魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版   作:鏡圭一改め鏡正

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お久しぶりです!
就活と卒論のダブルラッシュに更新が遅れました!

Diesのアニメで言いたいことは1つだけです。

メルクリウス超うぜぇえええええええええ!!


第22話

 蓮たちが戦闘を始めてから10分後に戻る。なのはと杏奈は未だに蓮たちが部屋に戻っていないのが心配になり、蓮たちを探しに行く……という口実を得てジュエルシードの反応がある所に着くと、ジュエルシードで大きくなったネコに向けて魔法を放とうとする金髪の少女、フェイト姿を発見した。

 

 「ネコさんを殺しちゃダメー!」

 『Divine Buster』

 

 なのはは瞬時にバリアジャケットを纏い、『レイジングハート』から桃色の砲撃『ディバインバスター』を放つが、フェイトは涼しい表情でなのはの砲撃を避けたが、突然動けなくなり、焦りを感じた。

 

 「(体が動かない!? どうして!?)」

 

 「ちょっとー。私のこと無視しないでよね~」

 

 魔力で生成された杏奈が目の前に現れたことに気づいたフェイトは咄嗟に後ろに後退する。

 

 「(やっぱり、前世よりも影の魔術の力が落ちてるかも)ここから先は行かせないわよ!」

 

 杏奈は『鉄の処女』(アイアンメイデン)の鎖でフェイトを縛ろうとした瞬間、

 

 「パァンツァー」

 

 突然炎を纏った砲撃が杏奈に向かって放たれた。杏奈は咄嗟に影の魔法を使い、なのはの影に向かって転移した。

 

 「ほぉう。今の砲撃を避けるか……高町杏奈」

 

 杏奈に向かって砲撃を放ったのは、杏奈たちの通っている学校の先輩であるエレオノーレだった。

 

 「どうしてアンタがここにいるのよエレオノーレ先輩!? ってまさか! 先輩も魔導師なの?」

 

 「どうしてここにいるのかだと? 無論、ここにラインハルトがいるからだ。私の忠義を舐めるなよ小娘」

 

 エレオノーレは不機嫌そうに杏奈となのはを見ると、興味を無くしたからか、すぐにフェイトの方に視線を向けた。

 

 「テスタロッサ。ここは貴様に任せる。私はラインハルトの元に援護へ向かう」

 

 フェイトはエレオノーレの指示を無言で頷くと、魔方陣を展開し、黄色の槍の魔力弾『フォトンランサー』を4発発射した。それに対してなのはは、フォトンランサーの予想以上の速度に防御魔法の『プロテクション』を展開するしかなかった。

 

 「なのは! ここはお願いね!」

 

 「うん! お姉ちゃんも気をつけてね!」

 

 杏奈はこの先にいるであろう蓮たちが不利な状況になる前に蓮たちの援護に行った。本来ならば、杏奈がフェイトの動きを封じている間になのはがジュエルシードを封印することが最善だ。しかし、エレオノーレとラインハルトが合流し、なのはたちが手に入れたジュエルシードを奪いに来ることを考えた杏奈はエレオノーレを妨害することが最優先に感じた。

 

 「っ! (この子の動き方。魔導師としての経験が浅い?……それなら!)」

 

 『Blitz Action』

 

 フェイトはなのはの戦闘経験の浅さを見抜き、短距離超高速移動魔法の『ブリッツアクション』を使い、なのはが苦手な接近戦を仕掛ける。

 なのはは蓮との模擬戦で接近戦の戦い方を知ることができ、対処は出来るようにはなっている。だが、その時の蓮は創造位階に達しておらず、超高速移動魔法の対策などしていない為、フェイトが次第に状況を有利に進めていった。

 

 「……ごめんなさい」

 

 「え?」

 

 フェイトが呟いた一言が聞こえたなのはは聞こえた方向に向くと、4~5本の魔力でできたフォトンランサーが迫って来ていた。

 なのはは『プロテクション』を使用できずフォトンランサーが直撃し、意識を失った。

 

 「……ジュエルシード回収」

 

