東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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31 真紅の花を咲かせろ

 平和そうな雰囲気の漂う筈の花畑は殺気立っていた。

 

「しつこいな。これでは異変を調べられない。」

 

 そう大した事も無さそうに言ってアダムは2丁の銃を構え、活性化した妖精へと銃弾を発射する。

 

 SF映画で出てくる様なレーザーガンの発射音の様な音が鳴り響いている。

 

 次々と行く手を阻む妖精たちを撃ち落していく。

 

 また、四方八方から自分に向かって飛んで来る弾幕を鮮やかな身のこなしで躱していく。

 

 アダムが通った跡には至る所に気絶した妖精が倒れていた。

 

「......如何やらこの近くにいる様ね。」

 

 女性が一人、アダムを追っている事は本人の知る所では無かった。

 

 一方でアダムは倒しても倒しても次々と増えて来る妖精達を相手に銃弾を浴びせ続けていた。

 

 上下左右前後、跳び上がって体を捻り、地面を転がり、体を反らせたり回転させたり、最低限の動きで弾幕を避ける。

 

 音速の5倍で、1秒で25発、両方の銃を合わせて1秒に50発放たれる銃弾を妖精達は躱すどころか目に映る前に被弾する。

 

 更に接近して来た者を殴り、蹴り、投げ飛ばす。

 

 そして、妖精達が不穏な動きを見せた。

 

 アダムの目の前から一斉に方々へと去って行ったのである。

 

 アダムの目に一人の女性の姿が映った。

 

 緑のショートボブと対照的な赤い目。

 

 白のカッターシャツに赤のチェック柄のベストと同じく赤のチェック柄のロングスカート。

 

 そして日傘を差している。

 

「私は風見幽香。この花畑を管理している者よ。貴方ね。この花畑を荒らしているのは。」

 

「荒らしてなどいない。こちらは正当防衛で植物は巻き添えになっているだけだ。」

 

「花を散らしている事に変わりは無いわ。」

 

「被害を最小限に抑える事は出来ても犠牲が伴う事はある。最小限に抑えられれば問題無い。それにこんな程度は生態系に影響は出ない。」

 

「貴方、今なんて言ったかしら?」

 

「要するに多少の犠牲はあっても全体に影響が無ければそれで良い。」

 

「......ふざけないで頂戴、花だって尊い命を持っているのよ。」

 

「何億何兆もある生命体の内の1体の何が尊い。生態系は数%の誤差があっても取り戻す。だから1体程度どうでも良い。ましてや生産者である植物は最も数量が多い。」

 

「貴方、花を馬鹿にしないでよ!」

 

 怒りの声と共に幽香から弾幕が放たれた。

 

 だがアダムは知らん顔だ。

 

 それが更に幽香の怒りを催促させる。

 

 アダムは慣れた手つきでナイフを2本抜き、構える。

 

 迫り来る弾幕を2本のナイフが弾いていく。

 

 それと同時に、アダムは地面から何かが迫って来ているのを”感じた”。

 

 地面から足を離し、バク転を連続で行い、それを避ける。

 

 アダムが立っていた地面からは通常の何倍の大きさのある花が何本も勢い良く生えてきた。

 

(巨大な花か。これが相手の能力なのか。接近戦には余り持ち込めそうに無いな。)

 

 ナイフを2本仕舞い、銃を2本取り出す。

 

 幽香へ向けて引き金を引く。

 

 銃弾はどれも女性へ当たる軌道だった。

 

 しかし、銃弾と女性との距離が2mを切った辺りで、銃弾が幽香の持つ日傘に阻まれ、不発に終わる。

 

 そして、自分の足元から勢い良く幹の太いツタが生えてきた。

 

 ツタはアダムに絡み付こうとするが、銃弾によって阻まれ、絡み付かない。

 

 地面を蹴り、幽香へ向かって駆け込んで行きながら銃を連射する。

 

 対する幽香はその場から動じず、弾幕をアダムへと放っていく。

 

 そして、互いの距離は残す所3m。

 

 アダムが両足を地面に蹴り付け、音速を超える速度で幽香に突撃する。

 

 しかし、一方の幽香は、

 

「掛かったわね。「マスタースパーク」!」

 

「それはどうかな。」

 

 幽香の日傘の先端から極太のレーザーが放たれた。

 

 同時にアダムは2本のナイフをそれぞれ2本のロープの先端に括り付けた。

 

 これもまた片方はマルクの物だった物である。

 

 1本を幽香の足元に投げ、もう1本は後ろへと投げ飛ばした。

 

 右のロープが幽香の足に巻き付く。

 

 ロープを引き、手元に引き寄せる。

 

 バランスを崩した幽香は仰向けに地面に倒れ、レーザーは軌道が逸れ、何にも当たる事無く上空へと飛んで行った。

 

 右手に持つロープを戻し、左手に持つロープを鞭を打つ様に振りかぶる。

 

