東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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60 見えない戦い

「どういう事?エネリオンってエネルギーの事じゃないの?」

 

「そうよ、だからあの男はエネリオンで構成されているって事。リョウから聞いたけど、トレバーという男が死に際にエネリオンに関する事を言っていたとか、恐らくこの事でしょうね。」

 

「でもどうやってこんな意志がある様に動いている訳?」

 

「それは分からないけど......。」

 

 突然2人の男が地面を蹴ったかと思うと、2人は猛烈なスピードで紫達との距離を0にした。

 

 金髪の男のボディブローが紫の腹に、黒髪の男の腕が幽々子の体を裂いた。

 

 幽々子は亡霊であるが為体が斬り裂かれても元の形に戻ったが、痛みが無いわけでは無い。

 

 藍と橙が離れて弾幕を放とうとするが、それよりも早く金髪の男が放った2発のエネリオン塊が放たれるのが早かった。

 

 1発は藍に、1発は橙に、衝突したエネリオンは横向きの運動エネルギーを与えた。

 

 藍は左に、橙は右に、結果2人はぶつかり合った。

 

 そこへ黒髪の男が手を突き出す。

 

 2人は慌てて避けたが、次に金髪の男が放ったエネリオン弾を躱す事は出来なかった。

 

 2人は地面に叩きつけられ、暫く動けなかった。

 

「幽曲「リポジトリ・オブ・ヒロカワ ‐神霊‐」!」

 

「境符「四重結界」!」

 

 スペルカードを放つ幽々子と紫。

 

 それに対して、地面に手を着けた金髪の男と両手を体の前に広げた黒髪の男。

 

 地面の石畳が剥がれて飛び、弾幕とぶつかり合い、細かい破片が紫達に襲い掛かる。

 

 ピンポイントで放たれるエネリオン塊は弾幕を貫通し、後方の紫達にも届く。

 

 後方へ下がりながら弾幕を撃つ2人だが、それを補う様に2人が距離を詰める。

 

 黒髪の男が腕を薙ぐと指先から放たれたエネリオンが弾幕を斬り裂きながら2人を襲う。

 

 エネリオンの斬撃をしゃがんで避けた紫達だが、その後自分達に向けて放たれたエネリオンを防ぐ事は出来なかった。

 

 紫達は前に投げ出される感覚を覚えると同時に2人の男が目の前に迫っていたのに気付いた。

 

 次の瞬間、2人は蹴り飛ばされた。

 

「幽々子様!魂魄「幽明求聞持聡明の法」!」

 

 丁度突き落とされて上り終えた妖夢がスペルカードを唱え、半霊が妖夢の姿を形どった。

 

 両方とも黒髪の男へと次々と斬り掛かるが、攻撃は全て黒髪の男の腕に阻まれた。

 

「藍、橙、貴方達は妖夢の援護をして......さてと、私達は......。」

 

 紫と幽々子は金髪の男へ弾幕を放つが、弾幕は必ず男に触れる事無く消し去った。

 

 金髪の男が掌を向けると紫と幽々子は後方へ吹き飛ばされた。

 

(粒で無くレーザーならどうかしら。)「結界「光と闇の網目」!」

 

「華霊「バタフライディルージョン」!」

 

 紫の放った大量のレーザーとその隙間を埋める様にして幽々子の蝶型の弾幕が放たれた。

 

 金髪の男は怯むどころか更に距離を詰めようと地面を蹴った。

 

 蝶は見えない壁に阻まれて消滅し、レーザーはその軌道を変えられた。

 

 男が手を向けると大量のエネリオン弾が発射された。

 

 慌てて避けようとする2人だが高速故に殆ど避けられなかった。

 

 1発1発は小さいがその分エネルギー密度が高い為、銃弾の様に局所的なダメージを受けた2人は暫く怯んだ。

 

 黒い男はその様子を気にも留めずただ西行妖の幹に手を付けているだけである。

 

 幻想郷中のエネリオンが西行妖に集まっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次々と繰り出される拳の嵐を腕で阻んでいくカイル。

 

 しかし、そのスピードに翻弄され隙を突かれた時は何十発とパンチを浴びせられ、ストレートで吹き飛ばされる。

 

 その勢いを利用して距離を離したカイルは銃の引き金を引く。

 

 音速の10倍を誇る銃弾が1秒に10発のペースで放たれるが、1発も当たらない。

 

 トレバーはその速さで銃弾を避けながら距離をあっという間に詰め、カイルへと攻撃を大量に打ち込む。

 

 トレバーのフックをしゃがんで避けたカイルはそのまま下段回し蹴りを放つ。

 

 しかし、カイルの足はトレバーに踏まれ動かせなかった。

 

 そしてトレバーの蹴り上げがカイルの頭に炸裂し、上に吹き飛んだカイルを跳び上がって踵落としで地面に叩きつける。

 

「カイルさん!」

 

 その様子を見た早苗はカイルを援護しようと早苗は手をトレバーへ向けた。

 

