魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版   作:鏡圭一改め鏡正

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今回は蓮の初めての戦闘シーンです。……正直、あまり上手く表現できていないかもしれませんが、改善できる部分があれば、アドバイスをお願いします!

Diesアニメ化を記念してまたTwitterで怒りのクリスマスが流出することを期待している作者です。 ……大学の補講とかマジで勘弁して欲しい(涙)


第九話

 変な夢を見て目が覚めた蓮は、メルクリウスからの遅れた誕生日プレゼントを貰った以外は何時もの学校生活だった。

 何時もの様に司狼たちと翠屋に行く途中の公園で蓮は不思議な声を聞いた。

 

 『……助けて』

 

 突然聞こえてきた声に反応したのは、なのは・杏奈・司狼・櫻井・テレジア・マリィ・蓮の7人だった。

 蓮たちは聞き間違いだと思って翠屋に向かおうとしたが、なのはが突然下に走って降りて行った。

 

 「ちょっとなのはちゃん!? どうしたの?」

 

 「おい香純たちは今の声が聞こえなかったのかよ?」

 

 司狼が声に反応しなかった4人にそう聞くと、4人とも頷く。

なのはが運動音痴だと知っている蓮たちはなのはが怪我をしているかもしれないと思い、皆で探しに行こうとしたその時だった。

 なのはは赤い宝石を首に付けているイタチみたいな動物を抱えて蓮たちのところに泥だらけになって戻ってきた。

 

 「大丈夫なのは? アンタって杏奈よりも運動音痴だから怪我していないか心配したのよ?」

 

 「ひどいよ~アリサちゃん。私お姉ちゃんよりも鈍臭くないよ」

 

 「杏奈よりもお前の方が方向音痴だ」

 

 蓮の一言が止めになったのか、なのはは『ずーん』としたまま動かなくなった。杏奈はなのはの頭を撫でて慰める。その光景を見ていたマルグリット以外の女性陣は蓮を責めるような視線を、司狼とエリーは面白そうな視線をそれぞれ送っていた。

 

 「そんなことより。このフェレットどうするんだよ? 怪我をしているみたいだぞ」

 

 蓮は視線を受け流しながらテレジアが木の枝で突いているフェレットに指をさす。テレジアがフェレットをイジっている光景に蓮は少し唖然とした。

 

 「あの~先輩? これって動物の虐待じゃないですか?」

 

 「藤井君。これは虐待じゃないよ。このフェレットが生きているのか確認しているだけ」

 

 「いやいや先輩。生きているかなんてフェレットの体を触ればいい筈なのに、わざわざ木の枝で突いてフェレットの体力を奪いながらフェレットの反応を楽しんでいましたよね?」

 

 「テレジア。ダメだよ動物をいじめちゃ。動物だって生きてるんだから」

 

 さすがの先輩も純粋なマリィの悲しそうな表情を見たことにより、フェレットを突くのを止めた。

 

 「それで、皆どうすんの? アタシの所は動物は専門外だよ」

 

 「それなら皆。わたしに着いて来て。知り合いの獣医さんなら診てくれると思うから」

 

 すずかは家の中にのすごい数のネコを飼っているからか、この海鳴市の獣医と知り合いになってことに全員が納得した。

 そしてすずかの案内の元、蓮たちは動物病院に向かって歩き始めた。

 

 

 

 獣医にフェレットを診せた所、軽い怪我ですぐ治ると獣医の若い女性に言われて一安心した蓮たちは、フェレットをどうするかについて話し合っていたが、空が暗くなってきたことで明日に話し合いを延期するという事になり解散した。

 蓮は家に帰って夕食を食べた後、メルクリウスにフェレットを飼う事が出来るか聞いてみると、

 

 「私は別に問題無い。だが、蓮は自分一人でフェレットを育てられるのかね?」

 

 「育てることなら出来るよ。それに何時までも父さんに頼るのもいけないことだと思うからさ」

 

 「私はもっと蓮に頼って欲しいのだがね」

 

 「その気持ちは嬉しいけど、父さんは暴走するから正直恥かしいんだよ」

 

 蓮の一言でメルクリウスは少しショックを受けたのか固まってしまったが、すぐに元の状態に戻り、蓮がフェレットを飼っても良いということになった。

 その後、風呂に入ってから見たいテレビ番組を見終わって、そろそろ部屋に戻ろうと思った蓮は階段に上がろうとすると、メルクリウスに呼び止められた。

 

 「蓮。歯磨きはしたのかね? 明日の授業と体操着の準備は? 宿題をちゃんと……」

 

 「ああ! もう全部終わったよ! だからもう寝るよ」

 

 「ああ。おやすみ蓮」

 

 蓮はメルクリウスにお休みの挨拶をした後、部屋に入ってマンガを読んでいると、

 

 『誰か…助けて……』

 

 「っ!! まただ。また朝と放課後に聞いた声だ。なんか嫌な予感がする」

 

