……えー、また書く事がありません。
言い訳になると思いますが、Tackはあまり面白い事を言える人間ではありません。(*´ω`*)
今回の話は時間軸を合わせる為要所において微調整がなされている話です。大体はアニメをイメージして書いたので、その辺りを想像しながら読むと「グッ」と来るかもしれません。
事実、書き終わった後流し読みした私はエイジの登場でジーンと来てしまいました。(自画自賛?)
村から続く道を二人の少女が必死に走っていた。まるで何かに追われる様に。
この二人の少女は姉妹であり、名を姉はエンリ、妹はネムと言う。
何故この姉妹がこの様な状況になっているのか。それを説明する為には少し時間を巻き戻す必要がある。
//*//
早朝。太陽が顔を出す頃に
朝の日課として家の
それをこなす頃には母親が朝食を作り終えており、それを家族四人で食べる。
その後は父親や妹と共に作業をする為畑に向かう。そこで彼女は父の手伝い、妹のネムは簡単な薪拾い等を行う。
ある程度作業が進んだ頃、村の広場の外れにある鐘が鳴る。それを合図に昼食を取り、また畑仕事に戻る。
空が朱に染まり出す頃、畑から戻り夕食となる。
夕食後は談話をしながら厨房の明かりで裁縫等を行い。そして一八時頃には就寝。
これがエンリ・エモットの十六年続けた一日の流れであり、これから先もずっと続くものだと彼女自身は思っていた。
変化としては、たまに外からの人間が訪れる事がある。
それが国の役人なら税の徴収を行うし、冒険者達なら仮拠点として空き家を借りに来る等の事はあった。だが変化と言ってもその程度だ。
しかしこの日は違った。
以前からよく薬草採取の依頼をこなす為、村の直ぐ側に存在する【トプの大森林】に頻繁に出入りしていた冒険者チームが居た。
彼等が今度別の国行くのでお別れになると言い、少し前に食糧を分けてくれた礼をしたいと言ってきたのだ。
そこで薬草を少し大目に採取し、その分を譲ってくれるとの事だった。
薬草は大変重宝するが、森の中は一般人にとって危険なので行くのは躊躇われていた。その為この申し出は非常に有り難いものだった。
エンリは喜んでネムと共に指定された時間・場所に向かった。
集合した場所では既に採取を終えた冒険者達が、エンリ達に渡す分の薬草を持って待っていた。
エンリ「お待たせしてしまってすいません」
ネム「すいましぇん」
頭を下げ遅れた事に非礼を詫びるエンリと、姉の真似をする妹のネム。
冒険者達はその様子を見て朗らかな笑顔で「俺達も今来たばかりだから大丈夫」と言った。
エンリ「あ、これ母からです。お口に合うか分からないけどお腹の足しにどうぞって」
そう言ってエンリは手に下げたバスケットから幾つか黒パンを取り出し、それを「いいよ、悪いよ」と遠慮する冒険者達に一つずつ渡していく。
冒険者A「済まないな、最後まで世話になって。しかもここ村から少し離れてたから大変だっただろう?」
エンリ「お気になさらないで下さい。寧ろ薬草を分けて頂けるというのにこれ位しか用意出来ないのは──」
エンリが申し訳ないという気持ちが顔に出てしまっている状態で話していると。
冒険者B「──美味いっ! いやぁ、流石君のお母さんが焼いたパンは美味いなぁ」
エンリ「えっ?」
エンリの表情が少し曇った事を心配した者が、いきなりパン受け取ったパンを食べ出し自ら笑いを取る事でそれを少しでも取り除こうと努力する。
冒険者C「ちょっ! お前今食ってどーすんだよ!」
冒険者D「そうだぞ、昼飯は馬車の中でって話しただろ!?」
演技が不自然なのをエンリが見抜き、それを彼等の優しさと理解し笑う。
パンを食べ出した冒険者もわざとらし過ぎたかと笑う。
それにつられネムや他の冒険者達も笑う。
エンリ「そう言えば、今日はいつもより人数が多いんですね」
冒険者A「ん? あぁ、実はコイツらのリーダーが怪我で引退する事になってね。それでそのリーダーと腐れ縁だった俺のチームと合流する事になったんだよ」
エンリ「あっ……」
