東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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23 欠陥品

 アダムが竹林の中を突き進んで行き、霊夢がそれを追い掛ける。

 

「もうそろそろかしら。」

 

「あと500m先だ。ここからでは僅かな傾斜等で見えないが。」

 

「よく見えないのに分かるわね。」

 

「何故だか分からないが、そう言える......我ながら不思議だ。」

 

 そう言いながら一か所へと突き進んで行く。

 

 「見える」訳でも無ければ「聞こえる」訳でも無い、ましてや「臭いがする」訳でも無い。(当然だが味覚や触覚は感じない。)

 

 アダムには「それ」はエネルギーとしか表現出来ない。

 

 突然、アダムが上を見上げた。

 

 これもまた、「それ」を感じたからである。

 

 アダムの目は自分へ向かって飛んで来る一本の矢を捉えていた。

 

(この距離で、それも弓矢で正確な狙撃とは、相当な技量だな。)

 

 そんな感心を他所にして迫り来る矢を蹴り上げで粉々にし、

 

「霊夢、相手にはこちらが気付かれているらしい。」

 

「分かったわ。急ぎましょう。」

 

 足を急がせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、同じく竹林の何処かで。

 

「幽々子様、もう少し急ぎましょうか?」

 

「そうね、紫には里の人間には出来るだけ気付かれない様にして、って言われたし、急ぎましょう。」

 

 幽々子と妖夢が異変解決に向かっていた最中だった。

 

 しかし、二人は自分たちを狙う影に気付いていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらにしよう。楽しめると良いがな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妖夢が何かに気付いたかの様に辺りを見回した。

 

「どうしたの?妖夢。」

 

「何か......不穏な気配を感じます。」

 

 そして、幽々子達の前から一人の少年が姿を現した。

 

「......クックックッ......。」

 

 身長は170cm程、少し長めの髪の少年が気味悪く笑いながら立っていた。

 

「......もしかしてアダム君?」

 

「でも何か違いませんか?」

 

 確かに幽々子達の知っているその少年と姿は似ていたが、月光によって僅かに照らされた髪は赤がかった黒で、目は深い赤色をしていた。

 

 つまり、色は自分の知っている少年とは逆。

 

「......アダム......それは俺の事を言っているのか?」

 

 少年が笑うのを止め、無表情になった。

 

「え、ええ。でも髪や目の色は違うみたいだけど......。」

 

 何時の間にか少年は自分の右拳を強く握り締めていた。

 

「苗字はアンダーソンか?」

 

「た、確かそうだったかしら。貴方は一体誰?アダム君じゃないの?」

 

「幽々子様、奴からは何か危険なものを感じます!」

 

 妖夢が何時の間にか刀を2本抜いていた。

 

「......俺を「欠陥品」と同じにするな!!!!!」

 

(欠陥品?どういう意味なの?!)

 

 少年は幽々子へ向かって駆け込んで行った。

 

 妖夢が幽々子を守ろうと少年の前に立ちはだかる。

 

 少年の目の前に振りかざされた刀を自分のナイフで受け止める。

 

 刀を払い、妖夢へ向かって突きを繰り出すが、もう一本の刀に防がれる。

 

 暫く互いの攻防が続く。

 

「死ねっ!」

 

 そして、少年の上段蹴りが妖夢の側首部にヒットした。

 

 蹴りで上げた足を利用し、踵を利用し、片足で妖夢の首を捉える。

 

 踵に引っ掛けた妖夢を地面に倒し、続けて腹に全体重を掛けた肘打ちを喰らわし、更に腹に拳のラッシュを掛ける。

 

 暫くして、妖夢の襟元を左手で掴み、持ち上げる。

 

 もう片方の右手を握り締め、力を込める。

 

「妖夢!」

 

 幽々子から少年に向かって弾幕が放たれた。

 

 妖夢を投げ捨て、弾幕をナイフで弾いていく。

 

 それと同時に幽々子の方へ突き進んで行く。

 

「「反魂蝶 ‐八分咲‐」!」

 

 反魂蝶が大量に現れ始めたのと、互いの距離が5mを切ったのは、ほぼ同時だった

 

 少年に向かって飛んで行く大量の反魂蝶と、幽々子へ向かって駆けて行く少年。

 

 それぞれがすれ違い合うまで残り1m。

 

 少年がもう片方の手で銃を持ち、反魂蝶へと発射していく。

 

 更にもう片方のナイフで反魂蝶を斬り裂いていく。

 

 かき消せない分は体を捻って避けていく。

 

 あっという間に少年と幽々子との距離は僅か50cmに迫っていた。

 

 しかし、少年はその距離から動こうとしない。

 

「......よう、よくも俺を「欠陥品」扱いしやがったな。殺すぞ!」

 

 憎しみの対象を睨むかの如き形相で幽々子を見つめていた。

 

「あ......あ......。」

 

 幽々子は得体の知れない恐怖でその場から動けなかった。

 

 次の瞬間、幽々子の腹にボディブローが決まった。

 

 続けて何十発と同じ個所に撃ち込み続ける。

 

 最後に足を掛けて後ろへ転ばせる。

 

 そして、ナイフを握る右手を高々と挙げた。

 

「死ね!」

 

「......!」

 

 恐怖で思わず目を瞑ってしまう。

 

 幽々子は自分がナイフ如きで死なない事を一番知っている。

 

 それなのに、そのナイフは自分の首を一刀両断し、自分を殺してしまうのではないのか、と思わせられた。

 

 もう殺されると思った瞬間、ガシッ と何かを掴む様な音がした。

 

 閉じていた目をゆっくり開ける。

 

