新年初投稿です。
「砕けろ・鏡花水月」
その言葉を発すると、男たちは防御の構えをとるが・・しばらくしてもなにも起きる気配はなかった。
「な・・何も起きないではないか」
安心したような声を出したが、少年はすぐに地面に左手を置くと、
「(縛道の二十一)赤煙遁」
そう唱えると、辺り一面に煙幕が生じた。
「しまった、囮か」
男たちは慌てたが、煙幕はすぐには晴れなかった。
「クソ!!このままではどこから攻めてくるのかわからん。周りを囲んで防御の陣をとれ!」
そう命令を飛ばすと、一糸乱れぬ行動で円陣を築き、どこから攻められても対処できるようにした。
そのときである。強い風が吹き荒れた。急なことに男たちは目を瞑ったが、
「おお。これで煙幕が晴れるぞ。天は我らに味方しているぞ」
リーダー格の男は歓喜の声を上げながら配下の者たちを鼓舞した。そして煙幕が晴れ、周りを見回すと、母親が子の手を引きながら走って逃げていく後ろ姿が見てとれた。
「隊長!!!目標対象者が逃げていきます」
「逃がすな。必ず始末するのだ!!!・・・そういえば、あの仮面の小僧はどうした!!!」
「わかりません。急にいなくなりました」
「構わん!奴のことは後回しだ。今は目標のみに専念するのだ」
そう言うと、男たちは逃げていく親子を追いかけた。
そして・・・
ズバッッッ・・・ドバッッッ・・・
男たちが周りを取り囲んでいる中心に、無惨にも切り裂かれた親子の死体が転がっていた。
「よし、目的は達成した。引き上げるぞ」
「隊長、先ほど現れた小僧はどうしますか?捜索しますか?」
「放っておけ。今はこの場を一刻も早く離れるのが得策だ。それに、このことを警察や誰かに話したところで、子供の戯言にしか聞こえんからな」
そう言うと、男たちは足早にその場を去っていった。
・・・すると・・・
・・・ガサガサガサ・・・
「やれやれ、やっと引き上げてくれましたか」
境内の雑木林の茂みから、仮面を着けた少年が出てきた。そして、
ピキピキピキ・・・カシャァァァァァァン
親子の死体はガラスが砕けるような音をたてて消え去った。
「これは・・いったい・・」
少年の出てきた茂みから、無傷の親子が出てきて、母親に関しては、自分たちを討伐に来た男たちが、なぜ誰もいない場所に走ったり、武器を振るったり、満足したような表情で立ち去ったのかわからなくて混乱していた。
「・・・彼らに何をしたんですか?」
「あの人たちには、幻覚を見せました」
「幻覚を・・・?」
「はい。その幻覚で、あなたたち親子を討伐したように見せかけました」
「いったい、いつの間に・・・」
「それは、秘密です」
~時は少し遡る~
「(縛道の二十一)赤煙遁」
煙幕を出した直後、すぐさま振り向き、親子に告げた。
「はやく。こちらへ隠れてください」
雑木林の茂みに隠れるように促すが、
「え?・・でもそれではすぐに見つかってしまいます。貴方だけでも今のうちに逃げてください」
少年に女性が逃げるように言ったが、首を横に振って拒否した。
「それでは意味がありません。私の目の前で黙って殺されるのを見過ごすわけにはいきません。ここは私を信じてください」
「・・・わかりました。さぁ、行きましょう」
母親は女の子に声をかけると、手を引いて茂みの中に身を潜めた。
それを見届けてから、後に続いて茂みの中に入ろうとしたが、いまだに男たちは煙幕に足を止めているので、それを晴らしていこうとした。
「(破道の五十八)闐嵐(てんらん)」
手を掲げ、鬼道で竜巻を起こすと、男たちに当たらないようにして煙幕を吹き飛ばした後、急いで茂みの中に入り親子の横に移動した。
横に来た少年を、女の子は見つめていた。その視線に気づいたのか、顔を横に向けると目があった気がしたので、すぐに目を逸らしてうつむいてしまった。
少年は、気にしないと言おうとしたが、言葉より先に、女の子の頭を撫でていた。
すると、女の子は顔を赤くして母親の腕の中に顔をうずめてしまった。
少年は呆気にとられたが、すぐに視線を男たちに向けた。
~現在~
「さて、それでは私はこれで・・・っ!!!」
「どうしたのですか?・・・・まさか、またあの人たちが!」
こちらの幻覚に気がついて再びこの場所にあの男たちが戻ってくるのかと思っていた母親であるが、少年は否定した。
「いえ、違います。ただ、強い力を持った存在がこちらへ向かってきているんです。この感じだと空からこちらに向かっています」
そのセリフを聞くと母親は嬉しそうな表情をした。
「それはきっと私とこの子の父親です。やっとこれで安心できます」
「そうですか。それは良かった。・・・ただこの場所は安全とは言えなくなりました。念の為にその人が来ましたら、すぐにこの場所から遠く離れてください。そして穏やかな生活を送ってください」
「はい、そうします・・・私たち親子を救っていただき、ありがとうございます。この御恩はいつか必ずお返しします」
「それには及びません。もう会うことも無いでしょうから・・・それでは」
少年は頭を下げて一礼すると、踵を返してその場を立ち去ろうとしたが、
「まって!!!」
いままで母親の腕の中にいた女の子が大声で呼び止めた。
中途半端で終わってすいません。
つづきはまた後日投稿します。