東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
サムがカイルの方に駆けて行くが、進む度に銃弾が自分に向かって飛んで来る。
「近づけさせないって訳か。ならば衛星兵器に匹敵する攻撃に耐えられるかな、「サテライト」よ。」
サムは上空に手を突き上げた。
その方向には太陽がある。
太陽光線を屈折させ、屈折する方向を調整する。
太陽光線は一点に集められ、カイルへと向かう。
カイルが光線が屈折した事を察知し、体ごと避ける。
光線の当たった先は物は高熱により燃えるどころか液化・気化していた。
「やはりあの光学迷彩や光学攻撃は「ミラー」か。」
太陽光線の屈折する方向を更に調整し、光線を薙ぐようにして繰り出す。
エネリオンの流れを感知し、光線の軌道を予測したカイルは迷い無く光線を躱す。
「チッ、「バトルコンピューター」の異名もある訳だからな......出来れば捕獲って言ってたから、先に殺した方が楽か。」
太陽光線の屈折する方向を変え、焦点を早苗に変える。
『伏せて!』
「え、え?!」
誰かが言った通りにそのまま伏せる。
光線は早苗の頭上数十cmを通過した。
「避けた?!」
そして、サムに向かって銃弾の嵐が襲い掛かる。
「成程、奴の能力か。」
サムはすぐに冷静になり、難無く銃弾を躱していく。
『いきなりで済まないが、僕の言う通りにしてくれ。』
突然早苗の脳内で誰かが話し掛ける。
「ふえっ?!一体誰ですか?」
『僕はカイル、人類共和軍の者だ。少なくとも君の味方だよ。それと、僕と話すには頭の中で念じるだけで良い。奴に聞かれない方が良いだろうし。』
「ええと......。」(こう、ですか?それと、これからどうするんですか?)
『ああ、まず”力”を使える様にするんだ。正確には僕が力を貸して使える様にするんだがね。まずは力を抜いて頭を空にするんだ。』
言われた通りにする為、目を瞑り、心を鎮める。
『どう?何かを感じるかい?』
(......何か、何と言うべきか、何かが何もない所で光っている?)
『そうだ。その光の様に見える物こそがエネルギーだよ。僕が分かりやすいようにした。それを動かしてみて。と言っても動かそうと思うんじゃない、あれは動いている、そう思うんだ。』
(奇跡の使い方に似ている......。)
全身に力を込め、目を見開く。
次の瞬間、爆風がサムを襲い、吹き飛ばした。
『今の内だ、此処へ来て。』
(は、はい。)
視界に一か所だけ何かが光って見える様な感覚がした。
太陽では無い、自分を導く光だ。
「あの女、俺を怯ませやがった......クソッタレ!!!!!」
サムが全力で地面を殴り付け、発生した衝撃波を増幅し、方向性を与える。
衝撃波は早苗の方へ真っ直ぐに来ていた。
『飛んで!』
すると、視界の上端に光が見え、そこへ飛び上がる。
そして、サムに向かってエネリオンの銃弾が発射され、”それ”に向かって太陽光を集めたレーザーが発射される。
『次は君一人でやるんだ。視覚や聴覚に惑わされるんじゃない。何が在るのかを感じるんだ。』
そう言われ、早苗は再び目を瞑る。
(......これは......。)
早苗は何かを周囲に感じ取っていた。
ある場所では無かったり、大量にあったり、動いていたり。
『そうだ、それがこの世界のエネルギーの源「エネリオン」だ。見えないし、聞こえない、でも感じる。形を変え、周囲に存在している。』
(......そこです!)
