東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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14 迫り来る者

「これが私の本気よ。「西行寺無余涅槃」!」

 

 幽々子から先程のスペルカードよりも大量かつ高速な反魂蝶がアダムを襲う。

 

 アダムはナイフと銃を上手く使いこなし、蝶を儚く散らしていく。

 

 何百、何千もの蝶の大群に対するは白銀の狼と隼。

 

 隼が離れた獲物を仕留め、狼が近づいた獲物を噛み殺す。

 

 幽々子は止まろうともせず次々と弾幕を撃ちこむ。

 

 銃で蝶が接近する前に撃ち落し、ナイフで近づいて来た蝶を斬る。

 

 しかし、反撃が出来ない。

 

 それどころかますます防戦一方になるばかりだった。

 

 後ろから迫ってくる蝶に反応が遅れたが、どうにかジャンプし体を回転させて避ける。

 

(これではこちらが負けてしまう......仕方ない、あれを使おう。)

 

 アダムは地面を勢い良く蹴り、幽々子の方へとジャンプした。

 

 前方からの自らの移動によって相対速度の増した反魂蝶を撃ち落していく。

 

 幽々子は自分の方へ跳んで来るアダムへと更なる弾幕を繰り出した。

 

「死蝶「華胥の永眠」!」

 

 アダムはベルトに掛かってあるロープをナイフに繋ぎ、1m程ロープを出した状態でロープを自分の進行方向に対して横へ回転させ始めた。

 

 回転させている先端のナイフだけでは無く、ナイフと使用者を繋ぐロープも幽々子の弾幕をかき消していた。

 

 反撃の余裕が生まれたアダムは幽々子へ銃を連射させる。

 

 相対距離の縮まった今では、銃弾を幽々子が避ける事は困難だった。

 

 何十発もの銃弾が幽々子にヒットするが、アダムに弾幕が当たる事は無かった。

 

 アダムはナイフを手元に戻し、今度はナイフを幽々子へと投げた。

 

 幽々子は避けようとするが、彼女は接近戦が出来る程の回避反射は備えていなかった。

 

 結果、ナイフは幽々子の左腹部に突き刺さり、アダムがナイフを再び手元に戻す。

 

 更に接近したアダムは幽々子の腹に一発ブローを決め、そして背後から後ろへと蹴り飛ばした。

 

 幽々子は空が飛べるため、空中である程度減速を利かせ、地面に着地した。

 

 一方アダムは幽々子を蹴り飛ばした反動である物へと向かって行った。

 

 幽々子が息を切らす中、少年が西行妖の太い枝に着地したのを見た。

 

 一本の巨大な桜の枝に着地したアダムは、ナイフに力を込め、桜の枝を切り落とし始めた。

 

(僕の推測ではこの桜が幻想郷中の熱エネルギーを奪った故に幻想郷に異常気象を引き起こしたのだろう。だからこれを少しずつ分解すれば少しずつエネルギーが戻っていくだろう。それに......。)

 

 アダムは枝の切った部分からエネルギーが少しずつ漏れ出ているのを感知した。

 

 自分が大切にしている物を壊されて怒りを感じない、悲しまない、驚かない人物は恐らく居ないだろう。

 

 それが自分の目の前であり、1000年もの間大切にしてある物であれば尚更だ。

 

「やめて!その西行妖だけは!」

 

(よし、餌に食い付いたか。)

 

 アダムは幽々子が自分を止めるべく、自分に向かって飛んで来たのを確認すると、幽々子に向かって思い切り跳躍した。

 

 幽々子は突然の出来事に慌てて止まろうとするが、少年の肘打ちが喉の少し下辺りにヒットした。

 

 アダムは続けて裏拳を顔に当て、膝蹴りを腹に当て、最後は体ごと後方に回転しながら両足蹴り上げを決めた。

 

 空中で制御出来ないが為、一旦着地し、幽々子目掛けて再び跳躍した。

 

 幽々子は減速し、体勢を整えようとしたが、その前に少年のアッパーに怯んでしまう。

 

 アダムは続けて拳と脚のラッシュを何十発もぶちかまし、踵落としで真下に吹き飛ばす。

 

 すかさずナイフをロープに繋ぎ、幽々子へ投げ飛ばし、ロープの先の方が幽々子の足に巻き付く。

 

 アダムは幽々子もろともロープを手元に引き寄せ、引っ張る反動を利用して降下キックを決めた。

 

 幽々子は空中で制御を利かせ、ダメージを出来るだけ減らして着地に成功した。

 

