東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
「お前が幾ら足掻こうがお前にはチップが埋められている。どうせ我々には従うのだ。諦めたらどうだ。」
「嫌だ!俺はお前の言う事など効きたくも無いし、これ以上他人に関わるのも御免だ!何故だ!俺は「あの日」以来から延々と思い続けて来た!俺は悪くないのに何故俺が悪いと決めつけるんだ!悪いのは奴らだ!静かに暮らしたいのに何故静かに暮らせて貰えない!俺が何であろうと俺はお前らの命令を聞く義理など無い!」
「お前は選ばれし者なのだ。人間というのは異常者を嫌うが、未来は我々の時代である事は事実だ。我々と協力すれば思い通りの生活も可能だ。」
「だが俺はそんな特別でも無い奴らに利用され続けた!断る!俺は誰とも関わりたくないと言った筈だ!何故そこまで俺に拘ろうとする!」
「スミス、お前は特別な我々の先行者であり、更に我々よりも特別なのだ。だから人類が進化する為にお前を調べる必要がある。お前は我々の中で唯一戦略兵器に匹敵する能力を持っている。だからこそお前は「破壊神」などという二つ名が付いた。」
「俺が何であろうが俺はモルモットにはならんぞ!」
「チップが埋められていると言った筈だ。それに私の能力も使えば良いし、いざとなればお前が居なくても研究は進められる。」
「あのトレバーとかという男やアダムやマルクというガキの様にか?」
「そうだ。」
カイルはトレバーの拳を左右へ交互に払い除け、繰り出されたストレートをしゃがんで避けながら下段回し蹴りを繰り出す。
しかし、蹴りはトレバーの手に受け止められ、カイルは蹴り上げられた。
トレバーが追撃で跳び上がりナックルを仕掛けるが、カイルは如何にか避け、トレバーへと連続蹴りを放つ。
それでも全て躱されるか籠手にブロックされたが、最後の1発でトレバーの腕を蹴ると反動で距離を取った。
突然、カイルが後ろを向いて腕を体の前に翳したかと思うと強い衝撃がカイルの腕にぶつかった。
次々とカイルが腕を上下左右に動かすとその位置に衝撃を受ける。
今度は足元から衝撃が走ったかと思うとカイルは空中へ跳び、銃を構える。
カイルは銃にエネリオンを溜めながら、光学迷彩で姿を隠しており自分に向かって拳を突き出す際中のサムを感知した。
カイルの放った銃弾がサムの肩に命中し、サムの放った衝撃波がカイルを後方へ吹き飛ばした。
『ここだ。』
カイルからテレパシーでサムの位置情報を受け取った早苗と慧音はその方向へスペルカードを唱えた。
「蛇符「神代大蛇」!」
「始符「エフェメラリティ137」!」
が、弾幕が何かに当たった手応えは無く、代わりに地面が強く揺れ出した。
揺れにバランスを取られた早苗は続けて発生した衝撃波に吹き飛ばされ、空中へ逃げた慧音は突如上空から吹き付ける突風に地面に叩きつけられた。
その様子を見たカイルは十分にエネリオンを溜めた銃の引き金を引き、そして地面を蹴った。
銃弾は慧音へ追撃を掛けようとしていたレックスの腕にヒットし、カイルは早苗へ追撃を掛けようとしていたサムの前に来ると跳び蹴りをガードした。
しかし、早苗は何時の間にか背後を取っていたトレバーに気付かず、背中に肘打ちを受けると岩壁に叩きつけられた。
サムから距離を取り、トレバーへと銃を向けたカイルは銃弾を連射した。
音速の10倍を誇る銃弾だが全て躱されるか籠手に受け止めれられるかだった。
慧音がカイルの援護にとトレバーへと弾幕を放とうとするが、突然自分の立つ地面がめくれ上がったかと思うとそのまま上に吹き飛ばされた。
サムは慧音を怯ませた後慧音へ跳び蹴りを仕掛けるが、早苗の放った弾幕に阻止されたが、どうにか躱した。
すると、レックスが腕を振り上げた。
「下から何か来る!」
カイルの声を直接聞いた早苗と慧音は空中へ飛び上がり、すると地面から熱湯が勢い良く吹き出して来た。
3人は慌ててどうにか避けたが、カイルはレックスからの突風で岩壁に叩きつけられ、早苗はサムからの衝撃波で地面へ叩きつけられ、慧音はトレバーからの連続ラッシュを喰らった。
「水も操れるんでしょうか?」
「流体なら何でも制御出来る様だ。「サーファー」と呼ばれる彼だけどあの様子では固体までは無理なようだけど......。」
「あのサムっていう人は前みたいにレーザー攻撃しないみたいですけど、どうしてでしょう。」