 バルディッシュを巨大なネコに向けたフェイトはネコを傷つけずにジュエルシードを回収する。次の瞬間、今まで以上に膨大な魔力を感知し、辺りが夜になっていることに気づく。少しずつではあるが、魔力が吸われている感覚に嫌な予感がしたフェイトはラインハルトのいる場所まで移動を開始した。

 

 

 

 『So as I pray, UNLIMITED BLADE WORKS.(その体は、きっと剣で出来ていた。)

 

 森の風景が一瞬の内に辺り一面が燃えさかる炎と無数の剣が大地に突き刺さっている荒野の風景に変わる。この現象は『固有結界』と呼ばれる術者の心象風景を現実に侵食して形成する魔法に近い魔術だ。

 

 「こりゃすぐに終わりそうにねぇな」

 

 「あぁ? なに寝ぼけたこと言ってんだテメェは? ただ剣が地面に刺さってるだけじゃねぇか……っておわぁ!?」

 

 油断しているヴィルヘルムに向かって地面に突き刺さっている内の10本の剣が発射された。ヴィルヘルムは咄嗟に十数本の杭を生成して放つが、剣の中に内臓されている魔力が多すぎる為か、勢いだけしか相殺することができず、杭と共に地面に落ちた。それと同時に剣が爆発し、周囲にいた司狼たちもその爆風に巻き込まれた。

 司狼たちはボロボロになったが、幸いなんとか戦える状態だった。だが、その状態が何時まで続くのかは時間の問題だった。

 

 「(やっぱり今の(・・)白髪野郎の魔法でもあの剣を完全に吸収することができねぇのか。仕方ねえ、本当は敵になる奴を強くしたくはねぇがやるしかねえか)おいヴィルヘルム! テメェの『カズィクル・ベイ』の名が泣いてるぜ? 夜に無敵な吸血鬼や夜の不死鳥になりたいんじゃなかったのかよ?」

 

 「(夜の不死鳥……夜に無敵な吸血鬼だぁ? っは! 悪くねぇ。)礼を言うぜクソガキ。おかげで目が覚めた気分だぜ」

 

 ヴィルヘルムは司狼に礼を言うと、今まで押さえ込んでいた気持ちを開放する。それはヴィルヘルムとヘルガを理由なく捨てた下衆である両親の遺伝子……つまり血を捨てて己の血を入れ替えたいという願望だ。

 

 「オラオラァ! どうしたよ。いいかげんに消えろや…モブぅ!」

 

 竜馬は司狼たちを馬鹿にしたような口調で狂った様に笑いながら、100以上の魔剣や聖剣の贋作を司狼たちに向けて放った。しかし、次の瞬間……

 

 『|Wo war ich schon einmal und war so selig《かつて何処かで そしてこれほど幸福だったことがあるだろうか》』

 

 ヴィルヘルムが詠唱を始めた瞬間、ヴィルヘルムの周囲を血の様な赤色の魔力が覆い、贋作の剣を次々と弾き返す。

 

 「な…にぃ? ふざけるなぁ! 消え去れモブ共!!」

 

 怒りと慢心によって我を忘れた竜馬は次々と魔剣や聖剣を投影し、放ち続けた。……が、先程と状況が変わらず剣が弾き返されるだけだった。

 

 『|Wie du warst! Wie du bist! Das weiß niemand, das ahnt keiner《あなたは素晴らしい 掛け値なしに素晴らしい しかしそれは誰も知らず また誰も気付かない》!』

 

 『Ich war ein Bub', da hab' ich die noch nicht gekannt《幼い私は まだあなたを知らなかった》.』

 

 『|Wer bin denn ich? Wie komm' denn ich zu ihr? Wie kommt denn sie zu mir《いったい私は誰なのだろう いったいどうして 私はあなたの許に来たのだろう》?』

 

 『|Wär' ich kein Mann, die Sinne möchten mir vergeh'n《もし私が騎士にあるまじき者ならば、このまま死んでしまいたい》.』

 

 『|何よりも幸福なこの瞬間――私は死しても 決して忘れはしないだろうか《Das ist ein seliger Augenblick, den will ich nie vergessen bis an meinen Tod》.』

 

 『Sophie, Welken Sie(ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ)

 

 『Show a Corpse(死骸を晒せ)

