東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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15 もう一つの戦い

「出て来やがれ!」

 

 森の中で独特の甲高いエネルギー発射音が鳴り響いていた。

 

 1秒間に100回の発射音に驚き、森の動物や妖精の大半は逃げているが、逆に好戦的な妖怪等はその発射音に興味が湧き、音源へ行ってみるのだった。

 

 音源では一人の男が銃を乱射しているのだった。

 

 それをみた妖怪たちはその男を襲おうとするが、誰がどうやろうとも男に傷一つ与える事も出来ない。

 

 それどころかパンチ一発でノックアウトされる始末である。

 

 先程もレティ・ホワイトロックという好戦的な雪妖精が男に挑んだが、一撃で倒された。

 

「恐らく奴は伊吹萃香という鬼だろう。鬼は好戦的と聞いたからこれに掛かるかもしれんな。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数十分前、人間の里の鈴奈庵にて。

 

「いらっしゃいませ!あ、リョウさんじゃないですか。ここに来るなんて珍しいですね。」

 

「まあな。ところで小鈴、出来るだけ多くの妖怪について書かれている本は無いか?」

 

 リョウが来たのは里にある「鈴奈庵」という貸本屋だ。

 

 対面しているのはそこの主人の娘、本居小鈴。

 

「え?いいですけど、最近の異変に関係した事ですか?」

 

「そうじゃなくて、現在別の異変が起こる可能性があるんだ。最近黒い粒子もどきが幻想郷のあちこちで見掛けるものでな。異変は起こる前に潰すのが最適だと俺は思うんだ。」

 

「へぇ~そんな事があるなんて知りませんでした。この本なんかどうですか?」

 

「ああ、サンキュー。他にも持ってきてくれると嬉しいんだが。」

 

 リョウは手渡された本を勢い良く取り、驚くべきスピードでページをめくり始めた。

 

「とにかく妖怪の事が書かれた本全て持ってきました。それにしても読むのが凄い速さですね。」

 

「ありがとよ。これでも頭の回転は良くてね。」

 

「いまいち本当だと思えませんけど......。」

 

 リョウは無言のまま何十冊もある本を恐るべき速さでめくり続ける。

 

 そして、数分後。

 

「お、こいつか。」

 

「どれどれ?山の四天王ですか?」

 

「その中の伊吹萃香という鬼の奴が怪しい。能力が物体の密度の確変で自らのそれも確変する事が可能だとよ。この能力はコイツ特有らしい。つまり最近の粒子もどきもコイツだろうな。」

 

「でも確かその妖怪なら遥か昔に幻想郷から姿を消したと聞きましたよ?......戻って来たって事でしょうかね?」

 

「良くは分からん。いずれにせよコイツが犯人である可能性は高い。それじゃあ行って来るぜ。」

 

「相手は鬼ですよ?!頭は良くないですが力は圧倒的ですよ?!大丈夫なんですか?!」

 

「俺はそんなに馬鹿では無いからな。実は力も自信あるものでね。じゃあまたな。」

 

 リョウが暖簾をくぐり抜ける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして時間は現在に戻る。

 

「色んな妖怪が出てきたが、どいつもザコじゃねえか。」

 

 一息つき、叫んだ。

 

「おい!何処かにいるんだろ?!コソコソ臆病者みたいに隠れてないで俺と真剣勝負しようや!出てこなければお前を臆病者と見做すぞ!なあ伊吹萃香!出てこいクソッタレ!!!!!」

 

 森に大声が響き渡り、暫く沈黙が続く。

 

 そして、リョウの目の前3m先に黒い粒子もどきが集まり始めた。

 

 リョウはパーカーのフードを深く被り、サングラスとネックウォーマまで付けた。

 

 無意識の動作では無く、意識的に行った動作だ。

 

 それは勿論顔を隠す為である。

 

 粒子もどきは何者かの体の形を作り上げた。

 

 そして、粒子もどきは茶髪のロングヘアーの二本の角が生えた少女へと姿を変えた。

 

「お前かー!私を臆病者と言ったのは!」

 

(悪口に反応するとは低知能の証拠だ。)「ハア、やっと来たか......お前が異変を企てているのは知っている。だからチョッとした賭けをしようぜ。」

 

「な、なんで私が異変をやろうとしているのを知ってるのさ?!」

 

「それはお前にはどうでもいい事だ。俺と勝負して俺が勝てばお前は異変を起こすのを止めろ。お前が勝てばどうするかはお前の好きにしろ。」

 

「じゃあ私に臆病者と言ったことを土下座してよ。あと顔も見せて。ところで何の勝負をすんの?」

 

「いいだろう。何で勝負かって?これだ。」

 

 リョウが右手の握り拳を萃香の顔の前に突き出した。

 

「力比べ?いいよ。言っとくけど弾幕もやるからね。」

 

 直後、森全体に二人のストレートがぶつかり合った衝撃音が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、冥界で。

 

 甲高いエネルギー発射音が鳴り響いていた。

 

 年上の男の方は余裕があるのか息が切れておらず汗一滴すら滴っていない。

 

 一方で少年の方は息に多少の乱れがあり、少量ながら汗をかいていた。

 

 一発の銃弾が少年にヒットした。

 

 男は容赦なく撃ち続ける。

 

 少年もナイフで弾を弾くという方法があるが、全ての弾を弾くことが出来る訳では無い。

 

 現状は男が放った銃弾の1割程は避けきれずに当たっていた。

 

 男が追い打ちにと籠手に仕込まれている刃を展開しながら少年へ駆け込む。

 

 少年も男の攻撃を避けるべくナイフを構える。

 

 男が斬り裂き攻撃を容赦なく続け、少年はどうにかしてそれを受け止める。

 

 男の行動には余裕があったが、少年の行動には余裕が無かった。

 

