルティアに疑問を抱き、それについてドモンは質問した。

 

 

「随分自信があるみたいだが、何かあるのか?」

 

「何もありんせんで御座います」

 

 

 ドモンとアインズは思わずガクッとなる。そんな二人が見えていないのか、シャルティアは言葉を続けた。

 

 

「ですが……、ドモン様やアインズ様と同じ頂にいらっしゃられる我が造物主、偉大なるペロロンチーノ様に生み出され、その愛を一身に受けた私が失敗などする訳はありんせん」

 

 

 両手を胸に添え、目を閉じながら愛しい存在を静かに語る少女。

 普通にしていれば美少女のシャルティアの姿は、その場にいた全員の目を釘付けにした。

 

 

「そう……だな……」

 

 

 ペロロンチーノと最も仲が良く、シャルティアについて熱く語られたアインズは、シャルティアの言葉に目元が熱くなる錯覚を覚えた。

 

 

「……よし! 行ってこいシャルティア! ……お前の戦果、期待して待っているぞ」

 

「はい! 我がナザリックの栄光の為に! ……でありんす!」

 

「気を付けてね、マイハニー」

 

 

 マイハニー。自分のことをそう呼ぶのは一人だけ。

 シャルティアがハッとして振り返ると、そこには軍服姿の美丈夫。

 いつの間にか入室していたパンドラズ・アクターが、彼女に優しい笑みを向けていた。

 

 

「急に呼び出してすまなかったな、パンドラ」

 

「いえ、父上。私の方こそ申し訳ありません。一時的にとはいえ、父上より言い付けられている宝物殿の守護を離れているのですから」

 

 

 シャルティアが出立する日時が決まった時、アインズはパンドラにシャルティアの見送りをさせてやる為、シュバルツに頼んで一時的に分身を宝物殿の守護に回していた。

 

 

「慈悲深き御配慮、このパンドラズ・アクター深く感謝致します。……少しの時間とはいえ、愛する彼女と離れるのは些か堪えますので」

 

 

 パンドラはアインズに心からの感謝を述べ、同時にシャルティアと離れることの辛さを語る。

 笑顔は崩さないものの、形のいい眉はハの字になり、何処か暗い感情が見える。

 

 

「ダーリン……」

 

 

 造物主(ペロロンチーノ)偉大なる存在達の纏め役(アインズ)

 その両者が自分の為に決めてくれた許嫁の表情は、いくら栄えあるナザリックの為の任務といえど彼女の心を抉る。

 

 

「心配しないで、ダーリン。ペロロンチーノ様が仰られていたおまじないの言葉を教えるでありんすから」

 

「おまじない? ……至高の御方の御言葉だ、興味深いね」

 

 

 顎に指を当て、シャルティアの言葉を聞き漏らすまいと真顔になるパンドラ。

 一方のドモンとアインズもペロロンチーノが何を言ったのか気になり、シャルティアの言葉に耳を傾ける。

 

 

《ペロさん、変なこと言ってないといいんですが……》

 

 

 アインズが少しだけ不安になり、伝言(メッセージ)を送る。

 

 

《俺は大丈夫だと思いますけどね。意外に格好いいこと言ってるんじゃないですか?》

 

 

 ドモンは心配しておらず、少し考え過ぎだとアインズに言った。

 そして、シャルティアがパンドラに言ったおまじないの言葉とは……。

 

 

「私、この任務が終わったらダーリンとデートするわ」

 

「ん? どうしたんだい、急に」

 

((おいぃぃぃっ!!!))

 

 

 只の死亡フラグだった。

 その威力は凄まじく、ドモンとアインズの心を一瞬で不安のドン底に叩き付ける程だった。

 

 

「それが御義父上(おとう)……。いや、ペロロンチーノ様から教えて頂いたおまじないなのかい?」

 

「そうでありんす」

 

 

 ドヤ顔で胸を張って答えるシャルティアの姿は大変可愛らしかったが、ドモンとアインズは共に軽いパニック状態になっていた。

 

 

《ペロロンチーノぉぉぉっ! アンタなに余計なこと吹き込んでんだあぁぁっ!》

 

《お、お、おちけつ! アインズさん、大丈夫傷は浅い! 多分!》

 

 

 ゲームだった時ならばまだしも、現実となった今ではシャルティアの発言は洒落にならない可能性がある。

 造物主の話題になって盛りがあっている守護者達他所に、至高の存在達は頭を抱えていた。

 

 

《アインズさん。何か急に不安になってきたんで、俺からもシュバルツにアイテム渡しておきたいです》

 

