東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
「......お前に対して憎しみを感じる。」
「何故嫌いなんだ?」
「......。」
「......。」
沈黙を破ったのは二人同時だった。
アダムはマルクへ銃弾を発射した。
しかし、マルクはアダムの方向とは違う方向に発射した。
それに気付き、銃の向いている角度の先に何があるのかを見た。
自分の隣にいる人物、霊夢だった。
左腕で霊夢を抱き、右手に握る銃をマルクに銃を向けながら移動し、銃弾を如何にか躱した。
当然、マルクの方も銃弾を躱し終えている。
互いに銃を向けたまま沈黙が流れる。
「霊夢、下がっていてくれ。」
「......あ、うん。」
突然の事で呆気に取られていた霊夢を離し、後ろへと下がったのを確認すると、新たな質問を投げ掛けた。
「お前は何故幻想郷に居るんだ?」
「お前の果たせなかった目的を果たすためだ。」
一瞬言葉を失った。
「......その目的は何だ?」
「それはお前が知っているだろう。」
「悪いが、僕は此処に来る前に記憶を失った。その目的とは何か教えてくれ。」
ハモンド、先程レミリアと戦っていた人物の身体は今、最高度の緊張を保っていた。
何せ地上20mの高さに片手で竹を掴み、それで体を支えている状態なのだ。
見下ろせば仲間のマルクとその他5人の人物が見える。
しかし、マルク以外の者は頭上に居るハモンドに気付いていない。
「......あのガキ、もしや「アンダーソンシリーズ」か?まさか生きていたのか。」
『本当か?しかし、それなら何故「バースト」が出来ないのか......。』
片耳ヘッドフォンマイクの様な通信ユニットから1000m離れた位置にいる仲間、ロブ、先程魔理沙達と戦っていた人物の声が聞こえた。
「まて、マルクの奴何か話している......。」
そして、銃弾が発射された音が聞こえた。
『今何が起こっている?』
「マルクとアンダーソンらしき奴が一発ずつ撃ち合って互いに避けてまた何か話し始めている......アンダーソンの奴は何か記憶を失ったとか言っているぜ......ちょっと待ってろ。」
『あいよ。』
ハモンドは下に居る味方以外の5人を見回した。
(......何だ?あの尻尾。多すぎて気持ちわりーな......あいつにするか。)
ハモンドの目線には金髪で青と白が基調の服を着た尻尾が9本もある女性、つまり藍が居た。
片手に握り、体を支えている竹を手から離し、飛び降りる。
ハモンドの両足降下キックが藍の頭頂部にクリーンヒットし、藍が地面に倒れる。
地面に伏した藍を蹴り上げ、踵落としで再び地面に叩きつける。
倒れた藍の腕を掴み、背負い投げを決め、倒れた藍にショットガン型の銃から1発発射した。
突然、後ろから衝撃音が数回鳴り、最後に銃声がした後、アダムの質問の答えは後ろから答えが返って来た。
「悪いが教えられない。少なくとも”今の”お前は味方では無いからな。」
銃をマルクに向けたまま振り向くと、男性が一人立っていた。
そして、その足元には女性が一人倒れていた。
「藍!」
紫が叫ぶ。
藍は仰向けのまま気絶していた。
「ハモンド、コイツは俺がやっても良いか?」
「良いぜ。だが殺すなよ。後で厄介になるからな。」
「分かっている。それじゃあ......。」
マルクが両腕を突き出しながらアダムへと突進していく。
両腕を正面から受け止めたアダムだが、勢いは止められずに後方へと下がっていってしまう。
そして、アダムは霊夢達と離れた。
「さて、お前らの相手は俺達だ。」
「”達”?貴方一人じゃない。」
霊夢が疑問を投げ掛けた。
『おいハモンド、勝手に俺の存在を明かすな。』
通信ユニットからロブの声が聞こえた。
「ロブ、隠れてないでさっさと片付けようぜ。どうせ俺達はコイツらは俺達の事を"知らない"しにとって”存在しない”のだから。」
『へっ、良く言うなぁ。オッケー、今行く。』
「ちょっと、貴方何やってるのよ。」
「まあ少し待とうや。ゲームは大人数の方が盛り上がるだろ?」
霊夢と紫と永琳が顔を見合わせる。
(紫、どうする?)