 蓮は急いで紺色のジャケットを羽織り、メルクリウスから貰ったペンダントを着けて玄関から音を立てないように家から出て行った。

 

 

 

 「フェレットさん大丈夫かな?」

 

 電気が消えた動物病院の入り口付近に1人の少女がいた。少女の名前は高町なのは。

 なのはは家に帰った後、フェレットのことが心配で動物病院に来たのだが、動物病院はもう診察時間が終了しており、中に入ることができない状態だった。

 

 「お父さんとお母さんに黙って家から出ちゃったから怒られちゃうかも」

 

 なのはは眠い目をこすりながら家に帰ろうとしたその時だった。動物病院の壁が壊れ、そこから現れたのは異形の化け物だった。

 

 「えっ?」

 

 なのはは頭が混乱してすぐに動くことができなかった。化け物は動けないなのはに向かって襲いかかり、彼女を噛み砕かんとしていた。

 なのはは怖くなり手を交差して目を瞑ってしばらくして痛みがないことに疑問を感じて目を開けると、そこには金色の鎧を纏った金髪オッドアイの少年、天王寺竜馬と赤いマントみたいのを羽織った少年、遠坂(カルマ)が剣で化け物の攻撃を防いでいた。

 

 「嫁よ無事か?」

 

 「ふざけるな! なのはは俺のことが好きなんだよ!!」

 

 なのはは2人の少年を見た瞬間、苦笑いになった。彼女は竜馬と業の2人が苦手で嫌いというわけではないが人の話を聞かない自己中心的な人だと思っていた。

 そして竜馬と業は化け物を誘導してなのはから離れて行った。

 

 「驚いた。膨大な魔力を持つ人が3人もいるなんて」

 

 「えっ!? フェレットさんって喋れたの!?」

 

 なのはの肩に飛び乗ったフェレットが喋っている光景になのはは驚いた。動物が喋ることができるとは思わなかったからだ。

 

 「えっと……突然で悪いんだけど、これからボクの話すことは本当のことだからよく聞いて欲しい」

 

 「う、うん」

 

 「このままあの化け物を放っておくと君の大切な人たちが傷つくことになるんだ!」

 

 「ど、どうすればいいのフェレットさん!?」

 

 フェレットの話に事の重大さに気づいたなのははフェレットに何をしたらいいのか聞くと、

 

 「君はボク以上に魔法の才能がある。これをキミに渡すよ」

 

 フェレットはなのはに赤い宝石を渡し、なのはが赤い宝石を受け取ると、体全体が少し温かくなるのを感じた。

 「目を閉じて、心を澄まして、ボクの言葉を繰り返してね」

 

 「う、うん。分かった」

 

 なのははフェレットに言われた通りに目を閉じて心を澄ました。

 そしてフェレットに言われた通りにフェレットの後に続いて言っていく内に何を言えばいいのかなのはには分かってきた。

 最後の詠唱を言い終わった後、フェレットが言葉を話す前に赤い宝石の名前を言い出した。

 

 「レイジングハート! セットアーップ!!」

 

 次の瞬間、なのはの服装が変わり、聖祥学園の制服をベースとしたバリアジャケットに変わっていた。

 

 「早くあのお化けみたいなんのをどうにかしなきゃ!!」

 

 なのはは走って化け物がいるであろう場所に向かって行った。

 

 

 

 なのはが魔法少女になって数分後、動物病院に蓮が到着し、動物病院の壁が破壊されていることに気づいた。病院の周辺には私服姿の竜馬と業の気絶している姿があった。

 

 「なんなんだよあれ? 映画にしては生々しい壊れ方だぞ!?」

 

 蓮が病院の惨劇を見て原因を探そうとした瞬間、化け物は封印しようとしたなのはを蓮のいる建物の所へ吹き飛ばした。

 幸い魔方陣みたいなもので攻撃の衝撃は防がれていたものの、なのはは涙目になっていた。

 

 「おいなのは! 大丈夫か!?」

 

 蓮は思わずなのはの元に駆けつけると、なのはは一瞬驚いた表情をしたが、蓮が着てくれたことに安心したのか、少し笑顔になった。

 

 「蓮君。来てくれたんだ。でも逃げて! 私がなんとかするから!!」

 

 なのははそう言うけど、俺にはやせ我慢にしか見えなかった。

 

 「なのは。お前は少し休んでろ。俺が奴の動きを止める」

 

 「ダメだ! 君は早く逃げるんだ!!」

 

 突然なのはの頭の上から現れたフェレットが蓮に話しかけた。

 フェレットって話せたかと蓮は疑問に思ったが、今は化け物の事が先決だと感じ、視線を化け物に向ける。

 

 「(あの化け物だ。あの化け物が俺の刹那(日常)を壊そうとしたんだ! だけど、あいつを一体どうやって倒せばいい!?)」

 

  蓮がこの状況を打破する方法を考えていた時だった。蓮の頭の中に基本的な戦い方が浮かんできた。

 