サムの放つエネリオンを感じ、目を見開く。
サムの至近距離で爆発が起き、吹き飛ばされる。
追い打ちを掛ける様に銃弾が襲い掛かり、ヒットする。
「クソッ!」
『早く、まだ君の力では奴を倒すには不十分だ。』
早苗はひたすら全力で”そこ”へと飛んで行き、サムはそれを追い掛ける。
そして、早苗の視界に”それ”を発見し、同時にサムは早苗に向けてレーザーを放とうとする。
“それ”はサムに向かって銃弾を放つ。
レーザーは銃弾を消し去り、軌道を変え早苗に向かって行く。
同時に”それ”が早苗に向かって行き、手を伸ばしていた。
『掴まって!』
“それ”に向かって早苗自身も手を伸ばす。
手が触れ合い、強く握る。
その瞬間、早苗は心の何処かに安心感を覚えていた。
何とかなるかも知れない、そんな期待が"それ"から感じるのだ。
引っ張られ、紙一重の所でレーザーは当たらなかった。
早苗を引っ張った”それ”は自分と同じ位の歳の少年だった。
引っ張った反動で前に飛び、サムに銃弾の嵐を喰らわす。
銃弾は難無く躱され、3人共着地する。
「やはりお前か、「サテライト」。「バトルコンピューター」とも言ってたな。」
「そちらこそ、その光学迷彩や光線は「ミラー」だな。」
そう言いながら睨みあうカイルとサム。
一方でカイルと早苗は全く違ったやりとりを行っていた。
「大丈夫だったかい?改めて自己紹介だ。カイル・ウィルソンだ。」
「まあ大丈夫です。東風谷早苗って言います。どうも、ウィルソンさん、先程はありがとうございました。」
「どういたしまして。まあ僕も必要だと思ってした事だ。それと僕の事は出来ればカイルって名前で呼んでくれないか?」
「あ、はい、カイルさん。それと教えて下さい。幻想郷で何が起こっているのかを。」
「ああ、だがあちらが待ってくれるとは思えないが......。」
カイルの思考通り、レーザーが大量に放たれた。
リョウは掌から2人へエネリオン塊を発射し、銃を乱射する。
それをウァサゴは槍で、マルバスは剣で、それぞれの武器で冷静に攻撃を防いでいく。
マルバスは銃を2丁リョウに向けて引き金を引き、ウァサゴはリョウへと駆け込みながら刺突や斬撃を繰り出していく。
槍を柄を手で弾く事によって躱し、銃弾を体を捻って躱す。
それでも銃弾がリョウに数発ヒットし、ウァサゴから蹴りを喰らう。
蹴りを受けて吹き飛ばされたリョウはその体勢のまま銃弾を発射する。
マルバスは剣を2本持ち、ウァサゴは槍を半分に割り、リョウへと突進していく。
剣から繰り出される斬撃と槍から繰り出される刺突を同時に体を捻って躱す。
しかし、体ごと動かすのはエネルギーを多く消費する。
その為、リョウは反撃をする暇が無かった。
とうとう捌き切れなくなり、体の所々に切り傷が出来ていた。
ウァサゴがリョウに連続蹴りを決め、続けて蹴り上げる。
マルバスが吹き飛んだリョウへ連続でパンチを喰らわせ、両手で握った拳を叩きつける。
吹き飛んだリョウへウァサゴの跳び上がりアッパーが決まり、更に吹き飛ばす。
更に吹き飛ばされたリョウへマルバスの踵落としが決まり、地面に落とす。
ウァサゴが落下して来たリョウへ全力のストレートを決め、吹き飛ばす。
吹き飛ぶ勢いは軌道上の木々を何本も砕いた。
「いてて......やっぱしキツイな。」
落下したリョウは起き上がり、近くへ2人も寄る。
「どうした、そんな程度か?」
「1人で十分と言っていたが、ハッタリなのか?」
「いや、これからだぜ。まあ見てろ。」
リョウは2人に2つの掌を向けた。
「何のつもりだ?」
「......ウァサゴ、奴に向かって風が吹いていないか?」
「......本当だ。更に寒気までしてきた......。」
「奴は他にも能力があるというのか?」
「違うな、能力は一つだ。」
リョウが2人の疑問に答える。
僅かに後ずさりした2人は更なる異変を感じた。
「地面が固い。辺りに霜まで出来ているぞ。」
「風だけにしては寒すぎるな。」
「お前、まさか......。」
ウァサゴが怯えたように言う。
「ウァサゴ、奴の事を知っているのか?」
「奴は......「フロスト」だ。」
「「フロスト」ってあの過去最悪の殺人鬼の事か?」
「正解。つまり俺の能力は「加熱」では無く「熱制御」だ。加熱零曲両方とも出来るって訳さ。」
ウァサゴは半分逃げ腰状態だった。
「フロスト」を知らないマルバスもウァサゴの反応を見て恐れをなしていた。
リョウの掌からは周囲の熱を吸収し、それを変換したエネリオンのビームが放たれる。
2人共直撃は避けたが、熱によるダメージは避け切れず、爆風の影響で吹き飛ばされる。
直撃した地面は一瞬で気化し、小規模ながらもキノコ雲を作り上げた。
吹き飛ばされたウァサゴは腹に強烈な激痛を覚えた。
見ると、リョウの右腕がウァサゴの腹を貫いていた。
「まさか「フロスト」が反乱軍に居たとは、何たる誤算......。」
次の瞬間、ウァサゴの体は熱によって破裂した。
「だあああああ!!!!!」
マルバスがリョウの隙を突き、剣を持ったまま後ろから羽交い絞めを決めた。
首を裂こうとする剣を持つマルバスの腕を掴み、しばらくそのままの体勢が続いた。
「ぬおおおお!!!!!」
「ぐぬぬぬぬ!!!!!」
その内、マルバスは自身の異変に気付いた。
「力が入らん......。」
間も無く、マルバスの両腕は動かなくなった。
バリン!