(コイツの仲間が来る前に片付けましょう。)
(私も手伝うわ。今は協力よ。)
霊夢達はアイコンタクトによる作戦会議(?)で攻撃を選択し、
「霊符「夢想妙......」
「境符「四重結......」
「天丸「壺中の......」
それぞれスペルカードを唱えようとするが、
「でやあっ!」
ハモンドが剣を引き抜き、地面に叩きつける。
剣の機能により、衝撃波は指向性を持たされ、3人へと向かって行く。
空気中の音速は秒速340mだが、地中の音速は土の性質によるが、少なくとも秒速1500mは超える。
つまり10m離れている霊夢達には0.007秒以内で到達する。
衝撃波は霊夢、紫、永琳のそれぞれが立っている地点へと一直線に向かい、地面を揺らす。
スペルカード詠唱は地響きによって阻害された。
ちなみに衝撃波自体には殺傷能力は無いので、無力化にしか使えない。
「フライングは反則だぜ。」
「今のは一体......?」
「衝撃波ね。きっと方向性を与えられてあのような威力になったんだわ。」
「これは地上戦ではなく空中戦に切り替えた方が良いわね。」
一方である場所ではリョウとバエルの戦いの真最中だった。
己が持てる力をフル活用し、攻撃を叩き込む。
次々と叩き込まれる攻撃を受け止め、避けていく。
拳と拳、蹴りと蹴りがぶつかり合い、衝突の瞬間衝撃波による爆音が生じる。
互いのストレートが互いの頬にヒットし、どちらも後ろへ吹き飛ぶ。
リョウは空中で後方へ一回転して体勢を整えて着地し、
バエルは地面に足を着き、靴と地面との摩擦で減速し、停止した。
「久しぶりだ。こんなに手応えのある奴と戦うのは。楽しくなってきたぜ。」
「それはこっちの台詞だ。最近はザコの相手ばかりで飽きていたのでな。」
二人とも跳び上がり、互いの放つ跳び蹴りがぶつかり合う。
そして、再び攻撃のラッシュが続く。
互いのストレートが衝突し合い、衝撃波と共に互いに後方へ吹き飛ぶ。
再び距離を詰め、攻撃を繰り出していく。
リョウのストレートを左小手で受け止める。
バエルの右フックをしゃがんで避ける。
リョウのアッパーカットを後方に下がって避ける。
バエルの上段回し蹴りをしゃがんで避ける。
リョウの下段回し蹴りを跳び上がって避ける。
バエルの降下キックをバク転で避ける。
リョウの駆け込みナックルを体ごと横に避ける。
バエルの裏拳を左手で掴む。
リョウの中段蹴りを左手で掴む。
バエルのローキックをジャンプして避ける。
リョウの左足の踵がバエルの首を捉え、勢い良くバエルを地面に叩きつけた。
そのままリョウが起き上がり、倒れたバエルに踵落としを繰り出す。
バエルが起き上がり、体を横に回転させながら踵落としを避け、そのまま勢いの乗った肘打ちを当てた。
そして、互いに距離を取る。
(この調子では如何にか”援軍を送る為”の時間稼ぎは出来るが、下手したら俺がやられるかも知れんな......。)
(コイツの目的は俺がロブ達と”合流させない為”の時間稼ぎだろうと”予測される”が、こちらがやられる可能性も低くは無い......。)
マルクは前進しながら銃を撃ち、アダムは後退しながら銃を撃つ。
それを互いに身のこなしで避けていく。
互いの持っている銃はどちらも拳銃型。
互いの連射速度はどちらも1秒に50発。
互いの1発の弾速はどちらも音速の5倍。
互いの1発当たりのエネルギーはどちらも同じ。
アダムの発射する銃弾はアダムの移動速度がマッハ1、マルクの移動速度がマッハ1、銃弾の速度がマッハ5なのでマルクにとってはマッハ5で自分に向かってくる。
マルクの発射する銃弾はマルクの移動速度がマッハ1、アダムの移動速度がマッハ1、銃弾の速度がマッハ5なのでアダムにとってはマッハ5で自分に向かってくる。
つまり互いの銃弾の迫り来る相対速度は同じ。
(これではきりが無い、接近戦で一気に勝負を付けるか。)
アダムが後方から前方へと移動方向を変え、互いの距離を縮めていく。
互いに相手の放つ銃弾の相対速度はマッハ7。
それを互いに接近しながら体を捻って避ける。
距離が更に近くなり、二人とも相手へと駆け込む。
相対距離3mとなった所で二人とも同時に地面を蹴り、真っ直ぐに直進していく。
アダムの左手がマルクの拳銃を握る右手を掴み、マルクの左手がアダムの拳銃を握る右手を掴む。
そのままの状態が続き、重力に従って俯せの状態で落下し、互いの拳銃の銃口を相手の額に当てる。
動作の速度はどちらも同じ。
しかし、二人とも引き金を引かなかった。
「......。」
「......。」
「銃撃戦ではきりが無い。接近戦で勝負を決める。」
「臨むところだ。もっとも、勝つのは俺だ。」
二人とも3m程距離を取り、互いに銃を仕舞い、代わりに右手でナイフを持つ。
間も無くナイフによる戦闘が始まった。
互いに攻撃と防御を繰り出し、相手の隙を窺っては仕掛ける。
アダムの突きがマルクのナイフに軌道を逸らされる。
軌道を逸らせながらアダムへと斬撃を繰り出す。
マルクの斬撃をナイフで受け止め、ミドルキックを繰り出す。
アダムの蹴りを左手でガードし、ローキックを繰り出す。
マルクの蹴りをジャンプして避け、同時に空中回し蹴りを繰り出す。
アダムの蹴りをしゃがんで避け、着地寸前のアダムへナイフを突き出す。
突き出されたナイフを握るマルクの右手を左手で掴み、手元に引き寄せながら右腕で肘打ちを繰り出す。
肘打ちはマルクの体を吹き飛ばした。
空中で後方に一回転して体勢を立て直し、着地する。
マルクはアダムが自分へ追撃を喰らわすべく自分に向かって駆け込んでいるのを認識した。
次々と自分を襲う拳や蹴り、突きや斬撃を避けていく。
アダムの横薙ぎをしゃがんで避け、左手を突き出す。
アダムはそれを避けようとジャンプしたが、マルクの手はアダムの足を捉えていた。
伸ばした腕を引き戻し、アダムを地面に崩し倒す。
追撃にナイフを叩きつける様に撃ち込んだが、アダムのナイフに阻まれた。
次の瞬間、マルクがアダムの腹を勢い良く踏みつけた。
痛みに如何にか耐えたアダムは体を転がし、次なる攻撃を避けた。
再び3mの距離を取る。