東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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65 予感

「俺の相手は俺だ。」

 

「......。」

 

「クソッ、お前はどうしちまったんだ!」

 

 トレバーに対して構えるリョウと何も構えないトレバー。

 

「......俺を舐めてるつもりか。」

 

「......。」

 

 リョウがトレバーへと突進し、右足で跳び蹴りを放つ。

 

 トレバーはリョウの左側へと回り込み、肘打ちを放つ。

 

 対するリョウは跳び蹴りのフォームを変え、トレバーの頭に向かって回し蹴りを繰り出す。

 

 トレバーは肘打ちから平手に変え、リョウの足を掴んだ。

 

 その瞬間、リョウは足がもげる様な痛みを感じて怯んだ。

 

 そしてトレバーの腹へブローを連発し、吹き飛ばした。

 

 岩壁に叩きつけられて止まったリョウはすぐに起き上がり、向かってくるトレバーへジャブを連発する。

 

 しかし、全発避けられるか受け止められ、トレバーが隙を突いて膝蹴りを繰り出す。

 

 間一髪の所でリョウは膝蹴りを受け止め、エネリオンを送り込む。

 

 トレバーは膝に高熱を感知するとすぐに膝を離し、距離を取る。

 

 距離の離れたトレバーとリョウは互いに掌を向け、互いにエネリオン塊を放つ。

 

 トレバーが動き回る後方でエネリオン塊に触れた物が爆発するが、リョウが動き回る後方でエネリオン塊に触れた物は何も起きない。

 

 突然、トレバーが前に動いたと同時に腕を勢い良く突き出し、反応に多少遅れたリョウも腕を突き出す。

 

 互いに避けようとする2人だが、リョウは肩に被弾し、トレバーは脇腹に掠めた。

 

 リョウは肩が抉れる痛みに耐えると、接近するトレバーへタックルする。

 

 しかし、タックルがトレバーに当たったと思った瞬間、トレバーの姿が消えた。

 

 リョウは後頭部に衝撃を受けると勢い良く地面に伏した。

 

 起き上がった次の瞬間、リョウは後方へと大きく跳んだ。

 

 直後、トレバーは先程までリョウが倒れていた岩の床へ降下キックをめり込ませていた。

 

「危ねえ、下手すると死ぬなこりゃ......せめて”あれ”だけは使いたくないが......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アガレスは4人を相手に苦戦していた。

 

 霊夢と魔理沙がアガレスに向かって弾幕を放つ。

 

 霊夢の放つホーミング弾を跳ね除けようとしても再び自分に向かって来る為、わざわざ破壊というエネルギーを使う事をしなければならない。

 

 魔理沙のレーザーを逸らそうとしても一発一発の弾に対して長いレーザーを逸らすには、レーザーの伸びる時間だけエネルギーを使う必要がある。

 

 それでもアガレスは全てを防ぎ切り、2人へと手を向けた。

 

 霊夢と魔理沙は突然衝撃を感じると吹き飛ばされた。

 

 今度は妖夢が刀を2本持って襲い掛かり、後方から幽々子が弾幕を発射する。

 

 次々と振り回される刀に横方向の運動エネルギーを与え逸らし、後方からの大量の弾幕を体ごと動かして躱す。

 

 アガレスは妖夢が地面を蹴る瞬間腕を伸ばすと、妖夢の身体が勢い余って宙に投げ出される。

 

 次の瞬間、アガレスが妖夢の腹に跳び蹴りを決めたかと思うと、倒れた妖夢の腹を蹴り足で地面に押さえ付け、そのまま迫り来る弾幕へと蹴り上げる。

 

 幽々子は妖夢へ被弾させない様に弾幕の軌道を変えるが、その瞬間アガレスの念動力に撃ち落された。

 

 それから見えない力で地へ這いつくばされた幽々子はアガレスが自分へ拳を叩きつける寸前の様子まで見た。

 

 不意にアガレスは振り下ろす腕を防御体勢に構えたかと思うと、胸の前に掲げた腕の表面で爆発が起こった。

 

「霊符「夢想封印 集」!」

 

「魔符「スターダストレヴァリエ」!」

 

 霊夢の周辺に弾幕が出現し、魔理沙から大量の小型弾がばら撒かれる。

 

 左手を突き出して魔理沙の弾幕を止め、スペルカード発動中の霊夢右手を突き出す。

 

 霊夢がスペルカード発動完了したのと念動力に吹き飛ばされたのは同時だった。

 

 右手を再び伸ばし、自分を囲む様にして一気に放たれた弾幕を防ぎ切った。

 

 次の瞬間、アガレスが後ろを振り向いたかと思うと、白銀に鋭く輝く物体が目の前にあった。

 

