武の竜神と死の支配者   作:Tack

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第二十一話【神となった日⑨】

 

 

 自分の力だけで。そう上手くはいかなかったが、アインズは見事パンドラと打ち解けることが出来た。

 そしてそのことが、彼の心に少しばかり余裕をもたらした。 

 

 

「ドモンさん、今回のことは本当に有難う御座いました。お陰で目が覚めましたよ」

 

 

 アインズが素直に伝えた感謝の言葉。それにドモンは笑顔を以て返事とする。

 

 

「そうですよね。他の守護者達と同じようにパンドラも寂しがっていたんですよね、それなのに俺は……」

 

 

 アインズはつい先程までの自身の身勝手さを悔い、視線を床に落とす。

 それをドモンは気にすることではないと言った。

 

 

「もういいんですよ、アインズさん。大事なのはこれからなんですから」

 

「そうです……よね。……よっしゃ! 父さん頑張るぞー! 息子よ!」

 

「はははっ、その意気ですよ。……それに俺が少しフォロー入れといたので、アインズさんの気苦労も少しは軽減されている筈です」

 

 

 ドモンは何気無く言ったつもりだったが、その言葉はアインズの興味を大いにそそる物だった。

 

 

「何したんですか?」

 

「フフッ、禁則事項です」

 

「何かの台詞ですか?」

 

「それも禁則事項です」

 

「えー! 教えて下さいよ! ……ってコラ!」

 

 

 ドモンは内緒ですよーと言って走り出した。

 

 

「ふぅ、全くあの人は……。普段真面目なのに結構お茶目な所あるんだよなぁ。…………あっ、そうだ。用事とやらが終わったら連絡下さいよー!」

 

 

 走り去るドモンの後ろ姿に向かってアインズは叫んだ。

 ドモンの了承の意志の言葉を聞き、アインズは時間を潰す為に玉座へと向かった。

 

 

「それにしても……」

 

 

 玉座へと向かう途中、アインズはふと気にかかることを思い出し足を止める。

 

 

「用事って何だろう? ……まぁ、いっか」

 

 

//※//

 

 

「待たせてすまなかったな」

 

「いえ……、私も先程来たばかりですので……」

 

 

 ドモンが用事と言って向かった先は自室。

 そしてそこに居たのは、椅子にも座らず微笑みを浮かべたまま待つアルベドだった。

 

 

「座って待っていろと言っただろう? 何で立ってるんだ?」

 

 

 パンドラの一件を終えた直後、ドモンはアルベドを自室へと呼び出していた。その時に座って待っている様伝えていた。

 にもかかわらずアルベドは、ドモンが来るまで直立のまま待ち続けていたのだ。

 

 

「……まぁいい、取り合えず座ってくれ」

 

 

 アルベドに席を進めた後、軽く咳をし、改めて話を切り出した。

 

 

「今回は来てくれて礼を言う。急に呼び出してすまなかったな、色々とやることが山積みだという時に」

 

「至高の御方の招集とあらば、私達シモベ一同、如何なる時でも馳せ参じる心構えであります」

 

「助かる。何せこれからする話は、今後のナザリックの運命を左右する内容だからな」

 

 

 それを聞いた途端、微笑を浮かべたままである筈のアルベドの表情が変わった。

 

 

「……これからする話は要するに提案だ」

 

「提案……で御座いますか?」

 

 

 アルベドはドモンの言った言葉の意味が全く分からなかった。

 只でさえ、ナザリックの運命を左右する。そんな重大極まりない話を何故自分にするのかという疑問があったにもかかわらず、それを解決する前に新たな疑問が発生したのだ。

 

 

「あぁ、そうだ」

 

「……その提案と言うのは一体?」

 

「俺と手を組まないか?」

 

 

 アルベドは益々分からなくなった。

 自分と手を組め。その言葉の意味を模索していると、ある物がアルベドの視界に映る。

 普段誰かに向ける優しい微笑みなどでは無い──邪悪な魔神を感じさせる笑み──それを浮かべるドモンの顔だった。

 

 

「……恐れ入りますが、矮小なシモベである私には今の言葉の意味が分かりかねます……」

 

「簡単な話だ。ナザリックを俺の物にすると言うことだよ、アルベド」

 

 

 アルベドは微かに眉を動かし、警戒しながらドモンの言葉を聞き続けた。

 

 

「考えてもみろ? 何故俺のような強力な神が、アインズなどと言う弱小なる神の下に付き従わなければいかんのだ?」

 

「……アインズ様が弱小……ですか。随分と大それたことを口になさるのですね」

 