 「「Yetzirah(形成)! 時よ止まれ。お前は美しい!」」

 

 蓮は無意識の内に詠唱を唱えていた。その時、蓮と同じ歳の少女の声が聞こえたが、今は考えている余裕がないからか、そのことについては頭に残っていなかった。

 すると次の瞬間、蓮の右腕が黒くなり、紺色のジャケットの右腕の部分が半分消え、ギロチンが右腕から現れた。

 蓮の武器は処刑用の道具に似ているからか禍々しく、さらにギロチンの一部に描かれている髑髏がより禍々しい雰囲気を出していた。

 蓮は何故かこの光景に驚いていなくて、どこか懐かしく感じていた。そこに司狼がいたら間違いなく『既知感(デジャブ)るんだよ』と言うだろう。

 その光景を見ていた化け物はなのはに目を暮れず蓮の方に突進を仕掛けた。

 

 「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 蓮は無我夢中で化け物に向かってギロチンの斬撃を与えようと全力で走り始めた。その時に蓮が驚いたのは、体育の授業で全力を出して走る以上の速度で走っているような感覚だったことだ。

 具体的な例を挙げるとするならば、高速道路で走っているドアも窓も無い状態の車に人間がいる様な感覚で、相当の重力の負担が蓮にかかっている。

 勿論蓮は何も考えないで化け物に斬撃を喰らわせようとは思っていない。これはあくまで一瞬の隙が出来ればそれで良い。

 もし蓮の一撃で化け物を倒すことができれば、それが一番最適なのだが……。

 そして蓮が化け物に斬撃を喰らわせると、化け物の体は真っ二つになった。真っ二つになった化け物は『ジュエルシード』の力を使い、自己再生していた。

 

 「今だなのは! 早くあの化け物をどうにかしろ!!」

 

 蓮が始めから狙っていたのはなのはにこの化け物を対処してもらうことだった。蓮は一瞬だったが、なのはが化け物に向かって魔法で攻撃して、その度に化け物が再生していた所を見ており、自分では化け物を倒すことができないと分かっていた。

 そして、先程、化け物を封印しようとしていたなのはの姿を蓮は見ていた。

 なのはの行動を化け物が見て必死に倒そうとしていたことから、もしかしたらとなのはがこの戦いを終わらせる切り札ではないかと蓮は思っていた。

 

 「ありがとう蓮君! リリカルマジカル。ジュエルシード封印!!」

 

 なのはが詠唱した瞬間、杖からピンク色の光が現れて、化け物を包み込むと、化け物は消滅し、変わりに現れたのは綺麗な青色の宝石みたいな石だった。

 蓮は右腕から現れたギロチンに『消えろ』と念じると、ギロチンは蓮の腕から消え、黒かった腕も元に戻った。勿論消えたジャケットの部分も戻っていた。

 そして、蓮はなのはに向かって歩いて行く。

 

 「お前、さっきの封印の時のセリフと封印のポーズどうにかならなかったのかよ」

 

 蓮は呆れながらなのはに言うと、

 

 「え? さっきのポーズってカッコ良くなかったかな?」

 

 「まったくだ。魔法少女物のアニメの影響を受け過ぎだ。封印のポーズを決めている間に攻撃されたら意味がない」

 

 「う~ん。カッコいいと思ったんだけどな~」

 

 「それと、これは遊びじゃないんだ。覚悟を決めてやらないとお前マジで後悔するぞ」

 

 蓮がなのはに注意すると、なのはの顔に緊張が走った。ようやく自分が何をやっているのかを理解したようだった。

 

 「少し言い過ぎだと思うよ」

 

 「何でフェレットが人の言葉を話せるかについては置いておくとして。なのは、今日は遅いから明日答えを聞く、その時までその力をなんの為に使うのかをゆっくり考えろ。いいな?」

 

 「うん。分かったよ」

 

 「それとフェレットは俺について来い。……声からして男のようだからな」

 

 「分かったよ。元はと言えば僕の責任でもあるんだ。君について行くよ」

 

 蓮はパトカーのサイレンが聞こえてきたことでパトカーがこの動物病院に近づいて来ていることに気づいた。

 

 「なのは帰るぞ。今日はもう遅いからお前の家に俺が送っていくよ。お前の父さんに俺も一緒に怒られてやるからさ」

 

 「え? ちょっと蓮君!?」

 

 蓮がなのはの右手を引いて歩いていくと、なのはは何故か顔を赤くして嬉しそうに蓮と一緒に歩き始めた。……気絶している2人を置いて。

 ちなみに、蓮がなのはを家まで送って行くと、なのはの父親である士郎となのはの兄である恭也はなのはが夜遅くに出歩いていたことに怒ったが、その後に蓮とのデートは早い時間に行くようにと何故かからかわれた。

 その時のなのはの様子はとても嬉しそうであり、逆に杏奈は不機嫌そうな表情で蓮を睨んでいた。

 


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