魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版   作:鏡圭一改め鏡正

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今年就職したので更新がかなり遅れました。申し訳ありません!
配信版はかなり面白かったです。AbemaTVだと今週まで無料で見れるのでもう一度見なければ!



第二十三話

 「おい…しっかりしろなのは! なのは!!」

 

 蓮は気絶しているなのはの体を抱きしめながら呼びかけると、なのはは体の痛みを感じながら目を開ける。

 すると、蓮が目の前にいることに驚くと共に体を抱きしめられていることに気づき、顔が一瞬の内に赤くなり、体の痛みが和らいだ。

 

 「おーおー。見せ付けてくれるな! お熱いね、お2人さん!」

 

 「ぐぬぬ…(蓮くんに抱きしめられる役得なんて羨ましい過ぎよ! でも、良かった…なのはが無事で)」

 

 司狼は蓮となのはを面白半分でからかい、杏奈は嫉妬と安堵感で複雑な気分だった。

 

 「でも良かったよなのは! 気絶しているなのはを見て僕はもう目が覚めないんじゃないかって不安だったんだ…」

 

 ユーノは安心感のあまり、思わず膝が地面に着いてしまい泣いていた。

 

 「……ごめんなさい。わたし負けちゃった。負けちゃいけなかったのに…」

 なのはは金髪の少女、フェイトに負けたことにショックを受けており、今にも泣きそうになっていた。

 

 「大丈夫だよなのは。父さんが言ってた事だけど、負けることで人間は成長できるんだ。負けたことを次に活かせば良い。それに、お前は負けたってだけで諦めるのかよ?」

 

 「わたし絶対諦めないよ! ……それに、今日戦ったあの子…悲しそうな目をしてた。だから、ジュエルシードを集めて、あの子の事を理解したいの!」

 

 なのはの決意の篭った目を見た蓮は口を開いて驚くが、すぐに笑顔になってなのはを撫でる。

 

 「ふぇ?」

 

 「だったら今よりも強くならないとな?」

 

 蓮の言葉になのはは顔を赤くして頷いた。その様子を見ていた司狼は口笛を吹いてからかい、杏奈は悔しそうな表情になり、ユーノは純粋になのはが元気になって良かったと思っていた。

 その後、なのはが目覚めてから暫くして、何事もなかったかの様に気絶していた猫を抱きかかえてすずかの家の中に入ると、服が泥だらけになっているなのはを見たアリサたちは“本当になのはってドジよね”と言った後、再び全員でゲームを再開した。

 

 

 

 ジュエルシードを回収してラインハルトたちと合流したフェイトはバリアジャケットを解除すると、服装が黒のワンピースに変わる。

 

 「ラインハルト無事だったんだね!」

 

 「うん。だけど、蓮君たちもジュエルシードを狙っているとは思っていなかったよ」

 

 フェイトは複雑そうな表情のラインハルトを見て、ラインハルトを元気にできるような言葉を探していたが、今までリニスと母親のプレシアの3人に魔法と一般常識を教えられた事意外、異性との話し方を知らずに育った為、何も思いつかなかった。

 

 「大丈夫っすよラインハルトさん。確かにあのガキどもは強かったですけど、俺たちには及ばねぇ強さっすよ」

 

 ヴィルヘルムは冷静に現段階の司狼とユーノの強さを分析し、自分たちよりも弱いと判断していた。だが、司狼は初見でヴィルヘルムの力の正体に気づいていたことから、次戦う時には今以上に警戒をしなければいけないと感じていた。

 

 「だけど、蓮君は僕と同じ領域に到達している。もしかしたらヴィルヘルム君では太刀打ちできないかもしれない」

 

 「だからどうしたって話っすよラインハルトさん。 俺はアンタを守る爪牙だ。だが、今俺が戦いたい奴は遊佐司狼ってクソガキだけっすよ。なんで心配しないで藤井の野郎と戦ってください」

 

 普段は自他共に認める戦闘狂であるヴィルヘルムだが、主であるラインハルトが内心では蓮と戦いたいという気持ちがあることに気づき、現時点で蓮よりも厄介な存在である司狼の相手を自分が引き受ければラインハルトの負担が減ると思い、司狼の相手をすることをヴィルヘルムは決意する。

