東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
日常までは我慢して下せえ
中間テストもあって投稿遅れそうです
アダムは頭痛に襲われていた。
しかし、それでいて戦闘中なのに自分がリラックスし、冷静に判断出来ている事を妙に思っていた。
それどころか何か未知の事を知っている様に思えてきた。
(......違う、奴の弱点は......。)
アダムは無意識の内に飛び上がっていた。
ガミジンの頭上数十cmを飛び越え、後方にナイフを繰り出す。
刃は腕に阻まれ、今度は回し蹴りを4連続で放つ。
上段、下段、中段、上段、しかしどれも外れる。
ガミジンが隙を突いて肘打ちを放つが、受け止められる。
肘打ちから手刀に変え、槍の様に次々と突き出す。
対するアダムはナイフで攻撃を逸らし、突然銃を取り出し頭へと連射しながら接近し始めた。
音速の5倍もの銃弾を腕で防ぎ、接近するアダムへと腕を突き出すガミジン。
するとアダムは体勢を低くして刺突を避け、足元へとスライディングキックを決め、ガミジンのバランスを崩すと同時に背後を取った。
倒れかけているガミジンの首の後ろにナイフを斬り付けた。
肉を裂く以外に微かに金属らしき手応えを感じた。
(よし、チップを破壊した。)
ガミジンは力を失った様に倒れ、ゆっくりと起き上がる。
「......。」
突然だった。
「ウガアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
ガミジンが突然獣の様な雄叫びを上げたかと思ったら急激に威圧感が高まった。
(エネリオン吸収量が上がった。あの操る奴......ルーラーの能力か......また知らない筈の名前を知っている......待てよ、奴の能力に掛かった者は確か......。)
アダムはまるで知らない筈の事を以前から知っているかの様に思考を巡らせる。
ガミジンが数mから離れた所から腕を連続して薙ぐ。
その先端から放たれたエネリオンの刃がアダムを斬り裂こうと襲い掛かる。
上下左右前後へ移動し逸らし回転し、刃を次々と避ける。
するとガミジンは手刀を振るのではなく槍の様に連続して勢い良く突き出し始める。
無数の銃弾の様なエネリオンの矢がアダムへと降り掛かる。
数量は先程よりも増したが1発当たりの威力は落ちており、更に切断が作用する範囲も狭まっている。
アダムはナイフを2本共抜き、連続で放たれるエネリオンの矢を確実に弾いていく。
(”あれ”をやるか。)
突然、アダムは2本のナイフ共にロープを括り付け、投げ飛ばした。
アダムからロープに、ロープからナイフに、1対の一種のネットワークにより、アダムの命令によってロープやナイフが主を守ろうとエネリオンを防ぐ。
そしてロープとナイフは余裕が出来るとガミジンへと襲い掛かる。
対するガミジンは防御に精一杯で攻撃の余裕が消えた。
2本のロープがそれぞれガミジンの右腕と左腕に巻き付いた。
それを引っ張るアダムと動かされまいと踏ん張るガミジン。
アダムが力を緩め、ガミジンの引く力によって前方へと投げ出されるが、これがアダムの作戦だった。
ナイフを戻し頭上からナイフを振り下ろし、それを受け止めるガミジン。
そして通り過ぎる。
着地し左のナイフを薙ぐアダムと、それを右手で防いだガミジン。
次の瞬間、ガミジンは後頭部に熱く鋭い感触を覚えた。
ガミジンは自分が予想した以上の痛みに頭を押さえ膝を着いた。
何故これ程のダメージを受けたのか。
それがガミジンの疑問だった。
アダムはその答え、いや、その答えのヒントらしき事を知っていた。
(やはり以前暴走したフランドールと同じ様に後頭部が弱点だ。しかし何故?僕も何故この事を思い浮かんだんだ?)