 だが直後、脛に痛みを感じたのと同時に幽々子は地面に転げた。

 

 アダムは下段回し蹴りによって倒れた幽々子にナイフを突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【目標まで相対距離100m前方】

 

 男が階段を上り切り、目標が目の前100m先にある事を目測で確認し、そこへ歩いていく。

 

 途中で少女が倒れていたが気にも留めない。

 

【目標地点まで50m】

 

 目標地点には少年と女性が一人ずつ居るだけだ。

 

 よく見れば少年が女性にナイフを突き立てているが、彼にとってはどうでも良い事だ。

 

 何故ならそれはただの情報にしか過ぎないからだ。

 

 そして、男は”目標”が少年のリュックの中にある事を”感知”した。

 

【識別信号無し よって敵と見做す 敵を排除する】

 

 男は背中に掛けてある銃を取り出し、少年へ向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「異変を元に戻せ。」

 

「ふ、ふざけないで......人の大切な物を勝手に傷つけておいて......。」

 

 グサッ

 

「きゃあああああ!!!!!」

 

「早くしろ。次刺す時は致命傷にするぞ。」

 

「......ふ、ふん。私はもう既に死んでいるから意味無いわよ。」

 

「いざとなればあの木を更に分解すればいいが、こちらの方がすぐに片付く。」

 

 グサッ

 

「きゃあああああ!!!!!」

 

「早くしろ。」

 

 その時、アダムが後ろを振り向くと共に銃をその方角へ向けた。

 

 見ると、そこには男が自分へと銃を構えていた所だった。

 

 アダムと男がお互いに銃を向け終えたのはほぼ同時だった。

 

「誰だ。異変解決を邪魔するつもりか?」

 

 男は胸に「EMO」の文字の書かれた迷彩服を着ていた。

 

(僕が幻想郷に来た時と同じ服だ。)

 

 男からは返事は無い。

 

 その代わりに男がアダムへと銃を乱射した。

 

 直後、アダムが回避行動を取ると共に自らも銃を放った。

 

 男も回避しながら銃を撃ち続ける。

 

 お互いに一定の距離を取り、そこから銃撃を繰り出しては避け続ける。

 

 アダムの銃はハンドガン型で連射速度は1秒当たり50発。

 

 対する男性の銃はアサルトライフル型で連射速度は1秒当たり100発。

 

 アダムは少しでも避けやすくするためにナイフを持ち、それで銃弾を弾き始めた。

 

 男は相変わらず銃を撃ち続けている。

 

 突然アダムが男の方へとナイフを突き出しながら突進していった。

 

 対する男は銃を仕舞い、何も持っていない右手を突き出した。

 

 接近武器も持たず何故そのような行動を取ったのか、と一瞬疑問に思ったアダムだが、こちらが有利である為深くは考えなかった。

 

【格納武器展開】

 

 男の右小手辺りから腕の方向にそって20cm程の刃が突き出た。

 

 空中で互いの刃がぶつかり合う。

 

 二人ともその場で地面に足を着き、互いにナイフの攻防を繰り出す。

 

 ガキーン! ゴキーン! と甲高い金属音が1秒の間で何十回と響き渡る。

 

 二人の正面蹴りが交錯し、その反動で互いに距離を取り、再び銃撃を始める。

 

 銃撃が暫く続き、互いが無傷のまま再びナイフによる接近戦が始まった。

 

 アダムはナイフで相手の刃を受け止め、拳や蹴りを避けていくが、反撃はしない。

 

 男がアダムの首を狙った横薙ぎを繰り出す右腕を受け止め、右肘打ち、左肘打ち、左裏拳、上段回し蹴りを決める。

 

 しかし、相手は吹き飛ばなかった。

 

 男はアダムへ下段回し蹴りを決め、地面に倒し、そのまま踵落としを決めた。

 

 倒れたアダムは男が自分へ向けて刃を突き刺そうと腕を突き出しているのを確認すると、地面を転がって避ける。

 

 男の突き刺しは不発し、地面に突き刺さる。

 

 アダムは男の右腕を目掛けてナイフを振る。

 

 ガキーン! と金属音。

 

 男はナイフを先端に展開する籠手を装備していた。

 

 しかも、籠手自体の耐久力もかなりの物だ。

 

 男はアダムへ正面蹴りを決め、吹き飛ばした。

 




本当は幽々子様を傷つけたくなかったんだ。
だってアダム君が勝手にやったんだもん...

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