《助かります。マジで助かります。寧ろお願いします、この通りです》

 

 

 ドモンの提案にすがり付くアインズは、守護者達に気付かれないように掌を合わせてみせた。

 それを見てドモンは、自身の手持ちからあるアイテムを取り出しシュバルツに渡す。

 

 

「シュバルツ。俺からもお前に渡しておこう」

 

「ん? …………おいドモン、これはまさか」

 

 

 ドモンが持ったアイテムを見たシュバルツは、それを目にした途端眉をひそめた。

 

 

「ドモンさん、それなんですか?」

 

 

 一見、メタリックな鱗に覆われた卵のように見える物体。アインズはそれに見覚えがあるような気がしたが、咄嗟に答えを聞いてしまった。

 

 

「これはデビルガンダムの一部……俺は種子と呼んでいるものです」

 

「「「えっ!?」」」

 

 

 それを聞いた面々は思わずドモンから距離をとった。映像でしか見ていないものの、その脅威は嫌という程知っているからだ。

 かつて世界すら飲み込もうとした巨大な存在(ゴーレム)。ナザリックにも似た存在であるガルガンチュアがいるが、あれでは恐らく相手にすらならないだろう。

 それがナザリックのシモベ達共通の見解だった。

 

 シュバルツが種子を少しの間見つめた後、ドモンの手の中にあるそれを何気なく受け取ろうとした時。

 

 

「止せシュバルツ!」

 

 

 パンドラが大声を張り上げた。

 

 ――このことについての補足になるが、アインズと和解した後パンドラは、ドモンより普段の仕草と言動を自重するよう言い渡された。

 ただ、元々造物主から命じられたことを自重させるだけではいけないと考えたドモンから、今迄通りの振舞いを許された場所、そしてそれをしても構わないという相手を指定された。

 それが宝物殿という空間であり、シュバルツという人物だった。

 二人はドモンが考えていた通りすぐに打ち解け合い、今では互いを無二の親友だとすら思う程になった。

 そのことからパンドラは、親友の身を案じた故に声を張り上げたのだった。

 

 

「大丈夫だ、パンドラ。そんな危険なものをドモンが私に寄越す筈がない。……だろう?」

 

 

 シュバルツはドモンの方を見ながら言った。

 その言葉を、ドモンは頷きを以て肯定し、シュバルツの肩に手を置く。

 

 

「勿論だ。戦いが終わった後、デビルガンダムの残骸を元に再生させた新生アルティメットガンダム。正確に言えばそれの一部だからな」

 

「全く……意地が悪いぞ、ドモン」

 

「すまなかった」

 

 

 ドモンはバツの悪そうな顔で守護者達に軽く頭を下げ、デビルガンダムの話を続けた。

 

 

「それから、完成したアルティメットガンダムだが……。俺達の世界の環境修復を終えた後、俺が所持することになったんだ。今はギアナの最奥にスリープ状態で待機させてある」

 

 

 再び執務室にいた面々が引いた。安全だと説明されてもこの反応、ドモンが今迄黙っていたのも、この反応が厄介ごとに発展するかもしれないと考えた為だ。

 勿論、映像を見せなければ、という案もあった。

しかし、それでは自分の話に信憑性を持たせることが出来ないと、ドモンは泣く泣く断念。そんな経緯があった。

 

 

「まぁ、その話はおいおいでいいだろう。それと、その種子の効果だが……」

 

 

 ドモンが効果について説明しようとすると、シュバルツが手を前に出しそれを静止させる。

 

 

「命令を出すと対象を捕縛する。一定時間壁や自立行動で味方を守る。……そんな所だろう?」

 

 

 シュバルツはニヤリと口を歪ませ、正にドヤ顔でドモンに言い放つ。

 説明内容をそのまま先に言われ口をポカンと開けるドモンだったが、すぐにシュバルツと同じ顔になった。

 

 

「流石だな」

 

「誰に向かって言っている? 一応ではあるが、設計兼制作者にしてお前の兄だぞ?」

 

「ふふふ、シュバルツの前だとドモンさんも形無しですね」

 

 

 アインズは兄弟ですねぇと笑いながら言った。

 他の守護者達もそのやり取りに思わずふふっと笑みを零す。先程までの空気が嘘のようになった。

 それから、作戦の最終確認をしてその場はお開きとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 文に違和感を感じつつも、どこをどう直せばいいのかわからないTackです。
 ドモン『聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥』

 アインズ「すいません、反省します」

 後書きすら滅茶苦茶になってきた……。

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