痛みに耐え、立ち上がろうとするガミジンの後頭部へとストレートが決まり、ガミジンは再び地面に引き戻された。
(あの時はレミリアが天候を操る為に赤い霧を発生させていたが、何故か途中で黒くなり始めた。)
倒れたガミジンに対し、ナイフを高々と上げた。
(もし、天候を操る赤い霧と、ルーラーがこいつらを操るメカニズムが同じならば?しかし天候を操るのが人間を操る事と同じとは考えられない......だが少なくとも奴らの弱点は分かった。)
アダムは思考を切り替え、ナイフを振り下ろした。
ナイフはガミジンの左胸に深々と突き刺さったが、まだ抵抗しようと目を見開いていた。
だからアダムはナイフを引き抜き、再び振り下ろす。
今度は頭に突き刺さり、ガミジンは一切の思考が不可能となった。
「一気に叩きつけるわよ!」
霊夢のその掛け声を、魔理沙、幽々子、妖夢は承認した。
「「紫の彼岸は遅れて輝く」!」
「瞑斬「楼観から弾をも断つ心の眼」!」
幽々子の唱えたスペルカードはアガレスの全方位を囲む様にして降り注ぎ、妖夢の唱えたスペルカードで自分から斬撃、半霊から砲撃、と2方向から2種類の攻撃を繰り出す。
その数量はアガレスの脳処理を追い詰めさせ、反撃の暇を作らない。
「「夢想天生」!」
「「ブレイジングスター」!」
霊夢と魔理沙が共に輝きを纏い、すさまじい量の弾幕を放ちながら突撃する。
東洋の文化は”共存する”、西洋の文化は”支配する”。
夢想天生は攻撃を自分では無く自分が擬似的な異次元へ”浮く”事によって攻撃を逸らし、ブレイジングスターは自らの強大な力で攻撃を受け止める。
和洋違えど、アガレスの念動力は2人を止められず、そして大量の弾幕の雨を防げず、何十発と被弾する。
ならばせめて念動力の効く他の2人だけでも、そうしようと右手を伸ばそうとした。
それは出来なかった。
ガミジンは腕に鋭い痛みを感じると、右腕がバッサリと切り落とされていたのに気付いた。
後ろから妖夢がもう片方の手を切り落とそうと刀を振りかざしていた。
自分に念動力を与える事で回避したアガレスだが、他の弾幕を躱し切れず怯む。
「はあああああ!!!!!」
「でやあああああ!!!!!」
「いけえええええ!!!!!」
「やあああああ!!!!!」
4人からの総攻撃を受け、確実に命を削られるアガレス。
【自爆実行】
アガレスは自分の意志では無く、命令を受け、大量のダメージを受けながらも立ち上がった。
「これだけ攻撃を喰らわしているのに立ち上がるなんて何て奴だ......。」
「まだまだよ、魔理沙。」
すると、アガレスが燐光に包まれ始めた。
「離れろ!」
突然、怒鳴る様な少年の声がした。
その声に従う様に反射的に後ろへと下がった4人。
次の瞬間、アガレスの体全体が閃光に包まれ、同時に熱風と衝撃波が周囲に広がった。
閃光が止むとアガレスの姿は無く、地面には熱で溶けた様なクレーターが残っていた。
「......消えた、の?」
「身体を作る材料から起こり得る発熱反応が一瞬で行われたらしい。つまり自爆だ。それだけ無くエネリオンも熱エネルギーに変えているみたいだ。」
「危なかった。またお前に助けられたぜ。」
「それよりも、僕はとんでもない事を知った気がする。」
「なんだよ、気がする、って確実じゃないのか?」
「ああ、だが大事な事だ。」
「カオス」と呼ばれる黒い者はガミジンが死に、アガレスが自爆し、何処かを見る様に顔を動かした。
バイザー状の目から正確に何処を見ているのかは分からないが、地上に繋がる階段を見ている気がする。
【第2段階目計画を優先】
黒い男は突然動き出したかと思うと地上へと飛んで行った。
「藍、橙、追うわよ!」
主に命令され、ついて来る2体の式神。
黒い男について行くのは紫達だけでは無い。
「奴は地上に向かう。リョウ達が危ない。それどころか幻想郷すら危うい。急ぐぞ。」
アダムは説明もろくにせず黒い男を追い始めた。
「ちょ、ちょっと待ってよ。」
「どういう事なんだ?」
「今は説明出来ない、急ぐぞ。」
それについて行く霊夢と魔理沙。
「妖夢、私達も行くわよ。」
「はい。」
最後尾は幽々子と妖夢が後を追う。
八坂神奈子は固い地面の上で目を覚ました。
「う、うーん......ええと、地獄の鴉に太陽神を宿らせようとして......確か変な奴が襲い掛かって来て......。」
神奈子は辺りを見回した。
近くには長い黒髪をポニーテールにした、背中に黒い羽の生えた少女が横たわっていた。
彼女の名は霊烏路空。
彼女は古明地さとりのペットであると同時に、神奈子が太陽神を宿らせようとした地獄鴉である。
ズドーン!
