魔法少女リリカルなのは~Amantes Amentes~ 改訂版   作:鏡圭一改め鏡正

1 / 23
 初めましての人は初めまして。お久し振りの人はお久し振りです。鏡圭一改め鏡正です。
 ユーザーのメールアドレスを忘れて更新することができず一度この小説の投稿を諦めた私ですが、Diesのアニメ化とベイ主人公の外伝のゲーム発売決定によって創作意欲が再熱したので改定版を更新することにしました。
 よろしくお願いします!

追記、地の文と台詞の間がなくて読みにくいとあったので間を空けてみました。


第一話

 黄昏の浜辺と呼ばれる海の砂浜にボロボロのマントを羽織った男が立っていた。その男は海の水面から見える自分の顔を見た瞬間、言動がおかしくなっていた。

 

 「ある日、気がついたときから不快だった。どうして俺の顔と声が変わっている。常に変わることなく俺を不快にさせる。なんだこの姿は? 動きにくいぞ消えてなくなれ。俺はただ、知りたい。どうしてこの姿になっているのかを」

 

 男はそう言ってから、思いっきり息を吸った。

 

 「どうして俺がメルクリウスになっているんだあァァァァァァァァァァァ!!! そして、メルクリウス超ウゼェェェェェェェェェェ!!!!」

 

 男が絶叫している理由は正田作品に出てくる宇宙一ウザくて、宇宙一強いニートにして、ラスボスである第四天・メルクリウスになっていたからだ。

 

 

 

 あれから、男の雰囲気が何かに汚染されるように老人の様な雰囲気と変わり、聞く人全員がウザイと答えるウザそうな笑みを浮かべていた。男は『メルクリウス』の意思と融合し……『メルクリウス』の記憶を受け継いだ。

 どうやら前回の永劫回帰でメルクリウスは獣殿と呼ばれているラインハルトとツァラトゥストラと呼ばれるメルクリウスの代行者である藤井蓮の三つ巴にメルクリウスが勝利したという未知の記憶だ。

 

 「なるほど、これが噂に聞く水銀汚染か。中々に未知な体験をした。しかし、ここにマルグリットがいないとは。今は19世紀後半のはずだが」

 

 メルクリウスはマルグリットがいないことに疑問を覚えた。

 メルクリウスが探しているマルグリット・ブルイユはフランス革命が行われている18世紀末に生まれた少女で断頭台の近くで生まれたからなのか、彼女に触れた者は全員首を切断する呪いが宿った少女だ。後に彼女は断頭台によって処刑されてしまうのだが、死んだ後に神のような存在になったマルグリットは以後この黄昏の浜辺にいる……はずだった。

 

 「(とりあえずマルグリットの墓に行かなければ。しかし、嫌な予感がする)」

 メルクリウスは嫌な予感を感じながらもフランスにあるマルグリットの墓に瞬時に移動した。

 

 

 

 「バカな!? ……マルグリットの墓が無いとは」

 

 メルクリウスは絶句していた。それと同時にメルクリウスは2つの答えに辿り着いた。1つは、マルグリット・ブルイユという少女の存在はこの世界に存在しないということ。もう1つはこの世界に『座』の存在がないということだ。

 『座』に関してはメルクリウス自身その存在がないことには薄々気付いていた。だが、マルグリットがいないということは『メルクリウス』の恐怖劇(グランギニョル)を行うことが出来なくなったことを意味していた。

 メルクリウスはこの状況の中、自分は今何をしているのか? 何故自分がメルクリウスになっているのか、そして私がメルクリウスになって何をしなければならないのか? ……といった考えをしていく内にメルクリウスは段々と無気力になっていくのを感じた。

 

 「……私はこのような未知などいらない。故にこの世界に興味など無い」

 

メルクリウスはこのままずっとこのようなつまらない世界に居なければならないのかと思い絶望しているその時だった。

 

 「ん? 何だこの膨大の魔力は(まあいい。これも新たな未知やもしれん。せいぜい私を失望させてくれるなよ?)」

 

 少し落ち着いたメルクリウスは新たな未知を求め、地球とは異なる世界へと瞬時に転移した。

 

 メルクリウスが膨大な魔力の反応があった世界(・・)に転移したが、その世界は全並行世界を知り尽くしているメルクリウスにとってまさに未知といえる世界だった。

 元々他の世界から現れた宇宙外生命体に等しい『メルクリウス』になったメルクリウスはこのような未知を感じたからなのか、嬉しそうな表情をしていたが、どこか物足りなそうだった。

 

 「これはこれで未知を感じるが、肝心の膨大な魔力を放つ元凶はどこに……あれは何かの余興なのだろうか?」

 

 メルクリウスが見ていたのは、肥満体質の男が頭を抱えながら苦しそうに悲鳴をあげている所だった。

 次の瞬間、男の姿は消えて現れたのは、膨大な魔力を出しながら黒い翼を羽ばたかせ、涙を流す銀色の髪の美しい女性だった。

 

 「また、すべてが終わってしまった……一体幾度、どれだけ同じ悲しみを繰り返せばいい? 私は闇の書。この力は全て主のため、そして、御身の願いのままに全てを終わらせましょう」

 

 女性は悲劇のヒロインの様な儚くも美しい声で天を見ながら語り始めた。その光景を見ていたメルクリウスは女性の姿に魅了されていた。

 

 「(以前の私(メルクリウス)だったら、マルグリットにしか興味ないと言って、目の前の女性を排除するだろうが、生憎、今の私は彼ではない)……私は一度も恋をしたことなどなかった。しかし、今の私は目の前の女性がとても美しく、そして如何なる手を使っても守りたいとまで思っているようだ。ああ、なるほど。そういうことか。……これが恋という未知なのか? ああ、素晴らしい。この感情を一体誰に否定できよう。私は今…生きている!!」

