東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
竹林の何処かで。
異変を解決しようとある場所へ向かっている者が二人、それを阻止しようとしている者が二人いた。
「霊夢、分かるか?」
「ええ、二人居るみたいね。」
「僕は正面にいる奴をどうにかする。霊夢は右の方に居る奴を頼む。」
「分かったわ。」
アダムが右手を挙げる。
そして、腕が下ろされたと同時に、アダムの足は地面を力強く蹴り、霊夢の足は地面から重力に逆らって離れた。
アダムの目線には紫のロングヘアーで制服姿の兎の耳が特徴的な少女。
霊夢の目線には黒髪でピンクのワンピースを着たこれもまた兎の耳が特徴的な少女。
アダムはその少女へ向かって走り出し、霊夢はその少女へ向かって飛んで行く。
追い掛けられる少女達はどちらも後ろへ下がっていく。
アダムが銃を取り出し、霊夢は手を前に翳した。
銃口から音速の5倍を誇る銃弾が発射され、掌から大量の弾幕が放たれる。
追い掛けられる少女達も応戦すべく弾幕を放っていく。
アダムと霊夢は少女達によって互いが見えない位置にまで離れた。
「待ちなさーい!」
これは霊夢が追い掛けている少女に対して言った事だが、相手からは返事が無い。
その代わりとでも言うかのように少女からは霊夢に向けて弾幕が放たれていくだけである。
霊夢はそれを見事な身のこなしで避けていく。
霊夢も負けじと躱しながら弾幕を撃ち返す。
霊夢の放つ弾幕は少女に向けて軌道を曲げていく。
少女がその量と速さに翻弄され、がむしゃらに避けていくが、全てを躱しきれない。
ホーミング弾が数発当たって怯んだのを確認した霊夢は、今度は弾速の速い弾幕に切り替え、それを放っていく。
少女はまたしても躱しきれずに数発当たり、怯む。
「霊符「夢想妙珠」!」
霊夢の出したスペルカードは少女の放った弾幕をかき消していく。
「「エンシェントデューパー」!」
少女も負けるものかとスペルカードを放った。
ぶつかり合う二つの弾幕。
空中でどちらも爆散した。
「観念しなさい!」
霊夢が爆炎の中から飛び出し、少女へと弾幕を放った。
「しまった!」
少女が気付いた時は遅く、既に何十発もの弾幕が自分にぶつかっていた。
少女はそのまま倒れた
「ふう、もう気絶したなんて呆気ないわね......はっ!」
霊夢はアダムと離れてしまった事にようやく気が付いた。
霊夢は来た道を辿り、アダムの方へと向かって行った。
「止まれ。今降伏すれば後悔しないで済む。」
アダムはそう言いながら少女へ向けて銃を放っていく。
ちなみに今のアダムの格好と言えばリョウから貰った上下黒のスーツと黒いサングラスであるから普通の人から見れば相当な威圧感だろう。
少女に対しては余り効果は無い様だが......。
少女は返事もしないままアダムへ弾幕を放っていく。
狭い間隔で生えている竹を足場に、体を回転させながら避けていく。
(霊夢と離れさせて戦力を分散させる作戦らしいが......大して意味は無いな。)
「幻波「マインドブローイング」!」
少女から初めて発せられた言葉はアダムへのスペルカード詠唱だった。
次の瞬間、アダムは目の前が揺さぶられる錯覚に見舞われた。
それどころか耳鳴りや赤系統の色が目に映る幻覚まで起こる。
そんな中で自分に向かって放たれた弾幕をアダムは見逃さなかった。
弾幕の速度は音速の3倍。
(うーむ、幻覚で見え辛くて避けにくいな。)
咄嗟に体を後ろに反らせ、迫り来る弾幕を避けていく。
最後の一発を躱した所で、体が地面に着きそうになったのを手で体を支え、後ろに回って着地した。
(この幻覚は......光や音の波長を変えているのか。)
「散符「インビジブルフルムーン」!」
アダムの幻覚はまだ消えぬまま次のスペルカードが放たれた。
弾幕が波紋状に広がる。