 しかし、何も起こらなかった。

 

 突然前方から吹き付けた衝撃波に早苗は吹き飛ばされた。

 

 早苗が起き上がるとレックスが手を自分へ向けていた。

 

 更に早苗に向かってレックスの放った衝撃波が吹き荒れる。

 

 自らも風を吹かせて対抗しようとする早苗だが圧倒的な力で押される。

 

 その様子を見たカイルは素早く銃を向けると同時に引き金を引いた。

 

 カイルの1秒間のエネリオン吸収量に相当する銃弾はレックスの頭にクリーンヒットしたが、致命傷には及ばなかった。

 

 次の瞬間カイルの背中にトレバーの後ろ蹴りが炸裂した。

 

 その様子に気を取られた早苗はレックスの衝撃波に跳ね飛ばされた。

 

「2人共!光符「アマテ......」

 

 押されるカイルと早苗を心配して援護しようとした慧音だが、突如発生した地鳴りに足を刈られた。

 

 バランスを崩した慧音は強い衝撃を受けて怯むと、続けてサムからのナックルが叩きつけられた。

 

 飛び上がって上空から弾幕を降らす慧音だが、サムが拳を突き出すとかき消される。

 

 サムがアッパーを放つと発生した衝撃波を一方向に集中させ、慧音を上空に吹き飛ばした。

 

 体勢を整えた慧音だがサムの姿が見えない。

 

 次の瞬間、見えないキックが慧音を吹き飛ばし、岩壁にクレーターを作った。

 

「不味いな、せめてリョウが来てくれると良いんだが......逃げるにしてもこの実力差では無理がある......。」

 

「そんな......。」

 

「危ない!」

 

 早苗が気を取られている最中にレックスが一気に早苗の目の前にまで接近していた。

 

 慧音の警告と同時にカイルがレックスへと駆け込み、飛び蹴りを放つ。

 

 カイルに気付き横を向いたレックスはカイルの連続蹴りを全て躱し、反撃を掛ける。

 

 レックスの蹴りを避けながら隙を突いて反撃を繰り出すカイルだが当たる気配が無い。

 

 不意にレックスを突風が襲い、レックスはカイルから引き離された。

 

 振り向くと早苗が手を向けていたが、更にトレバーが後ろから早苗に接近していた。

 

 急いで銃をトレバーへ向け、連射する。

 

 銃弾はトレバーの籠手に完全に防がれ、トレバーのパンチは早苗に決まった。

 

 直後、カイルは背中に強い衝撃を覚え、地面に倒れた。

 

 後ろを見るとサムが拳を突き出していた。

 

 慧音がサムへ弾幕を放つが1発も当たらない。

 

「早苗、僕の心配はしなくて良いから自分の事に集中して。身体能力では向こうが上だが突破口がある筈。」

 

「はい......それにしても不味いですね......。」

 

「ああ、完全に負けているな......リョウ、早く来てくれ......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 霊夢の持つお祓い棒は振る度に腕に阻まれる。

 

 アダムの足元に放った横薙ぎは跳び上がって躱された。

 

 霊夢へとアダムの連続蹴りが決まり、吹き飛ばす。

 

 魔理沙が箒を手にアダムへと叩きつけようとするが全く当たらない。

 

 魔理沙が振り下ろした箒はアダムの手に受け止められる。

 

 アダムが箒ごと魔理沙を地面に投げ飛ばす。

 

 2人は距離を取って弾幕を放つ。

 

 アダムはそれを身のこなしで全て避け、難無く接近しながら両手に持った銃を乱射する。

 

 アダムが地面を蹴った。

 

 堅い地面がめくれ、破片や砂埃が宙を舞う。

 

 アダムが軽く跳び上がり、水平蹴りを繰り出すようにして大量の破片を蹴り飛ばした。

 

 更に銃弾を撃ち込み、素早い動作で銃をしまうとナイフを2本持ち、ロープに繋げると投げ飛ばした。

 

 いきなり攻撃のペースが増した事に慌てた2人は避けようとするが、幾つか被弾する。

 

 そして、続けて投げられたナイフを霊夢は避けるが魔理沙は足に突き刺さった。

 

 アダムは両方のナイフに繋がっているロープを横に大きく動かす。

 

 霊夢の体にロープが巻き付き、魔理沙の大腿部に深い傷を作る。

 

 霊夢は更にロープに引っ張られ、魔理沙はその場に倒れる。

 

 アダムの跳び膝蹴りが霊夢の体の中心に決まった。

 

 アダムは更に前進し、倒れた魔理沙を踏み付け、跳び上がる。

 

 跳び上がった先にある岩壁を蹴り、反動で反対側へ跳び、霊夢の頭へ跳び蹴りを決めた。

 

「......アダム、どうして......。」

 

 魔理沙はアダムの姿を見るなりある言葉を思い出した。

 

『力が入り過ぎだ。常に力を抜いた状態で攻撃の瞬間にのみ力を入れるんだ。』

 

「......なあ霊夢、お前気付いているか?」

 