「お前には悪いが事実だからな。……あぁ、それと提案と言うのは対価があるんだ」

 

 

 ドモンは邪悪な笑みを浮かべたまま中空に手を伸ばした。

 そして、黒い歪みの中……。自身のインベントリから一つのアイテムを取り出し、アルベドに見せる。

 

 

「これは……?」

 

「俺が昔、ある場所で見付けた強力なアイテムだ。効果を分かり易く言うと……」

 

 

 アルベドは、このアイテムについての情報は持っていなかった。しかし予想は出来た。

 自分に対する提案の対価と言う物は一つしか無い。

 

 

「アンデッドに対する強力な束縛だ」

 

 

 やはりそうか。

 アルベドは心の中で舌打ちをした。

 この男は、あろうことか自身の友を売ったのだ。

 

 

「……」

 

「これを使ってアインズの奴を、そう……永遠にお前の物にすると約束しよう」

 

「私の……。……確かに、非常に魅力的な提案で御座いますね」

 

 

 アルベドは一瞬揺らいだ。愛する御方(アインズ)を永遠に自分の物に出来る。

 もしかすると、自分以外の者に奪われてしまうかもしれない御方。

 

 

「さぁ……、答えを聞こうか」

 

 

 ドモンの提案に対してのアルベドの答えは……。

 

 

「……これが……お前の答えか」

 

 

 どこからか取り出した自身の武器(バルディッシュ)を、ドモンへと向けることだった。

 

 

「……確かに、アインズ様が私の側で永遠に居て下さると言うのは魅力的です」

 

「……ならばこれは何だ?」

 

 

 自分の首筋に突き付けられた武器に、下手をすればそれだけで破壊出来るのでは? と思えてしまう程の圧を感じさせる視線を送りながらドモンは言う。

 

 

「私は……何処までもあの御方のお側に仕えると決めました。そう……、 例え世界の全てを……敵に回してでも!!!」

 

「クックックッ……」

 

 

 アルベドの決意のこもった言葉。

 それをドモンは嘲笑で返した。

 

 

「フッフッフッ……。アーハッハッハッ!!!」

 

 

 高笑いと同時に爆発的な突風が吹き荒れ、それに耐えられずアルベドは吹き飛ばされた。

 

 

「ガハッ!」

 

 

 壁や扉とは違う何かに激突し、アルベドは苦悶の表情を浮かべた。

 

 

「……い……今のは一体。……ここは!?」

 

 

 アルベドが周囲を見回すと、今まで居た筈の場所とは明らかに違う場所に居た。

 

 見渡す限りの荒野。空は夕焼けのような色をしており、ときおり見える雲に隠れきれない程の巨大な歯車がゆっくりと回転している。

 地面には所々岩が隆起し、全く生を感じさせない異質な空間。

 

 しかし、この空間を最も異質な物と感じたのは、荒野の至る所に突き立てられた幾つもの刀剣であった。

 

 

「お前にも模擬戦で見せただろう? これがリングだ。前回とは違う場所だがな」

 

 

 アルベドはいつの間にかドモンのスキル内に隔離されてしまっていたのだ。それと同時に、現在のこの状況はかなり絶望的でもある。

 

 

「これでは逃走し、他の者達に俺の裏切りを伝えることも出来んなぁ。そうだろう? アルベド」

 

「くっ!」

 

 

 アルベドは一度武器を突き付けはしたものの頭では理解していた。この男には万に一つも勝てないと。

 

 守護者屈指の武闘派であるコキュートスとセバス。

 その両者が視界に捉えるのがやっとという速度、そしてその速度を持ちながらもコキュートスを圧倒する膂力。

 前衛とは言え防御型の自分に勝ち目など端から無かった。

 しかも、あの模擬戦が真の力とは考えられなかったこともある。

 

 

 

「やれやれ、この状況も打開出来んとは……。タブラ・スマラグディナもとんだ駄作を生み出したものだ」

 

「ハァッ!」

 

 

 凄まじい速度でアルベドは距離を詰め、自身の持つ力全てを込めた一撃を繰り出す。

 

 

ガキイィィィンッ!

