東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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やっと地霊殿終わりかよ...(他人事)


74 メッセージ

「鼻くその秘密を、そっとはなくそう。」

 

「ガハハハハハ!!!!!」

 

 寒い駄洒落に対し、明らかに温度差の違う者が3人。

 

 リョウと萃香と勇儀が呑みまくっているのだ。

 

「あーうるさいわねえ......。」

 

「まあ良いんじゃないの?」

 

 一応酒を飲んでいる霊夢と魔理沙だが、騒がしい空気に呆れ寧ろ冷たくなっている。

 

「アダムは飲まないの?」

 

「別に要らない。それ程美味いとは思わない。」

 

「ええ~何で?」

 

「さあな、燃料だからという一種の先入観なのかもしれない。だが良い味だとは思わないが。」

 

「そうか?私なんか酒なんてなかったら人生詰まんないぜ。」

 

「あくまで個人の感想だ。」

 

「思ったけど、アダムってあんまし、何と言うか、他人を気にしないって言うか、普通と違う考え方よね。」

 

「......その辺りは自分でも良く思う......人に従うのが何となく嫌なんだ......まるで自分が一つの機械を動かす部品の様で......。」

 

 霊夢達が話題が不味かったと困惑したが、果たしてどう話題を変えるべきか思い付かなかった。

 

 アダムが次の言葉を発したのは5秒後だった。

 

「......僕が「ルーラー」に操られていた時、夢を見た。僕は子供だった。大人が僕に命令をする。だけど僕は嫌だった。だけど僕は従わざるを得なかった......。」

 

「一体何の話なんだよ?」

 

 魔理沙が話の要点が分からず訊いた。

 

 だがアダムはそれに答えず、話を続けた。

 

「霊夢、何故か君の事が思い浮かんだ瞬間、僕は目を覚ました。不思議だよ。」

 

「それってどういう......。」

 

 霊夢は顔を少し赤らめたが、それ以前に話が理解できず訊いたが、アダムは答える事無く続ける。

 

「僕がガミジンと戦った時、僕はクローン、特定の人物を元に作られた複製の人間、だと告げられた。」

 

「アダムが、作られた......?」

 

 霊夢が驚きのあまり絶句する。

 

「ガミジンから聞けば僕は感情を抑えられた人間だそうだ。」

 

「だからあんな......。」

 

「だけど僕は自分が知らない存在が自分に芽生えている事を感じている。強いが、不安定だ。それが感情という物なのかも知れない。」

 

 アダムの話は止まらない。

 

「僕はこの感情という物がどんな良さや力を持っているか身をもって体験している。」

 

「はあ......。」

 

 魔理沙が何て言えば良いのか言葉が出ず呆れ声を出した。

 

「ごめんけど、一体何を伝えたいのか分からないんだけど......。」

 

「......僕も分からない......まるで起きているのに夢を見ている様なんだ......。」

 

「......変な話だな......。」

 

 3人共黙り込み、この話題(?)は終わった。

 

「いや~終わったなあ~。」

 

 カイルが腕を組み伸ばし、横になってリラックスの体勢になる。

 

「くつろいでいるカイルさんを見たの初めてです。」

 

「ん?ああ、まあ普段はちょっと無理してるからね。僕にも結構面倒臭がりな所はあるよ。」

 

「ちょっと意外ですね。」

 

「その分、物事を効率的に考えられる様になっているけどね。極端に言えば怠ける為にあるのが技術だからね。研究者としては間違っているけど。」

 

 カイルが苦笑しながら早苗へ返事する。

 

「しかし、気掛かりな所もあるなあ......。」

 

「えっ?」

 

 カイルは折角事件が終わったのだから真面目な話はよそうと思っていたが、うっかり口を滑らせて喋ってしまった。

 

 言ってしまったならせめて最後まで話そうか、カイルはそう判断した。

 

「......管理組織の目的は幻想郷の結界を「爆弾」で破壊し、攻め込んで支配する事だ。だけど、今回は明らかに目的から外れている様な行動だった。普通なら「爆弾」の回収を優先的にするべきだ。それなのに「爆弾」には見向きもせず、まるで味方討ちの様な行動まで見られた。」

 

 アダムが幻想入りした時に持ち込まれた多量にある立方体の「爆弾」には発信機が付いている事も分かっており、つまり爆弾の場所は分かっている筈なのだ。

 

「それは後にしよう。”生存者”も居るから聞き出せるし。」

 

 カイルが目線を向けた先には横たわる「破壊神」の姿があった。

 

「......私達に危険が及ぶんじゃないでしょうか......。」

 

 早苗がそう言うのも無理は無い。

 

 何せ核兵器すら超える力を有しているのだ。

 

「さとりから聞いたんだが、操られていない時僕達に敵意は無いらしい。こちらから危害を加えなければ大丈夫だ......とは思うんだけどね。それに味方に出来れば頼もしい戦力だ。アダムとリョウもそれに賛成してくれた事は少し驚いたよ。」

 

 アダムとリョウは共に自分と似通った所を見出し、それによって受け入れたのだ。

 

「まあ話はこれぐらいにしておいて。」

 

 丁度話を終えた時、別の誰かから話題が振られた。

 

「あのーお兄さん......。」

 

 声を掛けたのは燐だった。

 

 隣にはさとりも居た。

 

「何だい?」

 

「先程は私や燐や他の皆を助けて下さってありがとうございます。」

 

 先に言ったのはさとりだった。

 

「どういたしまして。僕は皆が無事であればそれで良い。」

 

