東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
男から吹き飛ばされた霊夢達3人は体勢を整える暇も無く地面に叩きつけられた。
「じょ、冗談じゃないわよ......。」
「なんてパワーだ......それに全く見えなかったぜ......。」
今の一撃でアリスが気絶した。
気絶にまで至っていない霊夢と魔理沙も痛みで殆ど動けない状態である。
男はその場に留まる事無く今度はトレバーへと駆け込む。
起き上がったトレバーは男からの攻撃に備える。
次の瞬間、トレバーの背中に重い肘打ちが決まった。
脱力したがなんとか片膝で踏み留まるトレバーへ更に拳を振り下ろす。
トレバーは咄嗟にエネリオンで防御力を強化した籠手をはめた腕を両方とも頭上に振りかざす。
男の拳はトレバーの防御を無視したかの様にトレバーの両腕を巻き込みながらトレバーの胸に深く撃ち込まれた。
トレバーが吹き飛ばされ、男と離れたのを見た魔理沙はスペルカードを唱えた。
「恋心「ダブルスパーク」!」
八卦炉が2発の強力なレーザーを放ち、レーザーは別々の方向から男を狙う。
しかし、男は避ける動作をせず、むしろレーザーへと突進していく。
2発のレーザーは男に直撃した。
それでも男にはダメージを与えるどころか怯ませる事も出来なかった。
「嘘だろ?!全然効いてないじゃないか!」
男は魔理沙の足元へスライディングキックを仕掛ける。
魔理沙が避ける暇も無くスライディングが足元に決まり、魔理沙が倒れ、男はそのまますり抜ける。
強大なダメージを受け、衝撃で足を骨折した魔理沙はその場から動けなくなった。
「こうなったら、「夢想天生」!」
霊夢が自身の最高のスペルカードを詠唱し、霊夢自身が光り輝き出す。
自身の周囲に配置された8つの陰陽玉からスライディングから起き上がる男目掛けて向かって行く。
それに対し、男は驚きもせずただ霊夢の方を見ていた。
男が霊夢の方に右手を向ける。
霊夢の弾幕が男へと次々にぶつかっていく。
男は怯みもせずにただ霊夢へと手を向ける。
(一体何なの?!)
次の瞬間、霊夢には男の掌から霊力の塊が撃ち出された様に見えた。
空間から男へ、男から掌へ、掌から霊夢へと射出されたエネリオン塊は霊夢の体の中心にクリーンヒットした。
不思議な事に霊夢は痛みを感じなかった。
そして、自身の輝きが失われている事に気付いた。
こんな言葉がある。
敵とは幻影、幻影を倒せば敵が倒せる。
エネリオン塊は霊夢を覆う実体の無い幻影、つまり霊夢が夢想天生を行う時に敵の攻撃を無効にする為の霊力殻、それを突き破ったのだ。
ちなみにトランセンデンド・マンもエネリオンの鎧を体の周囲に纏う事で敵の攻撃を軽減するが、霊夢の霊力(本質的にはエネリオンとほぼ同じ)の鎧は実体の無い虚像へと攻撃を逸らす為の物だ。
簡単に言えばトランセンデンド・マンは攻撃を受け止め、霊夢は攻撃を逸らす。
「そんな......!」
自分の周囲を漂う8つの陰陽玉も消滅し動揺を覚えた霊夢へと男が突進する。
男の突進は霊夢との距離あと1mで阻止された。
男の駆け込みナックルはトレバーの両腕にガードされていた。
「離れろ!」
霊夢は咄嗟にトレバーの言葉に従う。
アダムに似ている?
霊夢は一瞬そう思った。
見た目は大きな違いがあるが、いつも正しい事が分かるし、私を守ろうとしてかばってくれる。
そういえばいつも冷静なのも同じ。
知らない内に霊夢は心の何処かに安心感を覚えていた。
トレバーが上下逆さまになり、男へ反転キックを繰り出す。
蹴りは男の腕に防がれ、男がトレバーへストレートを繰り出す。
拳はトレバーが体を回転させて避け、そのまま勢いを利用して裏拳、2連回し蹴り、手刀を繰り出す。
しかし、どれも男の腕に跳ね返され、男の両腕ナックルが決まった。
地面へ吹き飛ばされたトレバーは着地の体勢を取り、着地に成功した。
次の瞬間、男の降下膝蹴りがトレバーの頭頂部に炸裂した。
トレバーの体は勢い良く地面に倒れ、同時にクレータも出来る。
男が拳を高々と上げる。
トレバーが抵抗しようと男へ蹴りを放つ。
蹴りは男を僅かに怯ませただけでダメージは与えられず、男は予定通り拳を振り下ろす。
霊夢の脳裏には、アダムが倒れマルクが止めを刺そうと拳を高々と上げる光景が浮かんだ。
「はあ!」
弾速の速い針型の弾幕が霊夢から男へ飛んで行く。
弾幕は男へと次々に当たっていくが怯みもしない男はトレバーへと拳を振り下ろす。
突然、男の拳が爆発し、パンチは不発となった。
男が振り向き、視線の先には茶髪で茶色い目の男の姿があった。
「あぶね!トレバー、今の内だ!」