 

 メルクリウスは自分が女性に抱いている感情……恋を自覚した瞬間、闇の魔法が世界を黒一色に覆い尽くしていた。

 

 

 

 「(ああ、また主が死んでしまったのか?)」

 

 女性は今まで『夜天の書』の主が今まで何を行ってきたのかを知る為に、主の記憶を見た。女性は夜天の書と呼ばれる魔道書の管制人格であり、夜天の書の主の記憶を見ることは容易いことだった。

 記憶を見ると、主は女を誘拐する為に夜天の書の守護騎士を使い、さらに、する必要がない夜天の書を改造……いや、改悪し、最終的にそれが原因で主は魔力の暴走で死に、女性が現れた。

 女性は理性があるものの、夜天の書の改悪が原因で思った通りに動くことができない状態だった。

 

 「(やめろ! 私は無意味に人を殺したくない! やめてくれ!!)」

 

 女性は魔法の発動に抵抗したが、その抵抗は無意味となり、夜天の書に記録されている、現時点での最も威力に大きい広範囲攻撃魔法『デアボリック・エミッション』が発動してしまった。

 

 「あぁ……私は数多くの罪の無い人間を殺してしまった。あと数分でこの世界は消滅してしまう。これからもこの呪いで私は数多くの人間を殺すのか」

 

 女性は涙を流しながら顔を下に俯いていると、

 

 「あなたに恋をした。あなたに跪かせていただきたい。花よ」

 

 女性は声のする方向に体を向けると、老人の様な雰囲気の長い蒼い髪の青年が跪いていた。

 メルクリウスは先程の魔法を喰らってもまったく傷を負っていないどころか、ボロボロのマントにも損傷はなかった。メルクリウスに傷を負わせることができるのはラインハルト、ツァラトゥストラこと藤井蓮、マルグリットなどといった覇道神クラスの存在のみだ。

 

 「お前は誰だ?」

 

 「私はヘルメス・トリスメギストス、カリオストロ、カール・エルンスト・クラフト、ノストラダムス、パラケルスス、クリスティアン・ローゼンクロイツ、ジェフティ……と色々な名前がありますが、私のことをカリオストロとお呼びください。我が愛しの女神よ」

 

 メルクリウスが女神と言うワードを言った瞬間、女神と呼ばれた女性は悲しそうな表情になった。

 

 「やめてくれ。私は女神ではない。それに……もう私は罪の無い者の血で穢れている。だから、私を女神と呼ばないでくれ」

 

 美しく悲しそうな声でメルクリウスに止めるように言う。

 

 「(私が見たいのはあなたの笑顔だ。悲しみの表情ではない)いいや。あなたは女神の様に慈悲深い存在だ。普通の人間は殺した人間の為に涙を流すことをしない。だが、あなたは殺した一人一人の為に涙を流している。私はそんなあなたの姿を見て女神のようだと思ったのだよ」

 

 「違う。これは主が流している涙だ。私の涙ではない」

 

 女性は涙を流していることを認めずにいた。女性の様子にメルクリウスは困った様な表情になるが同時に少し頑固だが、中々にかわいらしい女性だと思っていた。

 今のメルクリウスは初心な少年の様に緊張していた。■■■■の時に感じたことのない幸福感と自分の青さに戸惑いながらも、目の前の女性に自分の恥ずかしさを見せない様に普段どおりの姿を演じていた。

 

 「先程の様子を見たが、あなたの主と呼んでいた塵芥は私利私欲に走り、仕舞いには自ら自滅した愚かな存在だとしか思えない。ゆえに女神よ、あなたのその涙は紛れもないあなた自身の涙だ」

 

 「……そうか。これが私の涙なのか」

 

 女性は自分の涙――泣いているということを理解し、少しではあるが人間らしい感情になっていた。

 

 「(そういえば、女神の名前を知らない。私としたことが緊張で大事なことを忘れてしまうとは情けない)突然で悪いが女神よ。あなたの名前をお聞かせ願いたい」

 

 「すまない。私には名前がない。そして、私の名前を決めることができるのはこの夜天の書の主だけだ」

 

 女性は申し訳なさそうな表情でメルクリウスに謝った。

 

 「否。これはあなたのせいではない。ならば女神よ。もしあなたの名前が決まった時は私に名前を教えていただけないだろうか?」

 

 「その時お前が私の傍にいれば教えよう。……だが、お前はどうして私に親切にしてくれる? 私は世界を消滅させることしかできない呪われた存在なのに」

 

 メルクリウスは女性の問いに嬉しさ半分、マイナス思考になっていることに悲しみを感じていた。

 

 「私はあなたの奴隷だよ、我が愛しの女神。あなたの所有物であり、あなたの力であり、あなたの分身としてあなたを救い、あなたのお陰で今幸せを得たあなたの傀儡だ。私はあなたのために生まれた」

 

 メルクリウスの答えに女性の顔が笑みに変わった。メルクリウスは女性の笑顔に顔が赤くなるのを感じた。どうやら言って恥ずかしくなったのだろう。

 

 「……どうやらもう時間らしい。また会おうカリオストロ」

 

 女性は次の瞬間、本の中に消え、その本は転移した。

 

 「ああ。また会えるのを楽しみにしているよ。我が女神」

 

 メルクリウスは女性の消滅させた世界を眺めながら暫くすると、地球へと転移した。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。