 

「いや……、この程度では駄作と言うにも烏滸(おこ)がましいな。愚かにも飼い主に噛み付こうとする駄犬……。いや、そこらの野良……雑種とでも呼ぶべきかな?」

 

 

 アルベドの渾身の一撃は無慈悲にも指で、それもたったの二本で止められてしまう。

 

 

「くっ!」

 

 

 アルベドが全力で武器を引こうとするが、ドモンに掴まれた武器はビクともしない。

 

 

「そんなに怒るなよ、雑種。どうせアインズ以外の者……。他の至高の四十一人のことも好いてはいないのだろう? 寧ろ憎んでいるのではないか? なぁ、アルベドォォォッ!」

 

 

 ドモンが指で挟んだままの武器に力を入れるとそのまま勢い良く飛び、アルベドの下腹部に直撃し吹っ飛ぶ。

 

 

「ぐぁっ!」

 

 

 ここに来た時と同じく岩に激突し、アルベドは地面に倒れこむ。

 

 

「どうした? もう終わりなのか? 至高の錬金術師である男に創造されながら、その程度でしかないのか?」

 

「タブラ……スマラグディナ様……。いえ……、あの男は……関係無いっ……!!!」

 

 

 土を集める様に拳を握り、その美しい純白のドレスを自身の血と砂で汚しながらもアルベドは立ち上がる。

 

 

「ほぅ、腐っても防御特化の前衛……と言った所か。耐久性だけはギリギリ及第点か?」

 

 

 アルベドはふらつく身体に鞭を打ちながらドモンを睨み付け、次の一手を繰り出そうとする。

 

 

「させると思うか?」

 

 

 されど眼前に立ち塞がるは武の頂点に立つ男。次の手を読んだのだろう。

 そんなことはさせんと先手を打つ。

 

 

「こ、これは!?」

 

 

 ドモンが徐に上げた右手に呼応し、地面に刺さっていた数々の刀剣がドモンの背後に集まっていく。

 

 

「面白い技だろう? 実はこのエリア……。俺は宝物庫と呼んでいるが。ここにある数えきれん程の神話級(ゴッズ)伝説級(レジェンド)の武器達は俺には無用の長物でな。しかし、それでは些か勿体無いとは思わんか? 伝説に謳われる武器を眠らせたままにしておくと言うのは。だからこうして……」

 

 

 上げた手をクイッと下げると、背後に集まっていた武器達が一斉にアルベドの方に刃を向ける。

 

 

「使うんだっ!!!」

 

 

 ドモンの叫び声と共に数え切れない程の刀剣が襲いかかる。

 

 

ドキャキャキャキャッ!!!

 

「キャアァァァッ!!!」

 

 

 その破壊力は凄まじく、着弾の衝撃でアルベドは天高く放り上げられる。

 

 

ドシャアァァッ!

 

「ぐっ!!」

 

 

 受身が取れず、再び地面に叩き付けられるアルベド。

 その顔には絶望の色が浮かび始めていた。

 

 

「どうした雑種……立て! 憎いのだろう俺が!! アインズを除く至高の存在が!!!」

 

「倒す……」

 

「何ぃ?」

 

「貴様だけは……必ず倒すっ!!!」

 

 

 アルベドの決死の心象を現す言葉。されどその言葉にドモンは嘲りを以て返す。

 

 

「クッハハハァッ! ほざいたなぁっ! ならば避け切って見せろ! 雑種ぅっ!!!」

 

ドキャキャキャキャッ!!!

 

 

 繰り返される神話の暴風雨。

 それをアルベドは時に身体を翻し、時に弾きながら直撃を避けていた。

 

 

(この攻撃がある以上距離を空けるのは愚策

……。ならばっ……!)

 

 

 武器の隙間を縫いながらドモンに向かって走り出すアルベド。

 狙いを読んでいたドモンは、そうはさせんと武器の射出速度を上げる。

 

 

「どうしたぁっ? お前のアインズへの愛はその程度かぁっ! タブラ・スマラグディナも泣いているぞっ!!!」

 

「あの……っ、男は……っ! 関係無いと言っているっ!!!」

 

 

 邪悪な竜王が操る神話の暴力を、アルベドは寸での所で耐えながら叫んだ。

 

 

「あの男は……っ! アインズ様以外の貴様ら至高の四十一人はっ!! あろうっ……事かっ、自分達の友であるアインズ様を置き去りにしたっ!!!」

 

 

 その叫びに反応し、ドモンの邪悪な笑みが少しだけ薄くなる。

 

 

「やはりそう思っていたか……」

 

「そうだっ! 貴様の……っ! 見せた話も信じて等いないっ! 他の奴等もそうだっ! どうせ我等の事をっ! ……アインズ様の事もっ!」

 

 

 愛する男(アインズ)の名を叫んだ所で嵐が突如止む。

 

 それと同じくして、まるでタイミングを合わせたようにアルベドは武器を落とし、力無く膝を着く。

 

 

「何とも思わずっ……見捨てていったのだろう……っ!」

 