「......な、何に?」

 

「あいつ、力が入り過ぎじゃないか?前私に注意した事をあいつ自身が忘れているのか?」

 

「そういえばそうね......でもアダムの霊力を見る限りでは力が増している様だけど、動きを見る限りでは前よりも劣っている?」

 

 アダムはこちらに向けて青く輝く目を睨み付かせていた。

 

 襲おうと歩み寄っては来るものの、襲おうとする気配が無い。

 

 何かを躊躇っている様に見えた。

 

「......きっとアダムも私達の知らない所で戦っているんだ。私たちを傷つけない様にしようとしているんだ!私達も頑張らなきゃ!」

 

「......戻って来て、アダム......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アンダーソン、何故逆らう。」

 

「僕は幻想郷を守りたい。」

 

「どうやらお前は間違えているらしいな。」

 

「何をだ?」

 

「我々の幻想郷においての目的は結界を破壊しユニバーシウムを採掘する事だ。」

 

「知っている。社会のエネルギー源として利用したり共和軍の制圧に使うんだろう。そして共和軍を制圧した後には人類を支配する、それがお前達の目的だろう。」

 

「違う。アンダーソン、お前は選ばれし人間なのだ。幻想郷の妖怪などただの"失敗例"に過ぎん。我々こそが人類を担い、次の世代に継がせる。我々こそが"成功例"なのだ。」

 

「妖怪が失敗で僕達が成功?どういう意味だ?」

 

「お前は何故人類に必要の無い過去の遺物に拘ろうとする?」

 

「本当に感情は人類に無駄な物なのか?僕はそうは思えない。幻想郷は確かに低レベルの科学技術しか持ち合わせていないが、僕は幻想郷に居て良かったと思っている。」

 

「それが間違いだ、アンダーソン。感情という不安定で不完全な物では強大な力を付けた人類を制御出来ない。我々は完璧を目指しているのだ。それよりもこのままでは、お前が信頼しお前を信頼する仲間を殺してしまうぞ。お前自身が感情の不安定さを体験する良い機会だろう。」

 

「......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リョウの拳のラッシュが勇儀の攻撃を巻き込みながら叩き込まれる。

 

 遂にリョウのアッパーが勇儀の顎を捉える。

 

 勇儀は怯まずリョウへと反撃のストレートを仕掛ける。

 

 リョウは繰り出される拳の軌道を手で逸らし、カウンターの裏拳を決める。

 

 勇儀はダメージに耐えながらリョウの脇腹へと回し蹴りを放つ。

 

 勇儀の蹴りはリョウがしゃがんだ事によって不発に終わり、リョウの水平蹴りが勇儀を吹き飛ばした。

 

 吹き飛ばされた勇儀は地面を蹴り、反動で距離を詰めながら攻撃の嵐を繰り出す。

 

 左ストレート、右フック、2連蹴り、下段回し蹴り、アッパー、連続パンチ、しかし全て躱される。

 

 リョウは跳び上がると同時に勇儀の肩に手を乗せ、反対側へ回ると同時に両足蹴りを決める。

 

「怪輪「地獄の苦輪」!」

 

 勇儀がスペルカードを唱えると大量のリング弾とばら撒き弾が放たれる。

 

 リョウは銃では無く右手を向けると、掌からエネリオン塊が発射された。

 

 エネリオン塊は迫り来る弾幕を消し去り、勇儀へと向かって行く。

 

 勇儀は咄嗟に回避行動を取るが、エネリオン塊は後ろの壁に当たると爆風と破片が勇儀に降り掛かる。

 

 勇儀は破片が目に入るのを防ぐ為目を瞑り、様子を見る為に少し開けるとリョウは目の前に居た。

 

 リョウが殴り掛かると勇儀は拳を掲げて防ぐが後ろにのけ反り、壁に突き当たった。

 

 リョウは殴り掛かるのを止めずに勇儀へと打撃をひたすら浴びせた。

 

 殴るのを止めないリョウを見かねた萃香は制止に入った。

 

「や、止めろよ!やり過ぎだろ!」

 

 そう言われたリョウはようやく腕を止める。

 

 リョウは一瞬不満そうな顔をしたが、自分が何を考えているのかを自覚すると右手が震えているのを感じた。

 

「......悪いな......。」

 

「......凄いな、人間にこんな奴が居たなんて......あんたの勝ちで良いよ。」

 

 痛々しい姿の勇儀に謝るリョウに対して笑って見せる勇儀。

 

 突然、奥から轟音が聞こえた。

 

「......なあ、勇儀、萃香、初対面でしかもこんなボコボコにしてすまんが、少し俺を手伝ってくれないか?仲間が危ういかもしれんし......。」

 

 リョウは申し訳なさそうに言うが、

 

「良いとも。だったら早く行こう。」

 

「大丈夫さ、少なくとも私達は力には自信があるんだ。」

 

 勇儀と萃香はあっさりと受け入れてくれた。

 

「2人共ありがとよ。」

 


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