「何だ今の衝撃は?......この気配は?!」
轟音が響き、辺りの様子を探ろうとすると戦いの気配がした。
一方には余裕があり、もう一方は追い詰められている。
そして、
「早苗?そしてカイルも......早く助けねば。」
「......い、いてててて......ん?ここどこ?」
神奈子が行こうとしたその時、空が目を覚ました。
ふと、神奈子はある事を思いついた。
「......この力に賭けてみよう。」
「ガアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
サムの叫び声は彼自身の能力によって増幅され、方向性を与えられ、勇儀と萃香を怯ませた。
続いてサムが足を踏み込んだ。
2人共地面の揺れが来ると警戒してそれを押し止めようと踏ん張った。
しかし、地面の揺れが来ることは無かった。
2人の目の前でいきなり地面から岩石が噴き出した。
衝撃波を途中で拡散させ、それを地面の破壊に利用し、土砂を吹き上げたのだ。
前方の視界を遮られた2人は下がろうとしたが、そうする以前に勇儀は腹に強い衝撃を受け、怯んだ。
それを目撃した萃香だが、サムの姿が見当たらない。
突然、頭上に衝撃を感じた萃香は膝を着き、続けて側頭部に感じた衝撃によって地面に倒された。
萃香は少し前まで自分がいた場所を見た。
「......何かがある。」
萃香は密度を操る能力を持つが故に見えなくても空間内の物体の密度の違いが分かる。
1Lで1.2g程度の密度しかない空気中に1立方cm当たり1gの密度を持つ空間を発見した。
何が在るのかは見えないが、恐らく自分達が相手している男であるだろうと萃香は考えた。
「そこだっ!」
萃香の放った弾幕の一部の形が歪んだかと思うと、消えたように見えた。
数発当たった様な手応えを感じると遅れて爆発音が聞こえた。
「鬼符「鬼気狂瀾」!」
そこへ勇儀がスペルカードを唱え、追撃を掛ける。
姿は見えないが、何かに命中した様な手応えを感じた。
「この調子なら行けるね。」
「ああ、一気に畳み掛けるぞ。」
しかし、優勢は殆ど続かなかった。
勇儀は不意に痺れる様なショックを受け、怯む。
萃香が振り向いた時には既に目の前に電子のビームが流れ込んでいた。
体が痺れて動けない。
遠方からローブを身に纏った男が手を向けていたのが遠目で見えた。
【TSLCモード開始】
一方、サムは両手を上に伸ばした。
地上では奇妙な出来事が起きていた。
何故なら雲1つない快晴の昼下がりだというのに、空が急に暗くなったからだ。
突然雲の様な太陽を遮る物が発生した訳でも無く、太陽が驚くべき速さで沈んだ訳でも無い。
まるで誰かが太陽が出す光量を調整しているかの様に。
良く見ると空の1か所から地上に向かって光の柱が伸びていた。
「太陽光があそこに集まっているのね。でも一体何が......。」
黒い人型の物体を追いながら紫は考えていた。
そして黒い男は光の柱が立っている方向へ向かっていた。
地底では驚くべき出来事が起きていた。
何故なら突如地上から眩い光の柱が降りて来たのだから。
ある者は地上からの侵略と勘違いし、ある者は地上から神が降りて来たと思い込んでいた。
しかし、正解の考えを持った者はこの場に居なかった。
光の柱は驚くべき早さで地面を気化し、穴を作る。