 

 「ほう。貴様があの遊佐の相手をするのかベイ? 奴は頭の切れる男だ。バトルジャンキーの気がある貴様に勝ち目はないと思うがな。私が遊佐の相手をした方が勝率は上の筈だ」

 

 エレオノーレは客観的な考えでヴィルヘルムが司狼に敗れる可能性を指摘し、自らが司狼の相手をしようと提案する。

 エレオノーレは遠距離型の魔法が多いが、それが決して近距離戦が苦手ということにはならない。彼女の本来の戦闘スタイルは剣術だ。だが、彼女が剣を抜く相手は自分が認めた者のみである為、司狼相手に有利な戦いができると判断していた。

 

 「っは!アイツは俺の獲物だ! それだけは譲るつもりはねぇ! それによ、まだ形成位階の上の段階に至れてねぇお前じゃあのクソガキは倒せねぇよ」

 

 ヴィルヘルムの強気な発言に、エレオノーレは余裕そうな笑みを崩すことなくヴィルヘルムの背後を一瞬の内に取った。

 

 「私に背後を取られるようではただのチンピラと大差がないぞベイ。…そして、誰が創造位階を使うことができないと言った? 私が全力で倒すに値する魔導師にしか創造位階は使わんだけだ」

 

 エレオノーレは魔力と殺気をヴィルヘルムへと向ける。ヴィルヘルムはエレオノーレの魔力の質の高さに驚くが、自らに売ってきた喧嘩を逃げる訳にはいかないと気合を入れなおし、眼球を黒くして殺気を放つ。

 2人の殺気に驚きと怯えのあまりフェイトは体が無意識の内に震えているのに気づき、ラインハルトの体に抱きつく。

 

 「そこまでだよ2人共! 今ここで喧嘩をしても意味がないでしょ。……それでも喧嘩をするならば、私が卿等を全力で破壊()するまでだ」

 

 ラインハルトは2人を注意している途中で無意識に魔力を使ったからか、髪が長くなり瞳も金色に変わる。

 

 「さあ来るがよいヴィルヘルム。エレオノーレ……卿らの全てを受け入れよう」

 

 ラインハルトは何時の間にか形成していた聖槍をヴィルヘルムとエレオノーレに向ける。

 

 「…すいませんでした。少し頭に血が上がってたみたいっすわ。ヴィッテンブルグ悪かったな」

 

 「いや、私の方も非があった。すまなかったなベイ」

 

 2人は先程までの殺気がなくなり、互いに非を認めて謝っていた。その姿を見たラインハルトは菩薩の様な笑みを浮かべる。

 

 「フェイトもう大丈夫だ。……む、どうやら眠ってしまったようだな」

 

 フェイトはラインハルトの服を離さずに眠ってしまったことにラインハルトはやれやれと呟くと、次の瞬間…フェイトを起こさないようにお姫様抱っこをする。

 エレオノーレはラインハルトにお姫様抱っこをされたフェイトに嫉妬を感じたが、今日は小娘に譲ってやろうという年上としてのプライドが勝った。

 

 「(明日はキルヒアイゼンを徹底的に扱いてやるか)」

 

 しかし、嫉妬を消すことができないエレオノーレは今頃、櫻井戒とデートを満喫しているであろうベアトリスを標的に決定している中、ヴィルヘルムは我関せずと言った表情でエレオノーレから離れていたが、突然携帯電話が鳴っていることに気づき電話に出ると、

 

 『もしもし! 大丈夫ですかヴィルヘルム!?』

 

 「悪ぃなクラウディア……心配かけた。おい、どこにいるんだ? 迎えに行くぜ?(あぁ最高だぁ! 家のヤンデレとは大違いだ。やっぱりクラウディアは俺の天使だぜ! ヒャッハー!!)」

 

 ラインハルトたちが目の前にいることを忘れているヴィルヘルムはクラウディアとの電話で普段では絶対に見ることができない穏やかな笑みだったが心の中ではキャラが崩壊していた。

 

 「……ああ、ZEONにいるんだな。分かったすぐに行く。…あっ」

 

