東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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地霊殿は風神録での疑問に繋がるストーリーとなっています

今回は最後にくどい説明があります


2 地霊殿
56 日常風景


 風神録異変から1週間後。

 

「僕はフレンチのアイスコーヒーかな。」

 

「じゃあ私も同じのを。」

 

「オッケー、待ってろ。メシはパスタとタコス位しかねえけど、食うか?」

 

「いや、要らないよ。」

 

「私もいいです。」

 

 カイルと早苗は喫茶店「ザイオン」に来ていた。

 

「それでカイル、”アレ”出来たか?」

 

 “アレ”とは以前リョウが製作した飛行マシンの事である。

 

「いや、出来る限り効率アップを図ったけどせいぜい数%しか出力が上がっていない。ハードの限界さ。色々部品を組み替える必要がある。」

 

「それじゃあ私の八卦炉はどうだ?」

 

 続けてカイルの座っている2つ隣の席から掛けられた魔理沙の質問。

 

「優れた汎用性を残したまま性能アップは結構難しかったけど材料とか一部替えてみたりしたら出力が十数%程上がったよ。はい、コレ。」

 

「ありがとな。すげえー......。」

 

 カイルから八卦炉を渡された魔理沙は感嘆の声を漏らしていた。

 

「カイルさん凄いんですね。戦闘だけでなく機械も詳しいなんて。」

 

 早苗の驚きに対する回答はリョウの口から発された。

 

「そりゃあな。何せ13歳で大学を卒業した程だし、共和軍では有名な研究者であり、工学者でもある。凄えだろ?」

 

「へえ~、そうなんですか?!」

 

「有名って、それ程でも無いよ。」

 

「いやいや、少なくとも共和軍が採用しているTM専用武器の30%、それ以外の兵器でも15%はお前が設計したり改良を加えた奴なんだぜ。スペースマシンの効率を10%以上も高め、植物の葉緑体を超える効率のソーラーパネルを開発したお前の何処が有名じゃないんだ。」

 

「それは工学者や技術者としてさ。研究者としてはそんなに良い結果を残せてないよ。」

 

「まあそれは良いとしてコーヒー出来たぜ。」

 

 カイルがリョウから渡されたガラスコップを手に取り、鼻に近づける。

 

 匂いを嗅ぎ、一口含み、味わった所で飲む。

 

 早苗もカイルに釣られる様にしてコーヒーを口に含んだ。

 

「成程、これはエメラルドマウンテンかい?」

 

「当たり、無縁塚って所があってな、そこにコーヒーの木が生えてた。」

 

「それは凄いな。ところで一つ訊きたいんだが、この前君から旧型のコンピューターを貰ったんだけど、あれ何処で手に入れたんだい?結構気になってね。」

 

 先程の話でカイルが飛行マシンや八卦炉を強化させたのはそのコンピューターを使ったからである。

 

「ああ、里から離れた所に香霖堂って古道具屋があってな、そこに外から忘れられたお宝やらマシンやらが流れ着くんだ。」

 

「つくづく幻想郷には驚かされるな。」

 

「そんな場所があるんですね。」

 

「あ、そうだ。」

 

 突然リョウが何かを思い出した様に立ち上がると店の奥に入って行った。

 

 戻って来ると手に何らかの服らしき物を抱えていた。

 

「魔理沙、今度アダムに会う事があったらこれを渡しといてくれないか?アイツにピッタリな奴だ。」

 

 畳まれていたがパッと見では黒という色しか見えなかった。

 

「分かったぜ。また変なのみたいだな......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くわよー。」

 

「ああ。」

 

 霊夢が手に持つ呪符を投げ、アダムへと弾幕を撒き散らす。

 

 対するアダムは手に銃もナイフも持たず体の動きだけで弾幕を躱す。

 

 アダムへと更に弾幕を撃ち込み、更には自身も接近する。

 

 アダムには霊夢が右手に握るお祓い棒にエネリオンに似た物が送り込まれるのを認識した。

 

 アダムとの距離を詰め、お祓い棒を振り出す。

 

 攻撃はアダムの腕に阻まれたものの怯む事無く次々と打撃を繰り出す。

 

 霊夢はお祓い棒を防ぐアダムの腕の表面に霊力に似た物が鎧の様に張り付いているのを認識した。

 