「あたいも死体を持って来なければこんな事には......。」

 

「別に責める事は無いよ。どちらにしても相手は起きるだろうし、こんな地下深くに戦場が出来上がった訳だから周辺被害は少なく抑えられた。僕も、君達には助けてもらったよ。こちらこそありがとう。」

 

「いえ、当然の事ですから......何かお礼でもしましょうか?」

 

「私も、何時も助けられているから、何かお礼がしたいです。」

 

 会話に早苗が割って入った。

 

「......こちらに協力してくれるなら別に礼は要らないよ。それよりも、面白い話でもしよう......。」

 

 早苗とさとりはやけに真剣にカイルの話を聞いていた。

 

 丁度リョウは萃香と勇儀との談笑を終え、慧音と話していた。

 

「あいつを受け入れるなんて、何というか、お前も物好きだな。」

 

「まあな。アイツには何か俺に似た所がある......。」

 

 リョウが珍しく悲しさを帯びた声で言った。

 

 「破壊神」は眠り続けている。

 

「リョウ、その大丈夫だったのか?」

 

 「何が」大丈夫なのか、それはリョウも慧音も知っている。

 

 というか幻想郷内でこの2人のみが知っている。

 

「大丈夫だ、問題無い......分かった、冗談はやめるぜ......丁度トレバーと戦っていた時だ、俺は何としてもトレバーを生きて戻してやるつもりだった。だが「奴」は躊躇無く跡形も無く消してしまった......。」

 

「......。」

 

 親しい者を失う辛さは2人共良く知っている。

 

 慧音は親しい人間が寿命により死んでいくのを数え切れぬ程見て来たし、リョウに至っては目の前で「奴」が大量の人物を何度も殺すのを見て来たのだ。

 

「だけど、お前達のお蔭で助かったんだぜ。俺は良く知る自分から逃げようとしていた。なのにお前達は知りもしない、遥かに強い敵に向かって行く。俺のやってる事が馬鹿馬鹿しく感じた。ありがとよ。」

 

「ああ、もしお前が堕ちても私が引きずりだしてやる。お前なんか私からしたらまだ手の掛かる子供だ。」

 

「フッ、ならお前も俺から見ればお節介な婆さんだな。」

 

「なんだとっ?このっ。」

 

「だって1000年は生きてるんだろう?還暦を16回迎えたって気分はどうなんだ?」

 

「全くもう、こんな美人にそんな事を言うなんて失礼だぞ。」

 

「お前、誰かに似て来たか?」

 

「誰かさんのお蔭で影響されて冗談を言う様になったからな。」

 

「ヘッ、後はロックさえ刻み付ければ洗脳完了だな。」

 

「......相変わらずだな。でも良かった......。」

 

 慧音が安心した様な声で言った。

 

 それに対しリョウが拳を握り締めたのは果たして誰か気付いただろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ......「破壊神」は失ったか......。」

 

【次候補固体名:ノア・アレクサンダーソン】

 

「やはりそいつか。だが敵側に居る以上捕獲する必要がある。それに本当に「あの力」を持っているのかすら明確では無い......しかし可能性が無い訳では無い。」

 

【監視レベルを上げますか?】

 

「ああ、だが逆探知だけはされるな。」

 

【了解】

 

「ついでに、「オリンポス」シリーズの進捗具合はどうだ?」

 

【P2世代「ガイア」完了 P3世代「ウラノス」完了 A1世代「ゼウス」50%完了 他P2世代40%完了 他P3世代30%完了 他A1世代25%完了】

 

「なら「ゼウス」を優先的に完成させろ。」

 

【了解】

 

「......計画もそう上手く行くものでは無いな。何より反乱軍の指導者が出来る奴だ。確か1億人、全人口の1割だったか。しかも所属する人数はかなりのペースだ。今の時点でかなり厄介だと言うのに更に勢力を増そうとしている......ユニバーシウムの採掘が可能な所は他にあったか?」

 

【現時点で火星と月に微量確認し採掘中 月に幻想郷の結界と似た構造のエネリオンを同量観測 内部にユニバーシウムが含まれる可能性高】

 

「つまり幻想郷は地球だけには無いという事か?」

 

【その可能性があります】

 

「......折角だ、プロトタイプの「オリンポス」シリーズの性能確認を兼ねて月でもユニバーシウム・マイン計画を展開するぞ。」

 

【了解】

 

「さて、コーヒーでも飲もうかな。ジャワ産が良いな。ナポレオンみたいにブランデーを燃やしながらでもするか。」

 

 殺風景な部屋に居る男は椅子から立ち上がり、2つある内正面の方のドアを開け、部屋から出て行った。

 

 ドアは中途半端に開かれたままだったが、急に勢い良く閉まり、鍵が掛けられた。

 

 その傍を誰かが通り過ぎたが、何とも無い様な素振りだった。

 

 いや、何とも無さを装っていたとでも言うべきか。

 

 監視カメラではただ通り過ぎただけにしか見えなかったが、彼の思考を映す事は出来ない。

 

(私は必ず真実を暴いてみせるぞ。アダム、お前も幻想郷で頑張ってくれ。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その時アダムがメッセージを受け取ったのは果たして偶然か、

 

 辺りを見回すが送り主と思しき人物は居なかった。

 

「どうしたの?」

 

「......いや、何でも無い。」

 

 だがアダムは内心懐かしさを覚えていた。




次はやっと日常に入る と、思うじゃん?

設定集書かねば...

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