ハイスクールD×B×F   作:ゴンサレス斎藤

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5話の続きです。


第6話

「まって!!!」

 

 

 

 少年は立ち止まり、振り替えって女の子を見た。

 

 

 

「な・・・名前を教えてください!!」

 

 

 

 大声でそう言ったが、少年は考えてしまった。

 

 

 

(自分にはまだ名前がないとは言えないし、ここは適当になだめて諦めてもらおう)

 

 

 

 少年は首を横に振って拒否した。

 

 

 

「掟でね、一人前となるまでには集落の外の人には自分の顔や名前なんかを教えちゃいけないんだ」

 

 

 

 理由を説明したが、女の子はそれでも諦めなかった。

 

 

 

「誰にも言わないから!私だけの秘密にするから!」

 

 

 

 食い下がらない女の子を見ていた少年は、手招きして女の子を呼んだ。

 

 

 

 教えてもらえると思っていた女の子は笑顔になりながら少年に近付いていくが、目の前に来たら少年の人差し指と中指で額を小突いた。

 

 

 

「あうっ・・」

 

 

 

 女の子は突然のことで驚いて、変な声を出してのけ反ってしまう。

 

 

 

「ごめんね・・・また今度ね・・・」

 

 

 

 そう言うと、少年は瞬歩で消えるように去ってしまった。

 

 

 

「あ、う~~~~~~」

 

 

 

 女の子は教えてもらえなかった悔しさからか、目に涙を浮かべ唸りを上げて地面に目を落としたが、不意に、カランという物音が聞こえ、顔を上げると、そこにはあの少年が使っていた狐の面が落ちていた。

 

 

 

 女の子はそれを拾って辺りを見回して少年を探したが、自分と母親しかいないことを確認すると、その面を大事そうに抱きしめた。それを見つめていた母親は「あらあら」といった表情で娘の行動を見つめていた。

 

 

 

 そのすぐ後である・・・

 

 

 

「朱里~~~朱乃~~~」

 

 

 

 空から自分たちを呼ぶ声を聞いた母親は、視線を空に向けると、自分の夫であるバラキエルがものすごいスピードでこちらに向かってきて目の前に降り立った。

 

 

 

「大丈夫か?怪我はないか?二人を狙っているという輩がいると聞いて大急ぎでこちらに来たのだが」

 

 

 

 バラキエルは辺りを見回して襲撃者どもを探したが、地面が大きく切り裂かれていることを除いては特に異変はなかった。

 

 

 

「あなた、私たちは大丈夫です。確かに襲撃されて追い詰められましたが、とても優しい方に私たちは助けられました」

 

 

 

「む・・・その者は今どこに」

 

 

 

「すでにこの場所から去っています。・・・それよりあなた、その方が言うにはここも安全とは言えないので遠く離れた方が良いと」

 

 

 

「うむ、そうだな。ここに居てはまた何時こんなことが起こるかもしれん。すぐに移動しよう。準備を頼む。朱乃、お前もすぐに・・・朱乃?」

 

 

 

 バラキエルは母親と娘に支度をするように声をかけたが、娘だけは動かずに何かを抱きかかえていた。

 

 

 

 娘に近付き横から何をしているかとバラキエルが覗くと狐の面を大事そうに抱えていた。

 

 

 

「この面はどうしたんだ?」

 

 

 

 抱いている面を取ろうとして手を伸ばすが、それに気づいたのか、父親の手をはね除けて少し離れた。

 

 

 

「ダメ!これは私の宝物なの!」

 

 

 

「あ・・・朱乃、そんな面がどうかしたのか?」

 

 

 

「『そんな』なんかじゃないもん!そんなこと言う父様なんかキライ!!」

 

 

 

 その言葉を聞いた瞬間、バラキエルは全身に衝撃が走り、両手両膝を地面について項垂れた。

 

 

 

「あらあら、嫌われてしまいましたね」

 

 

 

 姫島朱里がバラキエルの近くに来て笑いながらそう言うと、顔だけ上げて妻を見た。バラキエルの顔は厳ついながらも涙を流していた。

 

 

 

「朱里、あの面はいったい・・・」

 

 

 

「それは後で説明します。さぁ朱乃、ここを離れる準備に行きましょう」

 

 

 

「はい、母様」

 

 

 

 母親と手をつないで建物の中に入っていくが、反対の手にはしっかりと面を掴んでいた。

 

 

 

「あ、私の名前教えていない」

 

 

 

「そういえば、そうね。でもまた会える気がするわ」

 

 

 

「本当!?」

 

 

 

「お母さんの勘は当たるのよ」

 

 

 

「ま、まってくれ、私も手伝うぞ」

 

 

 

 会話している母子の後に続いてバラキエルはあわてて追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神社の裏手の雑木林の一番高い木の上からその様子を少年は微笑みながら眺めていた。

 

 

 

「ふふ・・・」

 

 

 

『うれしそうだな』

 

 

 

「いや、ただ微笑ましいと思っただけだよ。でも、うれしいと思う。あの家族を守れてよかったと」

 

 

 

『その気持ちが大事なのだ。歴代の斬魄刀の所有者も救うことを目指していたのだからな』

 

 

 

「うん。・・・さて斬月、帰ろうか」

 

 

 

 そう言うと、その場を離れ、集落に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~しばらくして~

 

 

 

 

 

 神社の石段を上がっている男の子が目的地である神社を目の前にして興奮していた。

 

 

 

「ふふふ・・・待っていろよ、悪人ども。今からいってこの神からもらった力で貴様らを切り裂いてくれる。そして姫島朱乃、必ずお前を俺の虜にしてやるぜ」

 

 

 

 邪な感情を口にしながら、石段を登っていくと、ついに鳥居が見えてきた。

 

 

 

「よ~し。一気に飛び出して奇襲してやろう」

 

 

 

 身を潜め、準備をし、そして飛び出した。

 

 

 

「おら~~悪人ども、覚悟しやが・・・・・れ?」

 

 

 

 一気に飛び出したのはいいが、そこにはだれ一人いなかった。

 

 

 

「あれ~~おかしいな、ここだと思ったんだけど、どこに行っちまったんだ?」

 

 

 

 男の子はしばらく待っていたが、すでに親子3人は神社から移動した後であって、それからいくら待っても誰もその神社には現れなかった。

 




次回はいよいよ少年の名前を出します。

最後に出た男の子の名前はまだです。

それではまた。

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