リョウに言われた通りにトレバーが男から距離を取る。
リョウが手を突き出し、エネリオン塊を連続して男の方に撃つ。
男はトレバーに見向きもせず今度はリョウの方へ駆けて行った。
男がエネリオン塊を避けるまでも無く受け止めながらリョウへ突進する。
「冗談じゃねえ!」
男は駆け込みながらしゃがみ、しゃがみながらリョウへ下段回し蹴りを繰り出す。
リョウの目はどうにか蹴りを捉えていたものの、防ぐには至らず、リョウの脛に蹴りが炸裂した。
バランスを崩したリョウは地面に手を着き手の押す勢いで起き上がろうとしたが、同時に男の肘打ちが目の前に迫っていた。
リョウが避けようとする前に肘打ちはリョウの腹に決まっていた。
脱力したリョウへ男が跳び上がり、降下キックを仕掛ける。
その時、何処からか矢が男に向かって飛んで来た。
それでも男には矢が効かず、リョウへの蹴りの体勢のままである。
今度は金属の銃弾型の弾幕が大量に男へと向かって行く。
これも男には当たるものの怯ませるどころか注意すら逸らせない。
次の瞬間、男の背後からトレバーが両足蹴りを決めた。
不意打ちだったが男は僅かにしか吹き飛ばなかったものの、リョウへの攻撃の阻止は成功した。
「サンキュートレバー。それと永琳さんに鈴仙ちゃんも来てたのか。」
「......ああ......。」
「ええ、輝夜達を慧音の所に預けて来たわ。」
「それにしても全然攻撃が効きませんね。あとちゃん付けはやめて下さいよ。」
男は着地するなりリョウ達を睨んでいた。
「それにしてもあのパワーにスピード、特に防御力は異常だぜ。ウルトラ・スペシャルマイティ・ストロング・スーパーよろいでも着ているのか?」
「......あれはただ錯覚させて存在していると思わせているだけだったが......。」
トレバーから細かいツッコミを受けたリョウだがそんな事はどうでも良く、リョウもツッコんだトレバーも真剣な顔で男を睨む。
そして、男が地面を駆け、一瞬遅れてリョウ達も正面から向かって行く。
男がリョウに向かって飛び蹴りを放つ。
跳び蹴りを横に避け、男へ裏拳を上から振り下ろす。
リョウの裏拳を腕で受け止め、反対側から迫るトレバーの駆け込みストレートも受け止める。
トレバーへミドルキックを繰り出す男だがトレバーの足がそれを受け止めていた。
リョウがしゃがんで男へ下段回し蹴りを、トレバーが跳び上がって男の頭へ回し蹴りを放つ。
男が跳び上がり2つの蹴りを避けると銃を取り出し、2人へ秒間200発の勢いで乱射する。
迫り来る銃弾を次々と避ける2人へ男が跳び降りていく。
突然、男の視界が赤く大きく歪んだ。
鈴仙の目が赤く輝き、鈴仙と永琳、そして霊夢が男に向かって弾幕を発射していく。
しかし、男の身体は弾幕からのダメージを受け付けず、今度は霊夢達へと銃を乱射する。
慌てて避ける3人だが3人共体の何処かに銃弾を数発被弾していた。
男の右側面からリョウの跳び蹴り、反対側からトレバーのスライディングキックが迫っていた。
男は2人の足をそれぞれの手で掴んで受け止め、2人を振り回す。
2人は抗う事も出来ず同じく振り回される仲間と激突した。
男が2人を持ったまま遥か上空へ飛び上がる。
「リョウ達も一緒じゃあ撃てない......。」
「無茶苦茶な様で良く考えられているわね......。」
「それに私の能力は今も続いている筈なのに全然効いてないみたいです......。」
立ち尽くす3人は男が上空から降りて来てリョウ達を手放した時にしか攻撃のチャンスは無かった。
ようやく降りて来た男は着地と同時に2人を地面へ叩きつける。
それをみた3人はスペルカード詠唱の準備をした。
しかし、男が2人を霊夢達の方向に向かって投げ飛ばす。
仲間を巻き込む訳にもいかず、投げられた2人を避ける。
次の瞬間、5人を銃弾の嵐が迎え撃った。
サムがカイルと早苗に駆け込む。
元々身体能力の無い早苗はサムからひたすら距離を取る。
カイルは早苗をかばう様にサムからの打撃を受け止める。
サム自身の”波”を操る能力によって大量の拳が向かってくる様な幻影を見せる。
次々と繰り出される攻撃を捌き切れなくなったカイルへサムのボディブローが決まった。
早苗が跳び上がり、スペルカードを詠唱する。
「秘術「一子相伝の弾幕」!」
サムへと迫って来る弾幕は上空から降りて来るレーザによって消滅した。
そしてレーザーはそのまま2人を襲う。
早苗に身体能力の無い事が判明しているカイルは早苗の腕を引っ張り、レーザーに当たらない様に誘導する。
何とかレーザーを避け切ったが何時の間にかサムの姿は消えていた。
「落ち着いて、存在はしているんだ。」