 霊夢からの突きを両手で受け止め、そのまま腕を引いてお祓い棒を霊夢の手から抜き取る。

 

 同時に霊夢の足元を平手で打ち、霊夢はバランスを崩して倒れた。

 

「もっと冷静に捉えられる筈だ。自分と相手が置かれている状況を判断し、相手が次に起こす行動を常に予測するんだ。これを素早く出来る様にならなくてはならない。」

 

「接近戦って弾幕ごっこしかやってない私には難しいわね。」

 

「遠距離戦は攻撃が届くまで時間があるからその間に考える事も出来るからな。近距離戦は直感の様な判断が要求される。」

 

 お祓い棒を霊夢に返し、倒れている霊夢を起こす。

 

「もう一度だ。」

 

「勿論よ。」

 

 霊夢が弾幕を放ちながら前進し、お祓い棒を振り出す。

 

 アダムが弾幕を躱し、続けて来る霊夢の攻撃を避ける。

 

 霊夢が足元に薙いだお祓い棒を足を踏ん張って受け止め、続けざまに出される拳を片手で受け止め、もう片方の手でパンチを繰り出す。

 

 アダムからのパンチを両手で受け止め、後ろに投げつける。

 

 霊夢の投げをあらかじめ予測していたかの様にダメージを受ける事無く着地し、掴まれている腕を回した。

 

 両腕を回された事によってバランスを崩した霊夢はその状態でアダムの平手を喰らい、吹き飛ばされた。

 

 霊夢が起き上がるとアダムが接近していた。

 

 アダムが腕を後ろに引く。

 

 霊夢がパンチを繰り出すと予想して腕を胸の前に構える。

 

 アダムの足刈りが霊夢の足に決まり、霊夢は倒れる。

 

「......アダムってどうしてそんなに強いの?全く攻撃を当てられないし。」

 

「少なくとも理由があるだろうが、僕には分からない。」

 

「えいっ!」

 

 霊夢が悪あがきとでも言う様に起き上がりながらアダムへと両腕を突き出しながら突進する。

 

 アダムが1歩横に動くだけで突進は避けられ、霊夢がバランスを失い地面に倒れたのはこれで3度目となった。

 

「もう~、1回ぐらい当てさせてよ~。」

 

 拗ねる子供の様な口調で言う霊夢だったがアダムは何時もの様に気に留めていなかった。

 

 丁度いつも通りに魔理沙が箒に乗って来た。

 

「よう2人共。霊夢、お前またボロ負けか?」

 

「そうよ......。」

 

 先程の2人の修行を見てなくても分かったのは、霊夢は疲労で息を切らし体中土埃が付いているのに対し、アダムは疲労の気配を見せず服も殆ど汚れていないからである。

 

「お前本当強いよなあ。今度私の相手もしてくれよ?」

 

「ああ。」

 

 短い返事で答えを返し、アダムは魔理沙が手に持っている物に目を付けた。

 

「それは何だ?」

 

「ん?ああ、リョウからお前に渡してくれって頼まれたんだ。また変な服らしいぜ。」

 

 そう言って魔理沙が広げたのは黒いロングコートに同じく黒の柔軟素材の長袖シャツに長ズボン、そして黒いサングラス。

 

「前も同じ様な服貰ってなかった?」

 

「まだ秋なのにこれ暑いんじゃないか?」

 

 霊夢の言う通りこれらはアダムが春雪異変で着ていた物だが、違う所があった。

 

「この堅い板は何で出来ているのかしら?」

 

「炭素金属複合繊維の装甲だ。カサガイの歯をヒントに炭素と金属両方を用いた軽量で丈夫な素材だ。」

 

 軽く丈夫なアーマーはシャツとズボンを覆う様にして取り付けられるようになっていた。

 

「カサガイ?貝の歯ってそんなに強いのか?」

 

 幻想郷には海が無い為、海に生息するカサガイを知らないが為の質問だった。

 

「いや、自然界でそれ程強靭な物質を合成できるのはカサガイのみだ。カサガイが合成するタンパク質と鉄の合成素材は鋼鉄の4倍の強靭性を持つクモの糸の数倍も強度がある。この装甲は別の物質、炭素とチタンで出来ているがそれ以上に強靭性がある。」

 

「鉄の4倍も丈夫で、その数倍も丈夫で、更にそれよりも......どれだけ強いんだよ。お前も良くそんな事を知ってるよなあ。」

 

