東方不明録 ー「超越者」の幻想入りー / THE TRANSCENDEND MEN(現在更新休止中)   作:タツマゲドン

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11 春が来ない

 3か月後、3月の上旬位。

 

 暦上では春だ。

 

 だが、雪は去年の12月から降り始め、3か月間雪の無い日は無かった。

 

 アダムの知識では状況は二つのパターンに分かれる。

 

 一つ目は異常気象。

 

 だが、それにしては3か月間で雪が降る日は良くあったが、目立つような吹雪や大雪は無かった。

 

 二つ目は、異変だ。

 

 これ程不自然な異常気象は考えられない。

 

 という訳で異変である事は確かなのだが、

 

「霊夢、場所は掴めたか?」

 

「まだ全然分からないわ。」

 

 3か月もの間、発生源が掴めずにいた。

 

「でも、何故か幽霊が騒いでいるのよね。一方で妖怪は騒いでいない。何故かしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ頃、幻想郷の何処か。

 

「それが、異変なのは確かだが、全く発生源が掴めないんだ。」

 

『そうか......こちらも「テレポートマシン」による結界の安定化には限界がある。奴らに”侵入”されるのも時間の問題だ。』

 

「異変解決の専門家達も場所が掴めていない。そちらのレーダーで分かった事は無いか?」

 

『こちらでは異変の正確な場所を突き止める程の「インフォーミオン」利用技術はまだ開発途中だ。それについてはこちらの方が進んでいるが、カイルも頭を捻っている程に難しいそうだ。』

 

「”あの”カイルがか?それは凄いな。それと他に、例えば奴らの侵入痕跡とかはどうだ?」

 

『それは今の所無いが、もうじき侵入されるかもしれんな。一刻も早く頼んだぞ。』

 

「勿論だ。」

 

 リョウはそろそろ通信を終えようかと思ったが、ロウの声によって制止された。

 

『あと一つ、以前調べて欲しいと言っていた事だが、アダム・アンダーソンという人物は死んでいる事になっている。』

 

「......ホントかそれ?」

 

 すると、液晶画面に顔写真の付いた身分証明書が映った。

 

 その顔は幻想郷の親しい少年の顔の他に違いなかった。

 

『実はその人物、死ぬ前は我ら「独立軍」に所属していた。2年前のロサンゼルス戦で彼は命を落としている。』

 

 リョウは言葉を失っている。

 

『彼についてはこれまでだ。あと、謎の立方体の事だが、カイルの仮説ではあれは「ユニバーシウム」で出来ている、との事だ。』

 

「でも何故それで作ったんだ?」

 

『「エネリオンポンプ」としては、形は球にするべきだし、だがあれで作るという事は余程の価値が無ければしないだろう。分かったのはここまでだ。お前も気を付けろよ。』

 

「ああ、分かっているさ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数日後。

 

「うぅ~......。」

 

「何の病気なのか、僕にはまるで分からない。例えたら、エネルギーを吸い取られたかの様な......。」

 

 霊夢は原因不明の病気(?)によってダウンしていた。

 

 体温は下がり、体がだるくなり、疲れ易くなる。

 

 症状は風邪と同じだ。

 

 実はこの病気の様な物、2週間前から里や妖怪の間でも同じ症状が出ている者が大量に出始め、それに掛かった者でそれが治った者は現在の所一人も居ない。

 

「僕は今から異変の手掛かりを探しに行く。安静にするんだぞ。」

 

「行ってらっしゃい~......貴方も気を付けて~......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔理沙、居ないのか?」

 

 現在地は魔法の森の魔理沙の家の玄関のドアの前だ。

 

「入っていいぜ~......。」

 

 中から弱々しい声が聞こえて来た。

 

 声の通りドアを開け、中に入る。

 

「魔理沙、君もか。昨日霊夢もそれに掛かった。」

 

「マジかよ~......一体どうするんだ?このままじゃあキノコなんて生えないし、花見も出来ないじゃないか......。」

 

「少なくとも異変とは無関係では無いだろう。魔理沙は何か分かった事は無いのか?」

 

「無いぜ~......お前はどうなんだ?」

 

「無いな。」

 

 不意に玄関からノックが聞こえた。

 

「魔理沙、居る?異変について掴めた事があるのよ。」

 

 ドアの外から少女の声がした。

 

「君は休んでいてくれ。僕が代わりに出る。」

 

 アダムがドアを開ける。

 

「あれっ?魔理沙は?」

 

 目の前に居たのは、ショートヘアーの金髪の、カチューシャと隣に浮いている人形が特徴の少女だった。

 

「貴方が噂の外来人?」

 

「ああ。アダム・アンダーソンだ。魔理沙は最近出始めた謎の病気だ。で、何の用だ?」

 

「私はアリス・マーガトロイドよ。じゃあ魔理沙に伝えておいて。上空に冥界への入り口が開いていて、そこに魔力が集まっているの。それが異変の元なのかもしれない、ってね。」

 

「分かった。伝えておく。」

 

「ありがとう。じゃあね。」

 

 アリスはそう言うと何処かへと去って行った。

 

 そして、アダムは魔理沙の箒を取った。

 

「魔理沙、この箒を貸してくれ。異変の発生源が分かった。」

 

「いいけどさ~......ちゃんと返してくれよ~......。」

 

「ありがとう。それでは行って来る。」

 

 アダムは魔理沙の家を飛び出し、箒を握る右手に力(本人の感覚で言えばエネルギー)を込めた。

 

 一瞬で箒はアダムもろとも加速し、音速の壁を破った証である衝撃波が発生する。

 

 片手だけで箒を持ち、いきなりの加速だったにも関わらず、アダムは冷静でいた。

 

(考えた様に動くのか......上空と言っていたな。)

 

 アダムを引っ張る箒は急上昇し、あっという間に雲の中へと消えた。

 

 その様子を一人の少女が呆然と見ていた。

 

 ドゴーン!