 男の攻撃が少年の脇腹と胸の辺りを掠めた。

 

 少年は男の振り下ろし斬りをナイフで受け止め、男の股をくぐり抜け、背後を取った。

 

 男の銃を取り、遠くへ投げ捨てる。

 

 男は振り向き蹴りを決め、少年を吹き飛ばす。

 

 投げ捨てられた銃を取ろうともせず、追い打ちにと少年へ跳び蹴りを掛ける。

 

 少年は空中で体勢を整え、迫り来る蹴りをどうにか避けた。

 

 同時に男の右腕を掴み、籠手を外そうとナイフでこじ開ける。

 

 男は少年を振り払おうと右腕を振り、少年を吹き飛ばした。

 

 それと同時に右腕の籠手も外れたのだが、男にとって現在の最優先事項は少年の抹殺である為、銃同様気にも留めない。

 

 少年は着地し、コートを脱ぎ、銃とナイフとロープとリュック、つまり上着と持ち物全て、これらを放り投げた。

 

 少年が構えを取る。

 

 男も着地し、構えを取る。

 

 お互いにマーシャルアーツを思わせる様な構えだった。

 

 暫く沈黙が流れる。

 

 沈黙を破ったのは二人同時だった。

 

 互いの左ジャブがぶつかり合い、続けて互いの右ストレートがぶつかり合った。

 

 お互いに攻撃部位をとにかく活用した戦いだった。

 

 暫く二人のラッシュのぶつかり合いが続き、少年の肘打ちが男の腹に決まる。

 

 続けて裏拳、下段回し蹴りを決め、男を地面に倒した。

 

 しかし少年が踵落としを繰り出したが、男に足を掴まれそのまま投げ飛ばされた。

 

 少年は地面を転がって衝撃を吸収し、立ち上がる。

 

 男が少年を襲おうと上空に跳び上がり、振り下ろしパンチを繰り出す。

 

 少年はそれをすんでの所で避け、相手が隙を見せたのを機に男へ上段回し蹴りを決め、そのまま両方の足で男の首を掴み、地面に押し倒す。

 

 男は少年の足を掴み自分の方へ引き寄せ、その勢いを利用し、少年を殴り飛ばした。

 

 少年は地面に手を着き、そのまま下半身が手を中心に弧を描き、着地した。

 

 男が少年に飛び掛かり、対する少年も男へ飛び掛かる。

 

 二人の攻撃のぶつかり合う音が辺りに響き渡る。

 

 二人とも続けて攻撃の嵐を掛ける。

 

 少年が男の両腕を掴んだ。

 

 そのまま少年の頭突きが男にヒットし、続けて膝蹴りを決める。

 

 男は掴まれた腕を振り回し、少年を投げ飛ばす。

 

 少年は空中で体勢を立て直そうとしたが、後ろで何かにぶつかって受け身は失敗する。

 

 男のストレートが少年の目の前に迫っていた。

 

 体ごと横に移動し、避ける。

 

 ストレートは少年では無く後ろの桜の大木(西行妖では無い)にぶつかった。

 

 少年が男を膝蹴りで僅かに空中に浮かせ、ボディブロー4発、アッパー、二連蹴り上げ、サマーソルトキック、跳び上がって両腕で殴りつける。

 

 男は地面になんとか着地し、跳び上がって少年を掴み、地面へ叩き落した。

 

 続けて少年を踏みつけ、そのまま少年にパンチの嵐を喰らわせた。

 

 最後の一発が少年の腹にクリーンヒットした。

 

「ぐぅっ!」

 

 悲鳴と共に血も吐き出された。

 

 男が止めにと拳を高々と挙げる。

 

 その時だった。

 

「幻符「殺人ドール」!」

 

 男へ向かって、しかし少年に当たらない軌道で、大量のナイフが飛んで来た。

 

 男は跳び上がり、体を捻ってナイフを全て避ける。

 

「アダムさん、大丈夫ですか?」

 

「いいタイミングだった、咲夜。余り大丈夫では無い。しかし、良くこの場所が分かったな。」

 

「いえ、ほとんど偶然です。空間に妙な穴が開いていたのを偶々見つけただけですよ。しかし、アダムさんがそれ程苦戦するとは、どれ程の相手なのか......。」

 

「苦戦どころか一方的だ。」

 

 男がアダム達の方向へ飛び掛かった。

 

 すると咲夜が目の前から消える。

 

 アダムが男から繰り出される攻撃を受け止めていく。

 

 アダムが男の両肩に乗せた両手を支点に下半身が弧を描きながら反対方向へ移動し、それと同時に後ろ両足蹴りを決める。

 

 男は体勢を立て直し、振り向くと大量のナイフが自分に向けて放たれていた最中だった。

 

 男は迫り来るナイフを大柄な体格によらず軽やかな身のこなしで躱していく。

 

 しかし、数本のナイフが自分を掠める。

 

 アダムは隙を見せた男へ駆け込みストレートで吹き飛ばし、続けて両足蹴り上げを決め、上に吹き飛ばす。

 

 男が吹き飛ばされた先では咲夜がスペルカードを唱えていた。

 

「奇術「エターナルミーク」!」

 

 大量の弾幕が男へ雨あられと襲う。

 

 アダムが跳び上がり、男へ両足踵蹴りを決め、地面へ叩きつける。

 

 咲夜がナイフを十数本投げ、全部が男の背中に刺さった。

 

 更にアダムが降下キックを決め、距離を取って体勢を整える。

 

 咲夜も地面に降りて来る。

 

 そして、背中に何本ものナイフが突き刺さっているにも関わらず男が起き上がった。

 




謎の男についてはターミネーターよりもユニバーサルソルジャー的な感じです(設定的な意味で)

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