 ヴィルヘルムは電話を切り、自分がラインハルトたちの目の前にいることに気づき、固まってしまった。

 

 「ほう、卿に春が来たかヴィルヘルム…卿の今までの女難ぶりには哀れさを感じていたが、彼女等の総てを愛し、幸せにすることは私の爪牙である卿ならばできよう」

 

 「わっかりましたラインハルトさん! 俺はクラウディアを幸せにして見せます!!(やっべぇ! ラインハルトさん超カッケェ! あの人の右腕に絶対になってやらぁ!)」

 

 「(ふん、貴様ではどう足掻いても修羅場にしかならん。本当に哀れな奴だよベイ。だが、旧知の仲として祝福してやる)」

 

 ラインハルトの激励にヴィルヘルムはやる気を出している姿を見たエレオノーレはアンナはともかく、ヘルガがヤンデレであることを理解しているため哀れみを感じていたが、同時に今まで女運が悪かったヴィルヘルムに、ようやくまともな女性と交流できていることに友人として安心していた。

 

 「んじゃぁ。俺はここで失礼しやす!」

 

 ヴィルヘルムはそろそろクラウディアの元に行かなければマズイと思い、ラインハルトたちと別れた。

 

 「私も帰るとしよう。エレオノーレ…卿も来るかね?」

 

 「ああ…勿論だラインハルト。(元から自覚していたが、やはり私はラインハルトという炎に焼かれ続けていたい。……この思いは他の誰にも否定などさせん)」

 

 エレオノーレは自分の渇望を改めて自覚し、ラインハルトと共に月村邸から離れて行った。

 

 

 

 蓮たちと別れた司狼と天音は家に帰って夕食を食べた後、司狼の部屋で寛いでいた。

 

 「ねえ司狼。どうして今日は私を呼ばなかったのかしら?」

 

 司狼のベットを占領した天音は少しだけ機嫌が悪く、今回のジュエルシードを巡る戦いに参加できなかった天音は司狼を睨みつけた。

 

 「あぁ? 俺たちがなのはを探しに行った後すぐにお前がいなくなったらアリサが疑うからに決まってんだろうが」

 

 司狼の理由にアリサの性格を思い出した天音は納得し、ベットに寝転がりながら司狼の顔を眺めていると、心が穏やかになっていくと共に彼に対して抱いている思いは何なのだろうか? という疑問を考えていたが、

 

 「それで、お前って俺とあの白髪野郎以外の戦闘をサーチャを通して見てただろ? 何か分かったことあるか?」

 

 「そうね……途中でサーチャの魔力が吸収されたり、破壊されたから、憶測でしか言えないわよ?」

 

 「別にいいぜ(正直、ラインハルト先輩は現時点で蓮しか対処できねぇ。…万年処女(エレオノーレ)先輩はどんな戦い方なのか分かんねぇ以上保留だな。あの白髪野郎は俺とユーノでやるしかないかもな)」

 

 司狼は月村邸から戻った蓮からラインハルトの強さを聞いた時からラインハルトと戦っても今の実力では勝てないと悟った。そこで、第三者である天音の視点の意見を聞いて、新しい対策が浮かぶかもしれないと思っていた。

 

 「まず、ラインハルトさんについてね。あの2人の戦闘をサーチャーで録画したけど見る?」

 

 司狼が頷いたのを見た天音はデバイスの映像を再生し、司狼の肩に頭を乗せて映像が終わるのを待っていた。

 蓮とラインハルトの激しい攻防を見た司狼は2人の戦いぶりを賞賛すると共にある思いが芽生える。

 

 「(やっぱり(腐れ野郎)の知識のせいでデジャブりやがる。……とりあえずハイドリヒ先輩は蓮に任せれば…)づっ! 何しやがる天音!」

 

 既知感を無理やり抑えてこれからの作戦を考えようとしていた司狼の額にデコピンの痛みが走り、司狼はその原因である天音を涙目で見ると、天音は不機嫌そうに司狼を見つめていた。

 

 「貴方はどうして悲しそうにしているの? つまらないから何時もみたいに自信に満ちた表情をしなさい。貴方はやればできる人なのだから」

 