 ナイフは自分の首元から10cmと離れていなかった。

 

 誰かの手がナイフを握る少年の腕を掴んでいた。

 

 その手を辿って見ると、そこには大柄な男性が何時の間にか立っていた。

 

「マルク、落ち着け。”今の目的”は”殲滅”では無い。”回収”だ。それに死体を出してみろ。大騒ぎになる。もしや計画が失敗するかも知れん。」

 

「......チッ!......まあ計画が”移行した”時に殺せば良いか。」

 

 男性が手を離すと、少年は武器を仕舞い、代わりに何かをリュックから取り出した。

 

 大型の拳銃の様な形で、先端に針が、銃身の上部にガラスに入った半透明の液体があった。

 

 針の部分を自分の腕に刺し、引き金を引く。

 

 間も無く意識が薄れ始めた。

 

 薄れゆく意識の中で、以前から気絶している妖夢にも自分と同じ事をしたのと、少年が自分に向けて唾を吐いたのを見た。

 

 とうとう意識が無くなり、西行寺幽々子は気絶した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は同じくして竹林の何処か。

 

 一人の吸血鬼が一番の部下である一人の人間と共に竹林を突き進んでいた。

 

「お嬢様、もう少し急ぎましょうか?」

 

「そうね、折角の満月だし、気分的にも早く終わらせたいわね。急ぎましょう。」

 

「了解。」

 

 ところでレミリアと咲夜は自分を観察する影に気付かなかった。

 

 人間の視野は瞼の形状ゆえに、横に広いが、縦には狭い。

 

 それは人間と違う妖怪もまた、人間に近い構造ゆえに同じ視野である。

 

よって、二人は地上10mから竹に掴まって上から自分達を見ている人影に気付かなかった。

 

 そして、竹に掴まっている人物は二人が自分の真下に来た事を確認すると、竹に掴まる手を離した。

 

 背の高い女性の方に、頭頂部へ両足降下キックを繰り出した。

 

 二人が自分達を観察していた存在に気付いたのは、咲夜が蹴りを喰らって地面に俯せに倒れ、蹴りを放った男が蹴りの反動で跳び上がり、後方へ回転して着地し終えた時だった。

 

 隙を与えない様に男が倒れた咲夜へ駆け寄り、後頭部に肘打ちを決めた。

 

 咲夜は再び地面に叩きつけられ、そして起き上がろうとする素振りを見せなかった。

 

「一丁上がり。後は......ガキかよ......。」

 

「よくも咲夜を!そして私を子供扱いしないで頂戴!神槍「スピア・ザ・グングニル」!」

 

 レミリアの手には長い槍が握られた。

 

「グングニル、海の神オーディンの槍か。面白い!」

 

 男は腰から刃渡り60cm程の片手剣を引き抜いた。

 

「この人間の作った剣とその神の作った槍、どちらが強いか勝負しようぜ。」

 

「人間ごときに負ける訳無いわよ!」

 

 レミリアの突きで戦闘が始まった。

 

 繰り出される突きを剣で受け止める。

 

 続けてレミリアの連撃が男を襲う。

 

 それを滑らかな動きで攻撃を全て受け止めていく。

 

 次は男が攻撃を仕掛けていく。

 

 槍の長さを利用して斬撃を受け止めていく。

 

 暫く二人の攻防が続いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔理沙もアリスを連れて異変解決にと竹林の中を突き進んでいた。

 

「魔理沙、もうちょっとゆっくり行かない?」

 

「でもあたし達が最後なんだぜ。早くしないと霊夢やアダム達に異変を解決されるかも知れないぜ。」

 

 この二人も自分達を見る視線に気付かなかった。

 

 何せ相手は魔理沙達から1000m離れているのだから。

 

「射出エネルギーは2人分充填完了っと。麻酔弾も準備良し。目標は依然こちらに気付いていない。まあ当たり前だが。」

 

 そして、”今から”ライフルのスコープを覗き始める。

 

 スコープからは金髪でロングヘアーの白黒の服の少女と、同じく金髪でショートヘアーの周囲に人形を引き連れた少女がいた。

 

「まずは......あっちの人形に囲まれた方だ。」

 

 スコープから流れて来る相手の位置情報を読み取る。

 

 男は引き金を引いた。

 

 ピュウ というエネルギー変換効率が完全に100%ではないが故に発する僅かな射撃音が鳴ったが、1000m離れた相手に聞こえる筈も無い。

 

 弾丸はアリスの後頭部にヒットした。

 

 殺す為では無く、無力化目的の弾丸の為、貫通せずにヒットした部分で炸裂した。

 

 生じた衝撃はアリスを気絶させるには十分だった。

 

 魔理沙は隣から爆発音がしたかと思うとその方向にすぐさま振り向き、親友の後頭部で何かが炸裂し、気絶して倒れゆく親友の姿を見た。

 

「アリス!」

 

 倒れたアリスに声を掛けるも、返事は無い。

 

 呼吸や脈はある様だったが、意識が無い様だ。

 

「誰だ!一体。」

 

 だが魔理沙からは1000m後方にいる男の姿を認識することなど出来なかった。

 

「もう片方もやるか。」

 

 引き金に指を掛けようとするが、スコープにはこちらを向いて何らかのエネルギーの発射機構らしき物を片手に持った少女の姿が映っていた。

 

「こちらの存在に気付いているのか?」

 

「恋符「マスタースパーク」!」

 

 魔理沙が握っている八卦炉からは1000m後方にいる男目掛けてレーザーが放たれた。

 




まだ序盤の終わり辺りだと思って下さい

あとはマルクという少年も後に重要になります

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