東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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8 異変の終わりと

 そのアダムの言葉を聴いた者全員は訳が分からず首を傾げた。

 

「と言ってもどんな環境にするんだ?」

 

 魔理沙が皆を代表して訊く。

 

「少し説明する。水蒸気は露点に達すると近くにある塵を核とする事で、冷却せずとも液体になる。」

 

「随分難しそうな話だな。でもその事自体は魔法を習う時に何となくだが覚えているぞ。」

 

「逆に気温が高ければ露点も高くなる。そうすれば水蒸気量が自然に飽和の方向へと向かう様にするため、液体の水が蒸発する。」

 

「へ、へぇー......科学ってすごいけど分からないわ......。」

 

 霊夢が感心した声で言う。

 

「科学の基礎知識程度は覚えておくと日常生活にも活用できるから多少は学んでおく方が良いぞ。さて、つまり霧を解除するには霧を含む空気の気温を上昇させれば良い、という事だ。」

 

「なるほど、じゃああたしの出番だぜ!恋符「マスタースパーク」!」

 

 魔理沙は八卦炉を取り出し、太いレーザーの弾幕を霧のある上空に向けて放った。

 

 そして、魔理沙は八卦炉を横へと薙ぎ払った。

 

 かなりの量の霧が解けたが、それは全体の3%にも満たないだろう。

 

「私もやるわ。霊符「夢想封印・散」!」

 

 霊夢が弾幕を上空へ放ち、上空へ行き着いた弾幕は爆散した。

 

 だが、魔理沙が解除した分を含めても全体の5%しか晴れていないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、リョウの自宅では。

 

「こちらリョウだ。ロウ、居るんだろ。」

 

 リョウが液晶画面の前でそう言うと

 

『ああ、居るさ。で、何の用だ?』

 

 液晶画面に人の顔が映り、言葉を返した。

 

「それが、まずここ6週間程度の結界の観測データを送って欲しい。出来るだけ時間間隔を短くして。」

 

『いいけど、送信に時間が掛かるぞ。一体何があった?』

 

「こちらで3時間程前に異変が起こってな、赤い霧が発生した。しかし、霧が少しずつ黒くなって、今じゃあ霧に黒い塗料を付けてるんじゃないかと思う程に霧が黒くなっている。」

 

『こちらで結界の観測データの過去6時間分を見てみたんだが、確かに3時間前から現在まで結界が異様な歪みを見せているぞ。それで、その霧はどんな悪影響を及ぼしているんだ?』

 

「それがな、あらゆる妖怪を凶暴化させている。里にも襲いに来ている程だ。俺が思うに、乱れた結界が異変を異常にさせ、それが更に結界を乱すかも知れん。」

 

 その時、リョウの背後から ガシャン! と音がしたと思うと、リョウはすぐさま振り向いた。

 

 そこには、リョウには種類が分からないが、目が赤く光り、爪と歯を尖らせた妖怪がいた。

 

「ウギャアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」

 

「うるせぇ!家宅侵入罪でぶっとばしてやるよ!」

 

 リョウは躊躇なく妖怪を家の外へ殴り飛ばすと、再び液晶画面の前に座った。

 

『......リョウ、あまり目立たない様にしろ、とドニーさんからも言われたはずだ......。』

 

「知るか!人の家を壊すアイツが悪いんだろうが!てめえ弁償しやがれ!」

 

『......まあ別に良いとして、どうやらそちらへの送信が完了した様だ。』

 

「ホントか?じゃあ早速見てみるとするか。ロウ、お前はもういいぜ。サンキューな。」

 

『ああ。だが良いのか?異変は解決していないんだろ。』

 

「それはアイツ等がやってくれているから大丈夫な筈だ。」

 

『そうか。それとお前が調べて欲しいと言っていた事だが、今まで調べた管理軍のデータの中にアダム・アンダーソン、という人物は存在していない。また、あの立方体もデータが全く無い。』

 

「マジかよ。それで、どの段階まで調べた?」

 

『一番奥の一歩手前だ。もしかしたら奴やあの立方体はとんでもない計画に関係するかも知れんな。』

 

「調べてくれただけでも感謝するぜ。」

 

『そうか。それでは通信を終了する。』

 

 液晶画面に【通信終了】の文字が映った。

 

「さてと、俺が此処に来たのは5週間前だったか......この時も結界が異様に歪んでいるな。アダムが来たのは一週間前で......この時もか......。」

 

 リョウは結界の観測データを見ながら何か考え込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒い霧は霊夢、魔理沙だけで無くレミリア達紅魔館の住人達の力を借り、それによって全体の4割程が解除された。

 

「これで4割か。あたし達はもう無理だぜ。というかアダムはしないのか?」

 

「銃弾は液体には作用するが、雲や霧であれば密度が低いため余り影響しないだろう。それに、銃弾は一種類しか打てない。」

 

「......もう駄目かしら......。」

 

 霊夢が呟く。

 

「......魔理沙、その八卦炉という物を見せてくれ。」

 

「いいけど?」

 

 するとアダムはリュックに入っていた工具で外壁を外した。

 

「ちょっ、お前なにやっているんだ?!壊さないでくれよ?」

 

「壊しはしない。どれ......。」

 

 アダムは外壁の外れた八卦炉を観察した。

 

「......回路に無駄があるが、中々使えるな。魔理沙、これを使っていいか?」

 

「ん?ああ、いいぜ?」(無駄があるだって?って事はもっと強力に出来るのか?)