 

 『| Es ist was kommen und ist was g'schehn, Ich möcht Sie fragen《何かが訪れ 何かが起こった 私はあなたに問いを投げたい》』

 

 『|Darf's denn sein? Ich möcht' sie fragen: warum zittert was in mir《本当にこれでよいのか 私は何か過ちを犯していないか》?』

 

 『|Sophie, und seh' nur dich und spur' nur dich《恋人よ 私はあなただけを見 あなただけを感じよう》』

 

 『|Sophie, und weiß von nichts als nur: dich hab' ich lieb《私の愛で朽ちるあなたを 私だけが知っているから》』

 

 『Sophie, Welken Sie(ゆえに恋人よ 枯れ落ちろ)

 

 『Briah(創造)Der Rosenkavalier Schwarzwald(死森の薔薇騎士)

 

 次の瞬間、周囲は青空だったのが突然満月の夜となり、ヴィルヘルムを除く周辺にいた者たちは脱力感と魔力が無くなっていく感覚になる。

 

 「どうだテメェら。最高の夜だろ?」

 

 「最高だぁ? 寝言ほざいてんじゃねえぞ白スケ。こっちの気分は最悪なんだよ!」

 

 ヴィルヘルムは徐々に力が漲ってくる感覚に酔いしれていたが、司狼はその逆で、ヴィルヘルムの創った世界の影響をマイナスの意味で受けており、少しずつだが魔力が削られるような感覚…いや、実際に削られてることに気づいていた。

 

 「ユーノ! お前は大丈夫か?」

 

 「うん。だけどこの状況が長く続いたらマズイかも…」

 

 ユーノは顔色が少し悪くなっていたものの、戦闘を行うこと自体は問題なくできる状態だった。

 

 「テメェ…固有結界を使うとは……モブ風情が調子に乗るなぁ!」

 

 竜馬は膨大な魔力のおかげで虚脱感を感じず、ヴィルヘルムの創造の影響をあまり受けていなかった。そして、ヴィルヘルムに向けて無数の剣を射出する。

 

 「またそれか? テメェはワンパターンの攻撃しかできねぇサルかぁ!!」

 

 ヴィルヘルムは己の体内と夜の結界で生成した杭を射出しながら、自らは無意識に身体強化の魔法を発動し、竜馬に向かって走り出した。

 竜馬の剣と杭の威力は拮抗していたが、剣の魔力は創造による能力と杭の魔力吸収によって魔力を失い、剣が消滅した。

 

 「馬鹿な!? 俺様の投影したエクスカリバーがただの魔法如きに消されただとぉ!」

 

 「どこ見てやがんだテメェは? 隙だらけなんだよタコがぁ!」

 

 ヴィルヘルムの手に宿った杭の射出をギリギリで投影していた聖剣を爆発させた。爆発の威力によってヴィルヘルムから距離を取ることができた。

 

 「おのれぇ…モブごときが! 絶対に許さんぞ貴様ぁ!!」

 

 「許せねぇのはこっちのセリフだ玉無し野郎! それにチェックメイトだ。…ユーノ!」

 

 「うん! チェーンバインド!」

 

 司狼とユーノが魔力の鎖、チェーンバインドを竜馬に向かって発動すると、竜馬の体を縛りつけ、動けない状態を作り出した。

 

 「ぐぅぅ…こんな魔法すぐに壊してやる!」

 

 竜馬が司狼たちのチェーンバインドを破壊しようと魔力を全開にしている姿にヴィルヘルムは狂った様に笑い出す。次の瞬間、竜馬の周囲にある地面から杭が現れ、竜馬を串刺しにする。

 すると、先程まで拮抗していた竜馬の固有結界『無限の剣製』が竜馬が気絶したことによって消滅し、辺り一面が夜へと変わる。

 

 「どうだぁ? 魔力が吸われる感覚はよぉ! ……嬉し涙流せやオラアアァッ!」

 

 ヴィルヘルムは昔のことを思い出したからかテンションが高くなっており、気絶している竜馬にチンピラの様に足を顔に押し付けようとした時だった。急にヴィルヘルムの様子が先程と変わり、冷静になっていた。