エンリは余計な事を聞いてしまったと思った。それを察したのか、冒険者はフォローをする。
冒険者A「気にする事は無い。職業柄そういった機会は山程あるんだ。それにそいつは、普段の生活に支障は無いと言っていたから大丈夫さ」
冒険者の優しい言葉に少しだけ救われた気持ちになるエンリだった。
冒険者E「リーダー、そろそろ行かないとマズいんじゃないかしら?」
冒険者チームの紅一点の言葉にリーダーはハッとなる。
エンリ「何か御予定が?」
冒険者A「実はもう少し行った先に馬車を待たせてあるんだ。知り合いの商人がバハルス帝国からエ・ランテルに向かうついでに乗せてってくれるらしくてさ」
エンリ「大変! 私達の事はいいですから行って下さい」
薬草を譲って貰った上、彼等の貴重な時間を使う訳にはいかないとエンリは焦った。
冒険者F「では、リーダー。御言葉に甘えさせて頂きましょう」
冒険者G「そうしましょう。彼女達も村の仕事があるでしょうし」
いつもの冒険者チームは銀のプレートを着用していたがこの二人は銅。彼等が新しく加入したメンバーだろうとエンリは思った。
冒険者A「そうだな、行くか。……おっと、二人とも元気でな。縁があればまた何処かで会おう」
他のメンバーも皆別れの挨拶を言っていく。そして最後に、新しく加入したメンバーである魔法詠唱者から、後に彼女の心に生涯残る一言が発せられる。
冒険者G「お嬢さん。私は信仰系の魔法詠唱者をしております故、この言葉を贈らせて頂きます。【貴女と、貴女の大切な方々に神の祝福あらんことを】」
エンリ「有難う御座います。皆様も道中お気をつけ下さい」
そうして、彼等は商人との合流箇所を目指して去っていった。それをエンリとネムは木々に遮られて見えなくなるまで手を振って見送った。
エンリ「ネム、そろそろ行こうか。お父さんとお母さんが心配すると行けないからね。お昼御飯も冷めちゃうだろうし」
ネム「うん! 分かったお姉ちゃん!」
そう言って仲良く手を繋ぎながら村へ向かう二人。ここから村へは一時間もしない距離ではあったが、森が緩くカーブを描いている場所なので村は中々見えてこない。
と、そこへ。
エンリ「? 何か騒がしくない?」
ネム「ほんとだ、何だろうねお姉ちゃん。お祭り?」
エンリ「今日は祭りなんか無かったハズだけど……」
村に近付くにつれ、エンリの心に起こったざわめきは
大きくなり、そして現実となった。
エンリ「何よ……、これ……」
村は遠巻きに見ても分かる程凄惨な虐殺現場となっていた。先程から聞こえていたもの、それは村人達の悲鳴だった。
?「エ、エンリ……。はや……く……。逃げ……るんだ……」
微かに聞こえる声。それが聞こえた方を見ると、そこには地に伏す血塗れになった見知りの顔。
それを駆け寄って抱き起こしたエンリは事の起こりを聞く為話しかける。
エンリ「おじさん!? ……酷い。何があったの!」
しかし、エンリ達に逃げる様伝える為最後の力を振り絞ったのか、彼は事切れていた。
エンリ「……ネム。それを持って一人で並木道の方へ向かって。それでそのまま道をずっと真っ直ぐ行くの。そうすればさっきの冒険者さん達に会えるかもしれない」
ネム「お、お姉ちゃんはどうするの? お父さんは? お母さんは?」
エンリ「大丈夫。お父さんとお母さんを連れてネムの所へ行くから心配しないで。」
ネム「で、でも……」
不安で心を支配されたネムに、エンリは優しい笑顔で語りかけた。
エンリ「安心して。お父さんとお母さんもきっと無事だから、ね?」
ネム「う、うん。分かった……」
こくりと頷いたネムはエンリが持っていた薬草の入ったバスケットを代わりに持ち、そのまま走っていった。途中何度かエンリの方へ振り向きその度エンリは笑顔で手を振る。そして姿が見えなくなった頃決意の表情を作った。
エンリ「……ごめんね、ネム。お姉ちゃん嘘つきだ」
もう二度と会えないだろう。その事を改めて意識したエンリの頬を涙が伝う。
エンリ(行かなきゃ! 待っててね、お父さん! お母さん!)