 

 アダムは八卦炉の外壁を付け直し、八卦炉を骨折していない右手に持って空へ向けた。

 

「はあああああ!!!!!」

 

 八卦炉からは魔理沙の物よりも更に強力なレーザーが発射された。

 

 レーザーは霧全体の2割程を消し去った。

 

 残りの霧は4割程。

 

「......アダム、あなた何者なの?」

 

「冗談じゃないぜ。あんな威力の弾幕は今まで見たことが無い。」

 

「それは自分でも疑問に思うな。”普通の人間”では無い事は確かだろう。だが今の一発でエネルギーを使い果たしてしまった......。」

 

 アダムは無言で空を見上げた。

 

「......う、うーん......。」

 

「あっ......フラン、大丈夫?」

 

 レミリアは自分の妹が起きた事に気付いた。

 

「お姉さま?うーん、体のあちこちが痛いなぁ......頭の後ろとか胸の左とか......まあ大丈夫だけど。」

 

 すると、アダムが振り向き

 

「フランドール、あの霧に向かって可能な限り弾幕を撃ってくれ。」

 

「あ、アダムだ。霧に向かって?いいよ。禁弾「スターボウブレイク」!」

 

 フランは、最後にアダムへと放った弾幕と同じ物を霧へと放った。

 

 この一撃で、霧の1割が消え去った。

 

「ねえ、もっとやっていい?」

 

 フランが自分の姉に訊く。

 

「いいけど、貴方は大丈夫なの?」

 

「うん!霧を消せばいいんでしょ?禁忌「レーヴァテイン」!」

 

 フランの右手に彼女の1.5倍の長さのある大剣が握られた。

 

「じゃあ行って来る!」

 

 フランは外へと飛び出し、上空へと飛んで行った。

 

(あの威力の攻撃を放ったにも関わらず、まだエネルギーが尽きていないとは......尋常じゃない程のエネルギーだ......。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場所は地球歴0017年の地域名アジア-カルイザワ、と呼ばれる地域のとある研究施設に移る。

 

「あれから一週間経つが、未だに「バースト」が出来ていない。しかも生存信号と死亡信号両方を感知出来てない。奴の実力なら幻想郷の範囲を考慮して3日程で任務を終える筈だ。ポール、お前ならこの事態をどう捉える?」

 

 ディック中佐はポールと言う男性に苛立ちを募らせた様な口調で言う。

 

「彼は薬剤に対する耐性が異常に高いですからな。恐らく「トランセンダー」が効かなかったのでしょう。両方の信号を感知できないのはそれ程肉体の損傷が激しいのでしょう。ですが、彼ほど優れた「トランセンデンド・マン」はそうはいませんが......。」

 

「薬剤の耐性か......私としたことが見落としてしまっていた......"あれ"に匹敵する奴はそうはいないと言っても全くいない訳では無い。それに、現在「兵士再生計画」と「TM量産計画」そして「改造兵士計画」の3つを掛け合わせた複合研究を行っている「超越人」は「アンダーソン・シリーズ」を含めて5種類ある。と言っても現時点で”生産”に成功しているのは「アンダーソン・シリーズ」が1体のみで、あの幻想郷へ送った物がそうだ。」

 

「それなら「フリードマン・シリーズ」が”生産”に成功する地点まであと一歩の部分です。」

 

「そうか。あれはかつて最強と呼ばれた「トランセンデンド・マン」で、しかも今までで10年という歳月を掛けた代物だ。遂に成功となると嬉しいものだな。なら成功した次第、直ちに「インヴァイジョン」を行う様に”調整”しておけ。ところで、あとどれ位掛かるか?」

 

「そうですね......あと一歩と言えど、最低で3か月は掛かるかと......。」

 

「なあに、10年という月日から見れば短いものだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、場所は幻想郷の紅魔館に戻る。

 

 フランは己の身長よりも遥かに長い大剣を振り回し、結果、黒い霧は全体の10割、つまり全てが消えた。

 

「これで異変解決ね。」

 

「そしてレミリア、今夜は博麗神社で宴会だ。」

 

「え?何故?」

 

「異変を起こした者は異変解決されると解決した奴の家で宴会を開く、ってのが幻想郷のルールなんだぜ。料理は異変を起こした奴らが出すんだ。」

 

「そ、そう......咲夜、戦いが終わったばかりで悪いけど、お遣い頼むわ。」

 

「かしこまりました、お嬢様。」

 

 咲夜は躊躇う事無く、早速里へと買い物に出掛けようとバックを用意し、そのまま紅魔館から飛び出て行った。

 

「アダム、私たちは一旦家に帰るわよ。」

 

「ああ、分かった。」

 

「それにしてもお前、凄く強かったな!感激したぜ!」

 

 魔理沙が面白かった、と言うような感じで言った。

 




紅魔郷は次回で終わりです

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