 

 「……分かりました。今そっちに向かいます。ってわけだ、今回はお預けだ。次こそ決着を着けてやるぜクソガキ!」

 

 次の瞬間、ヴィルヘルムは『死森の薔薇騎士』を解除し、太陽が昇っている昼になるのを確認すると、司狼たちの前から消えた。

 

 「司狼…正直に言うけど、どうしてあの吸血鬼の手助けをしたの?」

 

 「あ? 決まってんだろ。あの状況じゃ、あのクソ野郎を倒す手段があの方法しか無かったんだよ。まさかあそこまで強くなるとは思わなかったけどな」

 

 ユーノは司狼の行ったことに内心怒りを覚えていた。だが、同時に納得している自分もいた。あの状況では無限に増殖する剣を打破する方法は1つしかなかったのだ。

 その代償にジュエルシードを狙う組織に新たな力を得た化け物が増えたということだ。

 

 「僕たちも強くならないとだね司狼」

 

 「だな。(……やっぱ、蓮のやつと一緒にいると面白いことばかりが起きやがるから退屈しねぇんだよな。)」

 

 「司狼! ユーノ! 無事か!?」

 

 ユーノたちが改めて更に強くなろうと決意した時だった。蓮が創造位階の状態でギロチンの翼を生やして(・・・・・・・・・・・)飛んできた。

 

 「……お前。ギロチンの翼とかセンス良すぎだろ!」

 

 「それよりも蓮って飛行魔法の適正があったんだね」

 

 蓮の状態に司狼はかっこいいと感じたのか、すごく興奮しており、ユーノはいままで飛行魔法を使っていなかった蓮がいきなり使えるようになっていることに対して驚いていた。

 

 「さっきからなに言ってんだお前ら。俺が飛行魔法なんか使えるわけないだろ。……って何だよこれ!?(ギロチンの翼って禍々し過ぎだよな…どうなってんだ俺の体は?)」

 

 蓮は司狼たちの様子がおかしいと感じながら、背中の違和感を感じて後ろを見ると、ギロチンの翼が生えていることにようやく気づいた。どうやら蓮は無自覚の内に飛行魔法を使用していたようだ。

 

 「って、そんなことはどうでもよかった。なのはの元に向かうぞ!」

 

 蓮の一言で、はっ! となったユーノは司狼を見ると、何時の間に習得したのか、天使の翼による飛行魔法を使って蓮と共になのはの所に移動を始めていた。置いて行かれると思ったユーノも慌てて飛行魔法を使って蓮たちを追った。

 

 

 

 「ツァラトゥストラが創造位階へと達したか。ふ、ふふ…ふはははははは。あぁ…褒め称えたい。詩に書き留めたい。本に綴り、後生へと伝えたいほどだ。…さすがは我が息子。ラインハルトとの戦いぶりに私の鼻も高くなるというもの、素晴らしい歌劇だったよ。例え今の戦いぶりが既知であろうと誰がこの戦いを否定できようか」

 

 ラインハルトと蓮との戦いをみていたメルクリウスは子供の様な純粋さで歓喜に打ち震えていた。

 『メルクリウス』が回帰する前の世界では創造位階の上の段階である流出同士の戦いを行った蓮と『ラインハルト』の決戦には及ばないものの、心から素晴らしいと感じていた。

 

 「だがしかし、2人の戦いに横槍を入れた塵芥には呆れを通り越して関心する傀儡振りだ。…本来ならば今すぐにでもその存在を抹消するのだが歌劇に介入した以上、役を与えねばならない。(そういえば、黒円卓の聖槍(ヴェヴェルスブルグ・ロンヌギス)は今代のトバルカインである櫻井戒が所有者だったな。だが、トバルカイン化の呪いは付属していなかった筈だ。)」

 

 「そうだ。あの塵芥が終盤にその役目を果たして貰えば良いだけだ。その力でもう1人の塵芥も同様にすれば、歌劇は盛り上がるというもの。早速取りかかろうではないか」

 

 メルクリウスは幕が開かれている歌劇を一段と盛り上げる為、気絶している業の近くに転がっているデバイスに細工を始めた。

 


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