 アガレスは如何にかそれを両手で受け止めると、妖夢が自分に向けて刀を振り下ろしている最中だったのを確認した。

 

 白刃取りを成功させたアガレスへと背後から忍び寄る影。

 

 それに気付いたアガレスは後ろを振り向くと、受け止めていた刀を横に逸らし、後方からの斬撃が届くより先に回し蹴りを決めた。

 

 後方から襲い掛かっていた最中の半霊が蹴られ、反対方向から妖夢本体が刀を突き出す。

 

 真っ直ぐに進む筈の刀は何かに押された様に軌道が逸れ、反対側へと流された。

 

 同時に半霊が本体を飛び越え、降下ざまに刀を振り下ろす。

 

 左右からの剣撃を次々と躱し、アガレスが両方へと腕を突き出す。

 

 妖夢と半霊は流れに身を任せ衝撃を吸収し後方へ下がる。

 

 ようやく、アガレスは自分が妖しく輝く蝶に囲まれている事に気付いた。

 

 アガレスは慌てて腕を周囲へ張り巡らせるように腕を伸ばすが間に合わず、数発の蝶がアガレスの体に停まった。

 

 しかし、彼は死ぬ事を許されていない。

 

【異常信号感知 中和】

 

 彼の目の前には地面が迫っていた。

 

 倒れそうになるのを腕で支えて前方へ転がり、起き上がる。

 

「やっぱりアダム君みたいに効かないわね......今はもう既に操られているから今は西行妖を操れないし......。」

 

 幽々子が呟く。

 

「思ったんですけど、念力を使う時に腕を動かしているんですが、ひょっとしたら腕を使わなきゃ念力が使えないんじゃないでしょうか。」

 

 妖夢の提案で霊夢達に少しばかりの希望が見えてきた。

 

「......そういえば良く見ると腕を突き出す度に念動力が起こるわよね。」

 

「何でだろうな?とりあえず腕を集中的に攻撃すればいけるかもな。」

 

 それを聞いたのか、それとも元からなのか、アガレスは険しい顔つきになった、気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇儀さんと萃香さんはあの青年のサムの方を頼みます。」

 

「おう。」

 

「任せてよ。」

 

 勇儀と萃香は短い返事をするとサムへと向かって行った。

 

「リョウさんは1人で大丈夫でしょうか......。」

 

「リョウはあれでも物事をしっかり考えられる、だから何か勝てる方法があるんだと思うけど......。」

 

 早苗の呟きに答えるカイルだが、その答えにも確信が無い様だ。

 

「私個人が思うんだが、何か恐ろしい事になりそうな予感が......。」

 

 永夜異変の後にリョウと慧音間で起きた出来事が慧音の考えを不安へと駆り立てたのだ。

 

 あの時感じたリョウの心の闇。

 

「僕は不確定な迷信なんかよりも確定している理論を信じるが、今はリョウを信じる。今は目の前に集中して。少し思い付いた事がある。」

 

 その言葉は早苗に少しながら安心感を与えた。

 

 突然、向かい風が吹き付けたと思うとカイルが飛び上がって足を上げる。

 

 カイルの踵落としがレックスの回し蹴りを抑え込んだかと思うと、そのままカイルは姿勢を低くしローキックを仕掛ける。

 

 レックスは上空に飛び上がる事で蹴りを回避し、掌を突き出す。

 

『2人共、挟み撃ちを頼む。奴は神経の末端部分、つまり手でからでしか能力を使えない。』

 

 同時にカイルがその掌に照準を定め、何時の間にか構えた銃の引き金を引く。

 

 レックスは突き出した掌を引っ込め、銃弾を避けたが、右から早苗が、左から慧音がスペルカードを唱えていた。

 

「神徳「五穀豊穣ライスシャワー」!」

 

「国符「三種の神器 剣」!」

 

 レックスが腕を胸の前に交差させると、地面から噴き出した熱湯が彼を包み込んだ。

 

 弾幕は水の障壁に阻まれレックスに命中する事無く消える。

 

 カイルが銃の側面にあるツマミを少し動かし、エネリオンを1秒間溜めた銃弾を1発、ツマミを元に戻し、今度は溜めずに連射した。

 

 1発目の変換に運動エネルギーに比重を置いた銃弾が、命中した箇所の水に横向きの運動エネルギーを与える事で水の障壁にほんの一瞬ながら穴を開け、2発目以降がそこを通り抜けた。

 

 レックスが急いで体を逸らそうとするが、銃弾は体中に被弾した。

 

 それでもレックスは怯む事なく掌を突き出し、自分を覆っていた殻が大蛇へ変化し、カイルを襲う。

 