 

 アルベドの視界が滲み、そのまま止めどなく涙が溢れる。

 それをドモンは、武器を停滞させたまま聞いていた。

 既にその顔から邪悪な笑みは消え失せ、申し訳ないと言う言葉を必死に口にしないようにしている。

 そんな表情をしていた。

 

 

「……雑種よ。あくまでアインズの側に付き従うか? その判断の先に幸福が訪れる事は無いとしてもか?」

 

「……何度も言わせるな。私の望みは、私の願いはっ……! あの御方の側に居続けることだあぁぁぁっ!!!」

 

 

 その叫びと同時に落とした武器を拾い、アルベドは相討ち覚悟でドモンに突っ込んだ。

 

 

「うわあぁぁぁっ!!!」

 

 

 それをドモンは只、静かに眼を閉じて待った。

 アルベドのバルディッシュがドモンの胴を薙ごうとした時、その戦闘に介入する人物が現れた。

 

 

「そこまでだっ!!!」

 

ガキイィィィンッ!

 

「!?」

 

 

 アルベドの一撃は、どこからか突然現れたシュバルツによって受け止められていた。

 

 

「シュバルツッ!? 邪魔を……、邪魔をするなぁっ! ……そうか、……貴様もその男と同じかぁっ!!!」

 

ギリギリギリッ

 

 

 アルベドは恐ろしい形相で力の全てを両手に込め、武器を押し込む。

 シュバルツはそれに耐えながら叫んだ。

 

 

「落ち着けアルベドっ!!! お前もそうだドモンっ! 他にお前の考えを伝える方法はあっただろう! これはやり過ぎだっ! 下らん芝居でアルベドを傷付けるなっ!!!」

 

「えっ!?」

 

 

 シュバルツの予想だにしない言葉、それはアルベドから幾ばくかの戦意を削ぐこととなった。結果、アルベドの武器に込められていた凄まじい力は消えることとなる。

 

 

「芝……居……?」

 

「ふぅ……。いいかアルベド。今回の事は全部、お前の真意を確かめる為にドモンが打った芝居だ」

 

「嘘……」

 

 

 信じられない。その気持ちがこれでもかという程にアルベドの顔に出ている。

 

 

「嘘っ! 嘘嘘っ!! 嘘嘘嘘嘘嘘よっ!!! だってその男は今まで……っ!」

 

「自分達に対し演技をしていた……か?」

 

「……」

 

 

 少し呆れる様な、それでいて優しく諭す兄のような口調でシュバルツは問い掛けた。

 

 

「ならば、アルベド。お前はドモンが今までナザリックの者達に送っていた笑顔が、その優しさが、全て偽りだったと断言出来るのか?」

 

「そ……っ!」

 

 

 そんなことは当たり前。

 そのたった一言を、アルベドは発する事が出来なかった。

 何故なら、心の何処かで分かっていたから。

 至高の四十一人はそれぞれ止むを得ない事情でナザリックを離れたのだと。自分達は見捨てられた訳ではないのだと。

 いや、実際そうであったとしても信じたくはなかった。

 

 

「そ、それじゃあこの男……。いえ、この御方は……」

 

 

 アルベドが視線を向けた先に、沈痛な面持ちで自身を見詰めるドモンの姿が目に入った。

 

 

「わ、わた、私はなんと愚かなこと……を……っ!」

 

 

 アルベドはその場で膝を付き大粒の涙を流した。

 

 

「俺がナザリックへ帰還した時、お前の笑顔の裏に激しい憎悪の感情を見た……」

 

 

 ドモンがアルベドに語りかける。

 

 

「その感情が俺だけに向けられるのならば、俺一人が罰を受ければいいと思った。だが、それがナザリック全体に害を及ぼす物ならば見過ごせない。……そう思ってな」

 

「……だから、あの様な……ことを言われたのですね」

 

 

 嗚咽を押さえながらアルベドは言葉を口にする。

 罪悪感が濁流となってアルベドを押し潰そうとしている。

 

 

「すまない……。だが、二つだけ言わせて欲しい」

 

 

 その言葉にアルベドは顔を上げ、ドモンの顔を真っ直ぐと見詰める。

 

 

「一つは、お前の処置だが。……処罰する必要は無しと判断した」

 

「有難う……御座います……」

 

 

 アルベドは頭を垂れ、精一杯の御辞儀をした。

 

 

「そして二つ目だが、……お前は創造主に見捨てられた訳ではない」

 

「え?」

 

 

 アルベドは疑問符を浮かべた。

 ドモンの行動が演技ではないと言うのは信じられる。されど、アルベドの中では、未だに創造主への懐疑心は拭いきれてはいなかった。

 