エンリは未だ虐殺の続く村へと向かった。
//*//
死体。死体。また死体。
村に入ってから見るのは死体ばかり。そこまで広くない村なのでその全てが顔見知りだった。
その死体だらけの村を進みながら、エンリはようやく目的地である自宅を見付け、それに近寄ろうとした時。激しい音と共にドアが破られた。
エンリ「お父さんっ!?」
エンリの父「はっ! 逃げろエンリぃっ!! 逃げるんだぁっ!!!」
エンリの母「お願いっ! 逃げてエンリっ!!」
虐殺の犯人であろう甲冑の騎士と揉み合いながら飛び出してきた父は叫んだ。母もその身を挺して我が子を守ろうとする。
エンリ「お父さんっ! お母さんっ!」
エンリの父「冒険者達の所へ逃げろぉっ! エンリぃっ!!」
必死の形相で騎士に抗いながら叫ぶ父の姿にエンリは背を向け走った。
背後から両親の断末魔の叫びと「冒険者だと!? 面倒だ! あの娘を直ぐに殺せ!」という怒号が聞こえてくる。
エンリ(ネムを連れて急がなきゃ!)
先程ネムを送り出した道を冒険者達が通るであろう方向に進んでいると、エンリの目に信じられない光景が映る。
ネム「お、お姉ちゃん……」
エンリ「ネムっ!?」
何と村から大して離れていない場所でネムが座り込んでいたのだ。
エンリ「何でこんな所に居るのっ!?」
ネム「だ、って。ひっく。転んで薬草こ、溢しちゃって」
ネムはエンリと別れて並木道に入って直ぐに転び。その拍子に持っていた薬草を溢してしまっていた。
エンリ「そんなのいいから立って! 早く逃げるよ!」
エンリは泣きじゃくるネムの左手を引っ張りあげそのまま走る。
背後から追手の騎士達の声が聞こえる。
エンリ(だめだ! 逃げ切れない!)
自分が囮になってネムだけでも逃がそうと思ったその時。
ネム「あっ!」
エンリ「ネムっ!」
まだ幼い少女にはその速度で逃げ続けるのは無理だったのか、勢い余って転んでしまう。
ネムを起こし再び逃げようとするが、彼女に影が覆い被さる。
騎士A「やっと追い付いたぞ! この糞ガキ!」
とうとう騎士達に追い付かれてしまった。
そして剣を高く掲げネム目掛けて降り下ろす。
ザシュッ!
エンリ「きゃあぁぁぁっ!」
ネム「お姉ちゃん!」
その剣はネムを庇ったエンリの背中を赤に染める。
エンリの背中からドクドクと血が流れ、このままでは失血死しかねない。
騎士B「諦めろガキ共、どうせ誰も助かりゃしねぇさ。こちとらさっさと終わらせて酒でも飲みたいんだよ」
エンリ「ふざけないで!!」
エンリは騎士に食って掛かる。こんなふざけた奴等に村の皆は殺されたのか! エンリの心はその気持ちで一杯になった。
自分に力があれば。皆を守れるだけの何かがあれば。その想いが恐怖に襲われている彼女の心に火を着けたのだ。
だが、もう遅い。何もかもが遅い。
既に追い詰められ、背中には大怪我を負っている。
足も痙攣を起こしかけ、手は震えている。
騎士A「もう殺っちまうぜ」
エンリの背中を切りつけた騎士が再び剣を振りかざす。その刀身は日の光を浴びてギラつき、エンリの血が付着した箇所はもっと血を浴びせろと言っているかの様に思えた。
終わりだ。その気持ちが彼女に最後の激しい想いを叫ばせた。
エンリ「助けて──」
騎士A「おりゃあぁっ!」
エンリ「助けてよ! 神様ーっ!!!」
その時。一陣の風が吹いた。
?「任せろ」
パキィィィンッ!!
エンリ「え?」
瞬間。世界は時間を緩やかにした。
その言葉を聞いてから後ろを振り向くと風にたなびく赤いマントが視界を覆う。そして次に目に入ったのは見た事の無い緑の鎧。まるで童話に出てくる竜の様な鱗の鎧。
──貴女と、貴女の大切な方々に神の祝福あらん事を。
彼女は自身の願いが届いたと思った。
エイジ「貴様ら……。覚悟は……出来ているんだろうなっ!!!」
その日、
さすガン!! ……やっぱ流行らないか(´;ω;`)