 少し厳しい言葉とは異なり、穏やかな笑みで優しく頭を撫でてくる天音に聖菜とは違う母性を感じた司狼は頬を緩めそうになるが、少し恥ずかしいと思いながら何時もの司狼に戻った。

 

 「少し情けねぇ姿見られちまったな。…んじゃ、次にエレオノーレ先輩の映像を見せてくれよ」

 

 司狼と天音の作戦会議は夕食ができる間まで続き、2人の距離は少しだけ縮まった。

 

 

 

 「…なあ父さん。少し話がある」

 

 夕食を食べ終えた蓮は創造位階を発動する寸前に、マリィと精神世界で出会った事でメルクリウスが今回の事件に関与しているのではないかという不信感と、今まで過剰ではあったが、自分を育ててくれた父が事件なんて起こす筈がないという信頼感が合わさっているという複雑な気分だった。

 

 「一体どうしたのだね蓮。家に帰ってきてからずっと表情が暗い様だが…ああ、いけないな。お前がそのままでは、一時的とはいえデバイスと同調して巻き込んでしまったマルグリットが悲しむのではないのかね?」

 

 デバイスとマルグリットの関係を話題に出した瞬間、蓮は無意識に『罪姫・正義の柱』を展開してしまう。蓮が『罪姫・正義の柱』をいきなり展開したことに驚いたユーノだったが、メルクリウスが魔導師サイドの人間であることを突然知ってしまい、頭の中で理解が追いつかず、思考が軽く停止してしまう。

 

 「おい父さん…正直に答えてくれ。父さんはこの事件の犯人なのか?」

 

 蓮の問いにメルクリウスは『罪姫・正義の柱』の刃が首に触れそうな状況の中で余裕そうな笑みを浮かべたままだった。

 

 『そこまでだ蓮。カールにそれ以上刃を向けるのはやめて落ち着けよ』

 

 突然蓮の体から光の粒子が現れると、メルクリウスの目の前で蓮と同じくらいの高さで人型が形成されて現れたのは、蓮と同じ容姿の少年だった。蓮と違う所は髪と目の色が黒色で軍服を着ている点の2つだけで、それ以外は蓮と違いが無い少年だった。

 少年が蓮の『罪姫・正義の柱』に触れた瞬間、蓮のデバイスが強制解除されてしまった。

 

 「な…なんで俺のデバイスが…? それにお前は一体誰なんだ!?」

 

 「誰って言われてもなぁ……あ、そうか。この姿を見せるのは初めてだったな。俺はロートス・ライヒハート。お前のアドバイザー兼カールの友達だ」

 

 蓮と同じ声の少年、ロートスの名前を聞いた瞬間、蓮は先程までの警戒心が少し薄れてしまい、驚きを隠せないといった表情になってしまう。

 

 「…え? ロートスってデバイスのAIじゃなかったのかよ!? (でも、考えてみればなのはのレイジングハートはロートスの様に人間味のあるAIじゃないよな。…じゃあ、ロートスの正体は一体…)」

 

 「刹那殿の事に関してはそこまでだ。…さて、私がこの事件の犯人か否かについてだが。答えは否だ。仮に私が犯人だとしても、それはお前と我が愛しの女神の為になることしかしないよ。故にこれからもお前を助けると誓おう」

 

 蓮はメルクリウスがこの事件の犯人でないことが分かり、心理的に余裕ができたが、同時に疑問が生まれる。メルクリウスが言っていた女神とは誰なのか…と。

 

 「なあ父さん。一つ聞きたいんだけど、父さんの言ってた女神って誰のことなんだ?」

 

 女神という単語を聞いた瞬間、メルクリウスはしまったという感情と誰よりも愛おしい女性について聞いてくれたことの喜びがメルクリウスの心の中で葛藤していたが、

 

 「おや、聞きたいのかね? 我が愛しの女神との初めての出会いを。出会いは蓮が生まれる前から始まった……」

 

 メルクリウスの女神語りが始まった瞬間、蓮とロートスの思考がシンクロし、“あ、この流れは一番ダメなパターンで話が永劫回帰しそうだ”と諦めの境地に至った。

 


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