 

「証拠を見せてやろう」

 

 

 ドモンはスキルを解除し元の部屋へと戻る。

 それに伴い、アルベドが負っていた傷が嘘のように綺麗さっぱりと無くなった。

 

 

「付いてこい、アルベド」

 

 

 そう言って、ドモンは背中を向けドレスルームへと入っていった。

 未だ軽い混乱状態にあったアルベドはシュバルツの顔を見る。

 シュバルツはそれに気付くと顎を振り、行ってこいとジェスチャーをした。

 

 それを見たアルベドはシュバルツに軽く会釈をし、ドモンの後を追ってドレスルームへと入っていった。

 

 

「来たな」

 

 

 ドモンは腕を組み、何の片哲も無いクローゼットの前で待っていた。

 

 

「ドモン……様。先程の御言葉の意味なのですが……」

 

「まぁ、落ち着け。……確かこの辺……に……」

 

 

 何かを探るドモンの姿。それをアルベドは不思議そうな目で追っていた。

 

 自分に何を見せたいのか、また伝えたいのか。

 ある程度予想は出来たものの、自らの目で見るまでは信じることは出来なかった。

 

 

(タブラ・スマラグディナ様が私を見捨ててはいなかった? ……だけど、他の守護者達とは違い、私には自室すら与えて下さらなかった……)

 

 

 自分達を見捨てた訳ではない、されど状況的にはそちらの方が正しいと思えてしまう。

 理性と感情が入り交じり、アルベドの心は混乱していた。

 

 一方、目的の物を探し当てたドモンは、クローゼットの横のある箇所を押した。

 するとクローゼットが横にスライドし、奥に扉が現れた。

 

 

「ここに、以前俺がお前のことをタブラさんの愛娘と言ったことの証拠がある」

 

 

 恐る恐る手を当てると、扉は独りでに開き、中はちょっとした広さを持つ空間になっていた。

 

 

「ここは一体……? しかも、この位置だと御部屋に繋がっているのでは?」

 

 

 魔法的な要素だとは思いつつも、アルベドはドモンに問い掛ける。

 

 

「何て事は無い。こういう風に特殊な造りになっているだけさ」

 

 

 ドモンは軽く笑った後、アルベドを部屋の奥に佇む黒い箱状の物体の側まで連れて行った。

 

 

「えー、と。……我! 盟友との誓いを果たす者成り!」

 

 

 ドモンの声。正確にはパスワードに反応し、黒い箱がその色を徐々に変化させていく。

 

 

「こ、これは……!」

 

 

 アルベドの見ている前で透明になった箱には、この世の物とは思えない程美しいドレスが飾られていた。

 

 

「アルベド、これが一体何か分かるか?」

 

 

 ドモンの質問にアルベドは、自身の知識から拾い上げた答えを返す。

 

 

「……もし、私の知識と相違無ければ、これはウェディングドレスと言う物でしょうか?」

 

 

 正解だ。そう言ってドモンは軽くウィンクをして再びアルベドに質問をする。

 

 

「第二問。……これはある人物が作成を、これまたある人物に依頼した物なんだが……。作成を依頼した人物は誰だと思う?」

 

 

 ここまで来れば流石には答えは分かった。だが、未だに疑念が晴れず、分からないと嘘を吐く。

 

 

「そうか? なら答え合わせだ」

 

 

 ドモンは扉の側にあるスイッチを押し照明を落とす。

 そしてこう言った。

 

 

「動画コード、タブラ・スマラグディナ」

 

「え?」

 

 

 ドモンが口にした名前に驚くアルベドを他所に、特定コードを認証した部屋のシステムがヴィジョンクリスタルを展開し、ある動画が再生される。

 そこに映し出されたのは……。

 

 

「タブラ……スマラグディナ様」

 

 

 火力においてアインズを上回る魔法詠唱者(マジックキャスター)であり、また最高位の錬金術師。

 ある時は中二病の設定魔、そしてある時はクトゥルフオタク。

 至高の四十一の一角にして、アルベドや他の姉妹の創造主である人物。

 

 タブラス・マラグディナが映し出されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 




 相変わらず三文芝居+稚拙な文章+表現力皆無+etc...
 どうやったら表現の幅は増やせるのでしょうか? 最近そんなことばかり考えているTackです。
 意外と長くなってしまいましたが、もうそろそろ冒険者になりたい(切実)

 最後に、感想や質問。または指摘などをして頂ければ幸いです。(о´∀`о)ノシ

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