東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中) 作:タツマゲドン
吹き飛ばされた妖夢は受け身を取って体勢を直し、そのまま距離を取る。
妖夢は右の短い方の刀を仕舞い、左の長い方の刀を両手で握った。
「断命剣「冥想斬」!」(これなら接近できない筈。)
妖夢の長い刀が発光し、リーチが更に2倍も長くなった。
妖夢が剣を振る。
質量の変化が無く、リーチが2倍になった事によって切先の速度は今までの2倍となった剣がアダムを襲う。
アダムはそれを躱し、妖夢へと接近を試みるが、妖夢の刀によってそれは阻害された。
妖夢は連続斬りを繰り出し、アダムがそれを避ける。
アダムはナイフで避ける事もあったが、剣が速くてナイフで受け止める事は出来ず、軌道を逸らす程度に止まった。
(接近できないのならばこちらが離れるか。)
アダムは妖夢の袈裟斬りを避けると、急に妖夢から後方へと離れた。
妖夢は逃がすものか、と追いかける。
アダムは銃を取り出し、妖夢へと何十発も連射した。
銃弾の速度はマッハ5。
妖夢の速度はマッハ1。
妖夢にとって相対速度マッハ6の銃弾が向かってくる。
妖夢は咄嗟に刀でブロックするが、速い銃弾全てを避けられる訳では無いので、躱し損ねた十数発が当たってしまい、怯む。
その隙を狙い、アダムが駆け込む。
右フック、左フック、ボディ2発、アッパー。
上に吹き飛んだのを踵落としで叩き落とす。
妖夢はこれ以上攻撃を受けるのは不味い、と思ってすぐに起き上がり、アダムに切り掛かる。
二刀流の基本は右の短い刀で防御、左の長い刀で攻撃だが、今の妖夢は違った。
(攻撃は最大の防御!)
二本の刀がアダムを襲う。
対するアダムはナイフ一本でひたすら妖夢の攻撃を避けるだけ。
妖夢の右の刀がナイフを捉え、左の刀がアダムの足元を狙う。
アダムは僅かに跳び上がって避け、距離を取り、銃弾を何十発も撃ち込む。
妖夢も同じく距離を取り、スペルカードを唱える。
「獄神剣「業風神閃斬」!」
妖夢の周囲を漂っていた球体が大型の弾幕を出し、妖夢がそれを斬ると小型の弾幕が発射された。
アダムの銃弾と妖夢の弾幕が相殺されると、両者とも互いに急接近し、双方の猛烈な斬り合いが繰り出された。
妖夢は二本の刀を巧みに使い、攻撃と防御をこなしていた。
アダムの方はというと、今までの防御中心の戦法では無く、ナイフで刀の軌道を逸らしそのままナイフを突き出す、という攻防一体のフェンシング式の戦法に変えていた。
ナイフが妖夢の小手を掠り、続けて猛烈な連続付きが繰り出された。
妖夢は防御を試みるが、重い鉄の刀で軽い超合金のナイフの動きを捉える事は困難だった。
幾つかの躱しきれなかった突きが妖夢の体のいたる所に切り傷を作る。
そして、
「うぐっ!」
妖夢の左腕にナイフが突き刺さる。
妖夢は一旦体勢を立て直す為にアダムから距離を取った。
「はあっ、はあっ......。」
「その腕では使える剣は一本だ。一本では僕の動きについて来れまい。」
「いや、私はまだまだ戦えます......。魂魄「幽明求聞持聡明の法」!」
妖夢の周囲を浮遊していた球体が、半透明の妖夢の姿を形作った。
本体の妖夢が短い方の刀を右手に持ち、半透明の妖夢が長い刀を両手に持った。
アダムは左手に銃を持ち、ナイフと共に構える。
本体の妖夢が弾幕を放ち、半透明の妖夢が接近戦を仕掛ける。
(フランドールの時とは違い、見事な連携だ。)
右のナイフで刀を受け止めつつ半透明の妖夢に攻撃、左の銃で弾幕を相殺させつつ本体の妖夢に攻撃。
だが完全に対応出来る訳では無い。
長い刀がアダムの頬を掠り、弾幕を一発被弾してしまう。
(こうなったらアレを使うべきか、一か八か......やるか。)
妖夢から距離を取ろうとし、二人の妖夢がそれを追いかける。
アダムが進行方向とは逆方向に地面を蹴り、半透明の妖夢に向かって行きながら銃を乱射する。
離れた所にいる本体の妖夢がそれを弾幕で相殺し、半透明の妖夢がアダムを斬り掛かる。
その時だった。
本体の妖夢から見てアダムから銃弾では無くナイフが自分目掛けて飛んで来たのだ。
アダムのナイフ投げは妖夢にとって忍者が手裏剣を扱う様なイメージが湧いた。
手裏剣は一般的にオードソックスな武器、というイメージが強いが、本来手裏剣は忍者にとっては切り札なのだ。
しかし、ナイフを投げたという事は拾いに行こうとしない限り、武器を捨てる様な物である。
妖夢はそんな疑問を抱いたまま刀で軌道を逸らす。
ナイフの軌道は反らせたが、自分を過ぎ去ったナイフの軌跡が黒く見えた。
それは目の錯覚で無く、ナイフとアダムを繋ぐロープだ。
慌ててアダムの方を見ると、少年が両足で自分の霊体を自分の方へ蹴り飛ばしている最中だったのが見えた。
それに気を取られた所為でアダムの右手の動きに気が付かなかった。
アダムはナイフを繋ぐロープを右手に持ち、波打った。
波打たれたロープは妖夢の体に巻き付き、それを確認したアダムはロープを引き寄せた。
本体の妖夢の方へ吹き飛ばされた半透明の妖夢と、霊体の自分の方へ引っ張られた妖夢が空中でぶつかり合う。
アダムはその隙を逃さず、半透明の妖夢を更に蹴り飛ばし、本体の妖夢を両手で殴りつけ、地面に落とす。
蹴り飛ばされた半透明の妖夢は吹き飛ばされる途中に、元の球体に戻った。
妖夢が地面に叩きつけられた直後、アダムの降下キックが決まる。
妖夢は力を振り絞って何とか立ち上がるが、視界の真ん中には自分の首にナイフを突き立てている少年の姿があった。
「......あなたの様な強い方と戦えて光栄でした......ですが、幽々子様には......」
ドスッ
少年の肘打ちが少女の腹に決まった音だった。
妖夢は気絶し、成す術も無く地面に突っ伏された。
同じ頃、白玉楼の長い階段の麓で。
突如、白い閃光が生じた。
だがその閃光は階段の上に居る者達に見える事は無かった。
閃光を発した直径2mの求形の空間からは長身の男性が現れた。
男性は黒いライダースーツの様な物を着ており、胸には「EMO」の刺繍があった。
【現在地点、データ不足により座標不明 目標座標、前方に約4km、上方に約4km 目標距離、約5.6km 第一ミッションを開始する】
これは男性の脳と、男性に埋め込まれたコンピューターとのやり取りである。
男性は”目標地点がある”白玉楼へと全速力で走って行った。
ドゴーン! と衝撃波を発しながら。
衝撃波の音も何百kmと離れたアダム達の耳には届かない。
作者が言うのもなんですがこの作品って東方キャラの活躍が少ないですね...