「高出力を得られる光源が無いからね。でも地面を通す衝撃波は速くて狭いここではかなり厄介だな。彼の二つ名は「ミラー」だけど「波」の性質を持つ物なら何でも操れる。トレバーは......実の所僕にも分からない。トランセンデンド・マンの中でもエクストラは脅しや威嚇等で能力に関する二つ名があるけど、トレバーの「死神」が何を意味するのかは僕にも分からない。名前自体は一瞬で相手を殺す、という事による物だけど、どんな原理なのかは誰にも分からないんだ。」
「誰も知らないんですか?」
「彼の性格の事だから内緒にしたかったんだろうけど......。」
レックスが腕を横に振ると3人に向かって大量の水の礫が散弾の様に撒き散らされた。
トレバーの連続ラッシュを次々と左右に払い除け、早苗が背後から弾幕を放つ。
トレバーが弾幕を避け、跳び上がると2人に向かってウォータージェットが勢い良く発射された。
しゃがんで避けた2人、そして水流に斬られた後ろの岩壁。
カイルがレックスへ銃を構え、慧音が弾幕を放つ。
弾幕を難無く躱すレックスだが、カイルが狙いを定め、十分にエネリオンを溜めた銃から銃弾が吐き出される。
銃弾は突如軌道上に出来上がった水の壁に防がれた。
そして、直径2、3mもの水の大玉を作り上げると早苗に向かって飛ばした。
スピードの無い攻撃の為早苗は直撃を避けられたが、水の大玉が地面に衝突すると、爆発する榴弾の様に周囲へと水の礫を勢い良く撒き散らした。
早苗は避け切れず被弾し吹き飛ばされ、離れたカイルと慧音も少なからず被弾した。
サムが慧音へ駆け込むと拳を次々と突き出しては衝撃波を放つ。
「包符「昭和の雨」!」
慧音もスペルカードで応戦するが全く当たらない。
サムが地面を殴り付けると岩の破片が浮き上がった。
そのまま回転水平連続蹴りを繰り出し、破片を慧音へと飛ばす。
避けようとする慧音だが、幾つか被弾し、そのままカイルが駆け込みながらストレートを決めた。
トレバーへと銃弾を放ち牽制するカイルだが、トレバーは確実に距離を縮める。
トレバーからの連続攻撃を躱し、ストレートを腕で払って横から手刀を繰り出す。
しかし、トレバーはそれを読んでいたかの様に手刀を掴み、そのまま腕力だけで持ち上げ、岩壁へ投げつけた。
その時、突然レックスが水の壁を作り上げたかと思うと、そこへエネリオン塊が飛んで来た。
エネリオンは水の壁に命中すると水蒸気が発生した。
一瞬で気化され体積を1000倍にされた酸化水素はその体積比に物を言わせ、爆発的に周囲を吹き飛ばす。
その勢いは後ろのレックスまで届き、怯ませた。
「待たせたな!」
エネリオン塊を放ったのはリョウだった。
「待ったよ。こっちは通信機は壊されテレパシーも地上に通じない状況だったんだから。」
突然、サムが地面を蹴り付け、衝撃がリョウへと一直線に向かう。
すると、リョウの背後から誰かが現れ、地面を踏み込んだ。
衝撃はその誰かの踏み付けの衝撃によって消滅した。
「私達も来た。勝負の途中で抜け出すなんてずるいじゃないか。」
「僕はどちらかと言えば理論派さ。何が起こっているか分からないから出来る限り早く知る方が良いと思って。」
カイルに文句を言う勇儀と言い訳するカイル。
「でもこれでこちらが幾分頼もしくなりましたね。」
「そういやアダムはどうした?」
「もっと奥で霊夢達が戦っている。アダムとトレバーは何故かこちらに敵対しているんだ。しかも相手はそれ以外にも2人居る。」
「他の奴も俺達が倒した奴らだろ?でも何でだ?」
「奥に居る1人が操っているらしい。」
突然、トレバーが6人へと駆け込んで行く。
6方へ散らばる6人だが、トレバーは全員へエネリオン塊を撃ち出した。
(速い?!)
誰かがそう思う中、完全に躱し切ったのはリョウとカイルで、勇儀は腕で払い除け、萃香は霧状になって躱したが一部が被弾し、早苗と慧音は躱し損ねて体の末端部分に被弾した。
次の瞬間、早苗と慧音と勇儀が激痛に叫び声を上げた。
「いやああああああああ!!!!!」
エネリオンが被弾した箇所が千切れ、神経を直接削られる様な痛みだった。
掠っただけの萃香も苦しそうな表情を見せている。
「これは......精神に直接作用させて痛みを倍増させているのか。「死神」と呼ばれる所以がやっと分かったよ。」
カイルは発射されたエネリオンが早苗達の身体を構成するインフォーミオンに及ぼす様子を見る事で知った。
「トレバーの奴何でも隠し事をしやがって......。」