『早苗、今だ。慧音さんも準備をして下さい。』

 

『はい!』「開海「モーゼの奇跡」!」

 

 カイルを襲う水の大蛇は直撃する寸前、2つに分断され、不発に終わった。

 

 レックスが見るとカイルは銃口を向けていた。

 

「未来「高天原」!」『2人共しっかり繋げてくれ。』

 

 慧音がスペルカードを唱えたのと同時にカイルが引き金を引いた。

 

 レックスは頭をサッと傾け、速い銃弾を躱したが、続けて来る弾幕を躱せず被弾した。

 

「そこです!」

 

 早苗がレックスの頭上から両掌を体の前に掲げた。

 

 レックスも慌てて頭上へと両手を突き出した。

 

「はあああああ!!!!!」

 

「......ギッ......。」

 

 2人の放つ衝撃波がぶつかり合うが、早苗が少しずつ押され始めた。

 

 突然、レックスは手を頭上から引っ込めたかと思うと、今まで手を伸ばしていた所へ銃弾が通過したのを確認した。

 

 軌道から予測して発射地点を見るとカイルが銃を構えていた。

 

 早苗は今まで押し返されていた抵抗が急に無くなるのを感じると一気に押し込んだ。

 

 レックスは地面へ叩きつけられ、次の瞬間右手が貫かれる感覚を覚えた。

 

 カイルは自分の放った銃弾がレックスの右手を打ち抜いた事を確認する間も無く、今度は照準を左手へ向けた。

 

 その様子にレックスが気付いた。

 

『もう一度やってくれるかい?』

 

『分かりました。』

 

 早苗が再びレックスへ手を向ける。

 

 それに対しレックスは地面に手を向けた。

 

(水流に乗って回避するつもりか。ならば......。)

 

 レックスが周囲に熱湯を纏い、衝撃波の吹き付けた部分が大きく凹んだがダメージにはなってない。

 

『慧音さん、一か所に集中的に攻撃出来ますか?出来るなら致命傷を負わせられる所へ。』

 

『ああ、やってみる。』「野符「将門クライシス」!」

 

 慧音はスペルカードを唱え、レックスを囲む隔壁の中心一か所へと狙いを定める。

 

 するとレックスは左手を突き出したかと思うと、水の巨大な塊が弾幕をかき消した。

 

 塊は突然無数の鞭に変化し、3人をまとめて襲う。

 

 それに対し、早苗が衝撃波で味方全員への攻撃を打ち返し、慧音が弾幕を放って牽制し、カイルが十分にエネリオンを溜めた銃を構える。

 

 カイルが銃のツマミを動かし引き金を引くと、3秒間分のエネリオンが溜められた銃弾が発射された。

 

 そのエネルギーは15000000J、TNT火薬3.5kg分。

 

 物体との衝突時に熱エネルギーに変換する割合を高くされた銃弾は、阻もうとした水の壁を一瞬で水蒸気に変え、その水蒸気爆発の勢いはレックスを怯ませた。

 

『今だ!』

 

 早苗と慧音は一斉に弾幕を放出し、カイルはレックスの左手に銃の照準を合わせた。

 

 しかし、レックスに次々とダメージを与える筈だった弾幕やレックスの左手を貫く筈の銃弾は、呆気無く消え去った。

 

 それが電子の流れである事をカイルはその知覚能力で知った。

 

 しかし、知った事はそれだけでは無い。

 

「......敵側に2人来た。」

 

 ローブの男と大柄な男が何時の間にか居た。

 

「何時の間に居たんでしょうか。」

 

「分からないが、ローブの方は強いステルス能力持っていて更にレックスとサムとトレバー、そしてあの大柄な男を操っている。」

 

「それじゃああの大柄な男の方は分かるか?」

 

「......分かりません。だが様子を見る限りではまるで戦闘の意志が見えない。でも安心は出来ない......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「......。」

 

 さとりは青年に逃げろ、と言われてから彼らが戦っている所とは中途半端に離れた所で立ち止まっていた。

 

『従え。』

 

『嫌だ!』

 

「......。」

 

「どうしたんだい?さとり様。」

 

「......私、あの人達を助けて来るわ。」

 

「そんな、危ないよ。あのお兄さんも逃げてって言ってたじゃないか。」

 

「でも、私何か嫌な予感がする。何か恐ろしい事が......せめて何かあの人達の力になりたいの。それに地霊殿の主である私が地霊殿で見ず知らずの人に助けられてただ逃げているなんて、地霊殿の主として異変を解決しなきゃ。」

 

 さとりは先程まで走っていた方向とは反対方向へ走り出した。

 

「ま、待ってよ。あたいも行くよ。」

 

 燐も仕方なく主へついて行った。

 


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