 ロープの先端に繋がっているナイフが弧を描き、幽香を襲う。

 

 間一髪の所で地面を転がって避け、立ち上がろうとする。

 

 しかし、アダムの右手に何時の間にか握られた銃から銃弾が発射される。

 

 至近距離同然の距離で躱せる筈も無く、幽香は攻撃に耐えようと腕を前に掲げ、踏ん張る。

 

 如何にか全発を耐えきったが、目の前にはアダムがストレートを繰り出している途中だった。

 

 直感的にアダムのストレートを掴んで受け止める。

 

 反撃しようと拳を突き出すが、あえなく受け止められる。

 

 暫くその状態のまま対峙する2人。

 

 そして、幽香が先に自分の腕を掴む手を除け、アダムへパンチを突き出す。

 

 パンチは見事アダムの顔面にヒットした。

 

 だが、アダムは体を後ろに回転させる事で衝撃を受け流し、同時に幽香にサマーソルトキックをヒットさせた。

 

 アダムが回転し終えて着地し、幽香は後ろに多少のけ反るが、体勢を立て直す。

 

「......。」

 

「......。」

 

 突然、沈黙を破る様にアダムが下段回し蹴りを繰り出すが、幽香は空中へと飛び上がり、攻撃を躱すと同時に距離を取る。

 

「花符「幻想郷の開花」!」

 

 幽香の周囲を花が咲く様に弾幕が覆い尽くし、アダムへ向かって飛んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 リョウは森林の中を時速300kmで突き進んでいた。

 

「いやぁ、霖之助から貰って正解だったぜ。しかも俺らの世界では化石も同然なんだし。このフォルムが良いんだよな。」

 

 リョウは霖之助から貰った大型バイク「Ninja EX-R」に跨って疾走しているのだ。

 

 電動二輪車の為、マフラーから鳴る独特の重音は鳴らないが、その代わりに電気モーター独特の キュイーン という甲高い音が鳴り響いていた。

 

 ちなみに出力は排気量1Lのガソリンエンジン以上ある。

 

 迫り来る(と言ってもリョウ自身が進んでいるからそう感じる)木々を難無く躱していく。

 

 途中で走行を邪魔する妖怪とかも撥ねているが。

 

 リョウ曰はく「ドライブを無視して飛び出る奴が1番悪い」との事らしいが。

 

「何処行こう......そうだ、永遠亭で輝夜の奴とでも鉄拳か何かでもするか。」

 

 ブレーキを掛け、ドリフト走行で方角を変える。

 

 しかも障害物の多い、大して固くも無いグリップの効かない森の地面でだ。

 

 更にリョウの乗っているバイク「Ninja EX-R」はスピードバイクであってオフロードバイクでは無い。

 

 それでも失敗する事無くドリフトで方向転換を終えた所でアクセルを全開にする。

 

「やっぱしバイクはカワサキかホンダに限るな。イヤッホゥ!」

 

 スピードメーターは時速360kmを超えた事を表示していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊夢、そっちは何か分かったか?」

 

「全然。そっちこそどう?」

 

「全くだ。一体何が起こってるんだろうな。」

 

「お二人方もまだ手掛かりを掴めていないんですか?」

 

「そういう事......って文!いつの間に?!」

 

 文と呼ばれたのは黒いミニスカートと白シャツ、セミロングヘアーの黒髪、山伏風の帽子とフィルム式一眼レフカメラ、そして、背中に生えたカラスの様な黒い羽が特徴的な少女だった。

 

「どうも、清く正しい新聞記者射命丸文です。そりゃあこの異変を取材しに来たんですよ。私の情報でも異変については良く分かってませんけど。」

 

「やっぱし気になるよなあ。少なくともあたしはこんな出来事聞いた事無いぜ。」

 

「ところで魔理沙、アダム見なかった?」

 

「え?さあ。まあアイツの事だから一人でも大丈夫だろ。」

 

「アダムって確か貴方の所に住んでいる外来人ですよね。あとで取材しても良いですか?」

 

「アダムだから大丈夫ってどういう事なんだか......取材は私は別に構わないけど本人が許可してくれるかは分からないけど。」

 

「そういやさっき、奥で外来人らしき男が風見幽香と戦っているって噂聞いたんですけど。」

 

 2人が目を見合わせる。

 

「幽香ですって?!よりによって一番厄介な奴じゃない!それで文、それって何処なの?」

 

「アイツは怒らせたら一番怖いもんな。悪いけど文、お前も手伝ってくれ。」

 

「あっ、はい。ここから更に南の方って聞きましたけど。」

 

「それならさっさと行くわよ!」

 

 3人は文の言った方向へ飛んで行った。

 




実は車派の私。インプレッサとかインテグラとかシルビアとか好きです

一応言っておきますが、「Ninja EX-R」はフィンクションです。実在の人物、団体には関係ありません。

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