何かが砕けるような音がしたと同時に、マルバスのリョウが握っていた腕の箇所がガラスの様に砕けた。
水を一気に冷却する事によって細胞を凍らせ冬眠状態にする、その為、マルバスは痛みを感じなかった。
次の瞬間、リョウの右手がマルバスの腹を貫通し、内部から熱を奪う。
結果、マルバスは腕を失った状態で凍り付き、冬眠状態になった。
続けてリョウのストレートが決まり、マルバスの氷像はあえなく粉砕した。
更にリョウは粉々になったマルバスへ熱を送り、焼き尽くす。
第三者から見ればやり過ぎに思えるだろうが、リョウにとってはそれは必要事項だ。
正体がばれない為、わざわざ凍り付いた肉片を燃やす。
「さてと、何処か手伝いに行くか......ん?」
リョウはある事に気付いた。
「あのアガレスとか言う奴の死体が無い。」
リョウはトレバーが倒した相手を確実に殺すという事を良く知っていた。(それが「死神」という二つ名の所以である。)
「変だな、死んでる筈の奴が勝手に動く筈も無いし、人らしき気配は無かったし......今は奴らをどうにかしなくてはな。」
リョウは疑問を残し、その場を去って行った。
その右手は僅かに震えていた。
そして、それを見送る1匹の黒猫が居た。
黒猫は人の姿に変化し、散り散りになったウァサゴとマルバスの死体を心惜しく見ながら、猫車に乗せたアガレスの死体を運んで行った。
「良いかアンダーソン、簡単に言えば貴様はクローンだ。」
「クローン?どういう事だ?」
アダムは動揺を隠し切っていなかった。
「トランセンデンド・マンはあらゆる兵器を上回る存在だが、数量という弱点があった。現在確認されているトランセンデンド・マンは全人類人口10億人に対し、1000人にも満たない。」
ガミジンの説明と同時にカミソリがもの凄い勢いで連続で繰り出される。
「それを量産しようという訳だ。話を急ごう、本来アダム・アンダーソンは昔の戦闘により死んだ。」
アダムが更に自身の動揺が激しくなったのを覚えた。
「そして、その死体の細胞から出来たクローンが貴様だ。」
(あの夢でシリンダーの中に入っていたのは複製された自分だったのか。)
「驚いているな、まあ無理も無い。記憶を失い、自分が何なのかを知ろうとするが、知った結果がこれだ。通常ならば生きる意味を失ったも同然。」
「確かに僕は驚いている......だが僕には生きる意味がある。」
ガミジンにはアダムが自分の攻撃を押し始めた様に感じた。
「人形が何を言う。」
「人形じゃない、僕はアダムだ!」
突然、アダムの2本のナイフが更に早く動き、ガミジンのカミソリを避けながらガミジンへ攻撃を繰り出す。
(コイツ、さっきまで何の感情も感じられなかったのに急に感情を持ち始めた?しかも攻撃が速くなりやがった。)
「僕は幻想郷を守る!」
今回アダム君の過去がある程度分かりましたが、詳しい事はまだ後で書きます