 魔理沙は自分のした質問の答えによって呆気に取られた。

 

「そうそう、この前カイルに八卦炉を渡したら威力をかなり上げて返してくれたんだ。アイツも凄いよなあ。」

 

「トランセンデンド・マンって言うんだっけ、皆そんなに凄いのかしら......。」

 

 霊夢と魔理沙はまたトランセンデンド・マンに驚かされるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神奈子、諏訪子の2柱の神はカイルの話を熱心に聞いていた。

 

「エネリオンと言うのは宇宙空間の何処にでも存在している素粒子の一種で、これにインフォーミオン、全ての素粒子を構成する最小単位、を信号の様に加える事であらゆるエネルギーに変換出来るんです。インフォーミオンは質量を与えるヒッグス粒子も構成しているから質量は持たないし、エネリオンもエネルギーの一種である以上質量は無いんです。そして、そのエネリオンとインフォーミオンから体に取り入れ、脳でエネリオンを構成するインフォーミオンの構造を変化させ、別のエネルギーに変化させたり変化する時の条件も変えられる、そんな事が出来る”人類”がトランセンデンド・マンと呼ばれるんです。」

 

「ちょっと質問だけど、あらゆる素粒子を構成する最小単位で質量を持たないんだったら、どんな生物の神経でも読み取れないんじゃないか?」

 

「何故かは判明していないけど、トランセンデンド・マンの神経細胞は何故か感受しない筈のエネリオンやインフォーミオンを感受出来るんですよ。素粒子実験施設の様に何なのかは分からなくても現象を観測は出来る、という事かも知れませんね。トランセンデンド・マンは人類の突然変異体の一種で脳が異様に発達しているんです。”普通”の人類の脳についてだって今だに未解明の事がありますよ。一説では脳を進化させ続けた人類が更に進化した形態とも言われています。」

 

「人間が科学技術を発展させる度に新しい謎が果てしなく生まれて来るみたいね。」

 

 神奈子の質問に対する答えは神奈子が求める以上の事が含まれていたが不明点が多かった。

 

「ちなみに個人的な意見ですけど人類や妖怪、貴方達神というのは元は起源が一つなのでは、またこの世界に存在する霊力、魔力、妖力といった力も元はエネリオンなのでは、と考えています。そうであれば妖怪達の能力についても説明が付くし、何より妖怪の正体も判明しますよ。」

 

「それじゃあ次はユニバーシウムだっけ、地球管理組織が狙っていて幻想郷にあるって聞いただけだけど。」

 

 諏訪子のした質問の答えもまた本人の期待を上回る物だった。

 

「ユニバーシウムは質量は持っているが中物質と言ってこの世界に存在する物質にも反物質にも反応せず、物質、反物質共に通用する元素周期表が通用しない、そんな不思議な物質なんです。ユニバーシウム以外にも中物質はあるという仮説は有力だけどそれ以外の物は発見されていないんですよ。そのユニバーシウムは偶然エネリオンとインフォーミオンを吸収するという特殊な性質を持っていたので管理組織に注目されていますよ。ユニバーシウムにプログラムを刻み込むとエネリオンをその他エネルギーに変換出来るから、それでエネルギー問題を解決出来るし、何より僕達共和軍に対抗出来る、という訳です。ただユニバーシウムは外の世界には非常に微量にしか存在しない、あるとしても地球のマントルや核にしかないのに対し、幻想郷の地中にはそれが豊富に含まれているんです。」

 

「ちょっと待って、結界に覆われているのに幻想郷の内部にあるってどうして分かったの?それと何故幻想郷に大量にあるのか。」

 

「エネリオンは結界を超えるんですよ。といっても少量であれば、例えば僕達トランセンデンド・マンが放出する量では結界を超えたとしても観測できない程弱まっているから幻想郷には余程のユニバーシウムが存在しているんでしょう。何故幻想郷にあるのかは詳しい事は分かってませんけど。」

 

 しかし、これも不明な部分があった。

 

「この謎を解く事は人類に関わる何かを大きく変えると僕は思いますよ。」

 




空の能力って、核融合だった気が...

何故スぺカで核分裂を使えるのか、私にはそれが腑に落ちないです(詳しい事は長くなるので別の機会にでも)

この場で一言言わせてもらうとすれば、核融合と核分裂は全く違います

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