次の瞬間、弾幕がアダムの目の前から消える。
再び少女から弾幕が波紋状に広がる。
次の瞬間、何も無い所から弾幕が出現した。
(これは......光を屈折させて見えない様にしているのか。)
出現した弾幕を体を捻って避けていく。
そして、弾幕を躱し切った所で20m程離れた少女の目が赤く輝いた様に見えた。
次の瞬間、アダムの視界から少女が消えた。
「月眼「テレメスメリズム」!」
弾幕が左右からアダムへ向けて飛んで行く。
幻覚によって軌道が正確に見えない。
アダムは銃を左手に持ち、ナイフを取り出して右手に握った。
銃弾と斬り裂きで弾幕をかき消していきつつ体を捻って避ける。
(......不思議だ。幻覚があるというのに相手の場所が何となく分かる。)
何故分かるのか、今のアダムには分からなかったが、抽象的なイメージで例えるとエネルギーを感じていた。
電磁波を目から取り入れ網膜で変換する「視覚」とは違う。
音波を耳から取り入れ鼓膜で変換する「聴覚」とは違う。
臭い分子を鼻から取り入れ鋤鼻器で変換する「嗅覚」とは違う。
味を口から取り入れ味蕾で変換する「味覚」とは違う。
圧力や温感、冷感等を肌から取り入れそれぞれに対応した感覚器官で変換する「触覚」とは違う。
アダムにはそれは感覚器官を通さずに直接脳がダイレクトに感じ取っている、いわゆる「直感」に近いものだった。
アダムが地面を蹴った。
その反動で少女との距離を詰める。
「し、しまった!」
少女は何の対応も出来ずに目の前の少年から首にナイフを突きつけられた。
対応が出来なかったのは少年が自分の位置が分からないであろうと思い込んだ結果である。
「目的は何だ。」
「......言うもんですか......。」
次の瞬間、少女の首に手刀が当てられた。
少女はその場に崩れ、気絶した。
「アダム!大丈夫?」
霊夢がもう一方を倒した様でこちらへ戻って来たのだろう。
「大したことは無い。所で何か奴らについて分かった事はあるか?こちらは何も話さなかった。」
「何も聞き出せなかったわ。」
「そうか......だが場所は分かっている。急ぐぞ。」
二人は竹林の更なる奥へと足を踏み入れて行った。
竹林に白い閃光が走った。
次の瞬間、閃光のした場所から男が4人現れた。
しかし、それを見た者は誰も居ない。
「異常は無いという事で、早速計画を実行しようか。」
「それでロブ、肝心の「スペースボム」は何処だ?」
ロブと呼ばれた人物はリュックから携帯端末らしき物を取り出す。
「ええと......ここから北へ4kmだ。更に北へと移動している様だ。バエル、周辺に居る奴らの数や位置は分かるか?」
バエルと呼ばれた人物は”何も見ず”に目をつぶり、暫くして目を開いた。
「スペースボムを持っている奴が2人、離れた所に2人組が3つ、そいつらが向かっている所に2人、所々気絶しているのが3人、そしてどうでも良いがここから更に離れた所に3人だ。」
「手っ取り早く終わらせようぜ。」
「まあ落ち着け、マルク。出来るだけ奴らに気付かれない様に慎重に、そして素早く倒すんだ。」
「分かっているぜ。」
マルクと呼ばれた人物は竹林の中を駆けていった。
「さて、俺たちも行くか。」
「ああ。だがハモンド、獲物は横取りしないでくれよ。」
「獲物つっても殺す訳にはいかないけどな。」
リョウは竹林の中を一人で歩いていた。
「さて、そろそろ奴らが動き出した頃かな。奴らが一人になった所を狙うか。あと援護も必要だな......萃香は、今から呼びに行っても遅いし、アダムや霊夢、魔理沙やスキマ妖怪、吸血鬼や幽霊達は気付いていないうえにここから更に離れていくし、他に近くに居て強そうな奴......そうだ!」
リョウはこちらの行動が誰にも悟られない様に動き始めるのだった。
今回のアダムと鈴仙の戦闘シーンはある神映画を参考に(?)しました