「分かってます......。」
暫くの間沈黙が流れた。
突然カイルが腕を体の前に掲げた。
同時に肉を打つ打撃音が聞こえる。
腕を上下左右に動かし、体を左右前後に動かし、見えない攻撃を避けていく。
突然、カイルの頭から衝撃音が聞こえ、カイルは頭から後ろへ吹き飛ぶ。
「そこです!」
早苗が何も無い空間へ弾幕を発射する。
しかし弾幕は地面や木々に当たるだけで手応えが無かった。
突然、早苗は背中に強い衝撃を覚え、吹き飛ばされた。
「さあどうした?俺に勝つんじゃ無かったのか?」
サムが姿を現しながら2人へ問いかけた。
「......カイルさん......。」
「大丈夫だよ。まだこれからだ。」
カイルは立ち上がると左半身を1歩前に出し、右手を後ろに顔の高さに、左手を前に腰の高さに構える。
「ヘッ、孫氏の兵法でも使うつもりか?」
対するサムはジョークを吐きながらカイルへと突進する。
腕や足の周囲の光を屈折させて幻影を作り、カイルへ叩き込む。
攻撃を次々と受け止めていくカイルだが反撃の余裕が無い。
だがサムは何か違和感を覚えていた。
攻撃が当たらない。
そして、カイルに蹴りを掴まれ、地面に叩き下ろされた。
起き上がったサムは光を屈折させて自身の周囲に光学迷彩を張る事で姿を見えなくさせる。
(これならどうだ。)
カイルに見えない筈の打撃は全て受け止められた。
フックを体を前に傾けて避け、同時に手刀をサムにヒットさせる。
「俺の攻撃が読めるのか?いや、俺の攻撃の癖を見切ったのか。」
「その通りさ。君は余裕とやらで同じパターンの攻撃ばかりしかしてない。」
サムはカイルから距離を取り、大量のレーザーをカイルへ向ける。
カイルは銃をサムに向け、レーザーを避けながら撃つ。
銃弾をレーザーでかき消し、更にカイルの背後、左右、上空からもレーザーを放つ。
上下左右前後に体を動かし、捻り、躱す。
対するカイルの銃弾はサムに届いてすらいない。
すると、カイルが何を思ったのか、
「......待て、一つ提案がある。」
と言った。
「何だ?」
サムが興味を持ったのかレーザーを放つのを一時停止した。
「決闘だ。」
「......お前にも戦いを楽しむ心があるとはな。」
「そんなんじゃないさ。それと彼女も僕と一緒に参加させて欲しい。」
「え、え?!私もですか?!」
「2対1か、まあ楽しめて良いだろう。ならどんなルールだ?」
「......全員格闘無し、僕がこのコインを投げ、地面に落ちると開始、相手を殺した方の勝ちだ。」
「良いぜ。さっさと始めろよ。」
「カイルさん、大丈夫なんですか?私そんな自信ありません......。」
殺すという単語に緊張と不安が走る早苗が訊く。
「大丈夫だよ。実はこれは相手がレーザーを使うという事に勝利の鍵があるんだ。ただしそれには君の力も必要だけどね。僕が合図をする。」
そう言うとカイルはサムへと正面から向かい合った。
距離は10m。
カイルは銃にエネリオンを溜め始め、サムはカイルへ右手を向ける。
しばらくし、カイルが銃にエネリオンを溜めながらサムへ駆け込み、サムはその場から動く事無くカイルへレーザーを撃つ。
サムのエネリオンは上空から降り注ぐ太陽光に当たり、光線の飛ぶ方向を屈折させる。
屈折した光が1点に集まり、レーザーとなる。
カイルに向かって極太のレーザーが何十何百本も空間を埋め尽くすように飛んで行く。
『早苗、光っている空間へ衝撃波を起こしてくれないか。』
(あ、はい。)
カイルから通信を受け取った早苗はその言葉の通り1点だけ光っている空間があった。
これはカイルが早苗に見せている幻覚の一種で、早苗は言われた通りにそこへ全力の衝撃波を放つ。
衝撃波は丁度カイルとサムの中間の空間に突如川の様に流れた。
モーセが紅海を割るのとは逆に圧縮空気の川を作り出す。
衝撃波の川は流れる空間の気体密度を上げた。
屈折率は一般的に密度が高い程大きくなる。
屈折率の高まった空間を通った光は抵抗も無く屈折し、軌道がカイルから逸れる。
ギリギリ当たらないレーザーの中を直進するカイルは大量に自身のエネリオンを溜めた銃から、音速の10倍を誇り、エネルギー量にして50000000J、TNT換算で12kg分のエネルギーを持った銃弾をサムの左胸に正確に向けていた。
「......ナイスショット。」
今の一言はカイルと早苗両方に掛けた物だった。
サムは避ける意思も無く自分に向かって放たれたエネリオンの銃弾を見詰めていた。
次の瞬間、サムの心臓をエネリオンの銃弾が貫いた。
リョウ君にネタを当てはめるのが好きです
どうでも良いのですが、ドラえもんは作者がSF好きになったきっかけであります