 

「い、今の何?」

 

 アリスは唐突な衝撃波の音に驚き、音のした方向を見る。

 

 そして、箒に跨らず、片手で持ち、前に突き出して飛んでいる少年を見つける。

 

「飛び方はともかく、信じられない速さね......魔理沙から聞いた通り、相当の実力者らしいわね......。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、外界のアジア-カルイザワに位置するある研究所。

 

「結界の「エネリオン」値、「インヴァイジョン」に最適な数値に達しました。」

 

「「スペースマシン」作動開始。」

 

 スペースマシンが作動する様子を二人の軍人が見ていた。

 

「予定通りに”生産”と”試験”が完了して何よりだ。しかし、”あれ”の戦闘能力は大したものだよ。なあポール。」

 

「彼は「フリードマン・シリーズ」でありますからな。しかも彼は「トランセンダー」が効きましたからね。あの強さであれば確実に「バースト」を終えるでしょう。」

 

「だといいがな......。」

 

二人はスペースマシンの内部に一人の人間が入るのを見届けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アダムは暫く雲の上を飛び続け、やがて空間に穴が開いているのを見つけた。

 

 近くに三人の少女がいるが気にも留めず、その穴へと飛び込んで行った。

 

 少女達は好戦的な性格で、少年を止め、弾幕ごっこをしようと思っていたが、音速を超える少年を止める事は出来なかった。

 

 仕舞いには衝撃波に吹き飛ばされた。

 

 アダムは穴の中へ入ると、前方に階段を発見した。

 

 長すぎる。

 

 一番上の段が見えないのだ。

 

 アダムは階段に沿って飛ぶ。

 

 十数分後、一番上の所が見えてきた。

 

 ようやく登り切った、と思った瞬間、何かが鋭く光った。

 

 アダムは箒から手を離し、体を捻った。

 

 よく見ると、光った物は1m程の長さの刀で、それがアダムの胴体を掠める。

 

 アダムは地面に手を着き、反動を利用して支えている手で体を飛ばし、足の先で弧を描き、着地する。

 

 見ると、そこには銀髪でボブカットの、刀を二本持った少女が居た。

 

 横には半透明な球体(にしては不完全すぎる球だが)が浮いている。

 

「ここは貴方が来るべき所ではありません。それに、これ以上は通す訳には行きません。この白玉楼の庭師である魂魄妖夢の名に掛けて守ります。」

 

「地上の皆が此処からの異変によって迷惑している。引き下がる訳には行かない。」

 

 アダムは腰からナイフを抜き、構えた。

 

「やあっ!」

 

 戦闘は妖夢の先行で始まった。

 

 妖夢がアダムに攻撃を仕掛け、アダムがそれを避ける。

 

 しかし、その逆は無かった。

 

(防御だけに集中して隙を狙う作戦ですか。ですが......)

 

 妖夢は右の刀で鍔迫り合いに持ち込み、左の刀でアダムの胴を狙う。

 

 アダムは自分の腹に目掛けて繰り出される斬りを、しゃがんで避けながら妖夢の腹に蹴りを一発決めた。

 

 妖夢は少し飛ばされたが、すぐに体勢を整え、アダムに斬り掛かる。

 

 右の刀でアダムの頭を狙い、それをアダムがナイフで受け止める。

 

 左の刀が勢い良く突き出され、アダムの心臓を狙う。

 

 アダムは身を捻って避けながら、左肘をヒットさせ、続けて右回し蹴りを決めた。

 

 妖夢は吹き飛ばされた事を利用して距離を取った。

 

「餓王剣「餓鬼十王の報い」!」

 

 妖夢が剣を振ると、剣から弾幕が放たれた。

 

 アダムはナイフで弾幕をかき消し、左手に銃を持って反撃をした。

 

 妖夢は音速の5倍のスピードを誇る銃弾を、剣でかき消し、剣から弾幕を出しで反撃する。

 

 アダムはナイフで弾幕を弾きながら妖夢へと距離を詰める。

 

 妖夢の左の剣がアダムのナイフを受け止め、右の剣を振る。

 

 アダムは間合いを更に詰め、妖夢の右腕を受け止める。

 

 数秒間互いに動かなかった。

 

 沈黙を破ったのは妖夢の方だった。

 

 妖夢の左の剣がナイフを払い、そのまま左の剣を振る。

 

 アダムは一瞬でナイフを仕舞い、そのまま右手で妖夢の左腕を受け止める。

 

 次の瞬間、アダムの頭突きが妖夢の頭に決まる。

 

 アダムは妖夢が怯んだ瞬間を逃さず、体を後ろに倒し、妖夢を後ろへと蹴り飛ばした。

 

 妖夢は地面に倒され、起き上がると同時に、目の前に握り拳があったのが見えた。

 

 次の瞬間、パンチの嵐が妖夢を襲った。

 

 最後の一発が妖夢を吹き飛ばす。

 


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